今宵は満月。澄み切った紺色の空に月明かりがほのかに赤い。
古来より魔の者が集うそんな夜。
そして…

「………困ったわ.。このあたしがここまで参るなんて…本気でヤバいわ…」

とある街中をフラフラと力の無い様子で、地面すれすれを飛ぶ魔性がそこに居た。
一見すれば少女、いや幼女と言っても過言ではないが、背中に生えている蝙蝠のような黒い翼を
広げて飛ぶ姿は、あきらかに人外であると言える。
その彼女は、姿を消す魔法を使っているのか、周りの人々はこの存在には気が付かずに足早に通り過ぎていく。
どうやら彼女は、背中の翼を動かし、飛ぶことすらままならない状態のようだ。

「はぁはぁ…このままだといくら悪魔族のあたしでも限界……」

ぜいぜいっと息を付きながら、なんとか飛んでいる。

「ちょっと気が進まないけど『あれ』をやるしか無いわね…」

そう言うと、残った力を振り絞って地面から勢いよく飛び、空中で静止する。
周りを見渡しながら様子をみる。眼下では繁華街から少し離れた住宅街。
少女は一本の髪の毛を触覚のように伸ばし、ゆらゆらと揺らしている。

「…これだけ人間が居れば適合者なんてすぐに……」

ピクピクと髪の毛が反応する。

「あ、見つけた!」

疲労していた彼女の表情が幾分明るくなり、魔の者特有の妖艶な雰囲気を少し取り戻した。

「えーと…あれ?真下…なの?」

どうやら彼女の探している者は、すぐ近くのようだ。

「それじゃぁ、早速…あれ?…はう!」

彼女は眩暈したのか、ふらふら状態からすーと頭から落ち始める。
目当ての者が見つかった安心感で一瞬気が緩んだのだろう。
力が抜けた少女は気を失うと、そのまま落ちていった。


同時刻、とある歩道。
息を切らせ、走っている人影がいた。

「急げ、急げ!!」

はぁはぁと息を上げながら、通行人を避けスピードを上げている。
通りすぎるたびに通行人が振り向く。それもひとりやふたりではない。
中には頬を赤らめる者もいる。

「恥ずかしい…」

急に前に屈みがら走っていく。

「まったく…毎度毎度…わわ、宿題!」

少年の名は、佐久魔夏樹。地元の私立中学校の生徒で、今は自宅へと向かっている。
放課後、友人達とゲームの話で盛り上がり、いつのまにか日暮れを過ぎていた。
今日は多めの宿題が出されているのにだ。

ふいに、ヒソヒソと声が聞こえる。
ちょうど帰宅途中の女子高生の集団に近づいた時だった。

『きゃぁ、かわいい』

『うっそぉ。あの子、マジかわいいじゃん』

『あの男の子、本当は女の子じゃないの?』

夏樹は顔を下にしたままその場から離れようとしていた。たしかに彼は
背が低く、ショートカットでサラサラした髪にふわりと漂う甘い匂い。
くりくりとした大きな瞳と長いまつ毛に小さめの顔とくれば、どう見ても女の子という言葉が相応しい。
それもとびっきりの美少女と言った方がしっくりくる。

もし男子の制服を着ていなかったら、十中八九誰も彼を男だと思わないだろう。

「だめだ。だめだ。僕は男なんだ!」

そのため長年、コンプレックスになっていた。

「はぁはぁ。後、少し…」

ちょうど角の道路を曲がり、路地裏の公園の前に来た時だ。


「あ、あれは?」

きらきらと光るものが空から降りていく。
帯びのように上からきた光は、よく見れば人の形をしている。

「え!?まさか」

すぐ間近に来た時、夏樹はそれが女の子だとわかった。仰向けの状態でゆっくりと降りてくる。
彼は急いで、女の子の真下に来る。丁度彼の目線に来た時、ぐらりと彼女の体が動いた。
咄嗟に腕を伸ばして彼女を抱きかかえるが、勢いで地面に膝をついてしまう。

「いたた…うー、お、重い…」

「ううん…」

彼女の瞼がわずかに動く。どうやら気絶していたようだ。

「ふう。いったいこの女の子は…」

どうして空から?
と疑問に思いながら、目を閉じている女の子が気になったのか
夏樹はまじまじと彼女の顔を見つめる。

どうみても自分と同年齢の女の子は、長い睫毛に、透き通るような白い肌を持ち
頬をほんのりピンクに染め、髪は燃えるように鮮やかな赤で腰まで届いている。
小顔で可憐そうな彼女は、アンティーク人形のようにかわいい。
甘い女の子の匂いに夏樹は思わず赤らめる。


