「母さん、なんだかおなかが痛いんだけど・・・」
その一言が全ての始まりだった。

14歳、中学3年生の春。
僕、下山和宏は東京の有名中高一貫私立男子校に通う
160センチ、57キロ、見た目も特にさえない、かといって
ブサイクでもないと思う・・・そんな
成績だけは普通の男子よりちょっといい普通の中学生だった。

とはいえ、男子校なんかに来てしまって、
2年ちょっとの間、ほとんど女の子と触れる機会は無かった。
二つ下の妹は、家に友達を連れてきたりもするが
相手は小学生だったし、特に学校の外で塾などにも行っていなかったので

学校が終わって、部活が終わると、家に帰る。
次の日はまた早く起きて学校に行く。その繰り返しの日々だった。

ちょっと、気になっていた下腹部の鈍い感覚・・・
「痛い」と表現するのはあまり適切ではないというのが本音だった。
ずる休みをしようとしていると思われたくなかった。
だから、今まで黙っていた。

「うーん、ちょっと・・・分かりませんね・・・」
医者に仮病のように言われた気がした。
写真をとってもなお「分からない」といわれたのだ。

大きな病院への紹介状をもらわされた僕は、二日続けて
学校も、部活も休むことになった。

「この時期に、休むなんて・・・」
中学生としては最後の大会が直近に近づいているというのに、
正直、痛みというよりただ鈍いだけの感覚で休むことには抵抗があったが
気になって仕方がないほど、「鈍さ」が増しているのも事実だった。

「君・・・下山君、だったね・・・」
大きな病院の先生は、診察室で、深刻そうな顔をしていった。



「お母さんか、家族の方はいらっしゃっていますか?」
どき、とした。
「それって・・・」

この若さで、不治の病?だが、運命はそんなに単純ではなかった。
ちょっと、服を脱いでもらえますか?

「は、はい・・・」
先生は、立ち上がって僕の上半身をくまなく触った。
聴診器が登場するものとばかり思っていた僕は、べたべたと触られて
ちょっと気持ちが悪かった。

少し伸びた髪の毛を首筋でかきあげて、「うなじ」を確認した後、
うなずいて、僕の前に座って、話を続けた。

「下山君・・・君の体は、女の子の体へと変化しようとしているみたいだ。」
「はっ?」

どんな言葉にも驚かないようにと身構えていた僕は、ちょっと拍子抜けした。
「・・・言いにくいことだけども・・・君の感じた、下腹部の痛みね・・・
それは・・・」
先生は僕の下腹部を写したCTやレントゲンを指差しながら説明した。

「急速に・・・子宮って言うんだけど・・・女の人が子供を生む器官が発達して・・・」
僕はあっけにとられたまま、このSFのような話を聞いていた。
「同時に女性ホルモンがものすごい勢いで作られている。君の肌の質がすこしずつ
変わっていることに、気づかなかった?」
いわれてみれば・・・

「筋トレしても、なかなか筋肉がつかなくて・・・それで・・・」
「うん・・・それはもう今までのようにはきついだろうね。君の体は
もう、女性への変化を始めている。」

「なんですか、それは・・・なおせるんですか?」
先生は、少し考え込んでからこう答えた。


「治す・・・治すか・・・何をもって治すというかだね。」

先生の説明では、本来男の体である僕の中に、女性ホルモンが間違って異常なほどはたらくことで、結果的に死ぬことになるという。
それを避けるためには、選択肢は二つ。

「女性化を止めるような手を打つか、それとも、進んで女の子へと変化するか、
考えられるのは大きく分けてこの二つです。」

それじゃ、選択肢じゃないじゃん。
選ぶのは、女性化を止めるような手立てに決まっている。

「ところが・・・」
せんせいは、僕の返答を遮って話を続けた。
「女性化を止めようとしても、止めきれるかどうかは分かりません。
おそらく成功率は4割・・・いや、20パーセントがいいところでしょう。それでも、
普通に男性としての機能を果たせる体に戻れるかどうかは分かりません。
正直、健康な成人男子へと成長できる可能性は、ゼロに近い・・・」
「な・・・それって・・・」
「一方、女性化をこっちで、医療の手でちょっと手助けしてあげれば、
この状態なら、ほぼ完全に女性として生まれ変わることができるでしょう。
外見も、そして、おそらく・・・この症例は極めて少ないのですが、
下手な手を打たなければ、子供すら生めるような完全な女性へと
スムースに変化することができます・・・」

