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2-225-3

 ファルコンフライヤーが地球から飛び立ち、一週間が過ぎた。
宇宙での移動は幸いトラブル(宇宙海賊や小規模の惑星間戦争など)に巻き込まれる事もなく、
ファルコンとサムスは予定通り無事、ゼーベスに到達することができた。

 しかし喜んではいられない。今から要塞惑星と化したゼーベスに、たった二人で潜り込まねばならないのだ。
二人共、ごく少数でのミッション達成を何度も繰り返してきた猛者ではあるが、
それでも敵の中枢に侵入していく時は、緊張を禁じえない……。
 その時はまさに目前まで迫っていた。

「オツタエシマス 本船ハマモナク、惑星ゼーベス周回軌道上ニ トウタツシマス」

 ファルコンフライヤーの内臓コンピュータが、目的地到達を告げる。いよいよ作戦の開始である。

「やっと着いたか」
「いよいよね……。作戦の概略はわかってるわね?」
「ああ。スターシップでクレテリアまで侵入。その後はブリンスタ、ノルフェア、マリーディア、ツーリアン、
 各エリアを探索。そして君のコピーを発見次第、破壊する。
破壊した時点で作戦は終了、すみやかに惑星を離脱する。といった所か」

「OK。でも、私のコピーが性格までコピーしていたとするなら多分……探索に時間は掛からないと思うわ」
「なるほどな。確かに君なら回りくどい真似はしないだろう」
「何か引っかかる言い方ね……ま、いいわ。そう、あっちの方から仕掛けてきてくれるかもって事」

 ここで、なぜスターシップを使用するかに少々の解説をしたい。少しばかり行数を頂こう。

 長距離移動にファルコンフライヤーは便利だが、
もとより居住に重きを置いた宇宙船であるゆえ、潜入には不向きだった。

 戦艦としての能力も備えているため、火力にまかせて強襲するという作戦も考えられたが
ファルコンとサムスはスターフォックス隊などと違い、あくまで単独での潜入と破壊工作がメインである。
 巨大兵器を利用した、大規模戦闘の経験が乏しい。そのため戦艦の力を発揮できない恐れがあった。
万が一、ファルコンフライヤーとスターシップを失った場合、二人が生還できる確立は著しく低下してしまう。

 しばらく考慮した結果、どんな作戦を取った所で命がけであるのは変わらない、と結論が一致し、
それならば慣れた戦法を取った方が良いだろう……ということになった。
  バウンティ・ハンターが基本的な戦法とする小型宇宙船(スターシップなど)で
敵に発見され難い場所に侵入し、そこをベースキャンプとして任務を遂行する戦法だ。

 また、ファルコンフライヤーは周回軌道上に待機させることにした。
もしスターシップを失っても、ファルコンフライヤーが生きていれば脱出できるからだ。

「こっちは終わったわ。ファルコンは?」
「大丈夫だ。いつでもいけるぞ」
「じゃあ乗り込んで。私の故郷を案内してあげるわ」
「お手柔らかに頼むぜ」

 ファルコンフライヤーの格納庫が開放され、スターシップは弾丸の様にゼーベスへ突進する。
 惑星の重力に引かれ始めると、
スターシップは表面に耐熱フィールドを展開し大気圏突入時の摩擦熱に備える。
実はこの時間が最も危険であった。
 姿勢を固定し摩擦熱を防御しなければならないため身動きが取れない上、
単機で突入していくので、カムフラージュするものがない。
もしも敵が大気圏まで、もしくはそれ以上に射程を持つ武器を持っていた場合、狙撃されてしまう恐れがあるのだ。
 緊張が走る。ファルコンもサムスも思いは一つ、無事に大気圏を突破できる事だ。

 ……だが、悪夢とは常に戦う者の背後に忍び寄るものであった。無防備なスターシップに衝撃が走る。

「攻撃!? でも、どこから」
「サムス、一つ聞くが……君は身一つで惑星から飛び立ったりできるか?」
「こんな時になにを……できるわけ無いでしょう!」
「なら、君のコピーはまさしくギガサムスと呼ぶに相応しいだろう。……船の上だ!」
「なんですって……まさか!?」

 コピー・サムスが自分の性格までコピーしているのなら、探索は必要ない。
あちらから仕掛けてくるだろうといった、サムスの予測は当たった。
しかし、それは最悪のタイミングでの的中であった。敵は大気圏に入った時点で襲い掛かってきたのだ。

 まさかここまで早く察知されるとは思っていなかったし、
何より、大気圏で活動できる能力を持っているなどとは考えもしなかった。
自分の複製品であるため、あくまで自分をベースに敵の性能を予測した。その油断である。

