メニュー
Wiki内検索
最近更新したページ
タグ

8-156

スマブラメンバーが宿泊した宿にも、朝が来た。とはいっても、まだ日も昇らない暁の時間帯だが。
AM 5:30
まだ宿が寝静まっているころ、二人の男が目を覚ます…。
「ゲームウォッチ、おはよう。」
「……Zzz……Zzz……」
いや、まだ一人は眠っているが…。
「ゲームウォッチ、起きなよ。」
「……ん…あ、先輩…」
「おはよう、ゲームウォッチ。」
「あー…お早うございます…。」
早く起きたルイージがゲームウォッチの部屋へやってきて、彼を起こした。
普段はこの二人は早起きで、昨夜も大人たちの飲み会に参加しなかったため、このくらいの時間に起きても早すぎではなかった。
「…いや、それにしても早いっすね。どうしたんすか?」
「いや、ちょっとね。窓を開けてごらんよ。」
「?」
ゲームウォッチが窓の障子を開けると…
「お……」
東の空が白みはじめている。辺りの森を映して、なんとも景観である。
「ね、早起きしてよかったでしょう。」
「はい、いやいや、ほんとに早起きしてよかった。いい眺めだ…。」
二人で並んで、東の空を眺める。
「もうすぐ日が昇ってくるっすね…。」
「あぁ。ゲームウォッチ、これから、一日がはじまる。そして、その一日が終わった時、ガノンさんはプリンちゃんに告白している…はずだ。」
「そうっすね。いやぁ、いい目覚めだ。」
「あぁ…まったく。…さて、まだ朝食までは十分すぎるほど時間がある。僕はロビーの自販機でコーヒーでも買ってこようと思ってるけど、ゲームウォッチはどうする?」
「あーオレも行くっすよ。」
二人は部屋を出て、ロビーへ向かう。



缶コーヒーを買った帰り道、まだ皆眠っており、誰ともすれ違うことはなかった。時々、個室の前を通り過ぎるといびきが聞こえてくる。まだみんな寝ているようだ。
誰もいないためか、ルイージとゲームウォッチは、ガノンとプリンのことについて、あれこれ話し合いながら歩いている。
「それでさ、今日の午後からはいよいよ大詰めだから、ひとつ本格的に二人を結びつけようと…」
「そうっすね。確か例のアレもちゃんと予約してありますし。」
無防備にそんな事を話している時だった。
ちょうど通路が交差しているところで、二人の目の前に誰かが急にフラフラと出てきた。
「うわぁっぷ!」
ルイージはそれに驚いてコーヒーを思い切り噴出しそうになったが、それをなんとか抑える。
「おわぁぁっ!!」
本当に油断して二人で大声で話していただけあって、ゲームウォッチも驚いた。
(やばい! 聞かれた!?)
(うっ!? 誰だっ!!?)
…二人の目の前に歩いてきたのは、アイスクライマーのナナだった。いつもの防寒着ではなく、浴衣姿だったが。
「あ、ナナか…」
とりあえず噂大好きなワリオでなくて安心する二人。こんな会話がワリオに聞かれたら、あっという間にメンバーじゅうに広まって告白どころではない。
ナナが二人に気づき、二人を見上げた。
「…あれ…ルイージさん、ゲームウォッチさん……おはようございます。」
「あ? あ、あぁおはよう。」
ルイージは激しく動揺しながら返事をした。
ナナはまだ寝ぼけ眼だ。髪も乱れているし、浴衣も右肩が肌蹴ている。たった今起きたばかりのようだ。
この様子では、どうやらさっきの二人の会話を聞いてはいないらしい。それにしても…
「ナナ…ど、どうしたんだい? こんな時間に…まだ起床時間までずいぶんあるよ。」
「…」
ナナはうとうとしながら答える。
「………トイレ…」
「トイレ?」
二人は顔を見合わせた。
ルイージはかがんでナナに話しかける。
「…ナナ、トイレはそれぞれの部屋にもあるじゃないか。どうして外のトイレへ?」
「…………」
ナナは目をこすった。今にも倒れて眠ってしまいそうだ。
「ナナ、寝ぼけちゃってるみたいだね…。ゲームウォッチ、部屋まで送ってあげよう。」
「そうっすね。」
ルイージはナナを背負い、アイスクライマーの二人の個室へと向かった。

