A.D.2001 
思考海底中山 深海の竜
A.D.2001 思考海底中山 深海の竜
【プロローグ】
2022年夏のある日。
連日記録的な猛暑と報道するテレビ、男達の居る競馬場も夏の日差しが突き刺さるほどの暑さだ。
ユーイチ「今年の夏も暑いなぁ、熱中症対策ちゃんとせなな」
炎天下の木陰、湿気を帯びたムワッとする風、棒付きの氷菓を口に運ぶ。
リュウセイ「そうですよね〜、海とかプールとか行きたいですよ〜」
そろそろ何処か海開きがされそうな行楽シーズン真っ盛り、夏の海なんて人が多くて行く気にもならないが、海岸線を走り車の窓を開け潮風を浴びに行くだけでも【海に来た】と実感できるのは不思議だ。
ユーイチ「海なぁ…」
ドボンッ
突然視界が揺れる。
陸地に居るのに急に水の中に落ちる感覚があった。
鼻と口を急いで手で覆う、が息ができる。
同時に潮の臭いが鼻につき、口いっぱいに塩気で溢れる、若干目も痛いが徐々に慣れていった。
それがとても気持ち悪かった。
ユーイチ「な、なんや！なんだったんや？」
先程までの蒸し暑さが嘘のように男は今温い水の中にいる。
リュウセイ「どうしたんですか？福永さん？」
ユーイチ「リュウセイ…お前…濡れ…いやなんでもないわ」
服を見るが足元は水にでも浸かったような色をしている。
隣の男を見るが口から泡が昇っている、それがとても奇妙だった。
リュウセイ「海と言えば、雨が凄くて開催した有馬記念とかありましたよね、確か…2001年の有馬記念、記録的な豪雨の中開催したってありましたね。」
ユーイチ「待てや、その日は晴れてたはずや」
当日現地には居なかったが、知っている。
年末の大1番注目しない訳なんてない。
何せ過去の映像を見ればわかる
リュウセイ「確か…テイエムオペラオーが勝ったはずですよ？ラストランで有終の美を飾れたって和田さん喜んでたインタビューが印象的でしたよね」
嘘だ、勝ったのはマンハッタンカフェだ。
嘘だ、リュージは「何も返せてない」と言ってたのを知ってる。
ユーイチ「そうか…そうか…」
また誰かが厄介事を作ったんだと分かった。
誰かが行かねば、間違えた歴史を治さなければ。
ユーイチ「ってかなんで窓の外にいや、部屋の中に魚が泳いでるんや？」
空にはマンタの群れが腹を見せて泳いでいる。
ターフには銀色の鰯の群れが渦を成している。
花壇にはサンゴ礁と小魚が見える。
リュウセイ「魚？窓の外？福永さん？大丈夫ですか？水分だけじゃなくて、塩分も取りましょう？」
ユーイチ「それとリュウセイ肩にタコおるぞ」
捩り捩りと肩から頭へ移動するタコ。
リュウセイ「はぁ？福永さん何言ってるんですか！」
ユーイチ「まぁええわ」
男は席を立った。ゴボリと水を伝って音が鳴る。
今回の特異点、誰が作ったのか分かった、犯人を探しにいかなければ。
部屋を立ち去る際、喋っていた男を見るとタコは頭の上へ到達しくつろいでいる様だった。
ユーイチ「リュージ！リュージはどこや！」
片っ端から部屋を探すが、探してる男は見つからない。
周辺には相変わらず魚やクラゲの群れ。
周りの人は気にもしていない様だった。
コントレイル「ユーイチ！」
ディープボンド「ぷぼ…」(頭にヒトデが乗っている)
声の方を振り返ると探してる男の相棒とかつての自分の相棒が2頭いた。
ユーイチ「コントレイルにディープボンド」
ディープボンドの頭に乗っているヒトデを取り、コントレイルに引っかかっているワカメを取る。
コントレイル「探したわユーイチ！海の中にいるのが分かるか？」
ワカメがまるで優勝レイみたいになっていたのにはクスリと笑った。
ユーイチ「確かに海の中にはおるな、息が吸えるのが意味わからんが、せや！リュージはどこや！」
2頭とも同じ男を探していたらしい、首を横に振った。
コントレイル「ボンドの相棒はココにはおらんで！」
ディープボンド「ぷぼ！」
過去にも同じ様な事で特異点を男だ、また曇らせかよ、いや湿り気通り越して深海だ。
ユーイチ「何度も何度も飽きひんなぁ…まぁ人の事言えへんけど」
ギュウウウゥゥゥン…………
A.D.2001 思考海底中山 深海の竜
【本編】
深い深海の奥には竜が住んでいる、古今東西の文献からも言われている。
思想と夢を海に例えるなら、彼のそれは深海の如く暗く深い物だろう。
あぁ、またこの夢だ。
溺れるような感覚と共に見る相棒のラストランの夢。
息苦しい感覚と共に早く沈めと願うだけ。
肺の中の空気を捨てるのもとっくの昔に慣れた。
(はよ起きて…次のレースの…)
足掻くだけ無駄だ、沈みながら意識を手放そうと試みる。
「夢は呪いなんだよ、重くて冷たくてけど熱いんだ」
何処かから声が聞こえる、今までそんな事は無かった。
「キミもそうだったろう？夢と思ってた物が呪いとなっていた…それを断ち切るには…その聖杯に夢を込めるんだ」