 だが、コピーはサムスに行動不可能な大気圏を何の苦も無く飛び回り、
あまつさえスターシップに取り付いてきたのだ。
 己のうかつさに、サムスは舌を打つ。そして通信機に聞き覚えのある声が響いた。

「アハハハッ、よく来たわねカップルさん! 歓迎の祝砲はいかがだったかしら?」
「客に祝砲を撃ち込む歓迎なんて聞いた事がないな。とんだテーマパークだ!」
「これがサムスランド流の歓迎なの。園長のメッセージがあるわ、聞いて!」
「聞きたくないわ」
「そう言わずに美人さん、一言だからさっ。メッセージはね……Die!!」

 コピーのガンポッドから凝縮されたエネルギービームが吐き出された。
ビームはスターシップの動力部を貫通し、船を制御不能に陥らせる。
制御を失ったスターシップからは耐熱バリアが消え、バランスも崩れていく。
脱出も適わず、もはや成すすべが無い。
スターシップは大気の摩擦熱に焼かれながら、ゼーベスの引力に引かれていった……。


 火球と化したスターシップを見つめるコピーが独り言をつぶやく。

「ふふん、せいぜい恐怖しなさい。でも、まだ終わらせないわよ」


 静。そこは動物の気配がしない場所だった。あるものは、ただ黒く広がる暗雲。
雨は降らず、雷鳴が鳴り響き続けるのみ。
 生命を感じさせない空間にただひとつ、人工物が転がっていた。

「……む、むうっっ!? ……お、俺は……生きていたのか」

 スターシップは奇跡的に燃え尽きず、ほぼコクピット周辺のみを残す形で墜落していた。
長い時間、気を失っていたファルコンは、雷鳴の音で目を覚ます。
 サムスは無事か。ファルコンはコクピットを見回すが、サムスの姿が見当たらない。
上を見ると、ハッチが開いている。外にいるのか。ファルコンは外に出てみる事にした。

「むう……何もないな」

 辺りを見回す。ごつごつとした岩場だ……草木は少ない。
空はどんよりと曇り、ときおり高い場所に雷が落ちる。また、近くからは水の音が聞こえてくる。湖でもあるのか。
 どうやらここがクレテリアの様だった。サムスから見せられたデータと状況が酷似している。

 ファルコンは近くを探し回ってみたが、サムスの姿を見つける事はできなかった。
 先に行ったのか……いや、それは考えにくい。
これだけ危険な状況下で単独行動を起こす程、彼女は軽率な人間ではない。
それでは……ファルコンの脳裏に最悪のイメージが描かれる。

「途中で船から吹き飛ばされたか……?」

 もしそうであれば、彼女が生きている確立は低いだろう。

 ――勝利とは、運ではない。己の力で勝ち取るものだ――とは、彼の信念であるが
実際、悪の化身ブラック・シャドーと戦った時も、時間犯罪者デス・ボーンと宇宙の命運を掛けた時も
彼は持てる限りの力を発揮して平和を守ってきた。

 だが今回彼はは完全に運に助けられた形になった。
ただし、その代償に、彼は愛する人を失ったかもしれない。ファルコンは悔しげに歯を軋ませた。

「無力だ……女一人、助ける事ができないとは……!」

 それでも戦士に悩む時間は無い。ファルコンは気合を入れなおすと、惑星の探索を始めた……。


 しばらく岩場を進むと、いくらかの生物と遭遇した。
といっても、知的生物ではなく、侵入者に襲い掛かってくるだけの下等生物であったが。
降りかかってくる雑魚共をファルコンはなぎ倒し、目標へ向かって突き進む。

 目標とは無論、コピーされた悪のサムスだ。ファルコンは己のクローンと戦った事もあり
サムスがいかにこのコピーに嫌悪感を持っていたか手に取るように解った。
 ファルコンはサムスの思いを晴らすため、闘志を燃やす。

「どこだ……出て来い悪の化身め、俺がいる限り好き勝手はさせん!」

 ファルコンは叫ぶ。気合を入れなおしたつもりだったが、その叫びに返事を返す者がいた。

「ファルコン……」
「むっ……!? この声は、サムス……?」

 岩場の影から、オレンジ色のパワードスーツを身にまとったサムスが姿を現した。

「無事だったのね。ごめん、あなたがどうしても起きないものだから、先に行動させてもらったの」
「サムス……」

 サムスはゆっくりとファルコンへ向かって歩いてくる。そして手が届く範囲まで近づいた時だった。

「むうん!」

 ファルコンは身を翻し、ストレートをサムスに放つ。突然の攻撃にサムスはガンポッドを盾にし、叫ぶ。

「な、何するのよファルコン! 私よ、サムスよ!」
「ハハハ……俺を騙せると思ったか!」
「馬鹿な事を言わないで! 私は本物のサムスよ、わからないの!?」
「ならば、この問いに答えてみせろ。お前は俺とどういう条件で手を組んだ?」
「賞金を払うのと、その、ベッドサービスを」
「では、その額は?」
「……十億クレジットよ」
「残念、 三十億クレジットだ。どうやら馬脚を現したようだな」

