話は、僕が中野先輩に処女をささげた日に戻る。

「さぁ、あゆこ、おいで。」
真優がベッドに横たわって呼吸と整えていた僕の手を取った。
「えっ?どこへ?」
裸のままの僕の手を引いて、浴室の中へと連れて行った。

中野先輩は、一足先にやってきて、ジャグジーにつかっていた。
僕と真優がそこに入ると、こっちを向いた。
「駿、これからあゆこにおしっこの仕方を教えるから、あっち向いてて!」

そう言って、そこにある洋式のトイレまで僕を連れて行った。
「えっ?・・・そんな・・・」
僕はまたしても突然のことにたじろぐ。
「男じゃないんだから、今までと違うんだよ。ここならちょっと失敗しても大丈夫。さぁ、どうぞ。」

真優と先輩のいるところで、排泄を強いられる僕・・・
「えっ・・・?」
戸惑う僕。
「ほら、かならず座って、するんだよ。」
満面の笑みで微笑む裸の美女。
僕はその言葉に縛られるように腰を下ろす。

「さぁ、脚を開いて!」
黙って僕は言うとおりに脚を開く。
すると、真優は、先輩の肉棒との結合を終えたばかりでまだ乾いていない、
ぬるぬるの、僕の「大事なところ」に手を伸ばそうとする・・・


「あっ・・・」
期待が、僕に先に声をあげさせた。

しかし、その「大事なところ」に至っても、気持ちよくなるところではなく、
その一歩手前で手を止めた。
「ここから・・・おしっこがでるのよ。どう、でる?」
「そんな・・・いきなり・・・」

そう、いきなりはムリだったし、こんな状況で簡単に出てこない。
「もう、しょうがない子ね。」
真優はそういうと、今度こそ僕の、ぬるぬるのアソコをまさぐり始めた。
「あっ・・・そ・・・いや・・・」

「さぁ、おしっこしたくなった?」
にゅちょ、にゅちょ・・・そんな音を立てながら、僕のアソコに真優の指が入る。
「あぁん・・・まゆ・・・だめぇ・・・」

気持ちよくて、つい声が出てしまう。
カラダを前に逃そうとする、腰が浮く。
「だめよ、すわってなきゃ。」
その声で体の動きが止まる。
「あぁん、はぁ・・・ふぅん・・・」
腰を落として、体を動かすことが出来なくなった。それでも、女芯から全身に電流が走ってしまう・・・
真優は、僕の感じる場所をすぐに探し当てた。

「どう、うまいでしょ?」
「はぁ・・・あぁん・・・まゆ・・・いや・・・」
上半身をくねらせながら感じてしまう。
そして、そのときが訪れようとしていた。

「あぁん・・・あぁん・・・だめぇ・・・いい・・・いい!」
「いっちゃうの?」
「イっちゃう・・イっちゃう・・・だめぇぇ・・・!」
しゅー、っと音を立てて、僕のアソコから液体が流れ出した。

それがおしっこなのかどうかは、わからなかった。
とにかく、先輩の指で搾り出された、エッチな蜜とはちがう、もっと、液体チックなものが勢いよく出た。

「はぁ・・・はぁ・・・」
同時に、僕は目の前が真っ白になって、今日2度目の「絶頂」を迎えた。



「あ〜ぁ、やっぱり汚しちゃったね。」
それが、おしっこだったのかどうかはわからない。
とにかく、その液体をだす瞬間、僕は結局腰を浮かせてしまい、
便器の中にうまくその液体を出すことが出来なかった。

「いやぁ・・・」
僕はその液体があたりに飛び散るのを見て、顔を赤くした。
そのとき、一瞬気になったのは中野先輩だった。
先輩がいるほうを見ると、驚いたことに先輩は、僕の目の前に立っていた。
「せ・・・せんぱい・・・」

先輩にこんなところを見られたしまった。
真優にも、先輩にも見られてしまった。

生まれたばかりの女の子である僕にも、それは恥ずかしすぎる瞬間だった。

「次は、ちゃんとできるようになるといいな。」
そう言って先輩は笑った。
「うぅ・・・いゃ・・・」
私は恥ずかしくて、言葉がなかった。

「おしっこしたあとはちゃんと拭くのよ。」
真優が、濡れたままの僕の尿道に、トイレットペーパーを優しく当てた。

「真優・・・どうして・・・」
「そりゃ、女の体のことはよくしってるもの・・・」
「真優・・・いつもこんなことを?」

「・・・うん・・・昔からね・・・あたしは、毎日、駿を思ってオナニーしてた。
処女のまま・・・でも、気持ちよくなるとつい漏らしそうになるんだよね・・・」
そういって笑った。
男のまま、気持ちが変わっていない僕は、またひとつショックな事実を知らされた。
あの真優が・・・清純な真優が・・・高校の頃からそんなことをしていたなんて・・・



