???「やぁぁぁ!ごめんなさい!ちゃんとするからぁ!
ここからだして・・・・ここからだして・・・まま・・・ぱぱ・・・」

暗闇で叫んでいるのは声の感じからして幼い子供であろうか、
どうしてこのような暗闇に閉じ込められてしまったのだろう。
悪戯がすぎて怒られたのだろうか、
それとも、おねしょでもしてしまったのだろうか・・・
それとも・・・
この暗闇、どうやら押入れの中らしい、布団が積み重なっている。
先ほどの声の主はなんとか出してもらおうと内側からドンドンとふすまを叩いていたが、
それでも開けてもらえず疲れてしまったのだろう布団に包まれ、
いつの間にか寝てしまっていた。

朝になり、外の明かりがうっすらと押入れの中に差し込んできた。
不意にガララッと乱暴にふすまが開けられた。

???「おい・・・おいっ!なに勝手に寝てんだよ・・・あ?」
柄の悪そうな男が布団の中にもぐりこんでいる幼児に向かって言う。
どういうことなのか、勝手に人の家に上がりこんできた不法侵入者であろうか?
その男の風貌は下品な金髪であごひげが生え、耳にはピアス、しかも咥えタバコであった。
いかにもチンピラ風の男だった。

???「ご、ごめんなさい・・・がまんできなくて・・・ひっ・・・やめて・・・ぶたないでぇ・・・ぱぱぁ。」

なんということであろう、この下品な男はこの押入れに入っていた幼児の父親だというのだ。

金髪男「いーや、反省もせずそんな勝手なことをする悪い子にはぁ、
お仕置きが必要だよな?なぁ、そう思うだろぉ?え?」

その父親は幼児に勝手に寝るなという無理難題を達成することできなかったから・・・
と言う理由でお仕置きをしようというのである。
父親は幼児のぼさぼさになった髪をむんずとつかみ、持ち上げた。

???「いたいっ!いたいいたいよぉぉぉ!やめてっ」

金髪男「おらっそこに座れっ!美夜子!!」

美夜子と呼ばれたということは、どうやらその幼児は女の子のようである。
よくみると顔は薄汚れ、表に出ている肌のあちこちに黒ずんだ痣があった。
着ている服も明らかにずっと洗濯していないのだろう、しみや黒ずみ黄ばみだらけであった。

つまり・・・この美夜子と呼ばれている幼児は風貌からして明らかに親から虐待されていた。



金髪男「なぁ、昨日なんで怒られたかわかってるのか?」

美夜子「ごはん・・・こぼした・・・から・・・です・・・」
信じられないことだが、年端の行かない小さな子供が、
ご飯をこぼしたという理由だけでここまで叱られているのであった。

金髪男「だよなぁ?食べ物粗末にしたらいけないよなぁ?
せっかくママが用意してくれたのによ。わかってんのか?お?」

美夜子「は・・・い・・・ごめ・・・ん・・・なさい・・・」

金髪男「じゃあ、お仕置きだ。ほら、腕出せ。」

美夜子「いや・・・いやぁぁぁ・・・」
美夜子はささやかな抵抗をする。

この最低な父親は小さな女の子に何をしようというのか、
骨と皮ばかりの栄養が明らかに足りていないやせ細った腕を取った。
美夜子はこれから起こることを予測し、肩をすくめ、目を閉じた。
そして、父親はおもむろに今まで咥えていたタバコを手に取り、
女の子の手の甲に押し付けようと・・・
しかし、

???「ちょっと、あんた、そんなところにタバコ押し付けるんじゃないよ。」

美夜子に救いの手だろうか。
父親の悪行を寸前に止めたのは父親と同じように頭のてっぺんが黒くなりかけた金髪、
耳と鼻にピアスをつけた・・・母親だった。
この母親も父親同様タバコを口に咥えている。

金髪女「あんたさぁ、そんなところにタバコの火押し付けたら一発でばれんだろうがよ。
あほか。最近さぁ児相の連中がうるさいからアタシが疑われるんだよ。わかってる?」

金髪男「ああ、わりぃわりぃ。んじゃ・・・ほれ、足の裏出せ。」
    • 救いの手--
などではなかった。

この母親はただ、自分の保身のためだけに父親の行動を止めたのだ。
当然、その他、の見られないような場所だったらお構いなしだった。

美夜子「やだぁ・・・あついのやだぁ・・・ままぁたすけて・・・たすけて・・・」

母親は無視を決め込んでいる。

金髪男「ほら、じっとしとけって。」


足をばたばたさせて暴れる。
当然である。足の裏にタバコの火を押し付けられようとしているのだ。
無意識にでも抵抗してしまう。
しかし・・・その抵抗もむなしく・・・

押しつけられた・・・
じゅっと言う音とともに部屋に嫌なにおいが立ち込める。

美夜子「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!あつい、あついよぉぉぉ。」

あまりの熱さに遠のく意識。

金髪男「・・・うわ・・・きたね・・・らし・・・やが・・・」

第十八話「Reverse!たすけて・・・」

この女の子の名前は美夜子、親子3人でアパート暮らし。
ずいぶんやせ細り、ちゃんと風呂にも入らせてもらっていないようだ。
顔は薄汚れており、髪の毛は適当に切られたのかボサボサだった。
そして家の中では夏でも冬でもいつも同じ服を着ているらしく、
所々がほつれ、しかもかなり汚れていた。

美夜子はいつもクマのぬいぐるみを抱えており、
愛おしそうにぎゅっと抱きしめていた。
このクマのぬいぐるみはこの家族がまだ暖かかったころに
買ってもらったものだろうか・・・今となってはもうわからない。