「……ちっ。筋肉バカかと思っていたら……意外と鋭いじゃない」

 唐突にサムスの声色が変わった。いつものサムスとは違う、邪悪な響きを持った声。
そう、彼女はサムスではない。大気圏でファルコン達を襲った、あのコピーだったのだ。
正体を現したコピーは、戦闘態勢に入りファルコンに襲い掛かってくる。

「あのまま尻尾を巻いて逃げ出せば見逃してあげたのに、愚かな男!」
「サムスの仇を取らせてもらうぞ!」
「仇? まだ死んじゃいないわよ。私がちゃぁんと保護してあげたから」
「何……貴様、サムスをどうするつもりだ!」
「あなたがそれを知る必要は、ないわ」

 コピーはグラップリング・ビームを発射する。
ファルコンはサムスとの試合を思いだし、とっさに身を引いて避けた……はずだった。

「ぬうっ!?」
「アハハハッ、宇宙最速の男が聞いて呆れる。これぐらい避けなさいよぉ」

 判断が甘かった。コピーのグラップリング・ビームはサムスのそれより何倍も速く、そして射程も長かった。
オリジナルより能力が強化されているという点を考えれば、予測できたはずなのだが、
動きも姿もサムスとあまりに似ているために、「慣れ」がとっさの判断を誤らせてしまった。
 ファルコンは捕らえられ、ビームに体を締め付けられる。

「ぐうっこの程度で……くっ、抜けん!」
「ムダよ。私は全てにおいてオリジナルを何倍も超えているわ。それと互角のあなたじゃ、私には勝てない」
「俺はどんな悪にも屈さんぞ!」
「どんな悪にも?」
「悪人を狩るのが俺の仕事だ」
「そう。だったら……」

 コピーのガンポッドが、音を立てて変形する。
するとグラップリング・ビームの色が青から黄色へと変わった。
捕縛するだけのビームに、強力な電撃を加えた強化型のグラップリング・ビームだ。
オリジナルにはない、コピーの強化技である。
 ファルコンの体中に殺人レベルの電流が走る。

「ぐわああぁぁっ!!」
「アハハハッ、いつまで耐えられるかしら?」
「おのれ……許さんっ……!」
「まだ喋れるのね。じゃ、もう少し電圧を上げてあげるわ」

 コピーはガンポッドのパネルを操作した。

「!! グァッ……! ッ……! …………」

 極限まで上げられた電圧に、とうとうファルコンも耐えきれなくなった。
彼を支えていた両足は力をなくし折れる。どう、と巨体が地面に倒れ付す。

「ふふふ……面白い男。少し利用させてもらおうかしら……」


 スターシップが撃墜された時、サムスは死を覚悟していた。
意外と恐怖はなかった。すでに何度も死線をくぐってきたからか、愛する男が側にいたからか。
それとも、心のどこかで永遠の眠りを望んでいたのか。
 それは自分にもわからない。ただ、おかしな安堵感が身を包んでいたのは事実だ。
安堵感に包まれたまま、サムスは目を閉じた。
 その目が開かれる事は二度とないはずだった。だが……

「うっ……ここは……」
「お目覚めかしら、美人さん」

 目を覚ましたサムスの眼に映ったものは、自分の顔だった。
一瞬、思考が混乱に襲われるが、すぐにコピーの事を思い出しいつものクールな頭脳を起動させる。
 どうやら敵に捕らわれたらしい。体を動かそうとしたが、思い通りにならない。
手術台の様なものに、大の字に固定されているようだ。
 周りはうす暗い……しかし、見覚えがある。恐らくここはゼーベスのツーリアン(行政区)だろう。
だが、改造を施されているらしく妙な機械や脈動する、内臓の様なものがそこかしこに散らばっていた。
あまり気持ちのいいものではない。

「お、お前はっ」
「お会いできて嬉しいわぁ。ああ、自己紹介がまだだったわね、私はサムス・アラン」

 水色の全身スーツに、豊満な肢体。初めて眼にする己のコピーは、何から何まで自分そっくりだった。
鏡を見ているかのような感覚に、サムスは激しい嫌悪感を覚える。

「……へぇ、貴女があのサムス・アラン? 噂より不細工じゃない」
「あらぁ本物は自虐癖でもあるのかしら。それともマゾ?
 なら、今の状態はキモチイイんじゃない? 変態ねえ……クククッ」
「……!」

