志乃は病院では暇を持て余していた。

特に病院でやることがなかった志乃は、なにげに勉強を自主的に行っていた。
女になったばかりでまだ女としての生活習慣がなく、
特になにかをしたい、というのがなかったのだ。
そのせいか、男の時とは別人のように勉強が出来るようになっていた。

5時間目の数学が始まり、数学の教師が試しに質問すると、難なく回答出来る志乃。

「なんだ大塚。積分法をつかったこんな計算ももう出来るのか。」
「はい。一応、やってました。」

周りからは感嘆の声があがる。
先生もまるで別人を相手にしてるような錯覚を起してしまう。

(やべ。いくら暇だからって、ちょっと先に進みすぎたか!?)

男子の頃はけして勉強が出来ないというわけではなかったが、学力は至って普通のレベルだった。
なぜかここにきて、勉学優良な女生徒、というヘンなイメージが出来てきてきそうになる。



そして5時間目も終わり、志乃が急いで帰ろうとすると、帰り際に遙が声をかけてくる。

「ねえ大塚くん、帰り一緒に帰ろうよ! 同じ方向だしね!」
「ああ、そうだな。いいよ。でも宮田って、剣道部は?」
「だって3年でしょ。この前のインハイ予選でもう引退よぉ〜。」
「ああそうだったんだ。てことは負けちゃったのか。。残念だったな。」
「うん。でも結構がんばった結果だし、仕方ないよ。でも、今でもたまには部活に顔だしているよ。」

遙は剣道部に所属していた。
格技場が、半分が畳、半分が板の間なので、剣道部と合気道部はよく同じ時間で稽古をすることが多かった。
遙は身長が155cmで、身長があるわけではないが、足腰のバネが強く、
遠間から一気に飛び込んでいく打ち込みを得意としていた。
志乃も男ときも遙とは結構仲がよく、刀捕りの練習相手としてよく打ち込んでもらったりしてた。

(そういえば部活の方はどうなったんだろ・・。引退はまだ先だったと思うけど、顔だしづらいなぁ。)

「ねぇねぇ、大塚くんもさ、また部活に顔だしたら?またあたしが練習相手になってあげるよ!」

などと考えていると、遙の方から部活に誘う言葉ができてきた。
考えていることをいきなり言われて、思わずうろたえる志乃。

「はは。。そうだな。そんときはまたよろしく頼むよ。」
「大塚くんって、あたしが打ち込んだ面をスルってかわしたと思うと、いつのまにか横に現れて、
 気がついたらうつ伏せに押し倒されているんだもん。結構びっくりするよあれって〜。」
「でも、あんなの3回に1回ぐらいしかきまんないよ。ビニール刀でなかったら頭にこぶだらけだよ。」

剣道着姿の遙が思い起こされる。
長いストレートの髪を後ろにひとつで結わき、
紺の袴に身を包んだをその凛々しい姿が記憶の底から目に浮かびだす。

竹刀を構えたその姿に相対してみると、その眼力に大抵の男だったらたじろくほどだった。



「ふふふ。そうね〜。  ねぇ・・大塚くん。」
「ん? なに?」
「しぃちゃんって・・、名前の方で呼んでもいいかな??」
「ん? あぁ、別にいいよ。」
「ほんと? よかった!! じゃあこれからも仲良くしようね! しぃちゃん!!」
「あぁ。よろしくな。」

それは傍からみると普通の仲の良い、女学生二人組の会話だった。

「ところでしぃちゃんって、しゃべり方がたまに変るよね?
 なんか女の子ぽかったり、昔の感じでしゃべったり。。」
「んーまあな。一応、初対面の人とかにヘンに思われないように気をつけてしゃべってはいるけど、
 なんか昔の友達にあうと、やっぱり昔の感覚でしゃべっちゃうよ。照れくさいしな。。ははは。」

志乃は少し頬を赤らめて、口元が軽く緩む。

「そっかー。でもいいんじゃない?しゃべりやすい方で。」
「あぁ、宮田は気兼ねなくしゃべれて楽だよ。」
「あ、宮田じゃなくて、わたしも名前でよばれたいなぁ〜。」
「ん?そうか? じゃあ、はるか。 遙でいい・・?」
「うん!!いいよ!っふふ〜。」


そして楽しく話していると時間がたつのが早い。二人は分かれ道にさしかかったとき、
遙が少し前にかけだすとこちらを振り向き、

「じゃあしぃちゃん、また明日ね!」
「ん、じゃまたな。」
「あと明日は体育があるから、体操着忘れないでね。」
「あぁ、そういえばそうだったな。わかったよ。」
「バイバイ!」
「ああそれじゃ。」



遙は大きく手を振ると、てけてけと自分の家路に向かって歩き出した。
そして志乃もそれを見送ったあと、自分の家に向かって少し早歩きで向かう。

徐々に歩く速度が増していき、志乃は駆け込むように自分の家に飛び込んだ。
そして制服のままトイレに駆け込み、急いでショーツをおろし、便座に腰かける。

ゆっくりと尿道の力を緩めると、志乃の陰部から小水が流れ始めた。

「はぁぁ、ちょっとやばかった。。いくら昼からきたとはいえ、漏れるかと思った。」

用をたし終えると、わずかに濡れている自分のあそこを軽く拭き取り、
そのまま立ち上がりゆっくりとショーツを履きなおす。

「ふう。。なんか女の身体って、これ我慢するのキツくなった気がするな。。
 でもさすがにまだ学校でする度胸は・・ない。」

志乃の新しい学校生活は、まだまだ前途多難を示していた。

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