「だから、今は、幸せなの・・・AVのお仕事やってても・・・さぁ、シャワーにいこう。」

僕は理解できなかった。そんなに好きだった先輩と、僕がセックスしているのを平気な顔をして見守り、
その後僕をシャワーで洗ってくれたりもする真優のことが。

すくなくとも、その後、先輩と真優のセックスを見せられて、いや、
「見るように命令されて」見守っていたときには、平常心でいることなど出来なかった・・・
まだ、自分が「選ばれた者」であることを理解していなかった。

美男と美女、かなうことのない夢のような存在である二人のセックスは、
それこそ手の届かない世界の出来事のようだった。

その日、理想のAV女優となるべく、プロデュースされた体を与えられた僕だったが、
先輩の「プロデュース」は体を与えて処女を奪っただけで終わるものではなかった。
AV女優としてデビューするその日まで・・・僕にはさまざまな教育が与えられた。

まず、最初の教育は、なんというか・・・自分が女であり、もう後戻りはできないことを教えられる出来事だった。

「おきろ、あゆこ。朝だぞ。」
処女を失ったホテルで、いつのまにか眠りについた僕が目を覚ましたのは、
先輩に声をかけられてのことだった。
「あっ・・・」

目が覚めて、まずそれが現実であることを知った。
昨日起きたことが・・・すべて現実であることを。自分が女の体を持っていることと、
真優の目の前で、先輩に処女をささげたこと・・・
しかも、嬉々としてささげたことを・・・

そして、次に覚えたのは幸福感だった。
目を覚ましたときに先輩が目の前にいた。そのことの幸福感を言葉で説明するのは難しい。
昨日僕の体に起きた突然の変化を受け入れてしまったのは、
この人にかわいがってほしいという、欲望からだったのだ。

そして、恥ずかしくなった。
裸で寝ていた自分の胸をとっさに隠した。
何かがもう変わってしまっていた。自分が女であることを起きた瞬間に思い出した。


「さぁ、出かけるぞ。それに着替えろ。」
「えっ?でかける・・・って・・・そういえば、真優は?」
帰るではなくて、出かけるという言葉が不自然に感じられた。そして、きょろきょろと見回しても、昨日いたはずの真優の姿はなく、雰囲気もなかった。

「あいつは今日仕事だから、朝一の電車で東京に帰ったよ。」
「えっ?じゃ、ここは・・・・?」

ここが東京だとばかり思っていた僕は、驚いて、そして不安を感じた。
「それに着替えるんだ。すぐにわかる。」

先輩が指差した方向には、黒い女の服が・・・喪服のようだった。
現実・・・気持ちよかったからといって、浮かれてばかりもいられない現実。
真優は「仕事」だという。AV女優の真優が仕事に行ったということは・・・

男だった記憶まで失ったわけではない。ずうっと、僕の人生のヒロインだった真優が人に見られるために体をさらして・・・裸をさらして、
そしてセックスしている。

その現実が洋服を手に取る僕に複雑にのしかかっていた。

初めて着る女の衣服が、喪服というのは意外だった。

想像が頭の中を駆け巡る。なぜこんな服を・・・
でも、そんな不安も「女」としてのいくつもの初めての体験をこなすのに精一杯の僕は、
じっくり感じる余裕がなかった。

ブラジャーをつけるのに先輩に手伝ってもらった。
薄いレースのパンティも、黒いストッキングも、自分が女に生まれ変わったことを改めて感じさせられる。
特に化粧はしなかった。髪も何もしなくても綺麗なままだ。
ただ、黒いワンピースに身を包んだ美少女がホテルの大きな鏡に映った。

先輩に手を引かれて、駐車場から外へ・・・そこですべてを悟った。
「先輩・・・ここは・・・」
「・・・」
先輩は何も応えなかった。そこは、僕たちが卒業した高校のすぐ近くのラブホテルだったのだ。


なぜこんなところで・・・いや、まさか・・・今日これからどこに連れて行かれるのか、考えるよりも先に予感はあった。でも、心の準備は出来ていなかった。

「今日は、お前の、いや、梶原亮の葬式なんだ。」
「・・・」
赤信号のとき、先輩が沈黙を破って口にした。僕は、なにもいえなかった。
ただ、心臓が、女の子になってから一番激しく、ドキドキ動いていた。

「男としてのお前に、お別れするんだ。」
先輩の話では、男としての僕、梶原亮は、何かの急病で死んでしまい、今ある僕のこの体とは別に、死体もあるという。
東京にいるとばかり思っていた僕は、昨日選ばされたはずの新しい人生・・・女としての人生が、男として生きてきた19年間と無関係では済まされないことに動揺していた。
この場所で、もし自分の知っている人と会ってしまったら、どうしよう・・・