 敵を目の前にして気づいていなかったが、サムスは布切れ一つ身にまとっていなかった。
体を大の字に固定されているため恥ずかしい所を完全にさらけ出している状態だった。
プライドを侮辱されたサムスはぎり、と歯を軋ませる。

「へらず口を。私を生かしておいた事、後悔させてやる!」

 サムスは意識を集中させ、パワードスーツを装着しようとした。
スーツがあれば、この程度の手かせ足かせは力ずくで破壊できる。
だが、なんど試みてもスーツが出現しない。何らかの方法で封印されたか。サムスは少し焦る。

「アハハハッ! ムダよ、ム・ダ。あなたの能力はぜ〜んぶ吸収させてもらったわ。もう、あなたはタダの女なの」
「……私を、どうするつもりだっ」
「そうねぇ。本当は気絶してる間にさっさと殺して、私が本物のサムスになるつもりだったんだけど……」

 コピーの眼が妖しく光る。

「あんまりキレイだから、精神が壊れるまで嬲ってあげようかと思ってさ!!」

 そう言うやいなや、コピーはサムスの首を掴む。顔には残忍な笑みを浮かべたまま。
サムスは懸命に抵抗するがコピーの恐ろしい腕力に成すすべもなかった。
呼吸を止められたサムスは少しずつ、その美しい顔をひきつらせて行く。

「ぅ……あがっ」
「ふふふふ……そうそう、その顔よ。いいわぁゾクゾクしちゃう」

 万力の様な力に抵抗できないサムスはただただ、もがく。
いかに訓練された肉体であっても、酸素がなければ生命活動は維持できない。
次第に動きが緩慢になっていき、酸素不足に陥ったサムスは限界を迎えはじめた。
 端整な瞳は白目を向き、だらしなく開いた口からはよだれが垂れる。

「おっと、死なれたらつまらないわ」

 コピーは瀕死のサムスから手を離す。

「ふはッ……ウエエッ! ゲホッ! ゲホォッ!」
「アハハハッ! 無様ねえ。でも、まだまだ序の口なのよ。これぐらいでへたばってたら、体が持たないわよぉ?」
「ゲホッ!……ウウッ、ハァッ! ハァッ……!! ウゥゥ殺してやる……絶対に殺してやる!!」
「おぉ怖い。でも裸で、しかもよだれまみれの顔で言われても迫力ないわァ。アハハハハ!」

 サムスからいつものクールさが消えかかっていた。
だが、サムスは敵から拷問を受けるのは別に初めてではないし、もっとひどい事をされた事もある。
にもかかわらず、サムスがここまで取り乱すのはやはり自分と同じ姿の人間が襲ってくるという異常な事態に、
本能が怯えているのかもしれなかった。

 しかしコピーにとってはそれが狙いだ。己のオリジナルモデルであるサムスの精神と肉体をじわじわと、
くびり殺していく……マスターハンドによって創造される際、肉体能力だけでなく、
狡猾さと残忍性を極限まで強化されたコピーにとって、それは例えようもない快楽だった。

「さあて……それじゃあ第二ラウンドと行きましょうか」

 コピーは楽しそうにいうと、傍らのスイッチを押した。
するとサムスが捕らわれている台の床が移動し、ガラス面の床が現れた。
 ガラス床の下はプールの様になっており、その中には、大量の芋虫の様なモノがうじゃうじゃと蠢いていた。
大きさは一匹につき、ゆうに四〇センチ以上はあるだろう。虫が嫌いな人間なら見ただけで気絶してしまうかもしれない。

「ほぉら、サムス見て。これが私の可愛いペットよぉ」

 そういうと、再び傍らのスイッチを操作する。
今度はサムスが捕らわれている台がぐるりと反転し、サムスの視界には蠢く奇怪な巨大芋虫が入ってくる。

「っ……」

 さすがのサムスも、これには拒絶反応を示す。こういう敵と戦った事がないわけではないが、スーツ越しと裸では訳が違う。
それに、これからコピーがやろうとしている事をだいたい予測できた。

「や、やめろ……」
「あら察しが良いのね。それじゃあいってらっしゃい」
「嫌ァァッ!」


 コピーがスイッチをまた操作すると、ガラス床も移動し、サムスは固定されたまま芋虫プールに落とされた。
プールまである程度の高さがあるため落ちる際に何匹かの芋虫は潰れ、緑色の体液がサムスにまとわりつく。
おぞましい液が己の体に降りかかってくる感触に、サムスはすくみあがった。
 さらに体の上を、芋虫たちはずりずりと這い回っていく。さすがのサムスもこれには耐えられずに悲鳴を上げる。

