これから第十九話投下しますが、先に言った通り忍法帖リセットされてしまったので、
1レスが短いうえに投下間隔が120秒と全部投下しきるまで長時間かかります。
あらかじめご了承ください。
予告通り30レスくらいになると思うので、1時間以上かかると思います。
また、あまりにも長時間のためもしかしたら途中で別件で中断してしまうかもしれません。
なにとぞご了承ください。

なお、以下の注意書きを読み、苦手な人、スルーしたい人はNG等の措置をお願いします。

※注意!
・エロくないです。(ただしほんのちょっぴりエロっぽい発言あります。)
・少しTS表現あります。
・戦闘描写多めです。
・台本形式です。
・30レスほどあります。

では、本編スタートです。



サダルスウド「アクエリィ!右と上から同時に来てるぞ!」
アクエリィ「気づいているわ!スウドは私が出す魔法のタイムラグをなくすようにして頂戴!」

アクエリィはサダルスウドに文句を言いながらもニ方向から来る攻撃に対し、
シールドを展開し、攻撃を反射すると同時に二体の無獣に攻撃を叩き込む。

エアリィ「ううっ!こいつドンだけ硬いのぉぉ!!?私の矢が弾かれる!!!」

アーシィ「エアリィはもう一方のヤツを集中して攻撃して!
硬いヤツはあたしとアクエリィでやるから!!」

エアリィ「わかってるけどぉ!こいつ硬い上にスピードも結構あるんだよ!!
うきゃっ!!!気を抜いていると私でも追いつかれちゃう!!」

もう一方の無獣へとターゲットを変えようとするが、
エアリィに追いついてしまうほどのスピードでそれを阻まれてしまう。
そして反撃しても高い防御力で有効なダメージを与えられない。

アクエリィ「エアリィに追いつけるなんて・・・さすがにそれは速いですわね。」
弱音を吐いているのだろうか。
いや、違った。彼女の顔はまだ自信に満ち溢れていた。
元来自信家であるアクエリィは簡単に心は折れない。


アクエリィ「でも・・・攻撃力は大した事ないみたいですし・・・こんなことをされたら・・・どうかしら?」
不敵な笑みを浮かべながらアクエリィはアクエリィフュエをヒュンヒュンと回転させた。
アクエリィ「アクエリィリフレクシオン!」
シールド展開。

しかしそれは自分の周囲ではなく無獣を取り囲むように展開された。
高速で移動していた無獣は突然現れたシールドに阻まれ、動けなくなってしまった。

アクエリィ「ほら、今のうちに向こうへ行きなさい。」
エアリィ「う、うん!ありがとう!」

エウロパ「ふーん・・・スピードを封じたのはいいけれど、
このままじゃそちらからの攻撃ができないんじゃなくって?」

アクエリィ「ぷっ・・・うふふふ。」
エウロパ「な、なにがおかしいの!?」

アクエリィ「あら、ごめんなさい。私としたことがはしたなかったわね。
あなた、私たちと何度も戦っているのにこんなことも想像できないなんてね。」
アクエリィは無獣を取り囲んでいるリフレクシオンごとフュエで叩く。

エウロパ「なっ!?そんなことしても反射・・・されない!?」
そう、反射されなかった。
リフレクシオンは通常攻撃であればほとんどの攻撃は反射してしまう。
ところがフュエはリフレクシオンのシールドをいとも簡単にすり抜け、無獣に当たる。


アクエリィ「当然でしょ?私がリフレクシオンの中から攻撃してたの忘れたのかしら?
私のフュエとリフレクシオンは同じもの・・・唯一リフレクシオンを難なく通すことができる。」

エウロパ「くっ!こんなシールド!内側から壊してくれる!」
エウロパの声に従い、無獣はシールドの内側から攻撃を加える。
ところが、無獣の攻撃は全て自分に返ってくる。
アクエリィはその様子をとても嬉しそうに眺めていた。

エウロパ「!?・・・そうか!そういうことね!」

アクエリィ「そうよ、フュエ以外は通さず反射するの。
だからこいつは手も足も出ないというわけ。そして私の攻撃であれば外からも通り抜けられるわ。」
鞭をヒュンと回転させると、アクエリィの目の前に無数の氷の針ができる。
パキパキパキキキ・・・
アクエリィ「アクエリィエギュイーユ!」
パキパキパキィィン
アクエリィ「ピケ」
無数の氷の針はリフレクシオンのシールドをスルッと通り抜け、無獣に突き刺さる。

グルルルル!アクエリィの攻撃で怯んだものの、さすがに防御力が高くダメージは少ないようだ。

アクエリィ「そうね・・・私の攻撃力じゃムリよね。」
アクエリィはリフレクシオンを解いた。


エウロパ「ふっふはははっ。偉そうなことを言ってるけどあなたの攻撃力じゃぁこのコは倒せないわよね。」
無獣は自分を邪魔するものがなくなると再び超高速でアクエリィへ向かってくる。

一方エアリィは・・・

エアリィ「お待たせ!フレアー!」
フレアー「エアリィ!待ってた!こいつ防御は軟いんだけど、
飛び道具使ってくるんだ!なかなか近づけないんだ!!」

フレアーはミサイルやビームをフレアーサイズで弾き飛ばしながら走り回っている。
無獣に近づくと機雷に加え四方からのミサイルや触手の攻撃により近づくことができなかった。
しかも、その攻撃一つ一つフレアーは耐えることができていたが、攻撃力が高くフレアーの歩みを阻んでいた。

エアリィ「わかった!私は遠くから無獣を狙撃すればいいのね!」

フレアー「いや、違う!アタシはこのままこいつに突っ込むから、
アタシを狙う全ての攻撃を撃ち落して!」

エアリィ「え!?で、でも!」
フレアーの意外な提案に素っ頓狂な声を上げてしまう。
いくらエアリィの速度が速くても全ての攻撃を撃ち落すのは難しいと考えていたのだ。

フレアー「いや、すまん。全部って言うのは言い過ぎた。アタシの進行方向だけでいい。」
右や左、そして上からの攻撃は防がなくてもいいというのだ。


エアリィ「わ、わかった。」
フレアーは今も攻撃を受け流しながらエアリィへ拳を上げて応えた。
エアリィ「・・・フレアーの進むほうか・・・それにしてもすごい攻撃・・・大丈夫かな・・・」

