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a-51

ぼくが考えた場所でファルコンと一緒に秘密基地を作ることにした。
でも、ファルコンはこういうことはしたことないらしい。
育った街は凄い都会だったから、って。

「でも他に楽しいものがあったから」
「やっぱりレース?」
「そうだね」

ロープを結びながらそう答えた。
でも何だか気が散っているみたいだった。
やっぱり――

「ネス、昼ご飯は何がいい?」

あ、そっか。ファルコンは今日の当番だっけ。
そうだよね。
馬鹿だな、ぼく。

「ッ……!」
「どうしたの!?」
「いや、木のささくれがささっただけだよ。大丈夫」
「でも血が出てるよ!」

ぼくはすぐにそれを治した。
最近のファルコンは怪我が多い。
意外とうっかりしているのかも。

まあぼくがいるから大丈夫だけど。

「ありがとう、ネス。でも無闇に力を使うのは良くないよ」
「どうして?」
気を使わせちゃったかな。
そんなの気にしなくていいのに。
「自然に治るものはそうするに越したことはない」
「あ、うん……」
「それに、命は簡単に取り戻せないから尊い……わかるよね?」

ぼくは頷いた。
その辺りの感覚がおかしくなったらダメだよね。

でも。
だからこそ、なくなってからじゃ遅いから、ぼくはこうして治しているのに。

「それに……」
ファルコンは、少し迷っているみたいだった。
何だろう。
「まさかとは思うけど、力を悪いことに使ったりしていないだろうね?」
「していないよ!」

思わず言い返したけど、嘘だ。
ハートがバクバク言ってる。
けれど、今はやっていない。
そんなことしたら嫌われちゃうし。


「何でそんなこと言うの? 誰かに言われたの?」
「いや……ただ、イタズラとかしたくなるかな、って。私にそんな力があったら多分そうしているから」
「あ、それくらいならちょっとは」
「それ自体は悪いことじゃない。当たり前のことだから。でも、ちゃんと謝ること。うん……イタズラくらいならいいんだ」

……嘘つき。

でも最初に嘘をついたのはぼくだ。

「それじゃあ、私はそろそろ昼ご飯の準備をしてくる。出来たら呼びに来るから」
「ううん、一緒に行くよ」

いつも、一緒に。


けれどそれは、叶わないことだったんだ。



サムスさんが、レシピを聞いていた。
ファルコンは天才じゃないかって。
「いやあ、それほどでも……あるかな?」
「料理などに手間をかけるのは無駄だと思っていたが」
「ひとりならそうかな」
また少し寂しそうな顔。

「さーて、つまみ食いはここまで。皆の所に持って行こうか」
「手伝うよ」
「ありがとう」


皆喜んでいた。でも皆わかってない。

ファルコンが本当に食べさせたいのは。


凄い音を立ててファルコンが転んだ


「ひ、昼飯があぁぁ!」
そんなことよりファルコンの心配をしてよ。

皆、皆わからないんだ!

「ファルコン、どうしたんだ? 最近多いぞ」
「あ、ああ……年甲斐もなくはしゃぐからかな?」
「……そうじゃない」

隅の方にいたルイージさんがぼそりと呟いた。
皆の視線が集まる。

「ファルコンだってわかってるよね?」
「何の、ことだ……?」
「ボクはそういうの怖いから、人一倍敏感なんだ……ファルコンが最近怪我が多いのは」
「やめろ!」
「ネス、のせいだよね?」


ぼ……く…………?


「……ボクが目立つ最初で最後の機会がこれなんて、悲しいけどね」


今度はぼくがじろじろ見られている


――――そう言われてみれば――


「待ってよ!ぼくが……ぼくがファルコンを怪我させる訳がないじゃない!」

ぼくじゃない。
ついやったことはあるけど、最近のはぼくじゃない……!