「そ、それにしても変わった服だな…」

肩ひもで白い肌が剥き出しの紺のワンピースにフリルがついた超ミニスカート。
履いているのはエナメルのロングブーツで、背中には何やら小さい翼がついているようだ。

「なんかのコスプレかな。でもすげーかわいいよな」

どうやらこの子に夏樹は興味をいだいたようだ。

「ううん…あ、あれ?」

「あ、起きたの?」

夏樹のうでの中で彼女が目覚めた。
周りを見回してすぐに彼の方へ視線を向ける。

「お、女の子?」

「ほっといてよ!」

むっとなる夏樹。もう何度も聞いている言葉につい語気を強める。

「ご、ごめんなさい。…あれ?あたしが見えるの?」

驚いた表情の彼女。夏樹は訳もわからずきょとんとしている。

「何言っているだ。ちゃんと見えているよ」

「…って事は…もしかして…」

彼女は難しい表情で夏樹の腕の中で顎に手をやって何やら試案を始めた。
しばらくしていきなり手をポンっと叩くとニヤリと口を綻ばした。


「すぐ見つかるなんて、超ラッキー♪目の前に適合者がいたって事は、あたしって運がいいわ」

「はいぃ?」

いきなりはしゃぎだした彼女に夏樹はすっとんきょうな声を上げる。
さすがに恥ずかしかったのか、夏樹は頬を赤らめながら。

「ど、どうでもいいけどさぁ。そろそろ降りてくれない?重いんだけど…」

「まぁ、かよわい女の子に向かって失礼よねぇ。男だったらちゃんと支えなさいよ…って、きゃぁあ!」

両腕が痺れ支えきれなくなった夏樹は彼女を地面に落してしまう。尻もちをつき、痛がる彼女。
だが、すぐに起き上がると、蝙蝠のような黒い翼を広げ体を浮き上がらせはじめた。
同時に周りの景色も変わる。月明かりに照らされた街路地が一変して何もない空間へとなっていた。

目の前に起きた異常事態に夏樹は驚いて、腰を抜かしてしまう。

「わわ!なんだよお前は!」

空中に留まった彼女は、見えない椅子に腰掛けたように白い脚を組んで夏樹を見下ろす。
その姿は…ロールプレイングゲームでお馴染の…

「あ、悪魔?ほんとうに悪魔なのか?」

「ピンポーン♪うふふ、悪魔は悪魔でも、サキュバスって言ってくれるかな…夏樹クン」

「ど、どうして…僕の名前を…」

「そりゃぁ、悪魔ですからね。簡単にわかるわよん」

えへんっと背筋を伸ばす彼女。

「お前…ぼ、僕を殺す気か?」

悪魔の伝説は小さい頃から夏樹も聞いている。
人を騙して魂を抜いては、地獄へ送られる…夏樹は彼女を睨んでいたが
下半身はガタガタと震えていた。だが目の前の彼女はそんな夏樹を知ってか知らずか

「きゃはは。そんな野蛮な事はしないわ」

ずいっと夏樹の目の前に近づく。


「うふ♪あたしを助けてくれた事には感謝するわ。あたしの名前はリリム。夏樹君、君を探していたの」

「探していたって…」

「んーまぁ、あたしを助けてほしいのよね」

「僕に?」

「そう。実は…」

リリムの説明はこうだった。

彼女は、ある目的で人間界に来ているわけだが、魔界から出る時、神様が造った強固な結界を
強引に突破した結果、本来の魔力を大幅に失ってしまったというのだ。
人間界での今の姿では失った力は回復できない。
そこで魔力回復のために夏樹に協力して欲しいと言うのだ。

「ど、どうすればいいわけ?」

「んーとね。簡単に言えば、君の体をあたしに貸して欲しいのよね」

「どうして僕が。それに、ど、どうやって?」

「うふ。それはね…」

そのままリリムは夏樹に口付けをする。


それもただ触れているのではない。
舌を伸ばし、こじ開けるように彼の口膣を犯していく。
一連の行動に夏樹は何も出来ず、そのまま硬直してしまう。

「んん…ふぁ…ああ…熱い…」

溢れる唾液に絡められる舌。リリムの行為に、呆然と受け入れる夏樹。
リリムから送られる唾液を飲み込むたびに次第に体が熱くなっていくのがわかる。

「ああ…熱い…ああ」

中学生とはいえ、まだ幼い夏樹にとって淫魔の唾液は強力すぎた。
媚薬そのものである淫魔の唾液は、まだ経験のない夏樹の意識を疼きという形で侵食していく。
火照る体にシャツの上から掻き毟る夏樹。

「うふふ。どう?欲しくてたまらないでしょ。でも、まだまだこれからだよ」

リリムの手が夏樹に触れると、着ていた着衣が瞬時に融解してしまう。
そのまま全裸になった夏樹の体をしげしげと見るリリム。

「ふーん。やっぱ男の子だよねぇ。顔は女の子みたいにかわいいのにね」

体の線は細いが、平らな胸板に股間にはあるべき物、
男根は疼きによって、立派に膨張していた。

「んじゃぁ、そこに仰向けになってくれるかな」

素直に従う夏樹。リリムは彼の傍に膝まづくと男根を細い指で握った。

「あうう…」

「うふふ。気持ちよくしてあげる」

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