■■【8】■■
 タンクトップを捲り上げておっぱいを剥き出しにしたままのナツと寄り添うよう
にしてベッドに横になり、僕は赤ん坊のように“ちゅうちゅう”と乳首を吸ってい
た。そんな僕を、ナツはものすごく優しい目で見ながら頭を撫でてくれていた。
「セイが、こんなに強引でヒドイやつだったなんて知らなかった」
「ヒドイかな?」
「ああ。ヒドイ。アタシにこんな事したヤツは、お前だけだよ」
「嬉しいな」
「どうして?」
「僕が、男では初めてなんでしょ? つまり、女になる前にナツの初めてをもらえ
たから」
「あげてねーよ。…………奪われちゃったんだ」
「そうだね。奪っちゃった」
 “くにくに”としてやーらかくてあったかくて、一日中でも吸っていたくなるく
らい舌触りのきもちいいナツの乳首を舌でなだめるようにして舐めていると、それ
だけで“とろん”と眠くなってきていた。
「あそこに、自分以外の指が入るなんて思ったことも無かった。しかもそれがこん
な年下の……」
「こんな、男でも女でもない、中途半端なチビだなんて?」
「そこまで言ってない」
「その手前までは思ったでしょ?」
「ちょっとな」
「ヒドイ」
「おあいこだろ?」
「イッちゃったのはナツだけだよ?」
 それは本当だった。
 僕のちんちんからは透明な、なんだかさらさらとした液体だけが出てきていた。
 精液とかじゃなくて、先走りともちょっと違う、もちろんおしっことかじゃない、
ヘンな液体だった。
 それは“射精”とは確実に違うもので、僕がもう、男じゃなくなってきているこ
との『証拠』みたいだと思えた。
「……イッてない」
 そんな僕に、ナツは“むうっ”とちょっとむくれて、ボソッと呟いた。
「そう?」
「そうだよ」
「ふふっ……『ああっ!だめっ!だめっ!だめぇ!!!!』……だって」
「ばかっ」
 ナツの拗ねたような口調に、僕は抱き締めていたナツのウエストから手を下ろし
て、まだ裸のままのお尻を撫でた。
 ナツのお尻は、すべすべしてて、まるで剥いたばかりのゆで卵みたい。触ってる
だけで気持ち良かった。
「ぅん……駄目だってば」
「まだ濡れてる?」
「そうじゃないけど……」
 ぐったりとして腰が抜けたようになってたナツの代わりに、ナツのお漏らしの後
始末をしたのは僕だ。シーツを換え、ナツのあそこを拭いて、空調を最大に室温調
節を26度に設定した。その間、ナツはずっと赤い顔でふてくされたように拗ねて
いた。
 僕はそんなナツが可愛くてたまんなくて、豊満なおっぱいの間に“たぷっ”と顔
をうずめて、思い切り息を吸った。
「ナツの汗のにおい……」
「汗臭いだろ?」
「ううん。僕、ナツの汗のにおい、大好きだよ」
「そ、そう?」
 ナツは、「大好き」という言葉をストレートに向けられる事に慣れていないみた
いだった。
 そうするとナツは、何でも許してくれそうな、そんなイメージが、今日だけで僕
の中に出来上がってしまっていた。
 僕は“つるん”としたナツのお尻をなでなでと撫でて、そのままその狭間に“す
るっ”と指を挿し入れた。


「もうだめ……」
 怒るのでも、嫌がるのでもなく、ただ溜息のような、熱い吐息を“はふっ”と吐
いて、ナツは僕の手をやんわりと掴んだ。
 仕方ないから僕は手を少しひんやりするお尻に“ぺったり”と貼り付けた。
「ねえ。さっき、性欲は薬で抑えてるけど、生理前には高ぶってどうしようもなく
なるって言ってたでしょ」
「そんなこと言ったかな?」
「言った。でね、そうなったらナツは自分でするんでしょ?」
「そ、そんなこと言っ」
「言った」
 全部言う前にスパンと切ってみせたら、ナツは顔を真っ赤にして口をつぐんだ。

 ──可愛いなぁ……。

 僕は心の中で“ふにふに”と笑って、下唇を噛んでるナツの顔を見上げた。
「ね、してみせてよ」
「え!? な、何を?」
「ナツが自分でするところ」
「駄目」
「どうして?」
「どうしても?」
「どうしても」
「僕、大好きなナツの、自分でしてる可愛いとこ、見たいな」
「そ、そんな言い方、ズルイだろ?」
 いつもは凛々しくてカッコよくて毅然としたお嬢様っぽいナツの顔が、情けなく
“へにゃっ”と歪んで、泣きそうになった。
 可愛いけど、許してあげない。
 だって、許してあげないほうが、もっと可愛くなるから。

 ──僕、どこか歪んでるのかな?