あまりの気持ちよさと衝撃に、漠然と「新しい」人生を疑わなかった僕。
しかし、男としての僕は突然消えてしまったわけではなくて、ちゃんとその人生に終止符が打たれているのだ。

女の子になって、一日・・・夢のような快楽に、僕は浮かれていた。
僕は女の子として生きること・・・そして、AV女優になること・・・
セックスにおぼれることを、自ら確かに選択した。
でも・・・男として生きていたころのすべてと決別するかどうかとは、また別問題だ。

その気持ちの準備が出来ていなかった。
いや、そんな準備をする暇などなかった。
考えてみれば、僕が引っ越してきた東京の部屋は?学校は?友達は?
今までの人生はどこへ行ってしまう?

そんなこと・・・喪服を見せられたときからモヤモヤと頭の中に渦巻いていた不安が、
いま、一気に頭の中に噴出した。
僕は女の子になって・・・それで、いったい誰になるの?

「考えなくてもいい。お前はあゆこ、今日はただ梶原の葬式に出るだけだ。」
不安に支配された、僕の思考に、「考えるのをやめろ」という先輩の命令が響く。
「お前はただ座って、焼香して、俺が帰るときに一緒に帰ればいい。何も心配するな。」

次の赤信号で、先輩が僕の目をじっと見つめる。
それだけで、不安がすぅっと消えていく。とても不思議だった


「せんぱい・・・」
すべてを・・・今僕はすべてをこの人に支配されている。
女の体・・・心・・・こんなにも弱いものなのだろうか・・・

だが、一方で、僕の心の中にはまだ男が残っているのも事実だ。
「それに、きっと最後のチャンスになる。お前がもし男に戻りたければ・・・
今日が最後のチャンスかもしれない。

ビクっと体が震えた。
簡単なことだった。僕が今までの家族の、知り合いの、
友人の一同に会する場所に立って、男としての「自分」が・・・
梶原亮としての自分が、死んだことを受け入れたまま帰ってくるなんてことがあるか・・・

普通に考えれば、僕は・・・その場で自分の正体を明かして、中野先輩のやったことを白日の下にさらして・・・
もう一度、家族と今までの暮らしを取り戻そうとするかもしれない。
僕を、勝手に殺して、体を作り変えてしまった・・・
大きな犯罪を犯していることが誰の目にも明らかな先輩にとって、
僕を葬式の場に連れて行くことは、野にライオンを放つようなものだ。

「戻りたければ、今までの、元の鞘に戻れるかもしれないな。」
そういって僕の目を見つめる先輩の眼は笑っていた・・・
先輩は、確信しているのだ・・・僕がそんなことをするはずがないと・・・
僕は男に戻ろうとするよりも・・・「あゆこ」としての自分を選ぶだろうと・・・

それは僕にとっては・・・屈辱的なことでもあった。
女の体・・・あゆことしてのカラダ・・・それは底なしの快楽を与えてくれる魔法だった。
たった一日・・・たった一日味わっただけでも、もう捨てることは出来ない。そのことを先輩は知っているのだ。

快楽に溺れきった淫乱女・・・たった一日で淫乱女としての自分を受け入れた「男」。
そんな、淫猥な存在としての自分を・・・見抜かれてしまっている。

そして、僕はそのことを知っていて、それでも女として生きることを選ぶ・・・
そのことまで見抜かれてしまっているのだ。
あの快楽は忘れられない・・・男の体では決して味わえない・・・
恥ずかしくていやらしいことが・・・大好きな・・・自分を・・・もっともっと満たしてほしい・・・
Hな自分をもっと・・・
正直な気持ちを見抜かれているのだ。


そして、そこまで見抜かれてしまっているから、僕は先輩にすがるしかない。
「オンナ」であることを選んで、先輩に守ってもらうしかない。
今は・・・先輩が僕を守ってくれるはず・・・根拠がなくてもそう信じるしかない。

「先輩・・・心配しないでください。私は・・・あゆこですから・・・」
そんな気持ちを一言で表す。先輩は、どこか冷たくて、
どこか暖かい目つきで僕を見つめる。
その瞬間・・・僕は大きな暖かい何かに包まれて・・・
すべての不安がどこかにいってしまうのだった。

とはいえ、車が動き出すともう一度不安が襲ってくる。
心臓はバクバクいって止まらない。気持ちは不安でぐちゃぐちゃだった。
なぜか、女の「大事なところ」から、エッチな汁があふれ出しそうになる。

僕は、今にして思えば、興奮していた。
自分が自分でなくなることに・・・今まで生きてきたすべてをこの人に・・・
先輩に奪われてしまうことに・・・

そして、その先に限りない転落と、快楽が待っているような気がして・・・
まったく先の見えない・・・
まったくわからない未来は、それでもひとつだけはっきりしていることがあった。