聖杯と呼ばれた物が目の前に光り輝いている。
杯と呼ばれた物は何処と無く、王冠に見える。
「呪いと海に底はない、だから全てを受け入れるし夢からやってくるんだよ」
有終の美を飾れなかったあの日を。
願望器を手に、ずっと夢に見たあの日の改変を。
海の中だと言うのに呼吸が出来る、未だに慣れない感覚だ。
レイシフトする前のリュウセイの反応を見る限り、魔術師でなければ分からないらしい。
光すら届かぬ海底に薄らと光る物が見える、芝生、砂地…男には見覚えがあった。
競馬場だ。
少し変わった事と言えば、来る前に見た空を泳ぐ魚が深海魚に変わったくらいだ。
「まったく、はよリュージを改心させてこの海をどうにかせんと…」
競馬場の中を進む、花壇のサンゴ礁に鼻を近づけるディープボンド。
クンクンと匂いを嗅ぐ、サルビアの影からカニが出てきた。
「カニさん！こんにちはぷぼ！」
レイシフト先だからかボンドは喋れる様になったらしい。
はみっ
「あぁぁぁぁー！！挟まれたぷぼー！！！」
「ボンド！あぁん！ユーイチ！軟膏持ってへんか！」
「普段から持ち歩いてへんわ！」
焦る1人と2頭、急な怪我には注意が必要だ。
しかし海の中で塗る軟膏など効くのだろうか？
「あのー…もし良ければコレをお使いください」
声に驚き振り返る、そこには黒いロングヘアに黒いロングコート、馬耳、馬尻尾が生えた少女がいた。
少女の手には軟膏。
「お借りします」
鼻先に塗る、効く…のか？
「ありがとうぷぼー！お嬢さんお名前を教えて欲しいぷぼ！」
「私はマンハッタンカフェです、何故かここに呼ばれて来てしまった様でして」
見る限り【ウマ娘】と言った所だろう。
マンハッタンカフェからこの場所について詳しく聞いた、分かった事は。
・ココは誰かの夢であり夢の集合体。
・夢は水となって海になった。
・竜に気をつけよと書かれた看板。
・読めない数字が書かれた標識。
・この先覇王私有地と仕切られた土地
マンハッタンカフェと話していると遠くの方から一人の男が近づいてくる
「おーい！カフェいきなり走ってどうしたんだい？こんな所に居たのか…君たちは？」
近づいて来た男には見覚えがあった。
「蛯名さんも来てたんですか！」
「確かに俺の苗字は蛯名だけど君達の事は分からないんだ、すまない」
話を聞くにマンハッタンカフェのトレーナーだと言う。
確かにウマ娘ならトレーナーがいなければならない。
それもレイシフト前に後輩が読んでた漫画の知識だが。
3人と2頭で地下馬道を進む、ターフが見えてきた。
ターフには見覚えのある男と馬がいるが、男の頭には鹿の角、蛇の様な尻尾が生えている。
正しく竜と言えるだろう。
「なんや偉い早いな」
あちらから声をかけてきた、やはり同期の男だった。
「ここにおったかリュージ、にしても…コスプレにしてはクオリティ高いやんか」
やはり今回の特異点を生み出した犯人を煽る様に言葉で啄く。
「うっさい！コスプレやない！願ったら生えたんや」
それも、願望器の副作用なのか分からないが…
「はぁ…まったくお前と来たら。はよ修正せな、みんな海で溺れてまうわ」
【エピローグ】
結界師「ちゃんと特異点消滅したか確認しに来たんやけど、消えてないわ。まぁ寝て見る夢に変わったから良いとしようかな。」
視線を感じ周りを見渡す、誰も何も見えないが何かはいる。
結界師「あー…俺でも消せんはずや、夢見る者がいる限り消せんわなぁ。それと、なんやったっけ、なんかで聞いた事があるような…夢は解明されてない故に神聖な物である、だからこそ恐ろしい物達の寝床となる…だったか？この夢の奥深くには何がおるんやろな」
帰る結界師を見る黒いウマ娘とトレーナー
「終わりましたね」
「カフェお疲れ様」
消えた競馬場を見るように2人は泡になって空に昇っていった。
【あとがきと解説】
あとがきと解説、失礼します
・夏だし暑いし海行きたいし、で書いた
・元としてはドラえもんのひみつ道具「仮想水面シュミレーターポンプ」と崖の上のポニョの洪水後のシーン。
ですが、若干クトゥルフ味を帯びてしまったのは話の核にダクソとブラボを少々トッピングさせたから。
・ウマ娘のカフェが出てきたのはカフェが公式で深海魚好き設定&史実を絡めさせたかった。
(ウマ娘だすならカフェトレの皮を被った蛯名さん出したいし)
・書きながら、ブラボの狩人装備を着たユーイチさんを妄想しながら。
・レイシフト前に漫画読んでた後輩=ikze
・竜と化したリュージ>竜の字が悪い
・聖杯を上げた何か>史実オペでもあるし、その夢を見たかったファンでもあるし、誰でもよかった。
・リュージ曇らせたいし…(本音)
名無しに戻ります。ありがとうございました
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