エアリィ「いくよっ!!エアリィシュート!!」
エアリィはフレアーに雨のように降り注ぐ無獣の攻撃に活路を開く。
無獣のすさまじい攻撃に2m先も見えない程であったが、
まるで雲の隙間から太陽の光が差し込むようにフレアーの前に道が出来上がる。

フレアー「ぐっ・・・そうだ・・・これで・・・前に進める!
前にさえ進めれば!こんなヤツ!」
フレアーは一歩、また一歩と歩みを進める。
しかし、フレアーへの攻撃がないのは前方だけ、そのほかは当たるがままであった。

エアリィ「そんな・・・いくらフレアーが頑丈だからってこんなの・・・」
少しでもフレアーへの攻撃を和らげようと前方以外にも攻撃を撃ち落そうとすると、
すぐにフレアーの前方が弾幕で塞がれてしまう。
そのため、エアリィはフレアーの前方に攻撃を集中させるしかなかった。

フレアー「もう少し!もう少しだ!!ふふっカクゴしておけよ!!」
フレアーはゆっくり、ゆっくりと無獣へ近づいていった。
そのフレアーの背中、頭、腕、足は傷だらけであった。


もはやそのほかの攻撃を防ごうともしていない。
フレアーの気迫に圧倒しているはずの無獣は後退る。
フレアー「ふふふ・・・どうした!なぜ後ろに下がるんだ!
アタシをもっと攻撃してみろよ!ほらぁ!」
無獣は後退りながらも攻撃の手を激化させる。

フレアー「そうだ!ふふふ。ほら、もう届くぞ!今度はアタシがやるけどいいよなぁ!」
拳をぎゅっと握り締め、フレアーはゆっくりと振りかぶる。
そしてそのまま無獣を殴る!
ドォォォォン!!!
響き渡る打撃音。

そのあまりの衝撃に無獣の攻撃がぴたりと止んだ。

次にフレアーは左足で踏み込み腰を旋回させて右足で蹴り込む!
足が無獣に叩き込まれると波紋のように無獣の体が波打ち、衝撃が体の隅々にまで行き渡る。
そしてそのまま体ごと弾けとんだ。

ズドン!!!!
一瞬遅れて鈍い音が響く。

無獣は新たな攻撃を出せなかった。このニ撃だけで満身創痍のようだ。


そして・・・アクエリィ達は・・・

超高速でアクエリィに向かってくる無獣。しかしアクエリィの表情は全く冷静さを失っていない。
むしろ少し笑みを浮かべている。
そして無獣の攻撃がアクエリィに当たる。

アーシィ「アーシィストライクゥゥ!!」
アクエリィの目の前に突如としてアーシィが立ち塞がる。
そして向かってくる無獣に対してフルスイングでハンマーを叩きつける!
いわゆるカウンター攻撃である、当たった無獣はたまったものではない。
そしてアーシィの攻撃は防御層を壊す力がある。
分厚い無獣の装甲はアーシィの攻撃一発で剥がれ落ちる。

そしてすかさずリフレクシオンを無獣周辺に展開、再び無獣を封じ込める。
アーシィに叩かれた無獣は激昂してリフレクシオンの内側で暴れていた。

アクエリィ「ふふふ、ね?どうかしら。こんな風に戦えばスマートでしょう。」

アーシィ「わかった!?それぞれの特性を生かせばどんなタイプの敵でも訳ないのよ!」

エウロパ「このっ!!無駄な攻撃やめなさい!!」
焦るエウロパ。暴れている無獣を諌め、機会を得るために行動を停止させた。


アクエリィ「あら?いいのかしらそのままで。ふふふ。
この魔法はとっても便利で、こういうこともできるのよ。」

リフレクシオンは少しずつ展開されている範囲を狭めていった。

アクエリィ「アクエリィプリュイ!どうかしら?逃げ場もなくジワジワと溶かされる気分は。」
リフレクシオンの内側で酸の雨が降る。アーシィがつけた装甲のひびに強酸が染み込む。
そして体が溶かされながら、リフレクシオンの内壁に装甲が薄くなった無獣の体がぶつかる。
アクエリィの攻撃以外ほぼ全てを反射するシールド、触れたところから爆ぜる。

一度の爆発を合図のようにして連鎖的に無獣の体のあちこちが爆ぜていく。
ふらふらになればなるほどシールドにぶつかり爆発していく。

アクエリィ「うふふふ・・・いい音ね・・・」

アーシィ「・・・アクエリィ、ちょっと目がうっとりしてて怖い・・・」

アクエリィ「アーシィ!次行くわよ!」

アクエリィはリフレクシオンを再び解く。

すると無獣はそのまま倒れこむ。
しかし地面に倒れる直前、アーシィの攻撃。

アーシィ「そんな簡単に寝かせないからね!アーシィビィトォォ!!」
倒れこもうとする無獣にタタタンと連撃。
衝撃で反対側に倒れる。


アーシィは素早く反対側に回り込み、再び打撃を加える。
無獣は恨めしいというように大きく咆哮。
しかし、その声ももはや負け犬の遠吠えでしかない。
もはやその無獣はなす術なくやられるばかりであった。

アーシィ「アーシィストライク!!!」

アクエリィ「そろそろね・・・スウド!」
サダルスウド「OK!」
サダルスウド「ホールド!座標x192y2287z28無獣を固定化!」

アーシィ「アルも行くわよ!」
アルデバラン「わかった!!」
アルデバラン「ホールド!座標x192y2287z28無獣を固定化!」

アーシィ「我の呼びかけに応え、イメージを具現化せよ・・・グランタウラス!」
アーシィの持つアーシィハンマーが光を帯びて形状を変える。

アクエリィ「アン レポンセ ア モナペル、フォルメズ ユヌ イマージュ・・・
(我の呼びかけに応え、イメージを具現化せよ・・・)オンディーヌヴェルソウ!」
アクエリィが叫ぶと手にしているアクエリィフュエが光りながら形状を変える。


エアリィ「フレアー!!もうやめて!やめてよ!死んじゃうよ!!」
エアリィの言うとおり、いくら頑丈だと言っても今のフレアーの姿は瀕死の状態なのではないかというほどボロボロな姿をしていた。
エアリィでなくてもその姿は直視できなかったであろう。
しかし、その姿とは裏腹にフレアーからは鬼気迫るほどの気迫とプレッシャーを感じていた。

