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まえがき

初めまして作者です。いや初めましてというのはおかしいかもしれませんが…。
ろだで投稿するのは初めてなので初めまして、という事にしてください。
さて、調子こいて書いているうちに長くなってしまったピカ様の災難・後編です。

恒例の注意点 【堂々とネタバレしています】

  • ピカ×プリ襲い受け。むしろプリ×ピカかもしれない。
  • 生ぬるいェロと軽く下ネタ入ってます。しかし、何も起こりません。
  • ず っ と ピ カ チ ュ ウ の タ ー ン ! !
  • 例によってポケモンのセリフは『』で表記してます。
  • だいぶギャグやパロディは減りましたが、まだまだあちこちに散らばってます。色々と。
  • 蛇足なおまけはファルコン×サムス。やはり、何 も 起 こ り ま せ ん 。

これらを踏まえてやはりダメだ、受け付けない、と感じましたら、今なら間に合います。
×ボタンをクリックして逃げてください。さあ逃げろ!!!
どんとこいカモーーーン!!!!という方はそのまま下へどうぞ



ピカ様の災難(後編) 〜スマブラ寮は晴れのちカオス〜

  • 前回までのあらすじ
朝食のスープに混ざっていた毒キノコの中毒症状により、スマブラメンバーの大半が何かおかしくなってしまった。
難を逃れたピカチュウは、同じく難を逃れたポケモン組と生存者(※誰も死んでいません)を探しに館内を歩く。
しかし途中でプリンが豹変し襲い掛かってきた。実は彼女にも中毒症状が出ていたのだ。
手近な部屋(ルイージの部屋)に押し込めて彼女を止めようとするピカチュウだったが、今度は別の意味で襲われた。
なんとプリンは絶賛片思い中の相手、ミュウツーと錯覚してピカチュウを喰おうとしている(主に性的な意味で)
その時、窓の外に映ったスネークに助けを求めるが、彼は何故かカツオブシをかじりながら空へ消えていった…。
それは別のスネークだ!帰って来いスネーク!!スネェェェエエーーーーク!!!!!

  • かんたんな あらすじだよ
『プリンに喰われそうです。助けてください!!!(byピカチュウ)』



もしも好みのタイプを聞かれたら、同族の子と答える。だって、『かわいい』と思うのはやっぱり同じピカチュウの女の子。
他のポケモンに話したら『平凡すぎ』と言われた。いいじゃない平凡でも。もちろん好みのタイプってみんな違うと思う。
例えばリザードンは、自分が大きいからか自分よりも小柄なポケモンが好みらしい。
ゼニガメとフシギソウにはからかわれているけど…。

『うふふふふ〜〜〜〜♪』

で、現在こんな状況である。プリンは僕の上に乗って嬉しそうに笑っている。
確かにプリンもかわいい方だとは思う。思うけど、あくまでプリンは友達で、そういった対象じゃない!
仮に“つがい”になったとしても、プリンに森暮らしができるか?いや、普通に馴染みそうだね。
やっぱりプリンに似た子が生まれるんだろうか…?ププリンかな?きっと子沢山になりそうな気がする。
少しくらいピチューがいてもいいかもしれない。そうしたら今度は、あの弟分のピチューがお兄ちゃんになったりするのだろうか…。

『ハッ!!!』
思考が飛んでいた。“そらをとぶ”を使っていた!なんか、大家族になって長老になるとこまで想像していた。
『(お、落ち着け…冷静になるんだ…。とりあえず妄想がエロい方面じゃなく繁殖方向ならまだ大丈夫だ!)』
まずはこれまでの状況を整理しよう。まず朝ごはん食べに行って………
それから………。それから……………。それか…ら…。
そうだった、プリンに押し倒された。しかも“メロメロ”をかけられた。うん!現状把握!!!