金髪男「おい、おれらこれからパチンコ行ってくるから留守番しとけよ。」

美夜子「や、、やだ・・・ひとりにしないで!!」

金髪男「邪魔だからくんなよボケ!」

美夜子「きゃぁぁ!」
父親は近寄ってくる美夜子を蹴飛ばした。

金髪女「早く行こうよ。新台埋まっちゃうよ!アタシ先に車行ってるからね!」

バタン

まだ4歳か5歳程度の子供に一人で留守番させ、自分たちは遊びに興じるのである。
いや、まだ車の中で置き去りにされ蒸し焼きにされないだけましだろうか・・・
彼女一人部屋に残されてしまった。


時計の音だけがカチカチと響く6畳間、しばらく蹴られたまま横になっていたが、
のろのろと起き上り傍らに転がるクマのぬいぐるみに抱きついた。
美夜子「いおちゃん、あたしとあそぼ。」

美夜子「あたしがおかあさんで、いおちゃんはあかちゃんね。」

彼女はいおちゃんと名前を付けたクマのぬいぐるみ相手にままごとを始めた。
そうしている間の美夜子の表情はとても楽しそうだ。
その間だけ純真な年相応の表情に戻ることができた。
そして、彼女が作り出すぬいぐるみとの世界は、
彼女の理想の家庭の姿だろうか。
それとも昔の家族の姿なのだろうか。
母親役の自分、絵に描いた架空の父親の姿と赤ちゃん役のぬいぐるみ。
その父親の絵は清潔そうな風貌で大きな笑顔でニコニコしている。
それはとても明るく、みな優しく、笑い声が絶えない家庭だった。

美夜子「はい、あなたごはんですよ。きょうははんばーぐです。」

美夜子「ああ、ありがとう、とてもおいしいよ。」
チラシの裏に書かれた父親の姿をぴょこぴょこと動かし食べる仕草をしていた。

美夜子「あかちゃんはみるくです。」
空きペットボトルを哺乳瓶に見立て、
クマのぬいぐるみにミルクをあげる真似をしていた。

しばらく遊んでいると朝から何も食べさせてもらっていないのか、
大きくお腹が鳴った。

美夜子「おなか・・・すいたな・・・」

ぬいぐるみを抱えてよろよろと立ちあがり、冷蔵庫を開ける。

ガチャ

中には酒類ばかり、それと酒のおつまみのようなもの、
僅かに残った昨日のご飯が入っていた。

おつまみを食べると怒られてしまうが、残り物だと怒られない。
美夜子は残り物を取り出し、テーブルに並べた。
お気に入りのコップに水を入れ、隣のイスにはぬいぐるみを座らせた。
ぬいぐるみの前にはスーパーのチラシの食べ物を切り抜いたものをお皿に載せている。

美夜子「さあ、いおちゃんもいっしょにたべましょ。おいしそうですね。いただきます。」

あの両親からどうやって教えてもらったのだろうか、
彼女はきちんと手を会わせて挨拶をした。


美夜子は僅かな食べ物を冷たいままの状態でモソモソと食べた。
まだ彼女は電子レンジの使い方がよくわからなかった。
以前見よう見まねで使ってみたら電子レンジの中を汚して散々怒られてしまい、
それ以来使おうとしなくなった。

美夜子「ごちそうさまでした。」
残り物はほんとに僅かだったのでどんなにゆっくり食べても数分で食べ終わってしまった。
そしてその食器を流しに持って行き、近くに合った台に上って自分で使った食器を洗い始めた。
奇麗にしておかないと後で怒られてしまうためだ。

食べ終わって片付けも終わると、再びままごとの続きを始めた。
延々と・・・延々と・・・
その中でだけ彼女の幸せが形成されているのだ。

そしてままごとをしたまま、いつの間にかぬいぐるみを抱えたまま寝てしまった。
幸せそうな顔をしている。
彼女の夢の中ではどのような家庭が築かれていているのだろうか。

バターーン!!ドスドスドス!!

その幸せな夢も騒音とともにかき消される。
目をこすりながら起き上ると目の前には怒りに震える父親の姿。

美夜子「ひっ!!お、おかえり・・・なさい・・・」

無言・・・

美夜子「ま、まま・・・は?」

金髪男「ちくしょう!俺の独り負けだっっっ!!
あいつだけ勝ちやがって!!」

金髪男「ママはなぁ、自分だけ勝ったからって友達と飲みに行っちゃったんだよお。
なぁ、ひでえだろう?なあ、そう思うよな?」

美夜子「う、うん・・・」
美夜子はガタガタと震えている。
こういう時の父親が自分にこの後することを考えると、
思わず恐怖に慄いてしまう。

金髪男「どうせ友達と飲みに行くって言っても男となんだろうよ!」
男はわめき散らしながら冷蔵庫からビールを出して飲み始めた。
ゴクゴクと半分ほど飲み干すと再び愚痴をこぼす。

金髪男「ったくよぉ!ああ、むしゃくしゃすんなぁ!!
なあ、美夜子、パパがイライラしてんのいやだろう?」


無言・・・

金髪男「無視すんなよ!ほら、こっち来いよ。
なあ、イライラを沈めてくれよ。ほら・・・」

その父親はごそごそとジャージのズボンに手をかけている。

金髪男「ほれ・・・いつものように・・・」

美夜子「ううっ!やだよぉ・・・そんなの・・・なんで・・・」

鬼畜の所業・・・
その一言でしかない。
彼はこんな小さな幼児に対して、しかも娘に対してこのような行為をさせる。
どうやら、その行為は今回が初めてではなさそうだ。
パチンコで一人で負けるたび、毎回させていたのだ。

美夜子は小さな口を一生懸命動かしながら、
これが夢であったらどんなに良かっただろうと祈った。
神様に祈り続けた・・・
しかし、神は無慈悲だ・・・現実がほとばしりとなって美夜子の口を襲う。

美夜子「けほけほっ・・・」

美夜子は泣きながら畳に横になっている。
その横で満足したのかタバコを吸いながら残りのビールを飲んでいる父親。

美夜子「もう・・・いやだよ・・・いやだよ・・・やめて・・・」
そばで横たわっているクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
美夜子「いおちゃん・・・たすけて・・・たすけて・・・」
    • わかった、僕が君を助けてあげよう--