フレアー「あと一撃!あと一撃だ!それまで・・・ぐふっ・・・持ってくれよアタシの・・・がはっ・・・体!」
フレアーはフラフラになりながらも武器を持つ手に力を込めた。
フレアーの今の姿であれば、武器をもつことすら不可能ではないかと思われるほどなのにその掌は力が溢れてくるようだった。

フレアー「これで・・・終わりに・・・してくれよ・・・もう・・・アタシも限界・・・が・・・近いんだ・・・」
ズッッドォォォォォンッ!!
フレアーサイズが弓なりにしなりながら無獣に叩き付けられる。
叩き付けた勢いそのままでフレアーはバタリと倒れてしまった。
まだ無獣は立っている。そして無獣の咆哮。我の勝利だといわんばかり。
しかしその直後、無獣は急によろよろとふらつき、そのまま倒れた。動かない・・・


フレアー「へ・・・へへへ・・・やった・・・アタシの勝ちだよな。エアリィ!あとは頼ん・・・だ。」
一度フレアーは立ち上がり、エアリィにとどめを頼むと再び倒れてしまった。
どうやらそのまま気絶してしまったようだ。
後を任せたエアリィを信頼しているのだろう、その顔は安らかであった。

エアリィ「わかった!!ありがとう・・・フレアー・・・いくよ!スピカ!!」
スピカ「いいわよ!」
スピカ「ホールド!座標x182y2274z13無獣を固定化!」

エアリィ「我の呼びかけに応え、イメージを具現化せよ・・・ウィンドヴァーゴ!」
エアリィの持つエアリィボウが光を帯びて形状を変える。

エアリィ「私の生活を邪魔するやつは許さない!エアリィシューティングスター!!!!」

アーシィ「アーシィクェイク!!!」

アクエリィ「アクエリィ!アルカンシエル!!!」

そして・・・
二か所でほぼ同時に無獣の断末魔が聞こえた。
こうして二体同時に現れた無獣を倒すことができた。


一方エウロパは・・・
エウロパ「・・・別タイプの無獣であればと思ったのですが・・・
まだ・・・私の考えは甘かったようですわね・・・」

スピカ「エウロパ!!いや・・・レグルス!もう逃がさないわよ!!」
エウロパ「・・・あなた・・・一体何を?・・・レグルス・・・ぐっ・・・ぐぁぁぁぁぁぁっ!やめろっ!」
逃げようとするエウロパの目の前にスピカが立ち塞がる。
エウロパはレグルスの名前を聞くと突然苦しみだしてしまった。

そしてスピカの言葉にエアリィたちは驚きを隠せない。

エアリィ「スピカ・・・?何を言ってるの?」

スピカ「驚かせちゃってごめんなさいね。
少し前から確信はなかったんだけど、レグルスはエウロパじゃないかって思ってたのよ。」

スピカ「でも、今回で確信に変わった。
エウロパの魔力を反転させるとフレアーの魔力にぴったり一致した。」

スピカ「そして・・・魔力を反転させている媒体は・・・これよ!!」


スピカはエウロパの首に巻きついているチョーカーを引きちぎろうとする。
しかし・・・エウロパの体が赤黒く光ったと思うと、スピカを弾き飛ばしてしまった。
スピカ「きゃぁぁぁぁぁ!!」
エアリィ「スピカ!!」

アルデバラン「スピカ!逃げろ!!」

エウロパ「う・・・うぁぁぁぁぁ!!!やめろ!やめなさい!やめなさい!!!ううううう・・・
私に対するこの仕打ち!覚えてなさい!!」
エウロパはチョーカーをかばうように首に手を当て、叫びながらもその場から消え去ってしまった。

スピカ「ううう・・・こんな衝撃を受けるなんて・・・きっとイオはこうされることを想定してたのね・・・」

サダルスウド「無理するな!あの衝撃は下手したら死んでいたぞ!」

スピカ「ごめんなさい・・・でも確信したわ。レグルスは寝返ったんじゃない。
洗脳されているのよ。あのチョーカーが鍵ね。」

アーシィ「・・・イオね・・・」

スピカ「ええ、もう少しでチョーカーを千切ることができそうだったんだけど・・・少しだけしか傷つけられなかった。」


エアリィ「それよりも・・フレアーだよ・・・こんなボロボロになっちゃって。」
フレアーはエアリィに抱きかかえられていた。
あちこちが傷だらけであったがどれも致命傷ではない。命に別状はないようだ。
息を持つかせぬ攻撃を受け、これだけの傷で済んだのは奇跡か。
いや違う。直撃を受け続けてもこれだけで済んでいるのはフレアーのタフさによるものだろう。
奇跡などという曖昧なものでは決してない。

フレアーから灯莉へ戻ると今まで傷ついていた体はほぼ傷は消えてしまったが、
大樹の腕の中で未だ気を失っていた。

明日美「魔法さえ使えるようになればここまでボロボロにならずに済むのにね・・・」

萌波「でも、エウロパがレグルスだと分かったのだから、あと一歩ってところじゃないかしら。」

大樹「そうだな。もう灯莉にこんなつらい戦いはさせたくない。
いくら防御力が桁違いだと言っても女の子にこんなつらいことさせるのは男として心苦しい。」
大樹は悲痛な面持ちで灯莉を見下ろす。

大樹「俺がもっとしっかりしていたらこんなつらいことさせないんだが・・・」


明日美「しょうがないよ、大樹も戦っているときは魔法少女で私たちと同じなんだから。
とはいっても早急にレグルスを取り戻さなきゃね・・・」

灯莉「う・・・ああ・・・」
どうやら灯莉の意識が戻ったようだ。少し声を上げると、ゆっくりと目を開けた。
灯莉「ああ・・・みなさん・・・よかった・・・無獣をやっつけられたのですね。」

大樹「ああ、灯莉のおかげでな。ありがとう。
そして・・・ごめんな・・・こんな戦い方させて。」

灯莉「いいえ、いいんですよ・・・魔法が使えない私ができることはこれくらいですから・・・
って・・・私・・・あれ?・・・ご、ごめんなさい!!!」
自分が大樹の腕に抱かれていることに今更ながら気が付き、
顔を真っ赤にしながら飛び退いた。