「うぅ……うぁあああぁああ!!」
「アハハハ、どう? 楽しいでしょお」
「イヤァ……! どうせ殺すなら、ひと思いに殺しなさいよぉぉ!!」
「何かいった? それよりね、その蟲はちょっとした習性があるのよ」

 コピーは右腕を一振りする。次の瞬間その腕はガンポッドに変わっていた。
相変わらず残忍な笑みを張り付かせたまま、コピーはガンポッド・パネルを操作する。
ノーマルビームから、何か他のウェポンに切り替えたようだ。

「そいつらはねえ、β線を浴びると穴に潜りたがるの。この意味、わかるぅ?」
「ひぃっ、ひぃぃぃっ……」
「あらあら……もうこっちを見る余裕もないのね。じゃあ、もっと酷くしてあげる!」

 コピーはウェポンハンドをプールに向かって構える。恐らく、発射されるものはβ線であろう。
目に見えない放射線がプールに降り注いで行く……。
 しばらくすると、それぞれ勝手に蠢いていた虫の動きに変化が現れた。
なにかに怯えるようにせわしなく動き回り、特にサムスの体の上をこぞって這おうとする。
やがて、一匹の虫が何かを探し当てた様にぴたりと動きを止める。それはサムスの膣口の前だった。

「ひっ! な、なんなの……」
「クククッ。言ったでしょ? 穴に潜りたがるって」
「そんな……嫌っ、絶対嫌ッ!!」

 サムスの叫びもむなしく、絶好の「穴」を見つけた虫はもぞもぞと身をくねらせて、サムスの膣に潜り込もうとする。
しかしまったく濡れていない膣内にはなかなか入り込めず、業を煮やした虫は全身から体液を噴出し始めた。
体液はうまく円滑剤の役目を果たし、ついに虫は頭を潜り込ませる事に成功した。
 奇妙な感触にサムスは思わずのけぞる。

「アアッ、アアアァッ!」
「ほーらほら。そんなに口をおっきく開けてると、そこにも蟲が入っちゃうわよお」
「ウグッ!? ウーーッウゥゥゥッ!!」
「いわんこっちゃ無いわ。それにしても……良い様だこと。ふふ、ふふふふ……アーハッハッハッハ!!」

 コピーが体を震わせて笑う。虫に全身を犯されながら、サムスはそれを見つめていた……。


 サムスが芋虫プールに入れられてからおよそ5時間が経過しようとしてた。
虫は相変わらず体を這いずり回っているが、もはや悲鳴を上げる気力も失せ、
サムスはただ、虚ろな目を虚空にただよわせていた。
 だが、コピーはサムスに安息の時間を許しはしなかった。
反応の少なくなったサムスを一瞥すると、彼女は再びスイッチを操作し始めた。

「ひぎゃっ!?」

 プール全体に電流が走る。かなり強い電撃のようで、
サムスは耐えられたが、虫たちは激しく痙攣し、つぎつぎと死骸に変わっていく。
しばらく電流を流すとプールの中の虫たちは殆ど動かなくなった。

それを確認すると、コピーはサムスをプールから引き上げる。
 サムスは虫攻めされた挙句、電流を流されぐったりとしており、
芋虫地獄が終わってもそれに安堵する様子もなかった。
コピーはそんなサムスにつかつか近づくと、膣に残っていた虫を一気に引き抜いた。

「ウッ!」

 液でべとべとになった虫を捨てようとするが、コピーはふと止まって虫を観察する。
すると口元を歪め、捨てずにサムスの顔の前まで持っていく。

「あら? これ虫の体液じゃないわね。愛液っぽいわねえ……もしかしてあなた、感じてたの?」
「…………」
「くくっ……あはっあはははっ! まさか本当に変態だったなんてっ、あっははははっ!!」

 暴かれたサムスの性癖に、コピーは笑いころげる。……だが、それはコピーの策略だった。
あの虫は、催淫効果のある特殊な体液が出るように改造されていた品種だったのだ。
しかしサムスがそれに気づく由もなく、訳のわからぬ虫に、わずかでも快楽を感じた己の浅ましさに絶望を感じていた。

