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  • メタナイトとカービィを中心にいろいろと
  • エロなし
  • メタが変態。というか変。

それでもよければ、ドゾー↓



日々、様々な趣向を凝らした武闘試合が催される、スマッシュブラザーズの試合会場。今日の目玉
は、フォックス・カービィチームとファルコ・メタナイトチームの対戦だ。出自を異にした者達同士の共闘と
いうこともあり、観客の入りもひとしお。喧騒と興奮とに包まれたその中には、チーム選考から外れたデ
デデとウルフの姿もあった。
「あいつら、中々別のチームに入りたがらないからな。今日の対戦は見ものだぜ」
「面白い。奴等の戦い方をとくと拝見させてもらおうか」
高みの見物を決め込んだ第三者が、各々勝手な感想を呟く中、当の選手であるメタナイトは、内心至
極複雑な面持ちでいた。
いくらこれが生死に関わらない武闘大会だとはいえ、愛しい者に剣を向けるのは気が進まない。だが、
試合は試合だ。勝負に私情を挟むことは、自らの騎士道精神に背く。
――――悪いが、手加減はしないぞ、カービィ。
そう仮面の下で小さく紡ぎ、メタナイトは眇めた目で同じ会場にいるカービィを見やる。と、視線に気づい
たカービィが、にっこり笑って手を振り返した。
瞬間、つい数秒前に自身に誓った宣誓が、音を立てて崩れそうになる。
だめだ、可愛い。犯罪級に可愛い。やはりあの子を傷つけることなど、できそうもない。しかし、同じチー
ムであるファルコにやられる位なら、いっそのこと私の手で……などといろんな意味で危なげな思想が、
メタナイトの頭の中をすさまじいまでのスピードで走り抜けていく。

試合開始のアナウンスが流れるまで、後少し。様々な思考に心の内をざわつかせながら、メタナイトは
ギャラクシアの柄を握る手に力を込めた。




試合も順調に進み、既に終盤に差し掛かっていた。やはりメタナイトは無意識にカービィへの攻撃を避
けているようで、カービィはかすり傷程度の%しかダメージを負っていない。フォックスの方も、チームの
相方であるカービィに何かと気を配ってくれているらしく、その身を挺して彼を庇う場面が幾度か見られた。
途中、降ってきたバナナの皮にカービィが足を滑らせ、すってんと綺麗に尻餅を尽いた時にはひやっと
させられたが……すかさずブラスターを構えたファルコに、「おっと手が」とだけ呟いて、傍にあったバン
パーを投げつけることで事無きを得た。当然復帰してきたファルコはメタナイトをちらりと睨んだが、当の
本人はさして気にしていないようで、カービィが体を起き上がらせるまで、じっとその様子を見守り続けて
いた。
そうこうしているうちに、試合終了まで残り三分を切った。このまま行けば、ファルコの自滅数が持ち点
から引かれ、カービィチームの勝利という結果で、無事に試合が終わるだろう。後で今日の試合につい
て、カービィを褒めてやらないとな、とメタナイトが仮面に隠された口元を笑みの形に緩ませた、その時。
しゅ、と小さな風音を立てて、会場にアイテムが一つ投入された。
まん丸でつやつやの赤いボディ。そして表面に印字されたMの一文字。確認するまでもなく、それはカ
ービィの大好物、マキシムトマトだった。
だが、それが会場上に存在していたのもほんの数秒の間のみ。瞬く間もなく、真っ赤に熟れたそれは、
ひゅごごご、という音と共に勢いよくカービィの口の中へ吸い込まれていった。口内でぷつりと弾ける皮
の感触を楽しみ、お腹の中へと収めた後……カービィはハッとしたようにフォックの方を振り向いた。目
の前に大好物を置かれ、半ば条件反射のように口を開いてしまったが、自分よりもフォックスの方が明
らかにダメージを負っていたはず。自分の取った行動に恥ずかしさを覚えたのか、カービィは相方の方へ
とぱたぱた飛んで近寄ると、試合中にも関わらず何言か懸命に話し始めた。
「ぽよぽよ、ぱーよ……」
そして、ごめんなさい、とでも言うようにしゅんとうな垂れるカービィを見て、フォックスは言葉は通じなく
とも何だかいたたまれない気分になった。何というか、小さい子供を叱っている様な。
「い、いや、別にいいよ。そんなに気にするなって」



思わずフォックスは膝を曲げてカービィと目の高さを合わせると、慰めるようにその頭を撫でてやる。だ
が、それでも彼の気は晴れないらしく。カービィはしばらくの間瞳を潤ませていたが、突然俯かせていた
顔を上げてフォックスを見上げた。
「ん?どうかしたのか?」
そして、不思議そうな顔をしているフォックスに向かって、カービィは何かを思いついたようににっこりと
顔中に笑みを広げると、ちょっとだけ背伸びをして――――

ちう。

自分の唇を、フォックスの口元に押し付けた。
「っ!!??」
瞬間、カービィを除いた全員の表情が凍りついた。
純粋に驚いている者と、ショックを受けている者と。驚きの種類が大きく二分されてはいるものの、カー
ビィが取った行動は、選手達の間に流れていた時間を止めるには十分な程に衝撃的なものだった。
数秒後、カービィはちゅ、と軽い音を立てて、くっ付けていた唇を離した。にこにこ顔でフォックスを仰ぎ、
彼の体力が回復するのを待つが、彼はまだ時間の拘束から解かれてはいなかった。
固まったまま動けないフォックスと、一向に減る様子のない彼のダメージ値とを交互に見ながら、カービ
ィは「ぽよ?」と不思議そうに首を傾げた。
「カ、カービィィィィ!!!」
そんな中、一足早く思考の硬直から解かれたメタナイトが、カービィに向かって突進する。
「あ、危ない!」
鬼気迫る相手の表情に、フォックスはハッと我に返り、咄嗟にカービィを庇うように彼の前に飛び出した
のだが。突っ込んできた羽のある球体は、カービィ達のところにたどり着く前に、先ほど自分が仕掛け
たバンパーに勢い良く激突した。
彼の表面的な蓄積ダメージは低かったが、目には見えない、内心面でのダメージは甚だしいものだっ
たらしく。バンパーに当たったメタナイトの体は、場外に向かって綺麗に弾け飛んでいった。
突っ込んできた時と同じ位の勢いで吹っ飛んでいくメタナイトと、星になる彼を地上から見上げる鳥と狐。
シュール。
事の発端になったカービィはというと、一連の様が面白かったのか、無邪気にキャッキャッと笑っている。
試合は、完全にその意義を為さなくなっていた。
「どうすんだよ、これ……」
ポツリと吐き出されたファルコの言葉も、やがてざわつく会場の喧騒に飲み込まれていく。
事態を収拾できる者は、最早誰一人として残っていなかった。




そんな彼らの様子を観客席で観戦していたデデデが、そういやアイツ口移しで体力回復するんだっけ
な、とフォローのような言葉を呟いてみるが、その声が選手達の耳に届くはずもなく。興が冷めた、と
言って席を立とうとするウルフにも、デデデは、あぁ、と気のない返事を送ることしか出来なかった。
というか、ほんとにどう始末つけるつもりだ、この試合。
心中深くため息を吐きながら、デデデは会場に流れた、試合終了を告げるアナウンスを聞いていた。



End.
2008年04月06日(日) 14:35:24 Modified by smer




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