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7-221

胸の高鳴りが治まらない。
ピットは隣にいるアイクをちらりと見やる。
アイクがその視線に気づく前にさっと目をそらし、顔をふせる。

先程からこの行程の繰り返しだ。

アイクとピットの二人は、食事係に命じられて
地下の倉庫に食糧を取りに来ていた。
密かにアイクを思慕していたピットが、アイクと二人きりで歩いているという状況に
一人歓喜し、また狼狽していることなどアイクは知る由もない。

「ついたぞ。」
重厚な倉庫の扉を開け、アイクがピットに声をかける。
「ふぇっ!?え、あ、はいっ!」
ピットの素っ頓狂な返答にアイクは訝しげな視線を寄越したが、
すぐに倉庫内へと入って行った。
ピットも慌てて後を追う。
「寒いな。…大丈夫か?」
「はい、平気です!」
満面の笑みで返事をするピット。何気ない気遣いですら嬉しくて仕方がないらしい。



(もし…寒いから暖めてくださいって言ったら、どう思われるかな…)
倉庫内を物色するアイクを見る。
端正な横顔だ。
(…抱きしめてくれたりとか…。な、何を考えてるんだ僕は…!破廉恥な…)
邪な考えを振り払おうとし、ピットは大きくかぶりをふった。
大きなダンボール箱が落ちてきた。
ダンボールの中身が床に散らばる。
物音に振り向いたアイクが目にしたのは、
硬直しきったピットの顔。
「おい、どうし…」
「い、いやああああああっ!!」
ピットが絹を裂いたような叫び声をあげ、アイクに抱きついてきた。
「大丈夫か、どうしたんだ!?」
「な、ナス…ナスビ、やだ…」
ピットがぶちまけたのは、大量のナスビ。
そのナスビにすっかり怯えたピットは、アイクにしっかりと抱きつき、涙目で震えている。
ピットのさほど大きくはない胸がアイクにあたる。
「落ち着け、ただのナスビだ」



「やだ、やだ、やだ…!」

すっかり錯乱したピットはアイクになおもすがりついてくる。
ますます胸の柔らかな感触がまざまざと伝わってくる。

このままでは色々とまずい。
そう判断したアイクはピットがまとわりついたままの状態で急いでナスビを残らず箱へと収めた。
「ほら、もうナスビはないから安心しろ」
ぽんぽんと頭を叩いて安心させる。
「よかったぁ…」
ピットが安堵の息をついた。瞬間、自分の状況を把握した。
「わ…わわわっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
急いでアイクから離れる。
「構わん。」
「で、でも…」
「気にするな。それにしても…」
「な、なんですか?」
「以外と胸、あるんだな。」

数分後、耳まで真っ赤になったピットにポカポカ叩かれながら食堂へと戻るアイクの姿があった。
2008年03月03日(月) 16:44:36 Modified by smer




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