ルイージに背負われて完全に眠ってしまったナナ。
「…………」
「…………はゥ!」
ルイージの背筋に急にくすぐったいような変な感覚が走った。
ルイージの背中で眠るナナの暖かい寝息が、ルイージの首筋に吹きかけられる。
「………………」
「…Ohhhh…」
ナナの寝息が首筋に吹きかかるたびに、全身に震えが走る。



ゲームウォッチはルイージの異変に気づいた。
「…ん? 先輩どうしたんすか?」
「…………」
「…先輩…大丈夫っすか?」
「…うん…」
「…先輩…どうしたんすか? なんか足がフラフラしてるっすよ?」
「…うん…」
「…先輩…目の焦点合ってます?」
「…うん…」
「…先輩…オレの話聞いてます?」
「…うん…」
「…先輩…1+1=?」
「…うん…」
「…先輩…このまま脇役でいいんすか?」
「…いやだ…」
「…先輩…せんぱ〜い…」
「…うん…」
「…先輩…オレの話聞いてないっすね……」
「…うん…」
ゲームウォッチはため息をついた。
(ダメだ、心ここにあらず…って感じだな…。先輩…。)

そんな調子でアイスクライマーの部屋の前までやってきた二人。ポポやナナを起こすのもかわいそうなので、失礼ながら部屋におじゃまし、布団に寝かせてあげることにした。
のだが…。
アイスクライマーの部屋には、布団が一つしかなかった。その一つの布団では、ポポが寝ている。
「ん? ナナの布団が敷いてないな…。」
「変っすね。…まさか寝ぼけて布団をたたんだわけでもないだろうし…。」
「…いや、布団に枕が二つある。…どうやら、同じ布団で寝ていたらしいね。この二人…。」
二人は眠る布団まで同じらしい。うらやましいやらなんやら。
ルイージは、眠っているポポを起こさないようにしつつナナを寝かせてあげた。
ナナはポポに寄り添って、深い眠りにつく。
なんとも微笑ましい光景だった。
「このふたり、オレたちが知ってる以上にいい仲なんすね。」
「あぁ…そうだね。…二人とも幸せそうだなぁ。」
「そうっすね…。ガノンさんとプリンちゃんも…もしうまくいったら…」
「……もう失礼しよう。ここは二人の部屋だからね。」
ルイージとゲームウォッチは、物音を立てないように静かに部屋を出た。



「…しかし…」
自分達への部屋への帰り道、ルイージは腕を組んで考えた。
「ん? どうかしたんすか? 先輩…。」
ゲームウォッチはのんきにコーヒーを飲んでいるが、ルイージはなにやら不安そうな顔をして悩んでいる。
「…ゲームウォッチ…今、ナナにはバレてないよね。」
「ガノンさんのことっすか?」
「しっ!」
ルイージがゲームウォッチに注意する。
「…今思ったんだけど、僕らは、今の無防備な会話みたいに、不注意すぎるんじゃないかな…いつも。」
「えっ!?」
ゲームウォッチはコーヒーを吹きそうになった。
「ええっ!?」
今まで楽観的だったゲームウォッチが、急に不安になる。
「た、確かにそうかも…えっ、じゃぁ…ひょっとして、うっかり誰かに聞かれちゃって、全部バレてるかもってことっすか!?」
「ええっ!? いや、そこまでは言ってないけど…」
ルイージは、ただ、不注意だから気をつけようと言おうとしただけだが、そこまで言われると心配になってしまう。
「い、いや、たぶんバレてないよ、きっと…」
「あぁ…そうっすか…そう…でしょうね。だってもしバレてたら…オレ達…」
「あぁ…もし…バレてたら…、バレてたら…?」
二人は、もし話が広まったときの事を想像してみた。

 ……………
般若のごとく怒るガノンドロフの顔が浮かぶ。
「…貴様ら…よくも、ワシの秘密をばらしてくれたな…ワシの威厳も、プライドも、そしてプリンへの思いも、すべて貴様らがぶち壊しだ!! この罪、永久追放を持ってして償ってもらうぞ!!」
 ……………