この体があれば、セックスはしたい放題だし、カラダはいくらでも快楽を得ることが出来る・・・

女の子になってわずかしかたっていない僕は、
もう、女の体を手放せないほどまで、この体の気持ちよさを知ってしまったのだ。
男として生きてきた人生をすべて奪われるのに・・・そのことをこれから、自分で認めに行くのに・・・
僕は興奮してしまっていたのだった。

そのことをこれからはっきりと認めにいくのだ。
でも、一方で、どこかに残っている「男」と今までの自分への「未練」が突然騒ぎ出したら・・・
僕は「あゆこ」としてのすべてを捨ててしまうかもしれない。
その「不安」は簡単には消えそうもない。


「さ、ついたぞ。」
車が駐車場に入った。
でも、そこは斎場の駐車場ではなかった。僕も知っている。斎場はここからもう少し行ったところ。
「先輩・・・」
不安げな目で僕が見つめるのを見ると、先輩が予想外の行動に出た。

「あゆこ、楽にするんだ。」
「あっ、せんぱい・・・」

先輩は僕の髪の毛を軽くなでたと思うと、すぐに抱き寄せて、キスをしてきた。
「んっ・・・あっ・・・」
その温かい唇から全身に電流が走る。
すぐに先輩の右手は僕の股間に伸びてきた。

「あっ・・・そんな・・・いや・・・」
期待しながらも、そして、車の中で・・・という刺激に高ぶりながらも、
白々しく、「いや」などといってしまう。

でも、その瞬間、それまで感じていた不安は全部消えてしまう。
この車の中で・・・先輩に抱かれる・・・うれしい・・・
だが、そううまくはいかなかった。

「あっ・・・せんぱい・・・そんな・・・」
エッチな汁がもう出ていることを知られてしまう・・・そんな恥ずかしさが急に湧き上がった。
僕の、処女を失ったばかりの秘唇に、先輩の手が伸びる。

「あっ・・・はぁん・・・」
顔を伏せて、静かにもだえる。顔がにやけてしまっているのが自分でもわかる。ところが、何か違う。
先輩の温かい指だけではなく、何か冷たいものが入ってきた。
「あっ・・・せんぱ・・・い・・・」
その瞬間、ぶーん、という音とともに、アソコから体中に電流が走る。

「なに・・・これ・・・」
「ふふ、お前が誰なのかを教えてくれる秘密道具だよ。」

先輩は僕のアソコに、リモコン式のピンクローターを埋め込んだ。



スイッチを止めて、先輩が言う。
「今日は、そのまま、葬式に出るんだ。お前が迷ったときに、
お前の行くべき道を、いま埋め込んだものが教えてくれる。」
「そ、それはどういうことですか・・・?あっ・・・」

「こういうことだよ。」
先輩が再びスイッチを入れる。そうすると僕の体からすべての力が抜ける。
体中に走る電流に・・・平たく言うと、快楽に僕の体は支配される。
細い体を軽くもだえさせる僕の目には涙があふれそう。そして、不安はいつの間にかどこかに消え去り、
気持ちよさで頭がいっぱいになる。
ほんの一秒もかからない間に、僕の頭の中は快楽でいっぱいになる。

「どうだ?具合は」
「きもちい・・・い・・・」
先輩に見つめられると、目を閉じて正直にそう答えてしまう。

もう一度スイッチを止めて、先輩が言う。
「わかるだろ。お前がおかしなことをする前に、あゆこがどんな女かを教えてあげるんだよ。」

葬式の最中に、僕が「おかしな」行動に出そうになったら、
スイッチを入れて、僕が誰なのか・・・つまりは、僕のアソコに埋め込まれたローターが、
僕が淫乱な女の子でしかないことを、教えてくれる・・・そういうことだった。

「さぁ、いくぞ。」
先輩に促されて車を出る。

とはいえ、先輩は、なくなった男、亮の先輩として式に参列するから、
僕とは別人を装って歩いた。僕は・・・誰からもわからないなぞの女の子だ。怪しまれないだろうか・・・
心配だったが、先輩は
「それはたぶん大丈夫」
と、一言で片付けた。

先輩の自身の根拠はわからなかった。



式場まで少し距離があった。僕は、アソコに気になるかならないかほどの異物感を感じたまま・・・ゆっくり歩いた。先輩との距離は少しずつ広がって、完全に他人のようになった。

その場から逃げ出そうと考える余裕は・・・なかった。
そのとき、逃げ出しておけば・・・女の子になってしまったことは変わらなくても、それをすべて先輩の責任にして、すべてを失うこともなかったかもしれない。