「ぼく、じゃない……」


泣いているぼくの頭をぽんぽんと叩いた

「…………だそうだ。これでこの話はおわりだ。昼食ならまた作るからそうピリピリするな」
「一番危ないのは……」
「だ、そうだ…………!」

凄く怒った声。



ぼくを連れてキッチンに入る。
「落ち着いて。大丈夫……大丈夫だから」
「……でも嘘だって思ってる。本当はぼくがファルコンを傷つけたって思ってる……!」
「…………そうだね。でもそれで君を責めたりしない。悪いのは君を歪めてしまったその運命……この世界と、そして私だ」
「ファルコンが悪いわけな……」
「悪いのは、私だ」
今度は静かに。
頼もしい、けれど今日は怒っているせいか、少し怖かった。

「……部屋で大人しくしておいで。後で必ず行くから」

でも優しく笑ったファルコンは、やっぱりいつものファルコンで。


謝り方、考えなくちゃ。



けれど、ただお昼ご飯を作っているだけのはずなのに、とても遅かった。
何かあったのかな。


怖い。

皆、怖い。



コンコン、コンコン。

「ネス、私だ」

3回じゃない。
わかっている。
無意識に出るんだよね、そういうの。



ぼくが開けると、そこには、傷だらけの――――

「ファルコン!? どうしたの!?」
「ああ、ちょっとマスターハンドと拳で語り合ってきたんだ。文字通りね」
ボロボロになりながら、それでも笑う。
「……帰してくれるって。君を、元の世界に。全部忘れて帰るんだ。家族と友達の所に」
「忘れろって!?」
どうして。どうしてわからないの!?
「…………忘れた方がいい。これは悪い夢なんだ。戻って今度こそいい夢を見るんだ」
「ファルコンは……ファルコンはどうなるの!? ぼくだけしかわからない……ぼくがいなきゃ……なのにぼくが邪魔なの!?」
「そう、君は人の痛みをよくわかる優しい子だ。だけど踏み込んではならない闇……聞いてはならない声もあるんだ。引きずり込まれてしまうよ。君は本当に優しいから」
「答えになってないよ!」
「……わかってくれるのは嬉しい。だけどそれに毒されていく君を見るのは、わかってもらえないことよりずっと辛い。私は、大丈夫だから」

ぼくを抱きしめて、ありがとう、と呟いた。

本当のことを言っているのはわかる。
けれど、大丈夫な訳がない……!


「パラライシス!」


ぼくははじめて、意識的にファルコンを傷つけることをした。

でも、今までと気持ちは変わらない。

ぼくがファルコンを好きで、ぼくにはファルコンが必要で、ファルコンにはぼくが必要なことを――



――どんな手を使っても、わからせる……!



「ネス……!」
動けなくて苦しそう。
でも大丈夫。すぐ気持ちよくなるから。
ぼくだって、エッチなことのやり方くらい知ってる。
前拾った本で、女の人がそんなことをしていた。
その本は真っ赤になったポーラが慌てて燃やしちゃったけど。
ファスナーを開けて出てきたちんちんは、ぼくと違って、凄く大きい。
大人だからってだけじゃなくて、パパよりもずっと。
これをいじっていれば、気持ちよくなって、大きくなるんだよね。

「ネス、やめるんだ」
やめない。
おしっこが出る所だけど、汚いなんて思わない。
だってファルコンだから。
アイスを食べるようにかぶりついた。少し変な味。
けれど、一生懸命舐めて、こすって、揉んでいるのに、全然大きくならない。


そして急に背中を掴まれ、引き剥がされた。


「やめろ、と言ったんだ、ネス」
「どうして動けるの!?」
「負けない気持ち、かな。君には無理だ。わかってるはずだよ」
「確かに下手だけど、ちゃんとやれば……!」
「自分の子供に欲情する所まで堕ちてはいないんだ」

ちんちんをしまって、いつのまにか溢れていたぼくの涙を拭いた。

「他のことは何でも出来る。けれどこれだけは無理なんだ……楽だったんだろうけれどね、そこまで堕ちた方が。だからこそ私は病んでいる。そして君を傷つける」
「ぼくは傷付いたっていい! ぼくだって何でもする! ファルコンと一緒なら……!」
「……そうか」
ファルコンはまた優しい顔に戻って、ぼくのことを抱き締めた。
「明日、約束していたドライブに行こうか。酷いことをしたお詫びに。そして二人で楽しく、ね」
「……うん」