「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ゲームウォッチ、そんな声出すなって。大丈夫だよ。きっとバレてないから…。」
「そ、そうっすか? ウーン…まぁ…そうっすかね…そうでしょう…かねぇ?」
すっかり弱気になったゲームウォッチ。ルイージは話題を切り替えようと、辺りを見回した。
と、露天風呂と書かれた大きなのれんが目に入る。
「あれ? 浴場って今開放してるのかな?」
「え?」
ゲームウォッチものれんを見る。
「あ、やってるみたいっすね。まぁ温泉だから、基本的にはいつでも入れるようなもんっすからね。…確かえっと…」
ゲームウォッチは浴衣の袂に入れておいたパンフレットを取り出し、それを眺めて、それからすぐ近くにあった掛け時計で時刻を確かめた。時間は6時を5〜6分過ぎたあたりだ。
「あ、6時から開放っすから、ここももうやってますね。…まぁ、今の時刻は誰も入ってないと思いますが。」
「…ゲームウォッチ、またとないチャンスだ……みんなに秘密で一番風呂ってのはどういう気分だろうね……」
「あ〜ぁ…。なるほど。うん。そうっすね。へへへ…。」



二人はさっそく部屋に帰り、タオルを持って風呂場へやってきた。
「いや〜こんな朝から誰もいないお風呂に入れるなんて…」
「しかも、朝だからいい眺めだろうなぁ。」
二人は浴衣を脱いで、さっそく浴場へ。
浴場からの外の眺めは絶景だった。ちょうど東から昇る太陽が拝める。露天風呂なので景色も最高だ。
「おや、どなたかいらっしゃいましたな。お先、失礼。」
「うおぉぉ!!」
景色に気をとられて浴槽にまったく気づかなかった二人。すでに先客がいたようだ。
「誰ですか!? ああっ!? に、兄さん!」
そこにいたマリオの顔を見てルイージが叫び声をあげるが、
「兄さん? あぁ、マリオさんですか。ルイージさん、私はマリオさんではありませんよ。」
マリオではない、Drマリオだ。
服を脱いだらそっくりだが、顔つきとしゃべり方が微妙に違う。Drマリオはマリオに比べてずっと落ち着きがある。
「あ、ドクターでしたか。」
ちょっとホッとするルイージ。
「ドクター、どーも、おはようございます。」
「お早う、ルイージ、ゲームウォッチ。君達も早起きなんだね。私も早朝に、この景色をぜひ見てみたくてね。…さ、そんなところに立ってないで入ったらどうですか。」
「はい! 失礼します!」
二人は浴槽に浸かった。

「は〜ぁ…あったかい…」
「生き返るっすね〜…。」
自然を眺めながら優雅に入浴。これほどの贅沢があるだろうか。
せっかく風呂場で会った珍しい面々。普段は話せない、打ち解けた話をはじめる3人。
「ドクター、やっぱ、たまにはこういうとこにきて骨休めるのもいいもんっすね〜。」
「あぁ、心の休養は体にも良いからな。たまにはこういう行事も必要だ。…なにを隠そう、この旅行をはじめに提案したのは、この私だからな。」
「ええっ! そうだったんですか!」
「あぁ、私の故郷は田舎でね。たまにはこういうところの空気も吸いたくなるのさ。」
温かい風呂で、ゆっくりと過ぎていく時間。三人とも、心が和んだ。
しかし、この後、ドクターのある言葉を聞いて、二人は背筋も凍るような思いをする…。



Drマリオが何気なく二人に話しかける。
「ところで、二人とも。…ここに私と君達しかいないから話しますが…昨日は大変疲れたでしょう。」
「えぇ、そりゃぁもう。」
「裏でのお仕事、大変でしたな。」
「はい、…って、えええぇぇぇ!!?」
ルイージは突然、そんな事を聞かれて仰天した。
「う、う裏でのお仕事って…?」
「……もちろん、君達の働きのことですよ。…昨日からのね。」
ルイージとゲームウォッチの背筋がサッと冷たくなった。
「え、え、な、なんの事っすか?」
ゲームウォッチがとぼけようとしたが、ダメだ。
「…いや、君達が秘密にしとるのは知ってるんですがね。ただ、他に誰もいないし、せっかくの機会だからどうしても尋ねてみたかったのです。」
「ええっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
「ど、ドクター!!」
ルイージが勢いよく立ち上がった。前を隠すのも忘れて。
「せ、先輩! ちょ…」
ルイージは焦ってドクターに尋ねる。
「ドクター! な、な、ドクター、知ってるんですか!? 僕たちのことを…!?」
Drマリオは涼しい顔で会話に応じている。
「…あぁ、知っている。」
「いつからですか!?」
「…かなり前からだな。」
「な、どこまで知ってるんですか!?」
「君達のしていることも知っている。ガノンさんとプリンちゃんの縁結びを応援をしているんでしょう。」
「うぐっ!」
「ガノンさんがプリンちゃんに恋をしている、それをあなた方は知り、ガノンさんの手伝いをはじめた。」
「がぁっ!」
「それで、今回の旅行でもその手伝い、影でがんばってるんでしょう。」
「うごぉ!」
「今日も活躍するそうですな。がんばってください。」
「まんまみぃ〜あ……」
ルイージは脱力して風呂の底に沈んでしまった。

