「最近、だいぶ女の子っぽくなりましたね」
「え?」
それはネーナに刺繍を習っている時の何気ない一言だった。
一瞬、あまりに意外な言葉に驚いて反応が遅れてしまった。
「冗談だろ? 俺は男だぞ」
「嬉しそうに刺繍を習ってるのに?」
「うぐぐ……」
考えてみたら最近、女としての生活に慣れすぎていたのかもしれない。
これは由々しき事態だ、身体が男に戻れない以上は
精神が最後の砦と言えるだろう。
精神まで女になってしまったら、しまったら……なんだろう?
「私は別に気に病むことはないと思いますよ」
「なんで?」
「だって、女の子としての自分に不満がないから、
だんだんと女の子っぽくなるんでしょう?
だったらつまり、今が幸せってことじゃないですか」
それはそうかもしれない。
ジェイムズがいて、ネーナがいて、たまにおば様が笑いかけてくれて、
刺繍や裁縫を習ってみて、出来たのをジェイムズにプレゼントしたり……
「というかジェイムズ様に惚れてるでしょ?」
ネーナはたまに毒舌だけど基本的に優しいし、ジェイムズはほんわかしていて
よく旅に出るけどすぐ戻ってくるし、
おば様は神出鬼没だけどおおらかで……は?



「い……い……今なんつった?」
「ジェイムズ様のことが愛しくてたまらないのでは?」
「ば! 馬鹿を……言うな……よ……」
「ふうん、人間ってこんなに赤くなるものなのですね」
言われて顔を触ってみると、熱した鉄板もかくやと言わんばかりに熱くなっていた。
なんだこれは? いったい何が起こっている?
この数ヶ月、俺はジェイムズと一緒に暮らしてきた。
楽しい日々だった、友情を育んできたつもりだった。
それが、いつの間にか気づかぬうちに恋に?
「違う違う! ぜったいちがーう!」
「じゃあ想像してごらんなさい」
「何を?」
「ジェイムズ様に抱きしめられることをです」
「ジェイムズに……?」
「ほら顔がニヤけてる」
「嘘だー!!」
なんなんだ、いったいなんなんだ?
なんでこんなことになってるんだよ?
だって俺、元男だし。身分だって絶対違うし。
ジェイムズだって俺のこと男の友人と思って接してるはずだし。
もし告白なんてして気味悪がられたら……え?
なに考えてんだ俺は?
なんで告白なんてするんだよ?
分からない。
自分で自分が分からない。
自分の気持ちが分からない。



「なんだか分からなくなっちゃった。
一人で考えさせてくれ」
そう言って俺は部屋を後にした。
ネーナが何か言おうとしたような気がするけど、
結局なにを言おうとしたかは分からなかった。

木陰、屋敷で一番大きな楓の木ノ下は俺の一番落ち着く場所だった。
そこで俺は一人黙考していた。
俺が本当は何を考えているのか。
ジェイムズのことをどう思っているのか。
ジェイムズにどう思われたいのか。
「分かんないな、なんか頭の中がグチャグチャだ」
風が楓の葉を鳴らせて実に心地よい。
だけどなんだか気持ちは沈んでいる。
「元気なさそうね?」
「おば様、二日ぶりですね」
気づけば目の前におば様が立っていた。
相変わらずジェイムズの姉のようにしか見えない。
「どうしたの? なにか悩んでいるようだけど」
俺は話した。
洗いざらいを、自分でも整理のつかない気持ちを。
そうして全部話したら、なんだかスッキリした。
「そう、じゃあオリヴィエちゃんはジェイムズのことが好きなのね」
「う……うん」
「じゃあ簡単よ、気持ちを素直に伝えればいいの。
あの子だって間違いなくあなたに惚れてるわよ」
「本当に?」



「ここでお昼寝してるあなたを見て、優しく微笑んで眺めてるなんてことも
よくあったし、間違いないわね」
見られてたのか、というかどうしよう。
なんか凄く恥ずかしい。また顔が熱くなってくる。
「要は嫌われたくないんでしょう?」
「うん」
「だったら大丈夫、あの子はあなたを嫌いになったりはしないわ」
「そう……かな?」
「ええ……おっと、じゃあさよならね」
そう言っておば様は慌てて逃げていってしまった。
あの人はいつも神出鬼没だ。
出てくる時も去っていく時も唐突で、ま、好きだけどね。
というか、あの人が慌てて逃げるのって……
「今、母上がここにいなかったか?」
やっぱり……
「い……いたけど、今どっか行ったとこ」
やっぱりジェイムズが来た。
どうしよう、まともに顔が見れない。
「へえ、まあいいか。今日はオリヴィエに用があったから」
「な……なんだよ」
「私はオリヴィエのほうが私に話があると聞いて来たんだが」
「誰から聞いた?」
「ネーナ」
ネーナのアホぉぉぉぉぉぉ!!
あいつ絶対遊んでやがる。
この状況をどうしろって言うんだよ。
あとで絶対仕返ししてやるぅ。