 コピーは絶望に沈むサムスに顔を近づけ、妖しく囁く。

「あなたみたいな変態には、お仕置きが必要ね……」
「もう……やめて」

 サムスの嘆願を無視したコピーは、何を思ったか水色のスーツを脱ぎ始めた。豊満な肢体が露わになっていく。
そして全裸になると、なにやら体に力を入れはじめた。

「う……うああ……うはああっ!」

 コピーがぶるぶると震える。サムスはその光景に目を見開いた。
クリトリスであったものが、まるで男性のペニスの様に巨大化していくのだ。
それだけはない、その形すらも本物そっくりにモーフィングするかのごとく変化していった。
 やがてそれは完全なペニスとなり、亀頭や鈴口までも再現されていた。
さらに、はちきれそうなほどに勃起しており、開いたカサはまるでコブラのようだ。

「ふふふっ驚いた? マスターハンドに創造された後、
 クレイジーハンドに面白い能力を貰ったの。それが、コレ……ちゃんと射精もできるのよ」

 コピーはペニスを数回しごくと、サムスの顔に亀頭を擦り付ける。
コピーの言葉に偽りはなかった。証拠に先走り汁が塗りたくられ、離すと糸を引く。


「コレを、今からあなたのアソコにぶち込んであげるわ。どう? 変態のあなたなら感じちゃうでしょ」
「イヤ……イヤぁ……イヤよぉ!!」
「さっきからイヤイヤ言って、本当は嬉しいんじゃないの? ククッ。さあて、入れるわよぉ」

 コピーは大の字に固定されるサムスの前に回ると、たぎるペニスをサムスの膣内に挿入させていく。
完全に挿入したのを確認すると、コピーはゆっくりと腰を振りはじめた……。

「フゥッ……い、いいわぁ。貴女の中、とってもキモチイイわ……」
「ウウッ……ウアアッ」
「自分とセックスしてるなんて、不思議な気分でしょ? アハハッ、ほらもっと喘いで!」

 まったく同じ姿の二人の美女が妖しく絡む……異常な光景だが、
ペニスの有無以外に違う所をひとつ挙げるとすれば、その表情だ。
犯されている側は憔悴しきっているのに対し、犯している側は邪悪な笑みを浮かべ、興奮の最中にいた……。
 コピーは腰を振りたくリ、少しでも快感を得ようとする。

「ああ……素敵ィ、自分のがこんなに名器だったなんて、知らなかったわ!」
「ひぃぃっ」

 だんだん腰の動きが早くなってくる。コピー自身もこの異常なセックスに酔っているのか、
射精に至るまでの時間がだいぶ短くなっているようだった。
 途中からは無言で腰を振り、いよいよピストンの速度は最高に達していく。

「んふふふ……さあ出すわよ。あなた地球人と鳥人族のDNA合成人間だから、
 宇宙の誰とセックスしても妊娠しないけど……私とだったら、どうかしらねええ!?」

「……! や、やめて、それだけはやめて!!」
「止めるわけないじゃなぁい、こんな楽しくてキモチのイイことを! あ、ああ……! 出るぅぅ」
「イヤァァァァッ……!!」

 悪夢の種がサムスの膣で弾けた。その量は凄まじく、ペニスを挿入したままの状態で液がどろどろとあふれ出る。
コピーは正気を失ったかのような笑い声を上げつつサムスに精液を注いでいく。

 およそ1分は射精が続いただろうか、
完全に脱力しきったサムスに満足したコピーは、ようやく射精を終えたペニスをずるりと引き抜いた。

 涙と汗で顔をぐしゃぐしゃにしたサムスがなにかうわごとの様につぶやいている。

「たす……けて たすけて……ファルコ……ン」

 だが、そのつぶやきはさらなる悪夢をサムスにもたらすこととなった。
彼女の言葉を聞き逃さなかったコピーは、意地悪そうに答える。

「ファルコン……ああ、あの大きな男ね。会いたいの? なら、会わせてあげるわ」

 そういうと、コピーはまたスイッチを操作した。すると奥の扉が開き、見覚えのある影がこちらへ向かってくる。
間違いない。それは墜落時に行方不明となったキャプテン・ファルコンだった。
 最愛の男を目にしたサムスは一瞬、希望を取り戻したが……

「ふ……ファルコン!? 良かった、生きてたのねファル……」

 次の瞬間サムスは再び絶望の底に突き落とされる。
足取りのおぼつかないファルコンは、サムスを救出するどころか、あのコピーの膝元にかしずいたのだ。
 サムスは我が目を疑った。

「ファルコン、どうしちゃったのよファルコン……!」
「アハハハッ。残念ね、もうコイツは私の言いなりなの。
 悪には屈さないとか言ってたけど女には弱いみたいね、ちょっと色仕掛けしたら簡単に堕ちてくれたわ」
「そ……んな」