……あぁ、おしまいだ…バレている…完璧に…もうこの世の最後だ……
…いまさっき想像していたガノンの般若の怒りの形相がよみがえる…



ルイージは撃沈されてしばらく沈んでいたが、やがてまた立ち上がった。また、前を隠すのも忘れて。
「な、な、何で知ってるんですか!!?」
「そ、そうっすよ!」
ゲームウォッチも必死に尋ねる。
「ま、まさかメンバーに、もうこのことがバレて噂になってるとか!!?」
「いや、そうではないさ。」
Drマリオは風景を眺めながら言った。
「心配ない。メンバーたちにこの噂が広まっているわけではない。私だけが知っている。それだけだ。」
「え!? じゃ、じゃぁなんで知ってるんです!? ガノンさんとプリンちゃんのこと!!」
「あぁ、それはね。」
Drマリオが二人を見ながら話した。
「いや、なんのことはない。私は全てのメンバーの主治医だ。それと同時に、全員のカウンセラーのような役も果たしているのだよ。」
「カウンセラー…」
「そうだ。ずいぶん前からな。…そういう経験をつんでいくと、人の気持ちなんて、すぐに理解できるようになるのだ。ガノンさんはいつも、プリンに釘付けだった。
 ガノンさんは私にそうは言わなかったが、ストレス性胃炎の問題をもちかけてきてから、私はすでに気がついていたのだ。」
「…そんなに前から…」
「そうだ。君らが裏で動いているというのは、ずっと後から、君達を見ているうちにわかった。…フフフ、安心したまえ、私のような人間でなければ、君達を見たってそんな事は気づきはしないだろう。」
「…そ、そうなんすか…」
「あぁ、つまり、だ。」
Drマリオは朝日を見ながら言った。
「ただ単に、私はそういうのが気づきやすい人間であったということで、君達が気づかれるような挙動を見せているわけではないということだ。」
「ハハーッ! 恐れ入りました!」
「安心したまえ。私はそんなことを面白がって人に言いふらしたりなどしない。もちろん、私が気づいていることはガノンさんにも内緒にしよう。…私が、彼らのことを知っているのは、私ときみたち、3人の秘密だ。いいね。」
「は、はいっ!」
「オスッ!」
ルイージはようやく、風呂に入りなおした。
「しかし…愛というのは不思議なものだ。」
Drが言った。
「愛…。姿もなにも違うあの二人が、恋しあっているとは。だが、ちっともおかしいことではない。互いを愛しみあう、その濁りのない純粋な心、すばらしいとは思わんかね。」
「まったくです…」
「まぁ…私は君達のように手出しをするつもりはないが、それでも、影で二人の恋を見守るとしよう。君達も、がんばりなさい。これは、名誉ある、かつ、とても素晴らしいことだ。」
「はい…よく胸に刻んでおきます…。」
「オス…ッ。」



3人が風呂に入っているうちに、起床時間が近づいてくる。
メンバーたちが次々に目覚め始め、起床時間30分後の朝食への準備をはじめている。
3人はそれぞれ個室に戻り、何事もなかったかのように布団をたたんだり、歯を磨いたり洗顔したりしはじめた。

さて、メンバー全員が目覚めて、朝一番に出揃う朝食の席。
ガノンとプリンは相変わらずはなれた場所にいたが、ルイージもゲームウォッチも焦らなかった。ちゃんと今日一日分の計画は立ててある。
今日は全員で、近くにある山に登ってみようということになっている。昼食を持って、頂上まで。山登りといっても、観光用のきわめて穏やかな山なので、浴衣姿のまま出かけることになった。
もちろん、ここにも二人の計略が張り巡らされている…。