でも、そうしなかったのは・・・きっと・・・女の子であることを僕が選んだからだと、思う。

式場について、受付を適当に済まし、そして、式場に入ると、いすはもうすべて埋まっていて、たくさんの人が何列かに並んでいる。
もう、式は始まっていた。

あたりを見渡すと、小学校から高校までの同級生、先輩、後輩、サッカー部の同僚・・・
他の学校のサッカー部の知り合い、先生たち、そして、僕も知らない人がずいぶんいた。
多くの知らない女の子がいたのには多少驚いた。

自分が・・・亮が生前、高校サッカーで旋風を巻き起こしたチームのレギュラーだったことの威力だった。
だから、僕がその場にいても、誰も知らない女の子がそこにいても、誰も気に留めることはなかった。
僕も・・・その中の一人としてこの場にいた。

そして、参列者はみな、神妙な面持ちで焼香の列に並び、
あるいはいすに座ってお経を聞いていた。

葬式に出るのは二回目だった。祖父が死んで以来だ。
その祖父を除いた3人の祖母、祖父、そして、両親、二人の弟・・・
親族の席に座っている僕の「家族」は放心状態、号泣、それぞれにそんな感じだった。

地獄絵図・・・そんな言葉がふさわしかった。
天寿を全うしてこの世を去った祖父のときとは明らかに違う。

前途のある若者が突然この世を去った・・・それに近い人たちがいかに悲しみ、
現実を受け止めることも出来ず、ただ僕のために駆けつけてくれたことがよくわかった。
自分の・・・亮の死をどれほど悲しんでくれているのかがわかった。

きっと、たった一人・・・いや二人をのぞいては・・・



自分が・・・亮がこの世から消えて、それが、どれだけの人に悲しい思いをさせているか・・・
そんな感傷に浸っていると、いつの間にか僕の焼香の順番がまわってきそうになった。
この地獄絵図を、僕は終わらせることが出来る・・・

悲しみに満ちたこの場を・・・中野先輩一人を犠牲にすれば、元の自分に戻れるかもしれない。
男の体を取り戻すことまではもし出来なくても、家族や友人は失わなくてもすむかもしれない・・・

そんな誘惑が僕を襲う。アソコに埋め込まれたものが動きを止めると、
そんな考えが浮かんでくる。
僕は、この悲しみにくれる人たちを救うことが出来るはずだった。

アクシデントはそこで起きた。とはいえ、実際に何かが起きたわけではない。
視線に・・・気づいた。
親族席に座る、二つ年下の弟、孝の視線だった。

その視線が、僕のことを一人の「女」としてみている。
悲しみにくれる親族席にあって、弟の孝は、
そんなことなど忘れてしまったかのように、僕のことを、好奇心を持った目で・・・いやらしい目で見ていた。

瞬時に、その視線に嫌悪を感じた。何より、この場にふさわしくない、そんな視線だった。


僕は僕で、自分のおかれた不思議な立場に戸惑い、
この場の地獄のような悲しみの雰囲気に呑まれていた。
しかし、兄弟は他人の始まりなのか・・・そんな場に合っても、
孝は、喪服に身を包んだ華奢な美少女を見つけると、
性的な意味を隠せない・・・エロい意味を隠せない視線をぶつけてきた。

16歳の弟には当然の性的欲求だったのかもしれない。
でも・・・死んだ人間本人からしてみれば、ひどく悲しいことだった。

ところが、次の瞬間、僕自身が、弟と、同じように、いやらしい世界に引きずり込まれることになっていた。
弟の視線が気になる・・・自分の死に慟哭するのではなく、
目の前にいる女に興味を持っている弟・・・許せない・・・そう思っていたのに・・・

次が、僕の焼香というときになって、アソコのローターが動き出した。
(!・・・あっ・・・そんな・・・)
体中に電流が走る。立っているのがやっとだ・・・
無意識に、先輩のほうを見る。やめてほしい、そう訴えたかった。


その時先輩と目が合った。
先輩の目は・・・そのまま我慢しろ・・・そう、命じていた。
サッカー部のときから変わっていない。
僕は、先輩の目を見れば、なにを求めているか、正確に感じ取ることが出来た。

サッカーをしていたときは、どこにパスを出せばいいかわかった。
今、先輩に、あゆことしての命令を受けている。ただそれだけの違いだった。

命令には逆らえない。そう。昔からずっと、不思議な力を感じていた。
もだえてはいけない・・・理性が僕の心を支えて、この場を壊してはいけない・・・
そう思って、なんとか立ち続けた。

(きもち・・・いい・・・)
心のどこかでそう認めながらも、自分への別れの儀式を滞りなく済ませることを、
何とか済ませることを僕は望んでいた。
見よう見まねで、隣の人と一緒に焼香を済ませて・・・親族に一礼する。