 コピーはかしずくファルコンを立ち上がらせると、サムスに見せ付けるかのように彼の胸元にしなだれかかった。
サムスが鬼の様な形相で睨んでいるが、意にも介さない、といった風情だ。

「ねえ、ファルコン。あそこにバカな女がいるんだけど……ちょっとお仕置きしてあげたの。
 でも効いてないみたい。それでね、あなたもお仕置きしてくれない? バカには体で解らせてあげなきゃ……」

「ファルコン目を覚まして! そいつは敵なのよっ」

 サムスは必死でファルコンに呼びかけるが、洗脳されているのかまったく聞く耳をもたない。
コピーはあざ笑うかのようにファルコンにキスをすると、

「さあ、やっちゃいなさいファルコン!」

 と、叫ぶ。
 その叫びに同調したファルコンはゆっくりとサムスに近づくと、いきり立ったペニスを取り出した。
それをサムスの膣口にあてがう……

「やめてっ、やめてよファルコン! こんなのいやぁぁっ!」
「…………」

 神はいないのか。サムスはそんな事を思った……。しかし、誰もサムスを助ける者はいない。
無慈悲にペニスは挿入されていく。
 いつもなら優しく激しく愛してくれるファルコンは、強引に腰を振るだけだ。
まったく快感を伴わない、痛みだけのセックス。サムスにとって悪夢の時間が過ぎて行く……

 コピーが見守る中、ファルコンは嫌がるサムスを無理やり犯し抜く。
 部屋は狂乱状態だった。サムスの泣き叫ぶ声に、コピーの狂った笑い声。
それに肉がぶつかり合う音、粘液のヌチャヌチャという音がオーケストラの様に延々と演奏される。


「あうっ、ああっ、ううぅっ……!」 
「…………」

 ファルコンは終始無言で腰を振る。快楽すらもコントロール化にあるのか、息さえ荒げない。
 やがて、コピーが同じ動作しか繰り返さないファルコンに飽きたのか、次の命令を飛ばす。

「突いてるだけじゃつまんないわね……いいわ。ファルコン、とりあえず射精しなさい」

 命令が飛んだ途端、ファルコンの腰の動きが早くなった。
そしてサムスが拒絶の言葉を吐く間もなく、欲望の液が放出された。

「うあ……ファル、コン……」

 射精を終えたファルコンはペニスをしまうと、すぐにコピーの傍らに戻っていく。
数メートルの距離であるが、サムスにとっては彼方にファルコンがいってしまう様に見えた。
残った力を振り絞って手を伸ばそうとするが、固定された体が動くはずもなく、もがくだけで終わる。

 その仕草の意味を察知したコピーは、さらにサムスを追い込むアイデアをひらめく。
コピーは徹底的にサムスの精神を破壊するつもりなのだ。彼女はファルコンを従え、サムスの目の前に移動する。
そして再びファルコンにしなだれかかると、今度は自らがファルコンを誘惑する。

「ねえ、ファルコン。あなたを見てたら私も興奮してきたわ……ね、私も抱いてくれないかしら」

 わざとらしくいう。コピーはファルコンと愛し合う所を見せつけ、
ファルコンの心から完全にサムスが消え去ったのを見せ付けてやるつもりだった。
 そして絶望に押しつぶされたままのサムスを、ファルコンの手で殺害させる。それがコピーの目論見だった。

 ファルコンがコピーの肩に腕をまわし、コピーはファルコンの腰に手を回す。
サムス処刑の、最後のステップが始まろうとしていた。


 しかし……

「この時を……待っていた!!」

 ファルコンが突然叫び、コピーをがっちりと掴んだ。

「なにっ! 完全に洗脳したはずじゃあ……!?」
「この俺が悪の手先になると思ったか」

 洗脳されていたと思われたファルコンは突如、覚醒した。
いや、覚醒したのではない、狙っていたのだ。コピーが油断を見せる瞬間を。

「ふぁ、ファルコン……?」
「サムス……すまなかった。事情は後で話そう」
「ファルコン!!?」
「くっ離せ! 離しなさいファルコン!」
「うおおおおッ!」

 ファルコンはコピーを抱きかかえたまま、天井を突き破り空高く舞い上がっていく。

「貴様を生かしておく訳にはいかん! 俺は必ず貴様を倒すッ」
「く、そう簡単にやられるもんですか、スーツを……!」
「させんっ、ファルコン……!」

 右腕のみを引き離し、ファルコンは拳に力を込める。
ファルコンの体はまばゆく光り、炎の隼が拳を包みこむ。あらゆる悪を貫く、ファルコンの必殺技だ。

「パァァアアアーーーンチッ!!」
「キャアァアアアァッ……!」


 拳がコピーの上体に炸裂すると同時に、大爆発が起きた。
凄まじい衝撃に耐え切れずコピーは上体を引き千切られ、下半身を残して吹っ飛んでいく。
 ファルコンは吹っ飛ぶ上体を追い、ファルコンキックによる止めの一撃を加えた。
燃え上がる炎につつまれ、コピーは消し炭となっていく。ファルコンの勝利だ。