 僕はそう思いながら、気づいたら頭に浮かんだことをそのまま口に出してた。
「ね。ナツってショタコンなの?」
「違うよ。なにそれ?」
 ナツのすべすべの肌をなでなでと撫でながら僕が言うと、ナツは“ぷるっ”と身
を震わせながら“ぎょっ”としたように目を剥いた。
 ナツは「ショタコン(少年偏愛)」という言葉そのものが、よくわからないみた
いだった。
 その間も僕は、ナツのお尻や背中、太腿やお腹を、ゆっくりと手の平で形を確か
めるようにして撫でていった。
 おっぱいや股間を撫でようとすると「だめ」と言うけど、それ以外は好きに撫で
させてくれるから断固拒否ってわけじゃないみたいだった。
 ものすごく起伏に富んだ体だった。
 ウエストは“きゅっ”で、お尻は“ぼんっ”だ。
 撫でてるだけで楽しい体って、それだけですごいと思う。
「ん……………んん…………ん……ん……んっ……」
 背中を撫でると“ひくんひくん”って白い肌が震えた。
 敏感になってるなぁと思いながら目の前で“ふるんふるん”と揺れてる乳首を
“ぱくん”と乳輪ごと“たべちゃう”と、ナツは「あっ!」と小さく声を上げて
“きゅん”と可愛く肩をすくめた。
「あ……また……ん……んっ……ふあぁ……くる……きちゃう……」
「ぷふっ……ナツって、やっぱりおっぱい弱いよね」
「だ、だって……」
 “れろんれろん”と口の中で乳首を嘗め回し、そうして同時に背中とか脇腹とか
腰とかを、たっぷりなでなでして楽しんだ。
 ナツの肌はしっとりしてもちもちして、それでいてすべすべだったから、いつま
でも触っていたいって思った。
「ふあっ……んっんっ……んっんっんっ……ふあぅんっ……」
 普段のナツからは想像出来ないくらい可愛い声だった。
「ね、見せて?」


「うぅ〜〜……」
 “きゅんきゅんきゅん”とコリコリに立ち上がった乳首を摘んで引っ張ったりし
ながら言うと、ナツは恨めしげに僕を見下ろしてから、しばらくためらうように目
を瞑り、そのまま“ころん”とベッドに仰向けに転がった。
 “たゆん”“ゆらん”“たぷん”と大きなミサイルおっぱいが揺れ動き、僕の唾
液でてらてらに濡れた乳首が天井の照明を反射してキラキラきらめいた。
「セイ……ちょっとヒドイぞ? ほんとにヒドイぞ? 後で覚えてろよ?」
 汗がうっすらと光る額に苦悩を滲ませながら、ナツが僕を懸命に睨んできていた。
「うん。わかった」
「ほ、ほんとうだぞ? ほんとうなんだからな?」
 ここに来た初日にいきなり蹴られた僕としては、今日のこのナツの姿を知らなかっ
たら、きっと「怖い」って思ったかもしれなかったけど、もう説得力が、あんまり
ない。瞳は怯えた子犬みたいに落ち着きが無いし、何よりおっぱいの先っちょが
“きゅんきゅん”で、あそこが“とろとろ”の“てろてろ”で大洪水なのだ。
 僕が言うのもなんだけど、飼ってた子犬が留守にしてた主人に「僕は怒ってるん
だぞ」と拗ねながらも尻尾を振りたくってるみたいなイメージだった。