美夜子「え?・・・なにか・・・きこえた・・・?ぱぱ?」

父親の方をチラリとみると二本目のタバコに火をつけているのが見えた。
そして再びクマのぬいぐるみを見る。
なにも、変わりがない。

と、その瞬間、目の前が銀色に輝き、気がつくと美夜子は眩むほどの光に包まれていた。

美夜子「え?あれ?こ・・・ここ・・・どこ?」

    • ここは僕の形成した特別な結界。
    • ここにいるのは君と僕だけだ。

美夜子の目の前に銀色に光り輝く球がふわふわと浮かんでいた。
    • 君は幸せがほしいかい?
    • 君は優しさがほしいかい?
    • 君は悲しみから逃れたいかい?
    • 君は苦しみから逃れたいかい?
    • 僕が全てを叶えてあげよう。
    • 僕が君に奇跡を作る力をあげる。
    • 君は魔法少女になるんだ。

美夜子「え?どういうこと?・・・まほう・・・しょうじょ・・・?」
    • もう一度問う。
    • 君は幸せになりたいかい?

美夜子「う、うん・・・わたし、しあわせになりたい・・・」
    • わかった。

そしてその光の球からうねうねと光る触手が伸び、美夜子を包み込んだ。
最後に光る球が美夜子の額に近づき、ズブズブを頭の中に入り込んでいった。
    • コネクト・・・我リゲルはパートナーとしてこの者の精神、肉体、時間を接続する・・・
    • そして新たな魔法少女として同化、転換を行う・・・

美夜子「なに?ああ・・・あああ・・・やだ・・・やめて・・・
わたしのなか・・・ぐちゃぐちゃぁ・・・うぇぇぇぇぇ!!」
体の中、頭の中をかき回される感覚に思わず嘔吐してしまう美夜子、

美夜子「うくっ・・・うううっ!あああああ!!
ぐっうううううあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」

美夜子「あう・・・う・・・あ・・・あ・・・」
美夜子は自分の意志とは関係なく口から言葉を紡ぐ。


美夜子「アクセプト・・・
オープンマインドトランスレーションミーヤインストール・・・」

そう叫んだ瞬間、ミーヤの体は銀色の光で包まれた。
小さかった体はぐぐぐぐっと大きくなっていき、手足がすらりと伸びて行く。
ある程度になると体の伸びが止まり、今度は体全体が光り出す。
腕は肘まである白いエナメル質のグローブ。
体にぴったりとした白いエナメルボンテージ。
白いリボンが包み込みバサッと襟が高いマントになる。
足は高いヒールのある白いブーツになった。
その体を包む白色はキラキラと真珠のように光り輝いていた。

リゲル「君はミーヤ・・・魔法少女ミーヤだ。」

ミーヤ「魔法少女・・・ミー・・・ヤ?」

ミーヤ誕生の瞬間である。
その姿は9年後とは色が違えど、衣装のデザインはそのままであった。

ミーヤ「あ・・・あああ?・・・これが私・・・?体が大きくなっている・・・」
ミーヤは自身の体を上から下まで自分に起きた変化を確認するように見回した。

リゲル「そう、君は変身すると15、6歳程度まで成長するんだ。
もちろん知識知能もね。」

ミーヤ「どうして?」

リゲル「それはその方が戦うのに都合がいいからさ。
戦うのに運動能力も知識も豊富なことに越したことはない。」

ミーヤ「戦う?誰かと戦うの?」

リゲル「うん、もうすぐこの世界に大きな脅威がやってくるようなんだ。
それを阻止するために君を魔法少女にした。」

ミーヤ「そんなの・・・怖いよ・・・私・・・」

リゲル「大丈夫、君には対抗できるだけの力が備わっている。
君の心を解放してあげるんだ。
そうすることで迫りくる脅威を阻止することができる。」

リゲル(そして僕のやることを真っ向から否定したあいつらにも・・・
そうだこれが成功したら、今までのようにわざわざ運命の適正者が出てくるまで待たなくてもいい。
自身の深層意識の解放・・・それで魔法少女を量産できる。
今度の脅威は今まで以上に強大であろう・・・
そのためには、このテストケースを成功させなくては・・・)

ミーヤ「迫りくる脅威ってどんなの?怪獣??」

リゲル「うん・・・でもそれはまだ何か分からないんだ・・・
ただ、僕の持っているセンサーに反応があった。しかも強大な反応だ。」


ミーヤ「ふーん・・・そうなんだ・・・それで・・・私はどんなことができるの?」
その迫りくる脅威と言うものにミーヤは大して興味がないようだった。
何よりも変身したことでどんなすごいことができるのか、
ということに心躍っていた。

リゲル「大抵のことはできるよ。空を飛んだり、武器を出したり、魔法を使ったり。」

ミーヤ「へぇ・・・アニメみたい・・・」

リゲル「信じられていないみたいだけど・・・」

リゲル「君を縛るものを解放して心を解き放つんだ。
自分に素直になればなるだけ力は強くなる。」

ミーヤ「そう・・・解放・・・心・・・自分に素直に・・・」

ミーヤ「解き放つって・・・手段はなんでもいいの?」

リゲル「うん、なんでもいいよ。
切欠さえあればあとは魔力は急速に熟成されていく。」

ミーヤ「ふっ・・・そう・・・解放・・・ね。
わかった・・・おもしろそうだからあなたに協力するわ。」
このとき、リゲルはミーヤの瞳の奥の闇に気が付いていなかった。
このときに気が付いていたら、あるいは・・・

リゲル(よかった・・・これで・・・テストデータを取って有用だと認められれば・・・
より強力な新しいシステムで・・・)

リゲル「よかった。わかってくれて。じゃあ、結界を解くからね。」

ミーヤ「うん。はやくっはやくっ・・・うふふ・・・たのしみ・・・」

キラキラと銀色に光る結界にピシピシとヒビが入り、
ガラスが割れる様に結界が飛び散った。

金髪男「うおっ!な、なんだお前!美夜子は!?」
思わず咥えていたタバコを落としそうになる。
それもそのはず、父親の目には美夜子が突然消えたかと思ったら、
白いボンテージファッションの少女が立っているのだ。
驚くのも無理はない。