「オリヴィエ?」
「へ? な……なに?」
「顔が赤いぞ、熱でもあるんじゃないか?」
そう言ってジェイムズは俺の額に手を……
どうしよう、ジェイムズに触られてる。
大きな手、ひんやりしてる、優しくされてる……
ああ、どうしよう。幸せだ。
「あ……あのな、ジェイムズ」
「どうした?」
「俺、ジェイムズのことが好きだ」
「私もオリヴィエのことが好きだよ」
「違う、一人の女としてジェイムズのことが好きなんだ」
言ってしまった。
嫌がられたらどうしよう。
気味悪がられたらどうしよう。
そんな思いが頭を駆け巡る。
今度は怖くてジェイムズの顔が見れない。
どんな……顔をしてるのだろうか?
そっとジェイムズの手が俺の頭を撫でる。
ふと反射的に頭をあげると、そこには優しい顔で俺を見つめるジェイムズの顔。
「ずっと言おう言おうと思っていた。
君は自分のことを男だと言っていたから、
もし言ったら怒り出すんじゃないかって。
だけど言わせてもらうよ。
君が好きだ、私の物にしてしまいたい」
そう言って、ジェイムズは俺のことをギュッと抱きしめた。



その晩、俺はジェイムズの部屋にいた。
「あのさ、さすがに決断早すぎないか?」
「いいじゃないか、早く俺のものにしてしまいたいんだ」
「いいけど、こんなツルペタな俺でも興奮する?」
「愛してるからな」
「ロリコン」
「好きな人がたまたまロリータだっただけだ」
「あはは」
ジェイムズの手でゆっくりと服を脱がされていく。
一枚、また一枚、少しずつ肌を露わにされ
最後に下着を脱がされた。
「綺麗だ」
熱い眼差しでそう言われて、俺の頭の中は湯だってしまいそうだった。
俺は急に恥ずかしくなって、ジェイムズが服を着てるのが悔しくなった。
「脱いで、見せて」
「あ……ああ」
ジェイムズが脱ぐと、そこには鍛え抜かれた逞しい肉体があった。
そうか、女の子からしたらこんなに魅力的なのか。
なんてことを考えながら、そっと視線を下に移す。
雄々しく猛り狂うジェイムズのそれ。
俺の中に入りたがっているのかと思うと、
何かお腹の奥がキュンと疼くのを感じた。
「オリヴィエ……」
「ん……ふう……」
優しいキス、軽く唇をついばむような甘いキス。



俺はそれだけじゃ足りなくなって、舌を差し出した。
するとジェイムズもゆるゆると舌を差し出して絡めて来た。
ああ、ジェイムズの唾液が美味しいよ。
ずっとこうしていたいかもしれない。
だけど、なんだろう。
下腹にあたるそれが熱い。
そっと唇を離すと、唾液の橋がかかり、プツリと途切れた。
「オリヴィエ?」
「ジェイムズの、苦しそう。口でしてもいいか?」
返事は待たなかった。俺のほうがたまらなくなっていたから。
そっと手で握ってみる。
大きくて長くて、以前の自分のそれより遥かに立派だった。
(これ本当に入るんだろうか?)
そんなことを思いながら、パクリとくわえてみる。
それは頬張るという言い方が適切な大きさだった。
口内がジェイムズのでいっぱいで、隙間がほとんどない。
俺はかろうじて舌を動かしてしゃぶることしかできなかった。
裏スジやカリの部分を舐めあげると
ジェイムズが小さく呻いた。
(あ、気持ちいいんだ)
そう思った途端、しょっぱいものが口内に溢れた。
それは先走り汁だった。
快感を覚えたことの証明が現れ、俺は嬉しくなってしまった。