 可愛くて可愛くてたまんなかった。

 もっともっといぢめて、もっともっと可愛いナツが見たいと思った。

『僕のちんちんが、まだちゃんと勃起出来たら良かったのに』
 ふとそう思いながら、もし僕がまだちゃんとした男だったら、ナツはきっと僕の
好きにはさせなかったかもしれない、とも思っていた。膣内に射精したり出来ない
“半分少女”だから、だからナツは僕を“受け入れてくれた”んだろう。
 そう、思った。
 そう思ったら……ちょっとだけ哀しかった。
「んっ……んぅ〜〜……んっんっんっんっ……ひんぅ……んっんっ……」
 立てた膝の間の黒い茂みの中に右手の指をそろそろと伸ばし、そこに隠れた亀裂
をあらわにするようにして毛を掻き分けたナツは、そのまま、襞に隠れたままのク
リトリスを襞の上からそろそろと撫でた。
 “くち……くち……くち……”と、リズミカルで粘液質な水音と、ナツの可愛ら
しいひそやかな鼻息だけが空気を震わせる中、僕は目の前で初めて見る『オンナノ
コオナニー』に食い入るようにして見入っていた。
「あ、んまり……んっ……み、みる、なぁ……」
 ナツは右手であそこを愛撫しながら、左手で自分の手にも余る特大なおっぱいを
“もにゅもにゅ”と揉みしだいていた。
「へぇ……いつもこうしてるんだ?」
「うぅ……」
 僕はわざと“じろじろ”無遠慮に眺め、ナツにもはっきりとわかるように、特大
おっぱいとかジャングルなあそことかに視線を向けた。
 ナツのあそこの毛は、“とろとろ”にとろけたあそこから滴った愛液でべったり
としていて、整髪剤で撫でつけたみたいに“ぺと〜”とすっかり寝てしまっていた。
「ナツって、愛液多いの?」
「あ、愛液……って……ばか……」
「じゃあ……蜜とか、汁とか? ナツ汁(なつぢる)?」
「ヘ、ヘンな言い方するなぁっ!! うぅ〜〜……」

 ──泣いちゃった。

 さすがの僕もちょっと慌てて、ナツのちょっと汗ばんだすべすべのほっぺたに
“ちゅっちゅっちゅっ”と何度もキスした。
「じゃあ、ナツジュースで」
「セ、セイは、本当にひっ、ヒドイ奴だなっ……」
 しゃくりあげながらも、おっぱいを揉んだり乳首を摘んでくりくりしたりしてる
左手も、揃えてクリトリスを擦ってる右手の中指と人差し指も、ちっともその動き
を止めようとしていなかったけど。
「じゃあ、ナツは本当にえっちな女の子だね」
「違う」
「えっちだよ」


「ちがうっ」
「えっちだってば」
「えっちって言うなぁ」
「えっちだもん。えっちで可愛くて綺麗で、めちゃくちゃ素敵な女の子だよ」
「う、嬉しくなんか、ないっ」
「そう?」
「そうだ」
「ナツはえっちじゃないの?」
「そうだ」
「可愛くないの?」
「そ、そうだ」
「綺麗じゃないの?」
「……そうだ」
「素敵じゃないの?」
「…………」
 ナツの顔が“くしゃっ”と崩れた。
 でも僕はやめなかった。
 ひどい?
 だってナツが可愛かったんだもの。
 仕方ないよね。
 可愛くて可愛くて、そして愛しかったんだもの。
 だから、仕方ないよね?
「ナツはえっちでもないし可愛くもないし綺麗じゃないし素敵でもないんだね?」
「……うぅ……」
「ナツはえっちに興味無い、ブスで醜い嫌な女の子なんだよね?」
「ううぅ〜〜〜……ううぅ〜〜〜……」
 泣き出してしまった「強い子」のはずのナツの、その立てた膝を外側に“ぱくん”
と開いて両脚をゆるい菱形に広げた。
 やめたくてもやめられなくなってしまったらしいあそこへの愛撫を続けているナ
ツの指に顔を寄せて、僕はたっぷりと垂れている“ナツジュース”を“ぺちゃぺちゃ”
と音を立てて嘗めた。
「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」
「おいしい。ナツジュース」
 ナツの手を取ってナツジュースでぬれぬれの指をねぶり、とんがったクリトリス
を啄ばみ、舌先で押し潰し、膣の入り口を指で“ぱくっ”と広げて舌を挿し込み、
ねじ込んだ。
「ひぃんっ!!!」
 あんなこと言ったけど。
 あんなのはぜんぶうそ。
 “ぎゅ”と右手で自分を抱いて、左手を口元でグーにしてるナツは、もちろんやっ
ぱりとってもえっちで可愛くて綺麗で、めちゃくちゃ素敵な女の子だった。