前日のスネークの大活躍によって、プリンのプログラム表は細かく書き換えられていた。
その一つに、登山開始の集合時間。わざと10分遅く書き換えてある。
つまり、プリンは遅れてくるのだ。

その通りになった。
午前9時半、メンバーたちが山登りに集まったが、プリンは来ていない。そして、ガノンドロフもだ。それからなぜかルイージも来ていなかった。
「おかしいな…」
まとめ役のマリオはメンバーが三人も欠けているので困ってしまった。
「すみませ〜ん! マリオさん!」
そこへゲームウォッチがかけてきた。
「ん? どうした、ゲームウォッチ。」
「あの、今さっき宿を見てきたんすけど、プリンちゃんは忘れ物って、ルイージさんは用足してから来るって、ガノンさんは…なんかちょっと用があるそうで、みんな後からいくから、先に出発してくれって言ってました。」
「ん、そうか。待たなくていいって?」
「はい、追いついてくるからかまわないって…」
「おい! マリオ! もう待ちくたびれたぜ!」
ソニックが言った。
「もういいだろ。俺なら全力疾走であっというまに山まで登れるぜ。」
「いや、そんなk…」
ソニックは、マリオの返事を待たずにもう駆け出してしまう。
「参ったな……わかった。じゃぁみんなも、出発しよう。」
マリオは他のメンバーたちを引き連れて山へと向かっていった。
ゲームウォッチもそれについて、何事もないように一緒に出かけていく。



5分後…マリオたちの姿が見えなくなってから…
「…ルイージ、なぜわざわざ遅れていく必要がある?」
「まぁまぁ、こうすればプリンちゃんと一緒に、二人だけで山登りいけるんですって。」
ガノンとルイージが遅れて登場した。
どうやら、二人の策らしいが…。
「…本当だろうな。」
「…これからもうすぐ、9時40分になったらプリンちゃんが遅れてやってきます。だから、『メンバー達は先に行った、待っていてあげたから一緒に行こう』って言うんです! じゃ、がんばってくださ〜い!」
ルイージはそういうと、マリオ達を追っていってしまった。
「お、おい、ルイージ…行ってしまった…。大丈夫なのか…?」

40分になると、まったくルイージ達の作戦通りに、プリンが送れてやってきた。
「あれ…また誰もいないや…あ! ああっ! またガノン様が一人でいるぅ!!」
プリンがガノンに近づくと、ガノンはプリンが声をかける前にこちらを向く。
(プリン…来たかっ…。)
(ガノン様…)
プリンはじっと待っていたガノンと向き合う。そして、辺りをキョロキョロ見回した。
「あれ…他のみなさんは?」
「あぁ…ほ、ほかの奴なら…先に行った。」
「ええっ!?」
プリンは驚く。集合時間を間違えた(だまされた)などとは思っていなかったからだ。
「ぷ…プリン、間違えたんじゃないか…時間を…」
「えっ?」
「集合時間は…さ、さ…30分だぞ。」
ふたりきりで緊張し、完全に呂律が回っていないガノン。
「あ、あれ〜っ? おかしいなぁ、40分だと思ったのに…?」
「ま、まぁ…メンバーは先に行った…ま、マッテイテアゲタカラ、イッショニイコウ…」
こういうときにガノンは骨抜けになってしまう。
しかし、一方のプリンは大喜びだ。
「ええっ、本当ですか? ガノンさんだけ、待っていてくださったんですか!!? わぁい! 一緒に行きましょう!」
プリンはガノンを引っ張るように、山へと入っていく。



ガノンにとって、プリンとの山登りは夢のような時間だった。
「あっ! ガノンさん、ここに珍しい花が!」
「ム、どれ…」
これは、完全にプリンとのデートだ。
「ガノンさん! 見てください! ここの河とってもきれいですよ!」
「お、おぉ本当だな。」
ガノンはこれまで、自分は恐れなど何も知らないものだと思っていた。
だが、怖いものがあった。それは恋愛。
ガノンは完全に恋という甘美なるものにすっかり魅了されてしまった。
ここまで自分をひきつけるものがあったとは…。恐ろしい…。
だが、それは自分にとってなんとも心地よいものであり、
それを知ることができた自分は幸せだ、と実感していた。
(…ウム…生まれて初めて…といっていいほどの幸福感だ……もし、このまま時が止まってしまえば良いのだが…。)