大樹「あ、ああ。こっちこそごめんな。
男に戻ったのにそのまま抱きかかえちゃって。」

萌波「はぁ・・・あなたは変態だから、わざとじゃないの?
まったくいやらしいんだから・・・あなたの奥様に言ってしまおうかしら。」

明日美「あはは、それいいかもね。あなたの旦那さんは浮気してますよーって。」


灯莉「!そ、そんな・・・・浮気だなんて・・・私・・・困ります。
あの、大樹さん?私、大樹さんのことこれっぽっちもそういう感情持っていないですし、
男の人として考えたことないですから!その!だから全然そんな事無いです!安心してください!」
灯莉は男に対して傷つくようなことをサラリと言ってのけた。

大樹「あはは・・・灯莉ちゃん・・・わかったから・・・そこまで言わなくても・・・
ううう・・・なんかとってもへこむなぁ。そもそもお前らがそんなこと言うから・・・」
大樹は明日美と萌波を睨みつつ恨み節を口にした。

スピカ「はいはい、コントはそれくらいにして。今後のことを話すわよ。」

スピカは大きな声で彼女たちの話を遮る。

スピカ「灯莉、落ち着いて聞いてね。みんなはもう知っているんだけど、
実はさっきレグルスを見つけたの。」
灯莉ははっとした表情でスピカを見つめる。
そしてスピカは少し悩んで首を横に振る。

スピカ「いいえちょっと違うわね・・・レグルスだと確信できる対象を見つけたの。」

灯莉「ほ、本当ですか?スピカさん!それでレグルスはどこに!?」

大樹「スピカ!いいのか?」
大樹は心痛な面持ちでスピカを見つめる。
それに対してスピカは真剣な眼差しで大樹に無言の返事をする。


明日美「大樹、いずれ知らなきゃならないんだから・・・
それに事は急を要するのよ・・・早いに越したことはないわ。」
大樹「そうだな・・・スピカ、すまなかった。続けてくれ。」

スピカ「灯莉、エウロパっているでしょ?その・・・エウロパがレグルスなの。」

灯莉「そんな!・・・レグルスが裏切ったってことですか?あの暖かいレグルスが・・・」

スピカ「いいえ、それは不幸中の幸いというべき・・・でしょうね。
どうやら無理やりエウロパにされているみたいなの。」

灯莉は少しほっとした表情を浮かべたが、すぐに憂いを含んだ真剣な表情に戻った。

灯莉「私・・・私なんとしてもレグルスを元に戻します!でも・・・どうしたら元に戻せるのか・・・」

萌波「灯莉さん、安心して頂戴。どうやら元に戻せる方法があるらしいわ。」

スピカ「でもね、それはすごく難しいことかもしれない。」
灯莉「スピカさん、私何でもやります!どうすればいいんですか!?」

スピカ「そう、わかったわ。そうね、この役目はやっぱり灯莉がするのが一番かもしれない。
いい?元に戻す方法としてはおそらくとても簡単。問題はそこに至るまでが難しいと思うわ。」
灯莉「簡単で・・・難しい?」


スピカ「ええ、その方法はエウロパの首にあるチョーカーを引きちぎればいい。これだけよ。」

灯莉「たしかに・・・方法としてはとても簡単ですね・・・でも・・・」

スピカ「そう、戦ったことのあるあなたならわかると思うけど、彼女に触れるのはとても難しい。
それに、エウロパの魔力はあなたの魔力の反転バージョン・・・下手したら対反応を起こすかもしれない。」

灯莉「あ!最初に戦ったときに・・・弾き飛ばされたアレですか?」

スピカ「そう、だからエウロパの魔力が大きく放出されていないときを狙うしかない。」

灯莉「でも、私は魔力がどれくらい放出されているかなんてわからないです。」

スピカ「その辺は大丈夫、私たちがフォローするから。」

灯莉「そう・・・ですか・・・わかりました。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を深々と下げる灯莉。
その表情は決意が感じられていたが、不安や戸惑いも見え隠れしていた。


そして、魔法少女たちが各々いなくなった後・・・
再びスピカたちは頭を突き合わせていた。

アルデバラン「そういえば、気になる点があるんだが・・・」

スピカ「なに?」

アルデバラン「いや、無獣は出てくるけど、連れてくるのがエウロパばかりでダークウィッチがまったく出てこないだろ?
なぜなんだろうな。」

スピカ「人材不足なのかしら?」

サダルスウド「そんなわけないだろう。」

スピカ「冗談よ。確かに不気味ではあるわね・・・何を企んでいるのか。」

サダルスウド「で、やはり俺たちの敵はあいつなのか?」

スピカ「ええ、十中八九間違いない。リゲル、ううん今はイオね。」

アルデバラン「リゲル・・・魔法少女システムの開発者・・・か。」

スピカ「そう、彼は自分が開発した魔法少女システムには欠陥があると言っていつも悩んでいたわ。」

スピカ「彼が開発した魔法少女システムは、魔法少女となる者の取り巻く環境を利用する必要があった。
自身も含め魔法少女の周囲の生命、そして魔法少女自身の心・・・
これらを運命の規定事項と合わせて適正のある人間しか魔法少女にできなかった。」


アルデバラン「そうだな・・・確かに魔法少女対象者は不幸な人間ばかりだった・・・」

サダルスウド「だが、そういう人間の力を使わなければ、その時代の迫りくる脅威に対抗することができないなんて・・・
情けない話だ。」

スピカ「だからリゲルはそんな運命の規定事項に囚われない新しい魔法少女システムをずっと考えていた。
これ以上不幸な人間を増やさないために・・・」

アルデバラン「ああ、聞いたことあるな。
たしか運命の規定事項とは関係なく、魔法少女の心のエネルギーのみを使う理論だっけ?」

スピカ「そう、それがうまくいけば運命の規定事項から生まれる魔法少女から不幸な人間を探す必要はないし、
いくらでも魔法少女を作り出せる素晴らしいシステム・・・のはずだった。」

サダルスウド「はずだった?」

スピカ「リゲルに設計書を見せてもらったとき、僅かだけど実験測定値の乱れに気がついた。
その乱れは暴走を引き起こすものではないかと考えてリゲルに計画の見直しを言ったのだけど・・・」


