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「いや…だ… いや……!」
「何がイヤなんだ…?」
僕は彼を抑えつけ、まだ何かいおうとしている唇を強引に塞いだ。
「僕が何か、きみに無理強いしたかい…?」
「だ、から… もう…」
かすれた、細く高い仔猫のような声が応える。いつものハリのある
しかし抑制の効いた声とはまるで別人だ。
「もう、ダメ…… これ以上は───」
「ずるいねきみは。きみが、望んだくせに」
彼は必死で逃れようとするが、もちろんそんなことは許さない。
「どうしてもぼくを悪者にしたいらしい」
彼の吐息は甘く、その肌は火のように熱い。
感じているのだ。間違いなく、彼は僕を欲している。
己れの隠し持った秘密の重さに耐えかねている。
僕にはわかる。
それなのに……何故?この期に及んで僕を拒否する?
彼を抱きしめたまま、彼の敏感な部分を刺激した。
少し意地悪な気持ちになっていた。
「……ッ!!」
彼が声にならない声を上げ、大きく身をのけぞらせた瞬間。
まばゆい光が彼を包んだ。


「───」
僕の腕の中にいたのは、豊かな金髪の少女。
少女は顔をそむけると、両手で覆ってしまった。
「……これが…… きみの、秘密か……」
「……お願い…… 彼には……いわないで……」
その声は確かに彼と同じものだ。しかしそこに含まれた甘やかな媚びは
先刻までにはなかったものだった。
「こんな時にまで、きみは彼の心配かい?」
彼女の言う「彼」が誰か、僕にはすぐにわかった。
いつもこの、───先刻まで少年の姿をしていたこの少女と
一緒にいる緑衣の少年。
ちりっ、と微かな炎が胸を灼いた。
2007年05月08日(火) 16:02:12 Modified by smer




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