 数刻が過ぎた。捕らわれたまま動けないサムスのもとに、赤いヘルメットの男が舞い戻ってきた。

「ファルコン! 無事だったのね」
「ああ。今回ばかりは肝を冷やした……さて、縛めを解いてやる」

 ファルコンはサムスに近寄ると、彼女を固定している器具を力ずくで破壊した。
怪力である。どうやって鍛えたのかは不明だが、彼を初めとする元F−ZERO世界出身の人間は、
パワードスーツを来たサムスと同等の力を持っている者がいる。ファルコンもその一人だった。

「ありがとう……さすが、私の見込んだヒトね」
「奴は強大だった。奴を倒すためには、洗脳されたフリをして隙を伺うしかなかった。
 だが、君には酷い事をしてしまったな……許せとは言わん」

「どうでもいいわ。結果が全てよ……でも、ひとつだけ」

 サムスは腹部をなでる。

「心配するな、奴の種の事なら。腕利きの医者が知り合いにいる。彼の手に掛かれば、跡形も無くなる」
「ありがとう……ファルコン」
「さあ、もう長居は無用だ。帰ろう」

 しかしサムスには気になる事があった。ゼーベスに突入する際、大気圏で襲われたのだ。
その時点で気づかれていたなら、ファルコンフライヤーの存在も認識していたに違いない。
おそらくこちらも破壊されているだろう。それなのにどうやって戻るか……?
 疑問を察知したファルコンが先に答えた。


「スターフォックス隊が、側にいる様だ、先ほど通信が取れたからな。
 どうやら外宇宙での任務の帰路だったらしい。できれば、もう少し早く来てくれれば良かったが」
「彼らが……! なら、もう安心ね」

「ところでサムス、パワードスーツでいいから身にまとった方がいい。裸を見られたくはないだろう?」
「スーツは……吸収されたわ」

 己が気絶している間に、何らかの方法でスーツの能力を奪われてしまったのだ。
コピーの能力なのかそれともゼーベスの技術を使ったのか、それは解らないがスーツがない以上、
自分は鳥人族の能力をもった人間にすぎない。サムスはうなだれた。

 だが、それを聞いたファルコンは「そうか、なら」とベルトのパックに手をやる。
取り出されたものは、小さめの水晶玉のようなものであった。使え、といわんばかりにサムスに差し出す。
 サムスはいぶしかげに玉を見つめると、あっと顔を輝かせた。

「これはグラビティ・スーツのユニット。そうか、ここはゼーベスだものね……よし」
「ああ。ここに侵入する際に見つけた。取っておいて正解だったようだな」

 サムスは宝玉を手に取ると、目を閉じて精神を集中させた……まばゆい光がパワードスーツを形作っていく。
ものの数秒でスーツの装着は完了した。
 その姿はまさしく宇宙戦士、サムス・アランである。

「クレテリアの方まで戻りましょう。グレートフォックスじゃここまでは侵入できない」
「ああ。奴らにここまで迎えにこさせたらF−ZEROとバウンティ・ハンター、両方の世界で笑いものになる」
「お互い稼ぎを落としたくはないものね?」
「まったくだ。新しい宇宙船を購入しなければならない。まあ賞金の30億クレジットがあれば、なんとかなるが」

「う……覚えてたのね。でも、私も宇宙船が必要なのよ。ローンじゃダメかしら」
「冗談だ。困っている者から金を取るつもりはない」

「あら優しい。でも、サムス・アランの名にかけて、踏み倒すつもりはないわ。すぐには返せないけど、必ず払う。
 それと……サービスの方ならすぐにでも、してあげるわよ?」

「それは嬉しい申し出だ。地球に戻ったらホテルを手配させてもらおう。さて……行くぞ」
「ええ行きましょう……そうそう、ホテルは一番高いとこでお願いするわね」


 二人は競うように惑星表面を目指して進んでいった。
今回の戦いは大きな傷を背負ったものの、その中で二人の絆はより強くなったことだろう。
二人がダブル・ハンターとして名を馳せる日は、そう遠くないかもしれない……。


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2007年05月07日(月) 01:11:38 Modified by smer




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