孝と視線が・・・合った。
その瞬間、アソコに埋め込まれたローターが、ひときわ激しく動き始めた・・・様な気がした。

弟に視線で犯されていた・・・
(だめ・・・きもちい・・・だめ・・・)
理性が戦っていた。でも、僕の顔は少し紅潮して・・・
艶を帯びた表情をいつの間にか作っていたことは間違いない・・・
弟の視線に・・・僕は・・・結果的に応えてしまった。

いつの間にか・・・頭の中では、弟に犯されることを想像してしまっていた。
裸を見たことも何度もある・・・成長の過程をずっと見てきて、今は立派な「男」になった、
孝の立派な肉棒を・・・何とか記憶の底から引っ張り出そうとして・・・
いつの間にかその体に抱かれることを・・・想像してしまっていた。
そして、股間も・・・反応していた。それは・・・きっと・・・ローターのせいだけではない。

(あっ・・・いやぁ・・・だめ・・・も・・・っと・・・)
この、葬式の・・・しかも自分の葬式の・・・厳かな場所で・・・僕は・・・
自分の弟といやらしい視線を交し合って・・・性的な快感を覚えてしまっていた。


それでも、何とかこの場をやり過ごして、運よく着席することが出来た。
ローターはとまってくれなかった。
他の人が・・・焼香をしている間、僕はアソコに走る電流を・・・
快楽を・・・ひそかに楽しみ・・・そして理性で抑えようと戦っていた。

混乱する気持ち・・・僕はもう、元の自分に戻ることなど出来ないことを確かに悟っていた。

・・・いくら淫乱女でも、自分の弟と・・・そんなことは出来ない・・・
もし家族の下にもどったら・・・僕はとんでもないことをしてしまう・・・そんなことは出来ない・・・

「理性」は、まったく別の方向に働いていた。
僕は、「淫乱女」であることを認めて、
それまでの自分を捨てることを「理性」で選ばなければいけなくなっていた。

泣くふりをして、嗚咽を外に漏らす・・・
どんなに隠しても艶を帯びてしまう・・・隠せない・・・きもちいい・・・
不思議なアクシデントが、僕の心の決意を確かに固めていった・・・
もう、正直な気持ち・・・快楽におぼれたいという気持ちと・・・「理性」は同じ方向を向いてしまった。

それを先輩も見ている・・・その視線も感じていた。
先輩が、僕と弟のいやらしい行為に気づいているかどうかはわからない。
でも、視線は僕を罵っているのがわかる。笑いながら・・・

「この淫乱女」
と、昨日先輩に処女をささげたばかりなのに、もう違う男と・・・
それも自分の弟に、視線で犯され、しかも感じている、淫乱女ぶりを、見抜かれている。



「本日は、お忙しい中・・・」
いつの間にか、式は最後の段階、喪主である父の挨拶に移っていた。
「しかし・・・このような形で・・・突然この世からさってしまう・・・」
父の挨拶は途切れ途切れで・・・言葉にならなかった。

そんな父を見上げる・・・すると・・・つい、弟のほうを見てしまう。
(あっ・・・いや・・・)



ローターの動きは前となにも変わっていないのに、弟と不意に視線が合うと・・・
犯されている気分がよみがえってきた。

僕は、自分が獣になってしまったような屈辱をどこかで覚えながらも、
それでも、視線に犯されることの快楽に抗うことが出来なかった。

そして、自分の体が入ったお棺が、出棺し、「最後のお別れ」のときがやってきた。
本来他人であるはずの僕は控えめに後ろのほうにいたが、
さりげなく前のほうへ行くことを先輩が促してきたので・・・
花を持って自分の死体の傍らに供えた。

先輩は、僕が、この場でもいつの間にか快楽に身悶えていることを見抜いて、余裕の表情だった。
そして、花を持って、僕は、引き寄せられるように、弟の前を通って・・・後ろに帰ろうとした。
その瞬間・・・何が起きたわけではない。
ただ、弟がずっと僕のほうを見つめ・・・
僕が通った後、さりげなく僕の残り香を嗅ごうとして、鼻を動かしたのがわかった。
そして、視線はずっと、僕を犯していた。

弟に見つめられ・・・アソコのローターに抵抗できず・・・
感じてしまう・・・僕はどれだけ淫乱なのだろう・・・
自分との最後のお別れの感傷に浸る暇などなかった。

安らかに眠る、自分の死に顔を見ても、なんの感慨も感じる暇はなかった。
ただ、快楽に夢中で、それを外に出さないことに必死だった。

ただ、この場にいて、身もだえて、我慢して・・・欲求不満を抑えることにしか理性がはたらかない・・・

さようなら、亮、さようなら今までの自分・・・
そう、頭の中で繰り返すのが精一杯だった。
でも、体は孝の視線に犯され、ローターにかき回される快楽に支配されていた。

つーっ、ももの内側に暖かいものがつたうのがわかった。
あふれ出す汁が、パンティをぬらすだけではおさえきれず、決壊し始めた。
情けなくて、涙が出てきた・・・それでも体中を走る快楽をとめられなかった。