リゲル「さあ、ミーヤ、この場から自分を解き放つんだ。
そして新たな地で僕と強大な脅威に立ち向かおう!」

ミーヤ「ふふふ・・・ええ、自分を縛っているものを・・・
解き放つ・・・わ・・・ちょっと待っててね。」
ミーヤはニヤリと笑うと何がおきているのかわからず、
呆然とミーヤを見上げている男に近づいていった。

ミーヤ「あなた・・・自分の娘にずいぶん愉快なことをするのね・・・
うふふ・・・そんな小さな子にするよりも私と楽しいことしない?」

金髪男「え?え?なんだ見てたのか・・・ぐふふふ・・・楽しいことって・・・こんなことか?」

男は圧倒的に頭が悪く、なぜ少女がそこに現れたのか深く考えるのをやめ、
少女の誘いに乗るようにむんずと乳房を掴んだ。

ミーヤ「んあぁぁぁん・・・何これ・・・すごい感じる・・・初めて・・・こんな感覚・・・」
ミーヤの体の感覚は鋭くなっており、少し触れただけでも性的電気信号が
彼女の体を駆け巡った。
当然そのような感覚は彼女にとって初めてで、強い快感に翻弄されそうになる。

ミーヤ「でも、もおおっと気持ちいこと・・・し・て・ア・ゲ・ル・・・うふふ。」

ミーヤは胸と尻を揉まれながら男の頬を撫でた。
その顔はだらしない節操のない情けない顔だった。

金髪男「は、はやくやろうぜ・・・嫁もしばらくは帰って来ないだろうし。」

ミーヤ「あらそう、じゃあ早くやっちゃおうかしら。」
リゲルはミーヤの中にある魔力が急速に増大していくのを感じた。
その増大の割合は制御できるレベルではなかった・・・
もはやオーバーロードしているレベルだった。

リゲル「ミーヤ!君は・・・そうじゃない・・・僕が言っていることはそういうことじゃ!!」

ミーヤ「ぐっ・・・頭の・・・中で・・・叫ばない・・・でよ・・・っ
邪魔しない・・・でっ!!」

リゲル「な・・・何をするんだミーヤ!!早くここから出て行くんだ!!」
リゲル(おかしい!!こんな・・・ううっ・・・なんて強い感情なんだ・・・
この僕が・・・押さえ込まれ・・・ル・・・)

ミーヤは指先でつつつーっと頬の輪郭をなぞり、
首筋を優しくなぞった。

リゲル「ミーヤ!だめだ!やめて!!!!」


そして尖った爪を首に立て、そのまま、すーぅっと右の方に引く。

ガシャァァァン

右側で食器棚と箪笥が音を立てて壊れた。

リゲル「ミーヤ・・・君は・・・なんてことをしたんだ・・・」

金髪男「え?なんだ?何が起こったんだ?かひゅっ・・・あへ・・・?ひゅーひゅーっ」
その男は何が起きたか分からないという様子で音がした方を向いた。
ところが、どうも喋り辛く、自分の首に違和感を感じ慌てて胸を揉んでいた手を離し、
代わりに自分の首を触った。

金髪男「ひぃっ!!くひっ!血が・・・ひがっ!!かひゅ!!
ぶじゅじゅじゅじゅ・・・がはっ・・・どうし・・・」

男は盛大に首から血を噴き出しながら倒れて行った。
そしてミーヤを見上げる。

ミーヤ「あら、勢いつけすぎちゃった。
ごめんね、パパ。もうこれでお別れだね。」

金髪男「ひゅーっひゅーっぱ・・・ぱ・・・?まさ・・・か・・・み・・・み・・・や・・・こ・・・?」

ミーヤ「あはっせーかーい!!今まで私にいろいろしてくれてありがとうね。
とっても嬉しかった。」

ミーヤ「ねね、パパ私ね魔法少女になったんだよ。
あはっアニメみたいでしょ。いろんな魔法で悪者やっつけるの。」

金髪男「た・・・たす・・・け・・・て。」

ミーヤ「たすけて欲しいの?うーん・・・ここまでなっちゃったら・・・
どうだろう・・・たすけられるかな?私の魔法で・・・」

金髪男「わる・・・か・・・っは・・・」

ミーヤ「今更謝るの?しょうがないわね。
ねぇ、リゲル、この人助けること出来る?」

リゲル「ああ、そうだ、君の魔法ならできるよ!
僕の力と技術を使った君の魔法なら命のねじを巻きなおすことは簡単だよ。」
リゲルはミーヤが父親の命を助けようとしていると思い、安堵した。

ミーヤ「あっそう、ねぇ・・・パパ、助かるってさ。
良かったねぇ。」


金髪男「は・・・はは・・・よひゃ・・・た・・・」
助かる希望があると知って男は泣きながら笑った。

リゲル「さあ、早くこの人の命をつなげてこの場から立ち去ろう。
もう充分だろう君の気持ちは晴れたはずだ。
大丈夫、この人には記憶が残らないようにするから。」

ミーヤは男ににっこりと笑いかけた。
直後、汚物をみるような瞳に変わった。

ミーヤ「でもね、やだ、助けない。
うふふ・・・助けたくないの。パパ、ごめんね。」

リゲル「ミーヤ!!!」

金髪男「や・・・み・・・ひゃ・・・ごふっ!!」

ミーヤ「じゃあね。」
血がぴゅっぴゅっ噴き出している首の傷口を踏みつけ、
躊躇いなく、ぐしゃっと脊椎ごと踏み砕いた。

すると顔にぴゅっと血が飛び散る。
飛び散った血を指でぬぐい、ぺろりと舐める。

ミーヤ「うふふふ血ってさいっこう!!奇麗な赤で・・・暖かくって・・・きもちいぃぃ。」

リゲル「君は・・・なんて事をしたんだ・・」

ミーヤ「リゲル・・・さっきから私の頭の中でうるさいわね・・・
おとなしくしてなさい・・・あなたが自分を解放しろと言ったんじゃない。」

リゲル「そ、そうだ・・・確かに言ったよ・・・でもこんなことは許されない。」
リゲル(確かに・・・心を解放させてから彼女の魔力は今まで前例がないほど強大になった。
しかし、何かが違う・・・何かが・・・)