アルデバラン「無視して計画を続行したということか・・・」

スピカ「そう、そして恐らくは私たちが戦っているダークウィッチとは、
新しい魔法少女システムによって作り出された陰の魔力を持った魔法少女・・・」

アルデバラン「そうか、いくらでも作り出せるダークウィッチが最近出てこないのは、
やはり何かあるね。イオは何かわからないけれど次の段階に進もうとしているのか。」

スピカ「そうね・・・大変なことにならなければいいのだけれど・・・」


そして数日が過ぎ、季節は初夏の頃・・・
西田家は相変わらず平和そうな風景が繰り広げられているように見えていたが・・・
実際はどうなのだろうか・・・

紗英「あなた、最近みゃこの体調がまた良くないのよ・・・」

大樹「そうなのか?毎朝元気良く学校に行っているようだが。」

紗英「それが、前みたいに高熱は出ないし悪夢も見ないんだけど・・・」

大樹「それ以外に何か心配なことがあるんだね?」

紗英「ええ、時々空ろな目で顔を赤らめてボーっとするのよ。」

大樹「え!それって・・・好きな男でもできたんじゃないだろうな!」

紗英「あなた・・・それは多分ないと思う・・・だって、まだ昔のことで悪夢を見るくらいだし・・・」

大樹「そ、そうだな・・・すまん、デリカシーなかった。」

紗英「ボーっとしているときに私が聞いてもなんでもないって言うし・・・
あなたからもちょっと聞いてみてくれる?」

大樹「おお、任せておけ!中学生くらいの心の悩みはいろいろあるからな。聞いてみるよ。」

紗英「お願いね。」

大樹「じゃあ、会社行ってくるからな。」

紗英「はい、行ってらっしゃい。」
そして玄関のドアを閉め家を出る大樹。

第十九話「Shiver!なぜ・・・お前が!?」


駅に近づくと前を灯莉が歩いているのが見えた。
大樹「お、灯莉ちゃん。おはよう!これから学校かい?」
灯莉は大樹に気がつくと、ペコリと軽く会釈をする。

灯莉「おはようございます。大樹さん。大樹さんは仕事ですね。」

大樹「ああ、そうだよ。今日は大事な会議があるからね、がんばらないとな。」

灯莉「ふふふ、がんばってくださいね。」

大樹「ありがとう、じゃ俺反対方向だから。」

灯莉「はい、行ってらっしゃい。」

大樹は灯莉と別れ、ホームで電車を待っていた。
そろそろ電車が到着しようかというとき、周囲の様子は一変、奇妙な色の世界に包まれる。

大樹「これは!ったく・・・今日は大事な会議があるっていうのに!!しょうがないなぁ・・・ちゃっちゃと片付けますか!」
大樹はポケットからハーティジュエルを取り出し、首に巻きつける。

大樹「アクセプト!」
大樹が叫ぶと首のピンクのハーティ ジュエルが光り、手がハートの形に動いていった。
大樹「キューティメタモルトランスレーションエアリィアップ!」

エアリィ「そよ風のように幸せ運ぶ!キューティエアリィ!おまたせっ」


エアリィは近くにいるはずのフレアーを探した。

すると、フレアーは駅の屋根の上に立っており、何人かと対峙していた。
その相手は・・・無獣でもダークウィッチでもない・・・イオ、ミーヤ、そしてエウロパだった。

エアリィ「フレアー!・・・こりゃちょっと今回は厄介かな・・・」
あの一件以来エアリィはミーヤに苦手意識ができてしまっていた。
できることならば、いろんな意味でミーヤとは顔を合わせたくなかった。

フレアー「今日こそレグルスを取り戻してやる!アーシィとアクエリィは?」

スピカ「連絡したわ。ちょうど近くにいたからもうすぐここに到着すると思う。」

エアリィ「そう、わかった・・・みんなが来るまで踏ん張るしかないね。よし!気を取り直していこう!」

ミーヤ「エアリィちゃぁん、久しぶりねぇ。あれからどう?時々思い出して自分でしちゃったりしてる?
男の子で?それとも女の子のとき?あ、両方でかな?」
下品な物言いをするミーヤにエアリィは顔を真っ赤にする。

エアリィ「そ、そんなことするわけないでしょ!!私はあなたと違って忙しいんだから!!」

ミーヤ「顔を真っ赤にしちゃってカワイイんだから。また今度私とキモチイイことして遊びましょうね。」

フレアー「エアリィ、あいつは何を言っているんだ?」


ミーヤ「あら、あの私とエアリィちゃんの熱いひとときのことを言ってないの?
あのね、フレアー、エアリィちゃんはね私と・・・」

エアリィ「あああああ・・・ミーヤァァァァ!!!」

ミーヤ「あ、ごめんなさい、言っちゃいけなかったかしら?
まあ、今日は別の遊びをしにきたのよ。
だから残念だけど、もうあなたとキモチイイことできなくなっちゃうかもね。」
とは言いながらもさして残念そうな顔をしていなかった。

ミーヤ「あ、違ったわ。キモチヨクなるのは私だけだった。あはははっ。」

エアリィ「み、ミーヤ!」
そのふざけた態度に激昂するエアリィ、彼らの目の前から一瞬で消えた。
そしてエアリィがいた場所にはゴウッという音とともに暴風が吹き荒れた。

フレアー「ぐっ!エアリィ?」

エアリィ「ミーヤ!!」
ミーヤのいる場所まで一瞬のうちに到達し、ミーヤに対して弓を構えて矢を打ち込もうとする。
しかし・・・


ミーヤ「エアリィちゃん、どこ狙っているのかしら?」
信じられないことにエアリィの真後ろからミーヤの声が聞こえた。
確かにエアリィが狙う矢の先にはミーヤは既にいなかった。
特別遅かったというわけではない、エアリィは自分の出せる限界までスピードを上げたのだ。
エアリィは魔法少女になったばかりの時でも十分に速かったが、今では何度も敵を倒して魔力も格段にレベルアップしている。
魔力のレベルアップ、彼女は特にスピードに特化した魔法少女である。魔力レベルアップもスピードに注力されている。
しかし、それでもミーヤの速度は数段上だった。つまり、圧倒的な魔力の差がそこには存在していることになる。

エアリィは後ろから聞こえるミーヤの声に振り向いた。
しかし、ミーヤの姿をはっきりと見ることなく防御姿勢も取れずエアリィが元いた場所まで弾き飛ばされた。
空気の壁を突き破るほどの速度、キーンという轟音が遅れて木霊する。
エアリィ「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

フレアー「エアリィ!?」

フレアーが驚くのも無理はない、エアリィが目の前から消えたと思ったらすぐに衝撃波を伴いながらまた現れたのだから。
しかも再び現れたときには明らかに傷ついた姿だった。
つまり先ほどの一連の動きはフレアーには一切認識できる速度で展開されていなかったのだ。