一方プリンも、ガノンと一緒に歩けて幸せそうだ。
自分の憧れの、でも手が届かないと思っていたひとが、すぐ近くにいる。
ここに来る前までは、写真だけで我慢していたが、今は話すこともできる。
こんなに幸せなのは、本当に心から、ガノンを愛しているからだと自分で分かっている。
時々、山の風景ではなくガノンに見とれるときもあった。
(あぁ…ワタシ、なんて幸せなの…夢みたい…信じられない…もし、このまま時が止まってしまえば良いのに…。)

二人の登山は、他のメンバーより一足遅れて、ゆっくりと続く…



昼ごろ、山頂の広場にメンバーがたどり着いた。
「ふぅ、ようやく頂上だぜ。」
「うわーっ! いい眺め!」
「ここ広いよ! 思いっきり騒げそう!」
「ウーン…」
メンバーがみなご機嫌な中、マリオが唸った。
「とうとう、あの3人こなかったな…大丈夫か…?」
そう、プリンとガノンとルイージがまだ来ていないのだ。

実はルイージは、すでに山頂のすぐ近くまで来ていた。
「……」
だが、山頂へは行かずに草陰に潜んでいる。これには、理由があった。

やがて後ろから、ゆっくり歩いてきたガノンとプリンがやってくる。
(来た来た…)
楽しい山登りを終えたプリンは、山頂にメンバーを見つけた。
「あっ! みんないましたよ!」
プリンは安心して、喜んでメンバーのもとへ駆けていった。
「おぉ、みんないたか。」
ガノンはプリンの後姿を見ながら、ゆっくりと後についていく。
と、ガノンの目の前の草陰から、突然ルイージが飛び出した。
「ん!? ルイージ!」
「ガノンさん、お疲れ様です。」
「ルイージ、なぜここに?」
「それは、ホラ…」
ルイージは笑って言った。
「ガノンさんとプリンちゃんだけで行ったら、変に思われるじゃないですか。僕も含めて、3人で登ってきたことにしましょう。」
ガノンもルイージにつられて笑ってしまう。
「フフフ…なるほどな。…ウム。そうするか…。お前達のおかげで、なかなかいい時を過ごせた。感謝するぞ。」

「いや、マリオ、心配をかけて済まなかった。」
「いや〜、ちゃんと来たならいいよ。みんなそろったな。じゃぁ昼食にして…それから、昼食の後にみんなにお楽しみを準備したぞ!」
メンバーがいっせいにマリオを見た。
「え? お楽しみ?」
もちろん、そんな事はプログラムに書かれていなかった。マリオが用意した、特別企画だ。
「なんだ? お楽しみって?」
「なんだろ! 楽しみだね!」
新入りで初めて旅行に来たピットやリュカもわくわくしている。
「お楽しみ…それはね…」
マリオが盛大に宣言する。
「ここ、頂上広場で、特設スマブラ大乱闘を行う!!」



マリオが用意した企画。それは、この頂上広場で乱闘を行うというものだった。
といっても、ルールはかんたん。地面に丸い円を書いてその中で乱闘、円から外の地面につくか降参したら負けというなんともシンプルな『遊び』である。
だが、スマブラらしく、自分の武器は使ってもよい、というルールだ。残念ながら武器を持ってきていないメンバーも多かったが、それはそれで面白いということでそのまま戦うことに。
基本的に2人バトルの勝ち抜きで、時間いっぱいまで何周でもするというもの。

…だが、さすがに突然の企画だけあって、ハプニング続出。
「あっ! お前、今、円から出た!」
「出てない!」
「うわっ! ソニック自滅かよ!」
「う、うるさい! 俺には狭すぎるんだこの円も、この世界も!」
「アイク! 危ない! 剣を振り回すなよ!」
「こんな浴衣じゃ戦えないって!!」
「うあっ! イテテ…」
「うおっ! ブラスターもリフレクターもねぇ!!」
「おい! 浴衣汚しちまうぜ!?」
「大丈夫だ、各自で洗って返すんだよ!」
「ワリオ! バカ! バイクなんて出すな!!」
「うあーん、僕たちハンマーもってきてないよぉ〜!!」
みんな大騒ぎだが、とても楽しそうだ。
中でも、いちばんの大ハプニングが…
ゼルダとピットの闘いの最中…
ゼルダの魔法で弓矢を場外に弾き飛ばされ、絶体絶命のピット。もう投げ技しかないと、ゼルダにしがみついた。
そのとき!
ピットは思い切り、ゼルダの帯をつかんでしまい、その拍子にゼルダの帯が解けて…