そこへ酔っ払った母親が帰ってきた。

金髪女「あー飲んだ飲んだ・・・あんた帰ってるー?」

彼女はふと部屋の中を見ると、部屋の中が散らかっていることに気がついた。

金髪女「ったく・・・散らかすなって言ってるのに・・・誰が片づけると思ってるのよ!」

金髪女「美夜子!!あんたっ・・・ひっ!!!なに・・・これ・・・」


彼女が部屋を上がると凄惨な状況が広がっていることに気がついた。

床には血まみれで自分の夫だったものが転がっており、
得体の知れない服装の女に踏みつけられていた。

そして家具はめちゃくちゃに壊れていたのだ。

思わず裸足のまま逃げ出そうとする。

しかしそれはミーヤが許さない。

ミーヤ「どこいくのーーー?私お腹すいちゃったぁ。
うふふ。ねぇ、ご飯作って?ママ。」

自分のことを”ママ”と呼ぶこの得体の知れない女に恐怖していたが、
改めてミーヤの顔をじっと見るとやはり親なのだろうミーヤの正体に気がついた。

金髪女「みやこなの?」

ミーヤ「うん、そうだよ。美夜子。
でも、この姿の時はミーヤって名乗ってるの。」

ミーヤ「ねぇすごいのよ。私魔法少女になったの。
ほら、魔法少女になると大きくなれるんだぁ。すごいでしょ。」

金髪女「こ、これあなたがやったの?」

ミーヤ「うん、そうだよ。悪者だからやっつけたの。
こんなになっちゃったから言うけど・・・」

ミーヤ「こいつねぇひどいんだよ。こーんなちっちゃい私にね、
パチンコ負けると自分の舐めさせるの。」

ミーヤ「ねぇ、変態だと思うよね?ね、ね?」

金髪女「う、うん・・・そ、そうね・・・」

ミーヤ「でもね、それを知ってて止めなかった、
お前もひどいよね・・・」
ミーヤは母親の髪をがしっと掴み、
頭を傾げながら至近距離で顔を覗き込んだ。

金髪女「ひっ・・・いた・・・いたいっ!!!やめ、やめて!!!」


ミーヤ「私もねぇ・・・痛かったんだぁ・・・でも・・・
やめてくれなかったよね?やめさせなかったよね?ね?ね?」

ミーヤ「あんたが考えているのは自分の保身ばっかり・・・
私のことなんてこれっぽっちも考えてくれなかった。」

ミーヤ「でもね、感謝もしてるんだよ・・・
おかげで忍耐力ついたし・・・ねっ。ありがとう、ママ。」

金髪女「た、たすけ・・・な、なんでもする・・・から・・・
ほら、お金、お金!あなたが望むだけお金あげる!!」

ミーヤ「うふふ、わーい、お小遣いくれるの?ありがとう!!」

ミーヤ「ママだーいすき!!」
ミーヤは髪を掴んでいる手を離し、女に抱きついた。

金髪女「う・・・うう・・・み、美夜子・・・」

ミーヤ「なーんて言うと思った?あはははははっ」

抱きしめたままギリギリと力を入れていく。

金髪女「ぐっ・・・くる・・・し・・・い・・・やめて・・・ぐふっ・・・」

リゲル「ミーヤ!!君は父親だけでなく母親までも!!」

ミーヤ「うるさい!!うるさいうるさいうるさい!!
私は魔法少女になったんだ!悪いやつを倒すんだ!!」

ミーヤは頭の中で響くリゲルの声を自身の魔力で押さえ込んだ。

リゲル「ぐっ!!そんな!!僕が魔力で圧倒されるなんて!!」

金髪女「やめて・・・かはっ・・・やめて・・・たすけて・・・」

女の命乞いも構わずそのまま締めていく。
ミシミシと体中の骨が軋む音が聞こえてくる。

ミーヤ「うふふ、ママって泣きそうな顔こんなに可愛かったんだ・・・
ねぇ、あんまりカワイイから最後にキスしてあげる。んちゅ・・・」

ミーヤは自分の母親であるにも関わらず唇を合わせた。
その艶めかしい動きは、本当の姿が幼児とは思えないほどいやらしく、
扇情的に母親の唇、舌を攻め立てる。
その動きに痛みと苦しみを感じていたが、同時に絶頂も感じるほどだった。


金髪女「ちゅぷっ・・・んっんっんっはぁ・・・いやっ・・・くふっ
あああああっくるし・・・ううっくふっ・・・んあぁぁんっ!」

シャァァァァァ

ミーヤ「あら、ばちっちぃ、おしっこ漏らすほど気持ち良かった?うふふ。
良かった喜んでもらえて。」

ミーヤ「うふふ、最後にいい思いできたし、名残惜しいけど・・・
そろそろお別れだね。」
ミーヤはぐぐっっと腕に力を入れる。

金髪女「かっ・・・かはっ・・・いや・・・や・・・め・・・ごめ・・・」

ミーヤ「もう・・・謝っても・・・手遅れなんだよ・・・じゃあ・・・ね・・・」

腕に一層力を込めるとボキンといとも簡単に背骨が折れた。

そしてそのまま絶命。

ミーヤ「あはははっ!やった!これで、私は!自由だ!!
もう誰にも邪魔されない!もう誰にも傷つけられない!
もう誰も・・・愛してくれない・・・あれ・・・なんで・・・私・・・泣いてる・・・の・・・?」

