その日、清子は幼なじみである大介の家に遊びに来ていた。
「最近、あなた様子が変よね?」
「そうかな? 自覚はないけど」
大介は文庫本を読みながら答えた。
威風堂々、自信に満ち満ちた姿であった。
「そうよ、前のあなたはもっと繊細そうだったもの」
そう、清子の記憶の中の大介は落ち着いていても
どっしりとした印象はなかった。
例えるならば以前は無風の湖面、今は大岩だ。
むしろ以前から大岩の印象を持っていたのは大介ではなかった。
「お茶です」
そんなことを考えていた時、大介の妹の渚がお盆にほうじ茶を載せてやって来た。
渚は三つある茶碗をそれぞれの前に置いて
自分も空いている椅子に座った。
(渚ちゃんがお茶を……ねえ)
そんなことをする子だったろうか。
むしろ客に茶を淹れさせるくらいの図太い子ではなかったか。
「ありがとう大介、美味しいわ」
「そう? ……!」
清子は大介と言った。なのに当たり前のように渚は返事をし、
そして表情をこわばらせた。
大介自身はしまったというような顔をしている。
「あなたが大介なのね?」
「ち……違う」
「そうでしょ? 渚」



「清子にはかなわないな。そうだよ、中身を入れ替えたんだ」
「それで出来上がったのが堂々とした大介と繊細そうな渚さんなわけね。
はっきり言ってキモイかも」
本当にはっきりと言う人だと言って、中身が渚の大介は笑った。
中身が大介の渚はむしろ、うつむいている。
「で、戻れるの?」
「無理だね、異性の手で絶頂を迎えさせられると
この魔法は効かなくなってしまうんだ。
いや、血が繋がってるとセックスの相性がいいってのが本当で助かった。
さすがに男になってすぐではテクニックもへったくれもないからね」
さらっと言ったが、それはつまり実の兄妹で無理やりセックスをしたということだ。
どんな悲劇があったのか清子は気になったが、聞く気にはならなかったし、
そこで赤面している女の子が快楽の虜になっているのは明白であった。
「ねえ大介」
「なんだい?」
「一つ提案があるのだけど」
「言ってみてよ」
「男になったからには色んな異性と色んなことをしてみたくならない?」
「まあたしかに」
「だからあたしを抱かせてあげるから、渚をあたしに抱かせてくれない?」
「いいね」
ずっと話を聞いていただけの渚。
はたして彼女はどんな思いで話を聞いていたのか。
ただ、渚は太ももをすり合わせながらうつむいていた。
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