ミーヤ「エアリィちゃん、焦らないの。まだ開始の合図は出してないでしょう?
男の子は焦ったら女の子に嫌われちゃうわよ。うふふふ。」

エウロパ「ミーヤ様、全員揃う前に早々に倒してしまったほうがよろしいのでは・・・ぎゃふっ!!!」
ミーヤに進言したエウロパに対してミーヤは無言で弾き飛ばす。

ミーヤ「エウロパぁ・・・私に指図するんだ・・・へぇ・・・あんまりおいたが過ぎると・・・つぶすわよ・・・」

エウロパ「は、はい・・・申し訳ございませんでした。」

ミーヤ「ごめんなさいね。うちのボケが無粋なことを言って・・・
うふふ・・・そちらの方がフルメンバーじゃないとつまらないものねぇ。」

エアリィ「ぐっ・・・ふざけたこと言って!!」

イオ「ミーヤ、そろそろ来るよ。二人とも南西の方だ。」

ミーヤ「あらそう、エアリィちゃん、良かったわね、もうみんな来るって。」

エアリィ「う・・・みんなが来たらあんたなんか力を合わせて簡単にやっつけてやるんだからね!!」

エアリィ(とは言っても・・・今のミーヤ、前よりも強くなっている・・・なにもかもが桁違い・・・正直つらいかも・・・)


アーシィ「フレアー、エアリィお待たせ!!」
アクエリィ「遅くなってしまいましたわ、ごめんなさいね。」
二人が到着したのにエアリィは何も答えない・・・

エアリィ(どうしたら・・・ミーヤを倒せるんだろう・・・それにイオの強さもある・・・
やっぱりこの戦いの途中でレグルスを目覚めさせるしかないのかな・・・)

アーシィ「エアリィ?どうしたの?ねぇ・・・エアリィ?エアリィってば!」
アーシィは物思いに耽っているエアリィを揺すった。

エアリィ「え?ああ・・・おはよ。」
アーシィ「おはよ、じゃないわよ大丈夫!?」

フレアー「早速エアリィはミーヤに一回やられてしまったんだ。
しかもすごい速さで・・・アタシは二人の速度が速すぎて見えなかったんだけどな。」

エアリィ「う、うん。そうなの。なんかミーヤめちゃくちゃ強くなっている。
気をつけないと・・・一瞬でやられちゃうよ。」

アクエリィ「ええ、わかりましたわ。でも私たちがそんな簡単にやられるもんですか。」
フレアー「そうだぜ、今までだって力を合わせてやってきたんだ。今度も大丈夫!」


ミーヤ「そろそろ作戦会議は終わったかしら?終わったならゴング鳴らすわよ。」
ミーヤはパチンと指を鳴らした。
すると、見える範囲の電球、蛍光灯、ネオン管がすべて一斉にパーンと割れた。

その音を合図にまず動いたのはエウロパであった。
アーシィに向かって光球を打ち出す。
対してアーシィはハンマーを地面に叩きつけた。
アーシィ「アーシィ!ウォール!!」
叩き付けると下からズズズッと岩の壁がせり上がりエウロパの放った光球を弾いた。

そしてその隙にフレアーはエウロパに迫り、フレアーサイズでエウロパを叩く。
連続で叩く。
フレアー「レグルス!目を覚ませ!!アタシと一緒にいた頃のこと思い出せよ!!」
エウロパ「あなたは何を言っているのかしら?そんなものは知らないし、あなたは敵としか見えません!」
一撃目二撃目は手応えがあったものの、それ以降はすべてよけられてしまった。
フレアー「ああ、そうかい・・・できれば手荒なまねはしたくないんだけどなぁ・・・やっぱやるしかないか。」

アーシィ「あたしがエウロパの攻撃を引き受けるから、フレアーはチョーカーを引きちぎって!」
フレアー「ああ、わかった!!」


そしてミーヤは・・・

アクエリィ「アクエリィリフレクシオン!」
シールドを展開してミーヤを封じ込める。
しかし、何の苦労もせずにミーヤはそのシールドを通り抜けた。

アクエリィ「な!ど、どういうこと!?」

ミーヤ「なによ、このビニールみたいなシールド、こんなんで私を封じられると思っているのかしら?」

アクエリィ「次はこれよ!アクエリィエギュイーユ!!」
パキパキパキィィン
アクエリィの周囲に無数の氷の針ができる。
アクエリィ「ピケ」
そして全ての針がミーヤに突き刺さる。
が、全く効いていない。

アクエリィ「アクエリィプリュイ!!」
ミーヤに強酸の雨が降り注ぐ。
ところが全く苦しむ様子もない。

アクエリィ「うううっ・・・ステュニュ アラベスク・アロンジェ。」

アクエリィ「シソンフェルメ アッサンブレ ピルエット ピルエット ピルエット」

アクエリィ「ソーテ シャッセ ロンドゥジャンブ。」

アクエリィ「バッチュ バッチュ バッチュ バッチュ バッチュ!」

アクエリィ「なんで!なんで手ごたえがないのよ!!なんで・・・よ・・・」


アクエリィは魔法のほかに肉弾戦でもミーヤに挑んだがそのどれもが全く効いていなかった。
フレアーの持つタフさとは違う・・・ミーヤには得体の知れない何かが作用しているようだった。

ミーヤ「今までので確信したわ。あなたじゃ無理ね。」
ミーヤはアクエリィを汚物を見るような目で見下げた。

アクエリィ「その目・・・その目をやめなさい!」

エアリィ「だめ!アクエリィ!挑発に乗ったらミーヤの思うつぼだよ!!」
しかしエアリィの忠告もむなしくもはやアクエリィには何も聞こえてこない。

アクエリィ「バッチュ バッチュ バッチュ バッチュ バッチュ!!!」

アクエリィ「バッチュ バッチュ バッチュ バッ・・・チュ・・・」

アクエリィの鞭はむなしく風切り音だけが木霊していた。

アクエリィ「スウド!!」

サダルスウド「でも!まだ何もダメージがないじゃないか!!」

アクエリィ「それでもよ!!」
アクエリィはこれほどまでに冷静さを失うのはよほどのことなのだろう、
アクエリィは恐怖を感じていた。それ故冷静さを欠き、気が焦ってしまっていた。


エアリィ「アクエリィ!だめ・・・このミーヤは・・・今手を出しちゃ・・・ダメ・・・確実に死んでしまう・・・」
アクエリィ「なによ・・・エアリィらしくもない!なんであきらめるの?あなたが・・・あなたが私にこの気持ちを教えてくれたんでしょう!?」
エアリィ「それでも!それでもどうしようもできないことはある!今の私たちではミーヤには勝てない・・・」