ミーヤは泣きながらその場にへたり込む。
ミーヤ「ぱぱ・・・まま・・・寂しいよ・・・私・・・寂しい・・・」

リゲル「ミーヤ・・・君は・・・魔法少女として君はやってはならないことをした・・・
僕の理論は失敗した・・・コネクトを解くことはできないが・・・
せめて・・・ミーヤという存在を眠らせよう・・・君に勝手なことをした僕を許してくれ。」
リゲルはミーヤの変身を解いた。
そして、一瞬光に包まれ元の幼い美夜子の姿へ戻った。

ミーヤ「あ・・・れ?なに・・・これ・・・ぱぱ・・・?まま・・・?なんで・・・なんで・・・
いや・・・いや・・・しんじゃった・・・?
いや・・・いやぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!」

美夜子の強烈な感情の爆発、それは変身していなくても強い魔力の振動を感じるほどだった。
ビリビリとアパート全体はおろか美夜子を中心として半径100m圏内全てが震えた。

そして、美夜子の体は黒い光がシュウシュウと漏れ出ているように取り囲んでいった。

リゲル「ま、まずい・・・予想以上だ・・・こんな・・・計算違いか・・・このままだと・・・美夜子・・・君は・・・魔力に・・・
こんなにも大きなポテンシャルを秘めていたなんて・・・これでは僕も・・・う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

リゲル「魔力・・・の・・・転換・・・が・・・起きるっ・・・」

リゲルの持つセンサーのアラームが大きく鳴り響く。


リゲル「そうか・・・脅威って・・・僕らの・・・ことか・・・」

美夜子を中心に光が吸いこまれていった。
リゲルの本体からは銀色の光が美夜子に吸いこまれていく。

リゲル「ははは、これじゃぁやつらも実装に反対するわけだ・・・」

リゲル「わかっていなかったのは僕一人だけだったか・・・」

リゲル「このままでは僕も美夜子も・・・消失してしまう・・・せめて・・・美夜子だけでも・・・」

リゲル「美夜子が執着しているもの・・・なにか・・・」

リゲルは傍らに落ちていたクマのぬいぐるみを見つけた。

リゲル「あれは・・・美夜子の大事な・・・モノ・・・アレと同化して・・・
僕との接続を一時的に遮断・・・できるか・・・迷っている場合・・・じゃ・・・ないか・・・」

美夜子を包む光は徐々にくすみ、闇に近い色になっていく。
陽の魔力から陰の魔力への転換が起きている状態であった。
これ以上の逆流が起きるとミーヤは体ごと闇に消えてしまう。
そうなってしまうと魔力の暴走が起き、世界の破壊が引き起こされるだろう。

リゲルは自身の光が吸いこまれていくのを感じながらもクマのぬいぐるみと同化を始めた。

リゲル「ぐ・・・これでも・・・魔力の転換が収まらな・・・イ・・・イイイ・・・
僕がすべて魔力を発生する陰の魔力を吸い込んで・・・爆発させれば・・・あるいは・・・」
クマのぬいぐるみの姿となったリゲルはアパートの窓を割って飛び出し、
自分の魔力を爆発させた。

リゲル「あアあ・・・こレ・・・で・・・美夜子とノ接続は
一時的に遮断されレレるハずだダダ・・・」
リゲル「ウうう・・・モもウ・・・僕ハ・・・闇に・・・堕チ・・・る・・・」

ぬいぐるみとともにリゲルを包み込む光は徐々に輝きを失っていき、
黒い靄のようなものを纏っていった。

リゲル「あアア、落チル・・・堕ちル・・・堕チる・・・キモちいい・・・
ナンデ僕ガ、コんなことニナッタ・・・んだ・・・憎い・・・あイイツらノセイだ・・・復讐してヤヤやる・・・
僕を馬鹿にシシしたアアアいつらに・・・僕が作ったタたのに・・・ゼゼ全部僕が作ったのニに・・・」

リゲルはフラフラと美夜子の元へ戻っていった。
美夜子は茫然と立ち尽くしている。


リゲル「ふフフ・・・ボくはもウ光を失っタタ・・・モモもう陽の魔力がないンンんだ・・・
これでハ・・・僕は・・・もうリゲルじゃナクなった・・・
このぬヰぐるみノノの名前をもらっテ・・・イイイイオと名乗ろう・・・フフフふ・・・」

イオ「美夜子・・・いヤ、ミみミーヤ・・・君は深ククく眠っていてくれ・・・
大丈夫・・・後のことは僕がやるからラ・・・キミの器はまダチイさすぎル・・・
僕が守ってアアあげるから・・・どうか安らかニニに・・・」

光を失いイオとなったリゲルは美夜子の足元に倒れた。

美夜子「いお・・・ちゃん・・・?」

ドンドンドン!

不意に扉が叩かれる。

大家「大家ですが、何があったんですか!!大丈夫ですか!開けますよ!」

ガチャガチャ・・・バタン!

大家「ひぃっ!!!け、警察!!!うぷっ・・・」

周囲の住人からの問い合わせで美夜子の部屋に大家が駆け付けたが、
そこで大家が目にしたものは凄惨な光景であった。
部屋はめちゃくちゃ、そして男女が血まみれで倒れており、
その血を浴びた幼女がぬいぐるみを抱えて茫然と立っていたのだから・・・

警察の見分では、部屋が荒らされている様子から強盗殺人と判断された。
それはそうだろう、あり得ない力で男は首の骨が潰され、
女は背骨が締め折られていたのだから・・・美夜子に容疑がかかることはなかった。
何より美夜子にはミーヤであった時の記憶が一切なかったのだ。
そして美夜子は孤児として施設に預けられた。

そこでも美夜子の安住の地ではなく、いじめ、性的虐待・・・
心の傷は心の闇は深く大きく刻まれていった。
そう、ミーヤが再び表に出てくるまで。


そしてミーヤが眠りに付いてから数カ月が過ぎた。
そこに遥か彼方よりリゲルを追って来たものがいた。
リゲルを探しに来たレグルスだ。
彼女はリゲルの魔法少女開発のパートナーだった。

