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萌え始めた夕焼け色はいつの間にか宵闇に溶け、塗りつぶされようとしていた。
コントラストを描くように、窓の外。黒く褪せはじめた空からは白い結晶が疎らに、木々を白く色付け始めていた。

「…雪、か。」

久しぶりに見たな、と呟き、踵を返す。

長い長い廊下を歩き、一番奥の部屋。
そう、「あの男」の部屋の前に立ち、躊躇いつつもドアノブを指でなぞる。

刹那、ある事に気付く。…ドアは細く開いていた。

「………」

小さく息を飲み、入り口で立ち止まる。
中の様子を少し見ようと近づいた、ほんの矢先の事だった。

気配に気付いた時には、既に自分は、闇に包まれていた。

その白い肌に吸い寄せられたかのように。
背後から肩を強引に引き寄せ、ほんのりと熱を帯びた耳たぶを軽くはみ、囁く影。

「…誰かと思えば、お前か。ミュウツー」

うっすらと開かれた唇から伝わる熱い吐息。
ぞくり、と首筋から脳髄まで伝わる甘い官能に、耳たぶが熱くなってゆく。



「っ…ぁ…」

身体からは薄く、甘い官能の声がまろび出る。
艶を含んだ切れ長の目で彼を一瞥し、肩を蔽う手を退け、言葉を紡ぐ。

「……相変わらずだな、ガノンドロフ。」

予想外の奇襲に慄きつつも、あくまで平静を装う。
ガノンドロフ、と呼ばれた男は軽く笑みを零しながらつれないな、と囁きノブに手をかけた。

「それで、何の用で来たんだ?」

忍び笑いを漏らしながら。ミュウツーの二の言葉を待つ体を取り、問う。

「世間話をしに来た…というわけではないんだろう?」
「…………」

ばつが悪いような、恥ずかしそうな顔を反らしながら。そっと、後ろ手に隠していた箱をガノンの眼前に持ってくる。

「これを、俺にか…?」


ノブにかけた手を放す。


顔を伏せたままのミュウツーの表情をちらりと見、ガノンは思わず生唾を飲み込んだ。
普段より明晰さを滲ませている嫣然とした顔は恥ずかしさでくしゃくしゃになっており、
陶器のように白い肌は、上気して薄紅色になっていた。

壊れそうな妖しい色気を得たその顔は、酷く扇情的であった。



自分の腕の中で儚く壊れる姿を思い描きながら。
妖艶な曲線を描き、ほんのりと桜色に染まる身体を優しく抱きかかえる。

「愛い奴だ。…たっぷりと、俺が可愛がってやる。」
2008年03月17日(月) 16:34:04 Modified by smer




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