「それじゃ、おれはそろそろ」
「あぁ、中野・・・じゃ、またな・・・」
そこで、先輩がその場を立ち去るのがわかった。
その次の瞬間、僕の股間のローターが動きを止めた。

(はぁっ・・・おわった・・・)
お別れが終わり、親族以外は少しずつその場を立ち去り始めた。

僕は・・・先輩の待つ駐車場へと向かっていた。
斎場を後に仕掛けたとき・・・ブラスバンドの演奏が聞こえてきた。
この曲は・・・僕はふと足を止めて、最後にもう一度だけ振り返った。

僕が好きだった曲・・・吹奏楽部の卒業生たちが、泣きながら演奏していた。
その悲しくて、緊張感に満ちた調べを、僕は忘れられない。
その空気の中、僕は振り返り、自ら「梶原亮」としての自分に別れをつげ・・・
淫乱女への道を歩き出した。

「せんぱい・・・」
紅潮した顔で、半分なきながら、僕は先輩のもとにたどり着いた。
「お、来たか。さぁ、乗れよ。」

僕は車の中に入った。

「梶原は・・・亮は、最高のパートナーだったよ。」
一瞬の沈黙を破って、先輩が語りだした。
「あいつは、右サイドからいつも俺に最高のパスを出してくれた。
俺は自分が10番に固執したからあいつは右サイドをやるしかなかったけど、

今から思えば、俺がフォワードに移ってあいつが10番にポジションにいれば、
インターハイでも、国立でも、優勝できたかもしれない・・・そのくらい最高のパートナーだったよ。」

かつて、自分がそう呼ばれていた「梶原亮」にとって、最高のほめ言葉だった。
一瞬、僕はかつての自分に戻って先輩の言葉に胸を打たれた。

「あいつは俺の考えることをいつも的確に見抜いて、すばらしいパスを出してくれた。
最高のプレーヤーだったし、俺との相性も抜群だった。」



ほめ言葉はなおも続いた。だが、今の僕にとっては、
この後続く言葉のほうがうれしく響くのだった。

「そのくらいの男じゃなければ、最高のAV女優としてプロデュースなんか出来ない。
だから、お前を選んだんだ。」
「先輩・・・じゃ・・・最初から私のことを・・・」
なぜかうれしかったのだ。それまで感じていたモヤモヤしたものが、
またすぅっと薄らいでいった。

「そして、お前はそれを受け入れた。これで、お前は自分とお別れした。
今日からは完全にあゆことして、男に犯されて、感じて、見られて、そんな淫乱女として生きていくんだ。」

「先輩・・・」
自分との「お別れ」のことを持ち出されると、また僕は少し不安になる。
不機嫌になる。僕は、その先輩の言葉が信じられなかった。
それに、今までのほめ言葉が突然の罵りの言葉に変わったことも、僕の不機嫌さを増した。

お別れは、先輩の埋め込んだローターによって、ひどくゆがめられたことを、
思い出して、そのことを屈辱と感じていた。
その不機嫌さは、きっと、明らかに顔にも現れた。だが、先輩の言葉はとまらなかった。

「どうした?お前は今日、あの場から逃げ出さなかった。亮はまだ生きていると叫ぶこともなかった。
ってことは、亮としての自分とはお別れした・・・ってことでいいんじゃないの?」

はっ、とした。
そう・・・そのとおりだった。僕はあの場から逃げ出すことも出来たし、
自分が亮であると叫ぶことも出来た。だいたい、トイレにでもいけば、
僕の体を支配し続けたローターを取りさることなんて、簡単に出来たはずだった。

そしたら、弟の視線も・・・冷静に受け止めることが出来たかもしれない・・・

でも、僕はそれをしなかった・・・

「どうして逃げなかったんだ?それは自分でもよくわかってるだろ?」
先輩の鋭い視線が僕の胸の奥にまで突き刺さった。

そう・・・知っていた。僕は、理性で戦いながらも、アソコから走り続ける快感をあの場で楽しみ続けた。


自分との・・・亮とのお別れでほぼ全員が悲しみにくれる・・・
地獄のような場所で、一人天国を感じ続けていた。
「しかも、弟に見つめられて、感じていたんじゃないのか?」