その彼女の波動をいち早く感じ取ったリゲル・・・いやイオは、
その者をミーヤの眠りを妨げるものと判断した。
イオは依り代にしているぬいぐるみから出てきてどす黒い光球となった。
そしてレグルスがこの世界に顕現した直後、彼女の目の前に立ちはだかる。

イオ「君は・・・レグルス・・・だね・・・?」
レグルス「?リゲル・・・?でもこの感じ?・・・どうしたというの?」
イオ「まさかとは・・・思うけど・・・僕を追って来たのかい?」
レグルス「そうよ!今ならまだ間に合う!早く帰って計画の中止を!」
イオ「ふふふ・・・なんだ・・・そんなことか・・・計画の中止ね・・・それは無理な相談だよ。」
イオはレグルスの提案に思わず笑ってしまった。
彼には彼女の提案がとても滑稽に感じたのだ。

レグルス「無理な相談って!あなたも本当はわかっていたでしょう?あの理論には矛盾があるって。」
イオ「矛盾?そんなことないさ・・・これは素晴らしい力になるよ。だって僕らの仲間が制限なく増やせるんだよ?」
レグルス「リゲル・・・あなた・・・どうしたの・・・?それにさっきから鳴っているこのアラームはもしかして・・・」
彼女はイオと会ったときから違和感を覚えていた。
そしてその違和感は彼女自身の心に警鐘をならしていた。
そう、鳴り響くアラーム音のように。

イオ「ああ、うるさいよね・・・このアラーム・・・そう、ここに脅威が迫っているっていうことなんだ。」
レグルス「やっぱり脅威センサーの音なのね?・・・早く何とかしないと!!だからお願い!」
イオ「うーん・・・どうしようもないんだ・・・だって・・・このセンサーが反応しているのって・・・
僕と僕のパートナーに対してだから。」
レグルスはイオの言っていることが俄かに理解できなかった。
しかし、彼が冗談を言うような人ではないことは十分に分かっていたため、
イオの言っている言葉の意味がわかってくると恐怖を感じ始めた。

レグルス「リゲル!!あ、あなた・・・もしかして・・・陰の魔力に・・・支配された・・・の?」
イオ「さぁ・・・どうだろう・・・でも、これだけは言える。僕の邪魔をするのは君といえども許せないなぁ・・・」
レグルス「そんな・・・禁忌の力が・・・こ、このままでは・・・い、いけない!!」
イオ「いけなかったらどうするんだい?」
レグルス「あなたを力ずくでも連れ戻します。」
イオ「うふふふ・・・昔から君は面白いこと言うよね・・・でも、でもねレグルス、
どんな奴でもあの子の眠りを妨げるのは許さない!」
レグルスはイオの陰の魔力が膨れ上がるのを感じた。

レグルス「!!この力!?そんな・・・過去の脅威とは比べ物にならない!!
それほど器のポテンシャルが大きいってこと!?」
レグルスはその力に恐怖し、その場を高速で離脱。
しかし、すぐに追いついてしまうイオ。


イオ「おそいね・・・どうやら君のパートナーの所へ向かっているようだけど・・・
そんなことはさせないよ。」
レグルス「そんなっ!仕方ない!」
レグルスはイオの周りに凍結フィールドを展開。
イオを封じ込めた。

レグルス「これでしばらくの間は時間が稼げる!」
しばらく飛んでいるとレグルスのパートナーとなる子供が見えた。
その子供は仲良く家族3人で歩いていた。

レグルス「ど、どういうこと?・・・彼女の適性反応がまだ小さい・・・
これでは魔力変換ができない・・・しかし今日彼女が魔法少女になるのは規定事項のはず・・・」

イオ「ふふふ、教えてあげようか?なんで彼女が魔法少女になる運命なのか・・・」
イオは困惑するレグルスの前にいつの間にか立ちはだかっていた。

レグルス「リゲル!!もう解除してきたというの!?」

イオ「あたりまえじゃないか。この凍結フィールドも開発したのは僕なんだから。」

イオ「そうそう、さっきの疑問の答えだけどね・・・恐らくこういうことなんだ。」
イオは体を光らせると触手のようなものが伸び、その家族の前を歩く男に突き刺した。
レグルス「やめ・・・やめろぉぉぉぉ!!!」
イオに攻撃を加えるも彼は全く意に介さず行動を続ける。

びくんと体を震わせると、その男はくるりとその家族の方を向き、
人間ではありえないような力で・・・その女の子の父親と母親を一瞬のうちに絞殺した。
一緒に歩いていた子供はわけもわからず茫然と立ち尽くす。
レグルス「あ、ああああああ!!!!な・・・なにをするんだ!!リゲル!!!
あなたは!あなたはぁぁぁ!!」

イオ「おかしいなぁ・・・君たちの既定通りにしただけなんだけど・・・
むしろ僕に感謝してほしいよ。お手伝いしてあげたんだから。ほら、適性反応も大きくなったはずだよ。」

レグルス「っくっ・・・そんなことで!!」

イオ「おや?魔法少女にしないの?じゃあ、そのまま彼女も殺しちゃうけど・・・
そうなるとしばらくは次の魔法少女は出てこないよ?いいの?
まあそうなったら次はないと思うけどね。」

レグルス「そんな・・ごめんね・・・ごめんねぇぇ・・・なんでこんなことになっちゃうの?」

再び凍結フィールドをイオの周囲に展開。
今度は少しでも時間が稼げるようにそれぞれ違う術式で3重に展開した。

少女「あ・・・おと・・・う・・・さん・・・おかぁ・・・さん・・・?あ・・・う??
ああああああああああああああ!!!!!!!!!」
その少女はわけもわからずがくがくと震えただ、叫ぶばかり、
それはそうだろう、家族の団欒を突然壊されたのだから・・・