「どうしよう……」
 シーツの上でとろとろとまどろんでいた僕は、今にも泣き出してしまいそうな、
小さな小さなナツの声に目を開けた。
 憂い顔のナツは、グラマラスな素裸をシーツで包み、ベッドのヘッドセットに身
をもたせ掛けて、まるで前時代の古いフランス映画のヒロインみたいに見えた。
 綺麗で可愛らしく、そしてえっちだ。
「どうしたの?」
 とろとろとした眠りのふちで、さっきたっぷりと味わったナツのおっぱいとかあ
そことかいろんなところの色とか味とか匂いとかを思い出しながら、幸福感に満た
された僕はぼんやりと言った。
「起きたの?」
「うん」
「……寝てて」
「うん?」
「見られたくない」
「何を?」
「アタシの、弱いところ」


「どうして?」
「弱いのは、だめ」
「好きだよ?」
「……っ……」
 “ひくんっ”とナツの肩が震えた。
 僕はナツの左手を捕まえて引き寄せ、その手の甲にキスし、少し汗ばんだその手
の平を“ぺろっ”と舐めた。
「あのね……僕はナツが強くても弱くても好き。大好き。もしナツが、自分が弱い
のが嫌いだとしても僕は弱いナツも好きだよ? もし誰かに弱いところを見られる
のが嫌なら僕の前だけにすればいいよ。いつも強いばっかりだと疲れちゃうし、ナ
ツが弱いから嫌って言ってるところは僕は可愛いって思うから、むしろ僕の前でだ
け弱いナツでいて欲しいな、なんて思ってる。……僕の言ってること、わかる?」
「……わかる」
「良かった」
「嫌いにならない?」
「ならないよ。もうっ、何聞いてたの?」
「だ、だって……」
 これがあの“ナツ”だろうか?
 その時の僕は本気でそう思った。
 だって、シーツに包まって泣きそうな顔で僕の目を覗き込んでくるナツは、まる
で遊園地で迷子になったちっちゃい女の子みたいだったから。

         §         §         §

 ナツの部屋で朝を迎えるわけにはいかないから、僕はみんなが寝静まった頃に自
分の部屋に戻った。別にみんなに秘密にすることはないんだけど、なんだかナツは
ものすごく恥ずかしいみたいだった。それは以前聞いた、ミツの告白を断ったこと
も関係するのかもしれなかった。
 ナツと別れて一人部屋に戻り、パジャマに着替えてベッドに入ると、その頃になっ
てようやく現実がじわじわと胸を締め付けた。これから僕は正真正銘の女の子にな
り、ヴィジターに体を提供して、新しく出来た子宮にその幼生体……琥珀色の水ダ
コを宿すのだ。それが不安で怖くてどうしようもなくて……眠りに入るまでのわず
かな時間、僕はナツの事と体に残る彼女の香りの事、その両方の事ばかりを、ずっ
と思い続けていた。

 ちなみに、僕とナツが“そういう関係”になった事は、すぐにみんなに知られて
しまった。というか、知らずにいられるなんて最初から僕もナツも思ってはいなかっ
たけど、ちょっと思ってたより早かったって感じかな?
 それくらい、あの時のナツの声が大きかったってこと……なんだろうな。
 つまりは他の部屋にあのことが全部、なにもかも、すっかり筒抜けだったってこ
と。朝食の時、ナツはともかく、ニマニマとなんだか面白いことを言いたくて我慢
してるようなユウの前で、僕はそう思った。そして、この時ばかりはさすがの僕も、
候補生にプライバシーって、ホントに無いんだなぁ……って、改めて思ったっけ。
 ナツはと言えば、僕が朝食を摂るために食堂に入った時には、ニマニマと笑みを
浮かべたユウを眉間に皺を寄せて今にも噛み付きそうに睨んでいて……
「よう! セイ!」
 という、わざと大きく僕を呼んだユウの声に、水をかけられた猫のように背筋を
“びくんっ”と震わせていた。
 その瞬間、芸術品のような艶っぽい長い黒髪がふわりと翻り、びっくりしたよう
に見開いた目には黒曜石みたいな瞳がきらめいていた。
 伸びた背筋の線、腰からお尻、太股までの豊かで色っぽい線、きゅと絞ったよう
な足首の線。
 そのシルエットは、どこもかしこも綺麗だった。