ほとんど亀頭しかくわえられなかったけど俺は一生懸命しゃぶった。
すると……
「く……出る……」
不意にジェイムズのがグッと太くなったように感じた。
脈動、溢れる白濁。あっという間に俺の口内は
ジェイムズのでいっぱいになった。
仕方がなしに俺は次々に飲み干していった。
美味しい、そう思った。
愛する人の精液がこんなに美味しいとは思わなかった。
「ケプッ」
「大丈夫か? すまない、慣れてないから」
「いいんだ、それに嬉しいよ。
俺で気持ちよくなってくれて」
「今度は私が気持ちよくしてやる」
「え?」
不意にベッドに組み敷かれた。
「ひゃう!」
俺の大事なところにジェイムズの指が触れる。
背筋をゾクゾクとした感覚が走った。
「やっあっあっ…………」
ジェイムズが擦りあげるたびに、俺はビクンビクンと身体を震わせるしかなかった。
「んあぁぁ……ジェイムズ……」
恥ずかしい水音が響く。
俺はもうわけがわからなくて、ただただジェイムズの
指がおもむくままに身体を震わせるしかなかった。
「はぁ……ジェイムズ、もう……来て」



俺はもうたまらなかった。
これ以上されたら切なくて切なくて、
なんだか寂しい気持ちすらして来たところだった。
「いいのか?」
「うん、ジェイムズのこと感じてたいよ……」
ジェイムズは決心したような顔で俺の上に覆いかぶさって来た。
「行くよ」
「来て……あぁ……」
ジェイムズのペニスの先端が触れる。
それだけで、俺はたまらなくなった。
だけどそれだけじゃ終わらなかった。
「く……痛……」
「大丈夫か?」
「うん、だから最後までして?」
ジェイムズの喉仏が動く。
これは……唾を飲み込んでる?
そう感じた瞬間、ジェイムズの腰が沈んだ。
「あ……ああ……ぁぁ」
「オリヴィエ……」
狭い俺の中をジェイムズのがゆっくりと進んでいく。
穿つように掘り進むようにズブズブと。
あまりの痛みに掴んだジェイムズの腕に引っ掻き傷をつけてしまう。
「く……あぁ……あ!」
届いた、届いてしまった。
一番奥の大事なところに。
そこは赤ちゃんの部屋、神聖な場所だった。
それを意識した途端、そこがカァッと熱くなったような気がした。
「動くよ」
ジェイムズの腰が再び動き始めた。



あれから何分、いや何十分経っただろうか。
子宮を小突かれ、引き抜かれ、また小突かれ、
今や痛みは痺れの中に姿を消し、身体には力が入らない。
ただジェイムズのピストンに翻弄されてばかりいる。
まるで玩具にされたようだった。
ジェイムズに抱きかかえられ、まるでオナホールのように
上下に揺さぶられるのだ。
「あ゙ー……あ゙ー……」
もう何度絶頂に近づいたのか分からない、
でもそのたびにジェイムズは動きを止め、
俺が絶頂に達するのを邪魔するのだ。
「も……イって……中にらして……」
「いいのか? 妊娠したら……」
「妊娠? 赤ちゃんほしい……」
もうジェイムズが言ってるのもよく分からない。
ただ、ジェイムズの匂いだけが頭の中を支配した。
突如、ジェイムズが腰を動かし始めた。
「ひゃふ!? イく! イっひゃうぅぅぅぅ!!」
今度のジェイムズは止まらなかった。
絶頂に達してジェイムズに抱きつく俺。
足が勝手にジェイムズの腰をホールドしてしまう。
「出すよ、私の子を生んでくれ」
「生むぅ! ジェイムズの赤ちゃん生むぅぅぅぅ!!」
激しい奔流が膣内を駆け巡った。



射精しながらのピストンで膣襞に精液が塗り込まれているのが分かる。
どんどん溢れる精液はいつしか膣内を満たし、子宮を膨らませ始めた。
「あ……あ…………」
俺は力いっぱい抱きついた。
愛する人の精液を一滴たりと逃さないようにするかのように。
「ひゃふ……あふ……」
そうしていつしか意識を失っていた。


私はずっと孤独だった。
屋敷には大勢の少女たちがいて、誰もが親しみをこめた眼差しを向けてくる。
だけど彼女らは違った。
私の地位に遠慮する姿勢が、さらに私を孤独にした。
だけどオリヴィエだけは違った。
あけすけで無遠慮で虚飾なんて器用なもので飾れない。
いつしか彼女に恋をした。
嫌われたくなかったから黙っていたが。
それでも愛していることに変わりはなかった。
だから彼女に告白された時はしまったと思った。
男のほうから先に言うのが作法だと思っていたから。
彼女は今、私の隣でスヤスヤと寝ている。
シーツには血の跡、彼女が僕のものになった証。
「……んにゅ……ジェイムズ……好き」
なんて愛おしいのだろうか。
私はきっと彼女を守り続けていく。
初めてあったあの日のように。




終了です
本当はオリヴィエが魔王に誘拐されて
全身を開発されたあたりでジェイムズが助け出すとかも考えてたけど
まあ、ラブラブにしといたほうが無難かと

管理人/副管理人のみ編集できます