レグルスは再び少女の周囲に凍結フィールドを展開。
レグルス「ごめんなさい・・・南野灯莉さん・・・こんな状態だけど・・・
あなたを魔法少女にするわ・・・今この脅威に立ち向かえるのは・・・
あなたしかいないの・・・」

レグルス「コネクト!我レグルスはパートナーとしてこの者の精神、肉体、時間を接続する!
そして新たな魔法少女として構築を行う!」

レグルスからルビー色に輝く光が発せられ、灯莉が光に溶け込んでいった。
そのうち光が繭状になり、レグルスと灯莉ごと包み込んだ。

レグルス「灯莉・・・ごめんなさい・・・こんなことになってしまって・・・
あなたのご両親のことは・・・」

灯莉「あ・・・ああ・・・どう・・・して・・・おかあさん・・・おとうさん・・・」

レグルス「私があなたを守ってあげるから・・・絶対守ってあげるから・・・
今は・・・こんなの勝手なお願いだけど・・・魔法少女となって私と戦って・・・ごめん・・・許せないよね。」

灯莉はレグルスの言葉には反応できない・・・あまりにも突然すぎたのだ。

レグルスはこんな形でまだ幼い彼女を魔法少女にすることに強い罪悪感を覚えていた。
しかし、迫りくる強大な脅威に対抗するにはこれしか方法がなかった。
脅威に対抗できる唯一の存在、魔法少女・・・

あとは彼女にハーティジュエルを装着させ、変身呪文を唱えれば魔法少女として覚醒する。

ところが、絶対防御をこじ開けてくる存在があった。

レグルス「っくっ・・・やっぱり・・・だめか・・・はやくしないと・・・無理やりにでも・・・」

イオ「やぁ、もう魔法少女にした?まだだよね。よかった。」

レグルス「・・・私たちを・・・どうする気?殺すの?」

イオ「んー最初はそう思ったけどね・・・ちょっと面白いこと考えたんだ。」

レグルス「ど、どういうことよ。」

イオ「ふふふ、君もちょっとしばらく眠ってもらうよ。」


イオはレグルスと灯莉を束ね、灯莉の体の中にレグルスをズブズブと埋め込んでいった。

レグルス「なっ!!やめ・・・やめろ・・・私を封印するというの!?」

イオ「そう、正解。しばらくこの子の体の中で眠ってて。
時が来たらこの子を僕らの側に引き入れるから。」

レグルス「やめなさい!そんな・・・そんなことができるわけが!」

イオ「ふふふ、僕を誰だと思ってるの?僕らの世界のシステムほとんどを開発したのは・・・
僕だよ?新しい魔法少女システムを応用すればそれは造作もない。」
イオが冷静に会話を続けている間にどんどんレグルスは灯莉の体の中に入っていった。

レグルス「こんな・・・中途半端な状態で・・・魔法少女化を止めたら・・・何が起こるか・・・」

イオ「そうだね・・・封印はできるけど、そのあと何が起きるかわからないね・・・
魔力の暴走が起きるかもしれない。」

レグルス「っく・・・私が封印されても・・・私は・・・この子を守る!
リゲル!覚えておきなさい!あなたを必ず元に・・・」
レグルスが灯莉の体の中に全て収まる瞬間、
最後の力を使って灯莉の体表面に薄い防護膜を展開させた。

イオ「ふふふ・・・へぇ・・・君も面白いことするんだね・・・
まあ、いいか・・・ミーヤが目覚めるまでこの子を守っておいてくれ。
さてと・・・僕もミーヤが目覚めるまで眠るとしよう。
次の魔法少女はだいたい八年後か・・・」

イオは満足そうに笑うとその場から静かに消えていった。

そして内にミーヤの存在が眠ったまま美夜子は6歳になった。
幸いなことに彼女は子供のできない夫婦の西田家に引き取られ最初こそ心を閉ざしていたが、
暖かく優しくそして何より本当の娘として真剣に彼女と接してくれるこの家族に心を開いていった。
楽しい人たちに囲まれ、環境も良くなり徐々に明るくなっていった美夜子であった。
しかし幼少時に刻まれた深い深い傷は消え去ることはできなかった。
上辺だけ隠すことはできてもその暗闇は時として美しい上辺を突き破って出てくることがあった。

それが彼女の見る悪夢。

西田家に引き取られてからも時々悪夢にうなされることがあった。

その度に一晩中大樹、紗英にそばにいてもらい、
美夜子の心が落ち着くまでずっと手を握ってもらっていた。


そして約束の八年が過ぎていった・・・

美夜子は深い眠りに落ち、
ミーヤは眠りから目覚める。

イオ「ミーヤ・・・八年ぶりだね・・・気分はどうだい?」

ミーヤ「すごく気分がいいわ。」

イオ「君が眠っている間魔力はずいぶんと安定した。
でも君の力は強大すぎる。その強大な魔力に対してそれを納める器はあまりにも小さい。
だからすぐに魔力が溢れて制御不能になってしまう。
まずは器を大きくして魔力を常に安定させるために別のエネルギーを集めなければならない。」

イオ「イオ・・・私のカワイイくまちゃん・・・分かっているわ・・・
力を集める・・・ふふふ・・・うん、わかってる・・・器を大きく・・・エネルギーを集めるやりかた・・・」
ミーヤは素直でまだ子供っぽいところのある美夜子とは対照的に、
ますます妖しげで艶めかしい雰囲気を纏うようになった。
そして、増大した陰の魔力によりパールホワイトに輝いていた衣装は黒く染まっていた。
ミーヤはエネルギーを集めるために夜の街を飛び立っていった・・・

次回予告
エウロパとともにミーヤ、イオも魔法少女たちを襲ってきた。
絶対的な力の前になす術なく倒れていく魔法少女たち。
満身創痍ながら最後まで立っていたフレアーにミーヤの攻撃が!
このまま彼女たちは全滅してしまうのか。
次回「Shiver!なぜ・・・お前が!?」
フレアー「おまえに輝くような決意はあるか?」

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