 ──あの人は僕のだ。

 声に出さずに舌の上でそう転がしてみると、びっくりするくらい胸が高鳴った。
 と同時に、昨夜たっぷりと味わったナツのおっぱいとかあそことかいろんなとこ
ろの色とか味とか匂いとかをびっくりするくらいハッキリと思い出して、顔が“ぼ
んっ”と赤くなるのを自覚した。


 それが、顔に出ていたのだろうか。
 ナツはそんな僕を見やると、もう一度ハッと目を見開いて瞬間的に首まで鮮やか
なピンクに染め、口をひんまげ一秒二秒。
 そのまま僕がいる食堂の入り口に向けてカツカツと歩いてくると、擦れ違いざま
に小さく小声で「ばか」と告げて、そのまま颯爽と食堂から歩き去ってしまった。
 赤いミニのスカートを振り振り歩き去るその姿は毅然としていながら可愛らしく、
そして凛々しく、昨日の夜、その白いブラウスの下でゆさゆさと揺れるおっぱいや、
スカートに隠されたお尻をたっぷり自分の自由に出来た事を、改めて奇跡だと感じ
ていた。
 僕はナツの『恋人』になったのだ。
 それを実感して、どうしようもなく幸せになりながら。

 その夜、僕は初等部以来……実に九年ぶりの……オネショをした。
 自覚があったのだ。
 夢の中にいながら、ベッドの中で粗相してしまったことを認識してしまう、あの
感覚。
 そしてそれから2日間、僕は流行性感冒(インフルエンザ)のような急激な高熱
を発し、2日後に目覚めた時には、股間からあの慣れ親しんだちんちんがすっかり
姿を消していた。
 僕はとうとう、本当の女へと急速に変化し始めたのだ。
 もう、涙は出なかった。


 ただみんなと「同じ」になれた事が……ナツと同じになれた事が、嬉しかった。


■■【9】■■
 忘れもしない10月27日に「リフレクター」の真実を知って、ナツと愛し合い、
高熱を出した二日後には生まれてから慣れ親しんだ「男の象徴」をすっかり失くし
た僕は、急速に「早く女の体にならなくちゃいけない」と思うようになっていった。
 女の体になって、少しでも早くナツに……ナツやユウやアヤやミツに追い付きた
かったんだ。
 だから、鈍痛と共に下腹部の腹腔内に、“女の子の証拠”で、“リフレクターの
象徴”で、今では“アースの宝物”で、“アースノイドの切り札”でもある『子宮』
が形成され、すぐに股間におしっこの穴でもうんちの穴でもない、“女の子だけの
穴”が開いて膣道が“開通”し、11月の16日に行われた健康診断で肉体的に完
全な女の子になったことを正式に告知された時は、なんだかむちゃくちゃ嬉しかった。
 ……おっぱいは、ナツのようにはちっとも膨らまなかったけど。
 その頃には、僕が『栄華』を訪れてからたった一ヶ月だというのに、髪は背中の
中ぐらいまでぐんぐん伸びて、女性化によって体質まで変わったのか、キューティ
クルがキラキラ輝くとっても綺麗な黒髪になっていた。骨格も、急にじゃなく少し
づつ変わっていったのだけど……ただ、成長痛にも似た、全身がギシギシとするあ
の痛みをもう一度味わうのは、ちょっとかんべんして欲しかったなぁ……って、そ
う思った。

 あと、身長はそんなに変わらなかったけど、肩幅とか胸板の厚み、腰骨の角度と
か高さとかが確実に変わったから、それまで着ていた服が全部合わなくなって、と
うとう下着から何から、全て新しく揃える事になった。
 制服も、襟や袖口、胸のポケットに可愛いレースがあしらわれた肘丈スリーブの
白いブラウスや、黒ネクタイ、それにプリーツが入った膝上丈の赤いミニスカート
と黒のニーソックス、金の留め金の黒の革ローファーは変わらなかったけど、前の
制服が男の僕に合わせたものだったから、今度はちゃんと女の子の体型に変化した
僕を採寸したものが予備も含めて2着、用意された。
 一番緊張したのは、健康診断を終えた日に部屋に戻った時、ベッドの上にきちん
と畳まれて届けられていた……可愛いフリル付きの真っ白なパンツに脚を通した時。
 部屋に備え付けられている姿見の前で裸になり、肌のやたらにすべすべした“つ
るん”で“ぺたん”な「女の子の体」を眺めて、おもむろにちっちゃく丸まってた
フリルパンツを両手に持って“びよーん”と伸ばした僕は、はたから見るときっと、
たぶん、思い切り怪しかったと思う。
 客観的に見たら、とってもヘンタイっぽい。