パサリと落ちる帯、そして、浴衣……………
「キャァァァァァァァァァァ!!」
ゼルダが着ていたものが地面に落ち、下着姿になってしまう。
「あっ! あっ! あああああああ!!」
主催者のマリオも想定外のハプニング。
「うおぉぉぉ!」
「うひゃぁ!」
男性喪男陣は大喜びだ。
「ごっ! ごめんなさい! ごめんなさい!! ごめんなさい!!!」
ピットは、ただただ謝ることしか出来ない。

マリオはその最中、ガノンの顔を見た。どうみても、嬉しそうでない。乱闘が中断されて、むしろ退屈そうな顔をしている。
(すごいな…俺でさえも鼻血でるかと思ったのに…ガノンさんはまったく反応しない…見上げたもんだ…。)
実際は、プリンに夢中でそんなものが目に入らないだけだったが。



さて、人騒動あってガノンの番にまわってきてからは、もう、ガノンの連勝であった。
次々と敵を倒すガノン。あの、大乱闘のときの勇姿であった。
(あぁ、ガノン様の戦いっぷりがこんなに間近で見れるなんて…かっこいい…素敵…)
プリンにとっても、ガノンの闘いを眺めるのは至福のひと時だった。
ガノンは全員抜きする前に惜しくもメタナイトに負けてしまったが、それも15分も続いた、存分な闘いといえるものだ。

運のいいことに、ガノンとプリンが当たることはなかった。

プリンが戦う間は、ガノンも心の中でプリンを超熱心に応援する。
(プリン、負けるな、しっかりやれよ!)
プリンはどうにかヨッシーに勝てたが、それでも次のワリオに負けてしまった。だが、彼女にしてみれば上出来で、満足な結果。その負けても満足そうな笑みを見て、ガノンも喜ぶ。
(プリン、よくやった。)
口には出せないが、ガノンはなんどもそう言っていた。

ちなみに、ルイージはディディーコングに勝利したが、その次のルカリオに敗退。ゲームウォッチはウルフを相手に、一回で負けてしまった。

さて、楽しい(?)乱闘をしてすごすうち、あっという間に日が傾いてきた。
メンバー全員で山を下る。今回は、プリンとガノンも一緒だった。
全員が、乱闘に疲れ果ててへとへとだ。みんなすぐ浴衣を洗って、風呂に入りたい気分だった。(ピットはゼルダに謝り倒しだったが)



さて、夕食の前にみんな風呂に入り始めたが、風呂場は静かだった。
「…………」
「…………」
喪男と美男子と無言な男達だった団体が、今は全てが無言な男達。ガノンだけは、ニヤニヤ嬉しそうな顔を必死で平常に保とうとしていたが。
男子メンバーよほど疲れたらしい。浴槽はぐったりした男たちに溢れ、まるでイモ洗い状態だ。
混浴では、相変わらず子供達が騒いでいる。
「みんな…げんきいっぱいね……。」
「ほんとに、なんでこんなに元気なんだよぉ…」
ゼルダとポケモントレーナーは疲れ果てていたが、それでも、一生懸命子供達の面倒を見る。
女湯では…
……………
……………
……………
ポチャンと水の音。昨日と同じく、静かだ。
ピーチに至っては、胸をさらけ出して、両腕を広げて寝そべる格好で入浴している。

夕食時になった。風呂に浸かって、だいぶ元気を取り戻したメンバー。
ロボットが気を利かせて全ての浴衣をきれいに洗っておいてくれたので、ロボットに感謝しつつそれを着て、夕食の席へと向かった。
今夜は夕食は宿にてだったが、食事は今までに増して豪華だった。みんな疲れなど忘れて、また昨日のように宴会騒ぎだ。
だがガノンは、興奮して食事の味など満足に楽しめない。
なぜ? その理由は…
この後、いよいよガノンは告白をするため…

その告白が果たして、上手くいったのかどうか…
それはまた、別の機会に。
2008年03月10日(月) 21:34:34 Modified by smer




スマートフォン版で見る