【メロメロ:異性のポケモンに対しメロメロになり攻撃ができなくなる状態異常】

―現在ピカチュウは危機的状況に陥っていた。体は熱いし胸はドキドキ、
目の前のプリンの事がたまらなく愛おしくてしょうがない。まさに骨抜き状態。これが、“メロメロ”でなのある。

『ツーしゃま♪なめなめしてあげましゅ〜。』
『いや、しなくてもいいから!!ひゃあ、くすぐったいって…』
プリンに顔やら体やらをペロペロとなめられている。ヤバ…なんかこれ気持ちいいかも…。
ダメだダメだ!僕はプリンを引き離そうと手を伸ばす―が、
『!?』
体に触れたとたんに思考がぐらつく―なんだ、コレ…。
やわらかい、これがマシュマロのような体か…。もっとふれていたい、さわりたい、だきしめたい、抱きしめたい、抱き絞めたい…
『待て!これは孔明の罠だ!!これがメロメロの効果だ!!!』
抱いたら負けだ!死ぬぞ!死なないけど!でもプリンって抱きごこちいいんだよなー…こうしてギューっとすると…
『きゃんv』

―結局、ピカチュウはプリンを抱き寄せてしまっていた。

『そうそう…、こんな感じでかわいい声出すんだよね〜。って待て!罠だって言ってるじゃないか!!』
そうだ!流されてはいけない!!理性を笹流しにしてはいけないぞ!!
確か理性の反対は野性だ!う…うろたえるんじゃあないッ!野生のピカチュウはうろたえないッ!
あれ…本能だっけ?そもそも理性の反対語って…なに?そういや知らない。知ったかぶりはやめよう。
『プリンの体ってやわらかいよね…』
『はぁい♪』
『なんか、ふにふにしてると何もかもどうでもよくなってくるね…。』

―現在ピカチュウは理性が濁流のごとく流れているのだ。

『メロメロは所詮は発動率50%ーーーーーーーーー!!!!!!!』

―そして、時たま逆流して正気に戻る。その繰り返しだ。しかし戻るのは理性だけ。
力関係は大差なさそうだが強引に押し倒された後、全く体を動かせていない。
いや動きはしたが、逆にプリンをその身に寄せてしまっている。そんなピカチュウにさらなる試練が襲い掛かかる!!

『も、もう、乗っかるのはやめてよ…やめようよ。』
『じゃあ、やめましゅ。』
『そ、そう…?よかっ…』
『代わりにちゅーしましゅね〜〜〜♪』
『はいっ!?むぐぅ!!!』
―拒否の声を発するまもなく、いきなり口を塞がれる。

うわ…、これはいわゆるディープキスというやつだろうか…。うん、これも知らないけど。
プリンは酔うとキス魔になる、こないだもそうだった。でもいつもとは全然違う…。いつもは、ほっぺただった。、
それに甘くてとろけるような…なんだか…何もかもどうでもいいような…。
待て!何を納得してるんだ僕!!逃げろ!ピカチュウ逃げろ!BダッシュBダッシュ!!

―だが、必死に体を離そうとする意思とは裏腹にその状態を受け入れてしまっている自分がいた

『ぷはぁ!ッケホッ、コホッ!』
『あは、ベトベトになっちゃいましたね〜。』
―唾液にまみれた口の周りをプリンがなめ取る
『だ、だからぁ、やめてって…うっ…。』
景色がゆがんでいる。目の前がチカチカする…
『そうか…このクラクラした感覚は“こんらん”…、そういうことか…。“てんしのキッス”―。なぜ君がこの技を…。』
『ひみつでぇ〜す♪』

【こんらん:その名の通り混乱状態になる。50%でわけもわからず自分を攻撃する】

これはヤバい。非常にヤバい。もうメロメロだけでも頭の中がおかしくなっているのに、混乱までかけられたらとてもヤバイ!
ヤバイヤバイマジヤバイ!ヤバイって!やばい…よばい?違う違う違う違う違う…

『えーと、何がヤバいんだっけ…。別にいいよね♪』
そうだ、別にヤバイことなんて何もないじゃないか。僕とプリンは友達で、仲良しで、よく一緒にいて。
プリンが僕にラブラブにアピールしていて、僕がそれを受け入れていて、
プリンが僕のこと好きで、僕もプリンが好きで、なーんだ。全然問題ないじゃないか。
理性?なにそれ?おいしいの?

―最早ピカチュウの理性はほとんど残ってはいなかった。

『プリンだーいすき。』
『プリンもツーさまがだいすきですぅ♪』
『そう、僕ツー様。ヨン様じゃないよ、ちょっと古いけど。』

そう、僕は…、まって。ちょっと待って、もう一度待て。止まれ本能!いや野性か!?ええいなんでもいいよ!!!