 しかもパンツの布地をナデナデとか、してたし。
 でもホント、気持ちよかったんだ。それはもう、トランクスともブリーフとも違
う手触り。ナツの下着みたいな、さらっとしたすごく気持ちの良い手触り。ほんの
少し前まで、ちらっと見るだけでドキドキしてたそれを広げて、そろそろと両脚を
通すと、なんだかわからないけど「ああ、女の子になったんだなぁ」なんて思えて、
口元が緩むのを感じていた。結局、どう言葉で飾ってみても「自分の意思に関係な
く強制的に女の子にされた」という事実は変わらないのに、なってみるとこんなに
も嬉しいって思えるのを、自分でも不思議に思わなくはなかった。
 そりゃあ毎日、特別プログラムが組まれたカリキュラム(女の子の体になってか
らは、女の子の体についてのレクチャーが加わったから、男だった時よりちょっぴ
り勉強することが増えてしまったのだ)をこなさないといけないし、外界とは完全
に隔離されてて『蒼の塔』を出てもメモットで常に位置や健康状態をモニター(監
視)されてるし、外で使ってた名前は使うことを禁じられてるし、リフレクターに
なってその責務を全うするまで、友人や家族とは逢う事が出来ないけど。
 それでも、なんだか自分で自分が信じられなくなるくらい、「女の子であること」
が嬉しくて仕方なかった。
 パンツを引き上げて、男だった時よりちょっと脂肪で大きくなったお尻を“ぴっ
ちり”と包むと、なんとなく“ぶるっ”と震えて(武者震い?)、“ぴゅ”とちょっ
とだけ……おしっこが漏れた。
 真新しいピカピカのフリルパンツが、いきなりおしっこで汚れてしまったことに
少し哀しくなったけど、仕方ないと言えば仕方ないと思う。男の子と違って、ちん
ちんが無いことにまだそんなに慣れていないから、意識してあそこを緊張させてい
ないとすぐに緩んでしまうから。
 でも決して、いっつもお漏らししてるとか、そんなんじゃないんだ。

 ほんとうに。

         §         §         §

 完全な女の子の体になってからは、毎日が新鮮で驚くことばかりだった。
 背中の中くらいまでの黒髪をさらさら揺らして歩くのは、なんだかちょっとくす
ぐったかったし、顔を傾けると頬とかに触れるのも新鮮だったし、御飯を食べる時、
スープを飲んだりうどんとかの麺類を食べる時には、縛るかもう片方の手で押さえ
ておかないと大変な事になっちゃうというのも新鮮だった。運動カリキュラムの時
にはポニーテールにして走るけど、毛先が首筋を「ぱっふ、ぱっふ」と叩くのは、
今でもちょっと慣れない。つくづく、見てるのと自分がそうなるのとでは、実感と
いう部分で全然違うんだなぁ……なんて思った。
 あと、股間にちんちんが無いのも心もとなかったし、手首とか足首がほっそりと
してるのも、ちょっと運動したら折れちゃいそうで少し怖かった。でも新しい制服
に袖を通して教室に行ったとき、ナツが僕の頭に手を置いて
「ようこそ」
 なんて言いながらなでなでしてくれた時、幸せで幸せで、なんだかもう、どうに
かなっちゃいそうだった。
 『濡れる』って感覚を知ったのも、その時が初めてだったかもしれない。体が
“かああぁっ”となって、腰の辺りが熱く、重たく感じて、体の中心、体のずっと
奥の方から何かが“とろっ”と垂れ落ちてくるような感覚。“くちゅっ”として
“ぬるん”として“じんわり”した。
 たぶん、その時にはもうバレてたんだと思う。
 ナツはものすごく悪戯っぽい目で僕を見ると、
「あとでね」
 と言いながら、敏感になってる僕の腰の辺りを指先で軽くタッチしてきたから。

 ──そしてその日僕達は、空がうっすらと明るくなるまでたっぷりと愛し合った
んだ。

 あの時の感動! ……というか、衝撃! ……というか感激! ああもう、どう
伝えたらいいのかわからない、胸がいっぱいになったあの感じ!
 手が触れるだけで、抱き合うだけで、キスするだけで、男だった時より、女の子
になりかけてた時より、もっともっとずっとずっとビリビリして、ゾクゾクして、
ぽかぽかした!