アクエリィ「でも!!」
エアリィ「ごめん、アクエリィ、いつもの冷静さを取り戻して?大丈夫、今は無理でも・・・私は絶対諦めないから。ね?」
エアリィはアクエリィをそっと抱きしめる。
そして、優しく頭を撫でた。それこそ親が子供を言い聞かせるようにそれは優しかった。

アクエリィ「エアリィ・・・」

ミーヤ「あはは、エアリィちゃん女の子同士で抱き合ってるわね。
あなたそっちに目覚めちゃった?あ、そうかあなた男だからこれでいいのよね・・・
役得よねぇ遠慮なく女の子に抱きつけるんだから。」

エアリィは澄んだ目でミーヤを見つめた。
エアリィ「なんとでも言いなさい。今は無理でも・・・必ずあなたを倒すから!」


ミーヤ「あははは。早くも敗北宣言?今は無理でも?じゃあいつ?いつなのぉ?」
おどけた様にミーヤは大笑いする。
その直後、並みの精神力の持ち主ならそれだけで精神に異常をきたしてしまうような邪悪な目でエアリィを睨みつける。

ミーヤ「あはははぁ。エアリィ、次があると思うのか?今日でおしまいなの・・・ふふふ、私がお前らを逃がすわけないじゃない!」

エアリィ「まずい・・・アクエリィ・・・に、逃げて・・・」
エアリィはアクエリィを突き飛ばした。
そして、エアリィの顔が歪みそのまま真横に飛ばされた。
エアリィ自身も何が起きたかわからない。
しかし確実に言えることはミーヤの攻撃を受けたということだ。
もはやエアリィの目にもミーヤの動きを追うことができなくなっていた。
そしてそのままサンドバッグのようにエアリィは攻撃を受け続けた。

アクエリィ「スピカ!スウドもエアリィにシールドを!!早く!!」
アクエリィはエアリィの周囲にリフレクシオンを展開させているがエアリィが受ける攻撃の強さは全く変わらない。
だから、リフレクシオンに合わせてスピカが展開するシールドも使ってエアリィを守ろうというのだ。


しかし・・・

スピカ「さっきからやってるわよ!!でも、でも全然意味がないの!防げないのよ!!」
スウド「こっちも同じく!多重でシールド展開してるけどだめなんだ!ミーヤにとっちゃ紙同然のようだ。」

アクエリィ「そんな・・・このままじゃ・・・このままじゃエアリィ死んでしまうわよ!!!」

ミーヤ「死んでしまうって、こんな風に?」
ぐったりとしたエアリィの首を掴んでミーヤはアクエリィの目の前へ放り投げた。
どさっと力なくぼろ布のように横たわるエアリィ。
その姿をみてアクエリィは声にならない声をあげる。

アクエリィ「!っっ・・・・っ!・・・ェ・・・」
スピカ「大丈夫だから、まだ死んでないから!!落ち着いて!!今は逃げるのよ!!」
アクエリィは泣きながらも傷ついたエアリィを引きずるように抱えてその場から逃げようとしていた。

ミーヤ「だから逃がすわけないって言ってるでしょう?」
そんなアクエリィの目の前に音もなくミーヤが現れる。
そしてミーヤの掌がアクエリィの顔の前にかざされると、防御姿勢を取る間もなく顔にゼロ距離からの魔法を撃ち込まれた。


アクエリィ「ぐぁぁぁっ!ああっ!ぁぁぁぁっ!」
地面を転げ、顔を抑えて悶え苦しむアクエリィ。
ミーヤはそんなアクエリィをさも楽しそうに見つめ、倒れているエアリィの首を右手で、
アクエリィの首を左手で掴み、そのまま軽々と持ち上げる。

エアリィ「ぅ・・・ぁ・・・」
アクエリィ「や、やめて・・・」
ミーヤはアクエリィの言葉を無視して首を掴んでいる手に力を込める。

ミーヤ「うふふ、このまま握りつぶしちゃおうかしら。」
ぐぐぐっと少しずつ力を入れていく。
ミーヤだったら一瞬のうちに握りつぶすことも可能であるが、
彼女たちの苦しむ様子がよくわかるのだろう、ゆっくりゆっくりと力を込めていった。


アクエリィ「ぐっ・・・あ・・・・」
ミーヤ「あははははは!顔が真っ赤で面白ーい。かわいい顔が台無しね。」
無邪気に笑うミーヤ、その様子はおもちゃをバラバラに分解しようとする幼い子供のようだった。
その間も手の力はまったく緩めようとせず、継続して力を入れ続けていた。
そして・・・ミーヤの手の中で小さな衝撃音が響く。
ピシッ


ミーヤ「あら?なんか音がしたわね。ああ、首のガラス球にひびが入ったのね。」
ミーヤは一旦首から手を離し、音の出所を確認した。
彼女の言う首のガラス球とは、そうハーティジュエルのことである。

ミーヤ「これって変身の時に使うやつよね・・・エアリィがピンクで、アクエリィが水色か・・・
あはは、割れちゃったらどうなるのかな?変身が解ける?それとも死んじゃうかな?」

その頃、エウロパと戦っていたアーシィとフレアーは・・・
意外にもあのエウロパ相手に善戦していた。
これはアーシィの作戦でによるところが大きい。
いくらエウロパが強力といってもミーヤやイオの比ではない。
連携することで何とか五分五分といった状況だった。

しかし・・・アーシィとフレアーはエアリィたちが危機的状況に陥っていることに気がついていた。
すぐにでも助けに行きたいと考えていたが、こちらも余裕がある状態ではない。
意識が別のところに行ってしまうとたちまち反撃にあってしまう。


フレアー「エアリィたち・・・やばいぞ!」
ガシィッ!
フレアーはエウロパの攻撃を腕で受ける。
すかさずキックで応戦。
アーシィ「ええ!わかっているわ!!くっ!でも、こっちも!はっ!ギリギリよ!!」
フレアーのキックでよろけたエウロパにパンチを繰り出すアーシィ、同時にエウロパは魔法で光球を作り出す。