「・・・」

「男子校に通ってらっしゃって、今まで男の子として生きてきたあなたには
つらい選択かもしれません・・・でも、はっきり言って、そういうことです。
男性としての人生にこだわって、死んでしまう可能性が高い方にかけるか
女性に変化することを受け入れるか・・・
最終的にはあなたが、ご両親とよく話し合って決めてください・・・」

「は・・・い・・・」

とはいえ、先生によれば、選択のリミットは「3日後」だという。


僕のからだの女性化のスピードは速くて、想像がつかない。
もし、何の手を打つことなく、子宮が完全に構成されて、
女性としての生殖機能が体の中で完全に出来上がってしまったら、
僕の体の中で初潮が起きて・・・体のなかに行き場を失った血がたまり、
そうなると、生命の危機は避けられない。
3日、3日の間に決めてくれ、ということだった。

男であることにこだわるなら、男性ホルモンの過剰投与で「毒をもって毒を制す」
上に、すでにできてしまった女性としての生殖機構を外科手術で摘出する。
しかし、そのあと、男性としての機能が生き残っているかどうかは分からないし、
とにかく、リスクが大きい。

女性化を受け入れるなら、むしろ女性ホルモンを投与して
女性化を促進する。初潮が起きる前に血を出す方法だけは確保しさえすれば、
数少ないこの症例では、「男性器は、きわめて自然に女性器へと変化する」
という。
そして、その他の体つきや、外面的な変化も、「自然に」進行するというのだ。


「原因は・・・原因はなんなんですか?」
ようやく口にできた言葉は・・・原因が分かれば、何とかなるのではという
わずかな希望をこめた質問だった。

「原因?それが、分かっていないんだ。ただ、ガンとか、ウィルスとか
そんな単純なものじゃないことは間違いない。あえて言えば・・・」
「あえて・・・いえば?」
先生は一瞬僕から目をそらして、深呼吸をしてから、僕に告げた。

「この症状を、病気、と私が言わないのは、いままで何人かの男の子が
この症状を経て、ある人は死に、ある人は意地で男としていき続け、
そして、最近はほとんどが女の子に変わっているが・・・
女の子として生まれ変わる決断さえすれば、まったく普通に生活できるからなんだ。
つまり・・・からだが女の子になりたがってるというしかない。
我々が、医者が、医療が助けてあげられると思うのは、
様々な障害を抱えた男性に留まることではなく、
普通の女性となって健康な体を再び得て、新しい人生を始めることだと、


思うんだ。」

「じゃあ・・・原因は・・・」
「人間は、不思議なんだ。畑の大根だって、同じところで同じように育てているのに、
二股になったり、曲がったりするだろう。君の体は・・・
女の子へ変化するように、育ってしまったんだ。きっかけは、まだ分かっていない・・・」

「分からないんですね・・・」
「そうです。残念ながら。」

要するに、先生は僕が女の子になることを薦めているのだった。
われを失ったまま、待合室で待つ僕に、父と母が飛んできて、声をかけた。

「和宏!」
「あっ・・・」
両親を目の前に、僕は突然涙が止まらなくなった。
はっきり言って、情けなく、そして申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
原因となるような出来事が次々と思い浮かぶ・・・
2週間前に食べた、賞味期限の切れたプリンのこと、3週間前に転んで頭を打ったこと・・・

父が先生に説明を受けている間、僕は母の胸で泣き続けた・・・
それも、そんな風にずっと泣き続けたことも、きっと、女の子へと
僕が変化しつつあるひとつの兆候だったのかもしれない。

かえって、ゆっくりと家族で話し合ったが、
選択肢はひとつしか無かった。

数字や資料は雄弁に語っていた。僕の進むべき道がひとつ、女の子としての人生だと。
釈然としないまま、納得しないまま、僕もとにかく
「女の子になるための」治療に同意したのだった。

だが、その決断は悪夢の始まりでもあった。
普通の男子中学生だった僕の、転落の始まり・・・
お医者さんの言うことは、単に体の健康のことであって
女の子に生まれ変わった僕がどんな人生を送るのかとは無関係なことだと
このときはまだ知らなかった。