 すごかった!!
 あたたかくてやわらかくてプニプニしてるナツのツヤツヤの唇でついばむみたい
にキスされたら、それだけで涙が出そうになったんだ。大袈裟でも冗談でもなく
『電気が走る』って、ああいうのを言うんだって、初めて知った。それからナツの
指が肌の上を滑るたびに、体が“びくびくっ”てなって“じゅわぁん”ってなって、
僕はただナツにしがみついているしか出来なかった(女の子の肌って、むちゃくちゃ
敏感なんだなって、その時に改めて知ったよ!)。
 あの夜の仕返し?
 あとでそう思ったりもした。
 でも、ナツの唇も指も、僕を気持ち良くしてあげたいっていう気持ちが溢れてて、
その時の僕はそんなこと考える余裕すら無かったんだ。
 真っ白なシーツの海で溺れながら、「やだ」とか「ゆるして」とか「やめて」と
かいろいろと口にしたような気もするけど、ナツはぜったいに許してくれたりはし
なかった。
 「しぬぅ」って、ホントに思った。
 エクスタシー? ……エレクチオンって言うのかな? 男だったら射精した時に
感じる、あの頭が真っ白になる感じ(オルガスムスとも言うって、後でナツに聞い
た)。女の子は、突然強烈な快感が来るって感じじゃないけど、ゆっくり長く、じ
わじわと高まっていって、それから一度強烈なのが来たら、後はそれがいつまでも
続く感じだった。
 男の快感がダイナマイト「どかんっ!」だとしたら、女の快感は花火かな?
 「ひゅ〜〜〜〜……」ってきて、「どんっ!」「どどんっ!」「どどどどどどんっ
!!」って感じ。
 ナツにそう言ったら、
「セイは面白いこと考えるね」
 って、笑った。
「ナツは……どうなの?」
「何が?」
 全身に汗をかいてベッドにぐったりした僕の頬に“ちゅっ”とキスしながら、ナ
ツは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あの時って、どんな風に感じるの?」
「あの時?」
「わかるでしょ?」
「そうだなぁ……うん、暗闇で後から髪を引かれる感じ」
「怖いねソレ」
「怖いよ。自分がどうにかなっちゃいそうになる。どこか暗くて深い所に際限無く
落ちていくような、もう二度と戻れない場所に連れて行かれちゃうような、どうし
ようもない怖さかな。でも、それだけじゃないんだ。すぐにふわっとしてふわふわ
して、例えてみると雲の上に寝転がってるような、そんな感じがすぐにくる。それ
がものすごく気持ち良くて、幸せで、こんな感じをいつも女の子は感じていたんだ
なって思うと、最初にそんな風になった時にはちょっと嫉妬しちゃったよ」
 ころん、と僕の隣に横になり、一緒になって天井を見つめた。
「何に?」
 寝転がった拍子にナツの特大なおっぱいが“ばゆん”と揺れて、僕はナツにしが
みつくようにしてそのやわらかくて良い匂いのするおっぱいに頬を寄せた。
「女の子達に」
「ええっ?」
「だってさ、男ってのは何をどうしたって、最後は射精で終わるだろ?」
「う、うん……」
「というより、最後に射精するために気持ち良くなっていくっていうか……乱暴な
言い方しちゃうと、射精がゴールでその先が無い。でも女は違う。オルガスムスが
来てもそれが終わりじゃない。その先があるんだ」
「先?」
「セイも感じたんだろ? いつまでも続く長い長い気持ち良さの先。どうしようも
ない幸福感。幸せ。ああ、生きてるっていいな、そんな気持ち。でもそれはきっと
一人だったら感じなかったものだと思う。その……セイがいたから、アタシにもそ
れが感じられたんだって、そう、思うんだ」
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