ダメ、なんだ。やっぱり。
本当の子供みたいに思ってくれていたのは嬉しいけれど。
でもだから、その壁を越えられない。

けれど壊したいんだ。この壁を。

明日のドライブでどうにかするしかない。




ブルーファルコンに乗り込んだのに、ファルコンはメットをしていなかった。
ぼくが聞いたら、無粋だからって。
メットをしていても凄くかっこいいけれど。


ブルーファルコンはやっぱり速い。
テレポートの時みたいに、凄い勢いで風景が駆け抜けていく。
「どうだい?ネス」
「最高だよ!」
デートだったら、もっと最高だったけど。
「そうか。それは良かった。そして君に言いたいことがある」
「えっ……?」

ぼくは驚いた。

ぼくが聞いたことがない、凄く冷たい声だったから。


「……私も楽しくて楽しくてたまらない。全てはこれで解決する」
「何を言っているの……?」
わからない。
やろうとしたけど、心も読めない。
「君の心の悪魔、とうに死んだはずの私……始末出来る、これで。マスターハンドに聞いた。彼にどうにかしてもらう他に、もう1つ元の世界へ戻る方法」




「この世界での死を迎えること」



ファルコンは笑っていた。
凄く歪んでギラついて。

「何でもするって言ったな。傷ついても構わないって。私と一緒なら」
「死ぬ、の……? ぼくも、ファルコンも?」
更に踏み込んで加速していく。
「夢から覚めるだけだ。向こうでも死んでいる私がどこへ行くかはわからないが、それもいい」
「そんな、そんなの……! そんなのファルコンじゃない!!」
「いや、私だ。強くなどないのは理解していたようだが、優しくもないのはわからなかったようだな。だから言ったのだ。踏み込んではならない闇もある、とな……!」
「いやだ! やめて! 怖い、怖いよ!! 死ぬのも、今のファルコンも……! 悪いのはぼくだからそんなことをしないで!」
ブーストを発動させた。
先にあるのは、何もない崖。
「ごめんなさい…………!!」
落ちていく中でふわりと浮いて、遠くなる意識の中でぼくはそう叫んでいた。



ぼくは長く暗闇の中をさまよって、ようやく目が覚めた。

「……あれ?」

ぼくはブルーファルコンの中にいた。
隣には息を切らせて、それでもいつものように優しく笑っているファルコンがいた。
「怖かったね。ごめんね」
「何が、起こったの?」
「君がPSIで落ちていくブルーファルコンを浮かせた。もう少しの所だったのに」

ハッチを開けると、そこには澄み切った青空が広がっていた。
「……綺麗だね。この世界も」
「そうだね…………ありがとう、ネス」
「迫真の演技で驚いちゃった」
「演技なんかじゃないよ」
目を細めた。
「踏み込んではならない闇もある、ということだね」

ぼくたちはずっとそのまま空を見上げていた。
「帰ろうか、私たちの家に」
「……うん!」



寮の玄関では皆が待っていた。
「ネス、ファルコン……」
ぼくはびくりとなった。
――怒られる。

「おかえり!」

え!?

「2人がいなかった時はそりゃあビックリしたものさ。心配してたんだぜ!」
「どうなるかと思いましたけど、何とかなったみたいですね!」
「はっぴぃ〜☆」
『ファル様もネス君もお帰りなの!』

「皆……」
「捨てたものじゃないね、ここも」
「そうでしょう?」
サムスさんがぼくとファルコンの腕を取った。
「無事で何より。では、あなたたちが一番最初にやるべきことは?」
「……すまなかったな、皆」
「ごめんなさい!」




「あの、オイラたちどうすればいいの?」
「あたしたち、氷山に挑戦してばっかりで、訳のわからない場所で戦うとか……」
「大丈夫!」
しばらくしてから、また新しい人たちが来た。
その中の2人のポポとナナに、ぼくは笑ってみせた。
「ここは、皆いい人たちばかりだから! でも中でも優しいのは……」
手を引いていった先では、ファルコンとサムスさんが話していた。
ぼくたちに気付いて、笑いながら手を振った。

悔しくない訳じゃないけれど。


多分、今のぼくは幸せだと思う。



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2008年05月08日(木) 00:21:21 Modified by smer




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