先輩はすべてを見抜いていた。僕は、弟に視線で犯されていることに不思議な気持ちのよさを感じていた・・・
あの場で、自分の淫乱さをさらしてしまっていた。

逃げ出せば、自分が淫乱であることをやめることが出来たはずなのに、
それをしようともしなかった。

弟に犯されて楽しんでいたのは・・・
きっと、自分が淫乱女になってしまったことを喜んで受け入れたから。
逃げ出さなかったのは・・・
あの雰囲気の中で背徳的な快楽を心から楽しんでいたから・・・

先輩の埋め込んだローターのせいにしてみても・・・かくしようのない事実だった。
「お前は自分が淫乱な女の子であることを、今、自分で選んだんだ」

「・・・」
正しい解答だった。僕は言い返すことが出来なかった。
不安がよみがえってきた。
僕の人生はいったいどうなってしまうのだろう。あゆことしての新しい人生。
それは、でも、いったい誰なのか?

戸籍も、それまでの過去もない、そんな女を・・・どうやって生きていけというのだろう。
「なに、心配する必要はないさ」
先輩が続けた。
「あの場にいた男たちは、あと一年もすれば、ほとんどがお前に再会することになる。
グラビアや、AVでな。そして、お前が今日のように快感に落ちていくのを見ながら、オナニーするんだ。」

きゅん、とちいさな胸がなった。
弟一人に視線で犯されただけでもここまで感じてしまった僕にとって、
あの場にいたほとんどすべての・・・それはいいすぎだとしても、多くの男たちみんなが僕を見て・・・オナニーする・・・
それは、その男たち・・・同級生や、先輩、後輩、友達、先生、そして、弟や・・・
「号泣していた親父さんもかもな、ハハハ」


先輩の言葉に・・・最低の一言に・・・それでも胸をきゅんとさせる・・・

そんな状況すら、僕を興奮させてしまう。
どこまでも淫猥な存在に自分が落ちていくことを少しも、とめることが出来ない。

そんな僕が、自分が淫乱女であることをどうして否定など出来るだろう。
体が熱い・・・
ローターがまだ体の中にある。
それをとろうとも思っていなかった。

「ほら、これが新しいお前の身分だ。」
先輩から差し出された何枚かの身分証名証。
保険証、運転免許証。僕が男だったときにはとったが・・・
どうやったのかはわからないが、たしかに僕の・・・
あゆこの写真入で僕の身分を証明する何枚かのカードがそこにあった。

生年月日は亮よりも一年と一ヶ月遅かった。
僕は、書類上は、18歳の少女に生まれ変わっていたのだった。
そしてそのなかに、真優の通う女子大の学生証があった。
「お前はその大学に通う女子大生になるんだ。」
女子大生に・・・真優の後輩に・・・自分に身分を与えられたことで、急に僕はなにか安心した。

車が動き出した。

煙も出ない火葬場を後ろにして。
今ごろ、僕が男だったころの体は、荼毘に付され、この世から完全に消え去ろうとしている。
そんなことを考えても、何ももう感じなかった。
お別れを済ませた過去に未練が消えていた。

「さて、東京に帰ろう。そのあとは・・・」
言いかけて止めた先輩の、思わせぶりな一言・・・
そのあとは・・・先輩の目線は欲望をたっぷりとたたえていたから、

東京に帰ったら、先輩の性欲の処理に「使われる」ことがなんとなくわかった。

先輩に抱かれる・・・その幸せで僕の胸は高鳴った。
ぶーん、と音を立てて・・・ローターがまた動き出した。


「あっ・・・あぁん・・・せんぱぁい・・・はぁん・・・」
もう、声を抑える必要もない・・・車の中という密室で、
思いっきり乱れる様子を先輩に見てもらえばいい。

「あまりシートをぬらすなよ」
「は・・・い・・・でも・・・そんな・・・ぁ・・・」
目を閉じて快楽を楽しみ始める僕・・・
あゆことしての自分を・・・淫乱な女の子としての自分を・・・選んだ。
そして、男だった自分とのお別れを済ませた僕は、もう、迷うことはない。

でも、「理想のAV女優」としてプロデュースされたカラダを持った僕の、
「理想のAV女優」への道のりは、
カラダをプロデュースされただけで終わるものではなかった。

今にして思えば、こんなのまだ、淫乱美少女としての、自分の第一歩に過ぎなかった。

淫乱な女の子としての、僕の行く手には・・・
AV女優としてデビューする以前に、もっともっとたくさんの、
屈辱的で・・・退廃的で・・・そんな出来事が待っていた。

それは、一つ一つが、女としての、いや、男だった人間としての屈辱にまみれていた。
しかも、「男」だった自分の気持ちを、刺激されながらも、女としての、あゆことしての自分を結局、
悦びをもって選択してしまうような・・・
そして、結局は快楽にもみくちゃにされる、たくさんの出来事が待っているのだった。
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