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  • 初代(64版)な感じ
  • ネス×ファルコン。逆じゃないよ
  • 続き物で今回はエロなし
  • ネスがヤンデレ気味

という具合なので、嫌な人はNG登録よろ



いきなり知らない世界に放り込まれてしまったぼく。
皆知らない人ばかり。
しかもぼくは少し来るのが遅かったから、すでに仲良くなっている人たちの中に入り込むのは少し気おくれがあった。
ぼくと同い年くらいの子もいない。
多分人間で言えばそれ位のピカチュウは『ま、気にするなよ』と言う。
他の人にはわからないけれど、ぼくにはテレパシーでわかるんだ。
だけど、ぼくはそこまで楽観的にはなれない。
ぼくはギーグを倒したけれど、それは家族や友達の皆が危ないからで。

こんな所で。目的のわからない乱闘で。ぼくは何故戦わなければならないのだろう。


「オネットに帰りたい……ママに会いたい…………」



いつものホームシック。でもここでは電話もかけられない。
そしてそんなことわかってくれる人、ここには誰も――――

「ネス」

ノックと共に声をかけられて、ぼくは滲んでいた涙を拭いて笑顔を作って扉を開けた。
そこに立っていたのはキャプテン・ファルコン。
元の世界ではF-ZEROという凄いスピードのレースを勝ち抜いてきたレーサーで、悪人をなぎ払う賞金稼ぎだった、って話。
多分ここでは、一番かっこいい、と思う。
元々ぼくのかっこいいと思うものは“キアイ”だし。


「夕飯に来なかったけどどうかしたのか? それに何かちょっと寂しそうな顔をしていたから、気になってな」
ぼくは何も言えなかった。
「ま、とりあえずお腹空いているだろうし、ハンバーグ作ってきた。大好物なんだろ?」
「ファルコンさんが作ったの?」
「フ……心配無用だ。私はこう見えても料理が得意なんだ」
心配、とかじゃない。
ただ驚いたのと、嬉しかっただけ。

ちゃんとぼくのことを見ていて、気にしてくれる人がいたんだ。



「ごちそうさま! 美味しかったよ!」
「お、やっと心から笑ってくれたな。やっぱり笑顔が一番だ。特に子供はね」
「まあ、ママの作った奴の方が美味しいけどね」
「生意気」
くしゃくしゃと頭を撫でる。
「やっぱり寂しいよな、こんな所じゃ。家族にも会えないし故郷にも帰れない」
そういうファルコンさんも、少し寂しそうな顔をしていた。
そういえばこの人もぼくと同じくらいの時期に、少し遅れてやって来たんだ。
「ファルコンさんには家族いるの?」
「ん……妹が1人。それと………………いや」
首を少し横に振る。
「何でもない」
気になったけど、聞かないことにした。
大人にだって、多分色々辛いことや悲しいことがあるんだ。
「そっか。ぼくにも妹がいるよ。トレーシーっていって、運送屋さんで電話受付のアルバイトやってる」
「しっかりした子だな」
「……うん……だから…………ぼくがいなくても……」
急に抱きしめられた。
「そういうことを言っちゃダメだよ。そんなことないって、君が一番わかっているはずだから。お父さんもお母さんもトレーシーも、きっと君の帰りを待っている。そして、いつか帰れるよ」
とても大きくて、暖かい。
まるでパパみたいだった。
思わず、涙が溢れてきてしまった。


最後まで泣くんじゃない、というけれど。
泣きたい時に泣いて、何がいけないの?



「もう、大丈夫かな?」
しばらく泣いて、ようやく涙が止まって、ぽんぽんと頭を叩かれる。
「何でも相談してくれていいんだよ。私はちゃんと聞くし、誰にも言わないから。今度はコーヒーでもご馳走するよ」
そう言って立ち去ろうとするファルコンさんの上着の裾を引っ張った。
「ネス……?」
「今日はファルコンさんの部屋で寝させてよ。ぼくの部屋のベッドじゃ狭くて2人じゃ寝られないし、それに……」
まだ、寂しいから。
「私の部屋はそんなに面白いものはないぞ? まあF-ZEROのビデオがいくつかあるが」
「見たいな、それ。凄く速かったんでしょ?」
「もちろん。あと、さんなんて付けなくていいから」
「わかったよ、ファルコン」


見せてもらったF-ZEROのビデオは、凄くスリルがあって面白かった。
「ねえ、もう走らないの? ブルーファルコンはあるのに」
「コースもライバルも、ここにはないから。でもこんなスピードは出せないけど、それで良かったら乗せてあげるよ。2人乗りはルール違反だけど、レースじゃないしね」
「うん!」



その晩、ぼくは夢を見た。
知らない人たちに、見知らぬ風景。
何となくフォーサイドっぽい街がよく出てきたけど、やっぱり違う。
そして全てが光に包まれて――――



「ネス、起きろ。もう朝だぞ」
揺さぶられてぼくは目を覚ます。
もう身だしなみを整えていたけれど、少し遠い目をしていた。


ぼくにはわかっていた。
あれはファルコンの夢だった。
そして、その思い出。
家族について聞いた時言葉を濁したのもわかった。
ぼくと同い年くらいの男の子と、一緒に暮らしていたんだ。
そしてあの光の中で、この世界にやってきて――元の世界では死んだことになったんだ。


多分、ファルコンも帰りたいんだと思う。
でもその子の本当のパパも帰ってきたし、妹さんももう大人だから、その辺は多分割り切っている。
そして元の世界でやるべきことは全部やった。
だから、帰っても居場所はあるのかと、少し悩んでいる。



「今日の朝ごはんは何かな?」
「当番はマリオだったからキノコ料理、かな」

話しながら、ぼくは心の中で謝った。
――勝手に心を覗いて、ごめんなさい。
気付いていないみたいだけど、もう絶対この力を悪用したりしない。
でも、このことを知っているのはぼくだけ。
ファルコンのこと、本当にわかっているのはぼくだけなんだ。
皆悩んだりなんかしないって思ってるんだ、ファルコンのこと。
いつも笑っているぼくのこともそう思ってたんだから。
その上ずっと大人で強いファルコンに悩みがあるなんて誰も思わない。
そしてぼくのことを、守ってくれる。

「イーグルランドにも変なキノコがいっぱいあったよ」
「そうか。一度食べてみたいな」
だったら、もし帰れる時が来たなら、一緒に来ればいいんだ。
F-ZEROはない。けれどぼくがいる。

それから他の人たちとも仲良くなれたけど、やっぱり一番好きなのはファルコン。
そしてファルコンにとってもそうだと。



その時は、思っていたんだ。
2008年03月10日(月) 23:11:34 Modified by smer




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