「治療」はスムースに女の子に生まれ変わるためのもので、
その日から、女性ホルモンの投与など、「女らしい」体を
積極的に作り出すという、男としては屈辱的なものだった。

ただ、即効で効果が現れてくるというものでもない。
ゴールデンウィークをはさんで、6月の中旬までは、男として
学校に通っても問題ないほどの変化しか出ないという。

そして、予定では6月の下旬に・・・
僕は入院して、「集中治療」と「手術」をうける。
そして、女の子として生まれ変わるのが7月にはいったころだという・・・

その後は、男子校である中学校に通うことはもちろんできない。
今の友人たちとも、あと1ヵ月半でお別れだ・・・

だが、感傷に浸っている暇も無かった。

「これは、女の子として生まれ変わった後の、君の幸せを思ってなんだが・・・」
先生が言うには、当然のことながら、「女の子としてのあれこれ」
を学ぶ必要があるという。

ぎりぎりまで、今の学校に通うことを望んだ僕。
しかし、自分が女の子になることが次第に現実的になっていくにしたがって
男の子たちの中にいることが不思議に、そして苦痛になってくるのだった。

周りには、僕は変わらず男でしかないのに、次第に女の子のそれへと変化していく
僕の体と、心。
少しずつ膨らんでくる、胸。
お尻が少しずつ大きくなってくるのも分かる。
肌は柔らかく、白くなっていって、生えるようになってきたひげも生えなくなっていく。
産毛、としか呼べないようになっていく。

外から見れば、それほど気にならないかもしれない。
でも、自分では少しずつ変わる自分の体が、悔しくてたまらなくなっていった。
そして、男の子たちの中ですごすことがつらくなっていって



毎日、帰ってから泣くようになってしまった。
少しずつ変化していく、僕の心と体。

「和宏、やっぱり最近、調子悪そうだ。」
親友の豪がそんなことをしきりに言ってくる。

「あ、うん。ちょっとな。」
自分の声が、どんなにおさえても少しずつ高くなっているのが分かる。
もう、限界であることは分かっていた。

「豪、俺、しばらく学校これないかもしれないな・・・」
「おい、本当に大丈夫なのか?どこかわるいのか?」
「はは、冗談だよ。」

豪は、同じ小学校から中学受験で入ってきた、大親友だった。
でも、そんな豪にすら、本当のことを打ち明けられなかった。
僕は、一人ぼっちのような気がしていた。

そして、男として生きていくことが完全に限界であると感じた
その日を最後に僕は中学校に通うのをやめて
2日後には、最終的な「手術」のために入院した。

手術の朝、眠ることができずに、親友の豪に「本当のこと」を綴った手紙を残した。

「もし、生まれ変わった俺をかわいいと思ったら・・・」

その先を書くことができないまま、手術の時間がやってきた・・・

「明日の朝、起きたら、それからが君の新しい人生だよ。」

僕は2ヶ月間僕を苦しめたこの病気との闘いが、とにかく終わることのうれしさと
男としての自分が、少なくとも肉体的には完全に消えてしまうことの寂しさを
両方感じながら、オペ室のベッドの上で小さくうなずいた。

上に光るいくつものライトがまぶしい。そう感じた次の瞬間
全身麻酔が僕の記憶を突然中断させた。

そして、次の瞬間、僕は、完全な女の子へと生まれ変わっていた。
そして、その日から、「女の子」として生きるための教育がはじまるのだった。
「これ、着るの?」

母が用意してくれていた、女の子の服。
病院の中できるものだから、ただの女の子用のTシャツと、
女の子用のショートパンツだったけれど、
初めて着る・・・女の子の服は抵抗があった。

「なんだか・・・はずかしいな」
僕は、白いパンティに続いて、女の子用の短パンに脚を通すと、
体が女のこのものであることや、声が女の子のものであること以上に
自分が女の子になってしまったことを実感した。


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と、ここまでしかありません。

どうしたらいいか分からないので、この次の展開は
まだありません。
エロなしのまま投下するのは初めてです。
この先、どんな展開を想像しますか?と
読んでくれた人に聞いてみたい気もします。

次のスレができたら、また来ます。

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