エウロパ「あなたたちにおしゃべりしている余裕はあるのかしら?それっ!」
先ほど作り出した光球は二つに分かれ、アーシィとフレアーに飛ばした。
フレアーはそのまま攻撃を受け、アーシィはアーシィウォールで防ぐ。
当たった時に立ち上る爆煙に紛れてフレアーサイズの連撃。
エウロパは防ぎきれずそのまま弾き飛ばされる。

フレアー「今なら大丈夫だ!アーシィ、エアリィたちを助けに行ってやれ!このままじゃ二人ともやられてしまう!」
アーシィ「でも!」
フレアー「こっちは大丈夫、何とかなるって。さあ早く!アーシィ!!」
アーシィ「わ、わかったわ!すぐ戻ってくるから!!」
そしてエウロパとの戦いをアーシィは一時離脱、エアリィたちの所へ救援に向かう。

アーシィ「エアリィ!!!」
ミーヤの体にアーシィハンマーを叩き込むが当然ながらダメージはない。
しかし、ハーティジュエルを握りつぶそうとするミーやの手の動きを止めることはできた。


ミーヤ「あら?あなたエウロパと遊んでいたんじゃないの?エウロパったら役に立たないんだから。」

アーシィはその場の様子を見て愕然とした。
エアリィもアクエリィもピクリとも動かず、しかもハーティジュエルにひびが入っている。
そしてミーヤは無傷。それだけでミーヤの恐ろしさが理解できた。

アーシィ「そんな・・・」

ミーヤ「あーあ・・・もう飽きちゃった。すぐにあなたもこの子達と同じようにしてあげるわね。」

アーシィ「くっ・・・みんなを連れて逃げようにもこれじゃぁ・・・逃げられない・・・」

ミーヤ「ここまで来ておいて逃げようなんて考えているの?
逃げるならこの子達を見捨ててさっさと逃げていたらまだチャンスはあったのに・・・」
アーシィ「そ、そんな見捨てるなんてできる訳ないじゃない・・・」

ミーヤ「まあそうよね、あなたたちはそういうやつらだったわね。」
ミーヤは呆れるようにため息をつく。

ミーヤ「なんだか疲れちゃったし。すぐに終わらせてあげるからね。おやすみ。」

アーシィ「うぐっ・・・」
一瞬のことで何が起きたかわからなかった。
ミーヤが視界から消えたと感じた瞬間、なぜか自分は地面が目の前にあった。

薄れ行く意識の中、ミーヤがはるか遠くのフレアーの背後に迫っているのが見えた。


アーシィ「フレアーあなた・・・だけでも・・・逃げて・・・」
そしてそのまま視界はブラックアウト・・・

フレアー「お前はミーヤ!!くそっアーシィもやられたのか!!」
ミーヤ「フレアー・・・あなたもお友達のところに連れて行ってあげるわね!」
ズドンと打撃を与える。
ミーヤの攻撃はかなり重く、その衝撃で周囲の地面や空気をビリビリと震わせた。

ミーヤ「へぇ・・・あれで倒れないんだ。あなたよっぽど頑丈なのね。」

フレアー「くうっ・・・な、なんて強さだ・・・防御・・・しても・・・体がバラバラになりそうだ。
ぐっ・・・う、動けない・・・次に攻撃食らったら・・・」

ミーヤ「エウロパ・・・あなたには失望したわ。失敗続きだし、こいつらもまともに倒せないんじゃね。」

エウロパ「ミ、ミーヤ様・・・きゃぁぁぁ!」
ミーヤはエウロパを掴むと地面に叩きつけた。
ぐったりとしたままエウロパが動く気配はない。

ミーヤ「そこで寝てなさい。あとの処分はイオに任せるから。」

ミーヤ「私そろそろお腹空いたから帰りたいのよ。次で終わりにしましょうね。」
ニタリとフレアーに笑いかけるミーヤ。
そして掌に特大の光球を作りフレアーに投げつける。
その光球の禍々しい光にフレアーは恐れ戦き、無意識のうちにガタガタと震えだしていた。


フレアー「あ・・・あ・・・こんな・・・体が・・・震えて・・・動けない!こ、こんな出鱈目・・・!!」
光球が当たろうかというとき、光球とフレアーの間に割り込む赤い光があった。
そしてそのまま割り込んだ赤い光に当たり光球は爆散。
代わりにフレアーを赤い光が包み込む。

ミーヤ「エウロパぁ!!な、なぜお前が!?」
その光の正体はエウロパ・・・いや、再びレグルスが覚醒したものだった。
そしてそれはフレアーへの接触を拒絶するようにミーヤを押し退ける。
魔力を最大に使ってその光の中へ入り込もうとするも、逆に反発を強めるようにミーヤの力を削ぎ落としていった。

フレアー「エウロパ?なぜ?そ、そうか・・・やっと・・・やっと戻ったんだ・・・」

レグルス「フレアー・・・ごめんなさい・・・あなたにはつらい思いさせたわね・・・
私が来なければあなたが独りになることもなかったのに・・・ごめんね・・・謝っても許せないよね。」

フレアー「私、やっとあなたのこと思い出せたんだよ・・・ずっとあなたの暖かさ感じてた・・・守ってくれたんだよね・・・」

レグルス「守るだなんて・・・あの時の私はあれが精いっぱいだった。
そして・・・今私にできるあなたへの償いは・・・これしかできない・・・」
少しずつ二人を包む赤い光は強くなり、目が眩むほどの光になった。


しかし、エウロパからレグルスへと戻ったが絶望的な状況に変わりはない。
今にもエアリィたちのハーティジュエルは崩壊を始めようとしていた。

スピカ「この感じ・・・レグルスが戻った!?早く!早くしないとエアリィたちが!!」

アルデバラン「ああっだめだ!ハーティジュエルが崩れていく!」

エアリィ「うあああああああっ!!!」
アーシィ「うっうっ・・・死にたく・・・」
アクエリィ「た、たすけ・・・くるし・・・い。」

ピシピシとハーティジュエルにひびが入り続け、それは大きくなっていく。
その崩壊に同調するように彼女たちも苦痛は大きくなる。
そしていよいよ壊れてしまうかというその時、レグルスとフレアーを包む光は強さを増していった・・・

次回予告
圧倒的な力の差を見せつけたミーヤであった。
そんな中エウロパはレグルスへと戻ることができた。
しかしエアリィたちのハーティジュエルは崩壊が止まらない。
フレアーたちに彼女たちの危機を救う術はあるのか。
次回「Terrific!みんな仲間だよ。」
フレアー「あなたに輝くような決意はあるかしら?」

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