『…違う、やっぱり違う!僕はピカチュウだ!!』
思い出した。僕はピカチュウ。“彼”じゃない!
プリンが見ているのは僕じゃない、僕を通して彼を、ミュウツーの幻を見ているんだった。
『危うく飲み込まれるところだった…。』
僕にだってプライドはある!誰かの代わりなんてまっぴらゴメンだ!!!
『さあどうするピカチュウ…、ここが正念場だ!』
メロメロは50%で動けない。混乱も50%で動けない。あわせて100にならないのが確率計算!
これでもポケモンにしては賢いと評判だ。すなわち行動不能確率は75%!!言い換えれば僕の正気はまだ25%残っている!!!
『二割五分…。野球選手の打率が三割越えるのは大変だってトレーナーが言っていた気がする。今は関係ないけど。』
ふらつく頭で部屋を見回す。鍵付きの金庫だ!もしかすると、あの中にアイテムが入っているかもしれない!
『後は、なんとかプリンを引き離さないと…。』
正直、今の状態だと彼女に触れただけでメロメロの渦に飲まれる。何か手を考えなくては…
地球のみんな!僕に理性を分けてくれ!!!!

ふと、ある記憶が蘇る―

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

『……と、世間に…が…るか…。襲…目を…見据え…言え!!……あくまで牽制………隙を……蹴り殺せ!!!』
『…はいっ!…ですね!』
『…い、サムス!ナナになんて事…るんだ!?』
『馬鹿を言うな!これくらい…なければ……宇宙で生きては………!!!』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

『よく覚えていないけど…確かサムスさんがナナに教えていたっけ。』
この言葉を言うと男なら大概怯むらしい。男性用の時点でプリンに効くかわからない、あくまでも牽制とも言ってた。
つまり、その隙をついて反撃をしろってことだ。流石に蹴り殺しはしないけど…。

―ピカチュウは記憶を辿り、必死にその言葉を叫んだ!!!

『タン塩!!タン塩!!!』
よく覚えてないけどこんな言葉だったと思う。意味は知らない!間違ってるかもしれない!とにかく隙ができれば…
『…?』
プリンはきょとんとして首をかしげている
『や、やっぱり効かなかったか…?』
『…あー、レモンかけるといいですよね〜。カルビも捨てがたい。でもプリンは野菜焼きが好きでしゅ〜』
『やった!』
プリンが焼肉のメニューを語っている間にベットから転がり落ち、そのまま床を這いずって金庫の前まで辿り着く。

『うう〜…体が重い…でもやらなきゃ…。鍵は着いたまま…、やった…開いた…。』
この中に役立つアイテムや武器が入っていれば!!
でも、もしもアイテムや武器じゃなかったとしたら…?普通にコインだったり日記帳が入ってたりしたら…?
『…そんな余裕は無いか。』
コインでも多少の目くらましにはなるし、日記を読めば精神にダメージを与えられるかもしれない!(本人に失礼だけど)
全く関係ない物でもとりあえず投げる!カラでも火事場の馬鹿力で金庫ごと投げつけ攻撃する!!!

【※注:大変危険ですので絶対に真似をしないでください】

思い切り金庫の扉を開ける!その中には――!
『な……!』

中には―――――

―中には―――――

――中に……は……――――――

―――びっしりと『もやし』が生えていた…

『……んで…、もや、し……?』
あまりにも予想外すぎる…。なんで、よりによって、もやし?
健康にいいから?家庭菜園趣味とか?日陰者とか言われているからなの?
ダメだ…力ぬけた…もやし投げるとか金庫を持ち上げるどころか、もう一歩も動けない…。

―ピカチュウは、すっかり脱力してしまい床の上にうつぶせにへたりこむ…
『ど〜したのですか〜?』
背中に温かく柔らかい感触がある…。
『あの…さ、当たってるんだけど…。』
『当ててるんです♪』
ああ、さよなら僕の理性――

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

プリンは動けない僕の体をもみほぐしだす…
『やっ…、ダメ…。耳はやだ…。』
『ここが弱点ですかぁ〜?』
『ひゃぁ…、やめてぇ…。』
…なんだか、立場が逆の様な気がしないでもないけど…。この気持ち良さからは逃げられそうもないし…。
『わぁ、素敵なしっぽ…。』
尻尾の付け根を撫でられ、ゾワゾワっとした何かが体の中を駆け巡る。
『はわあぁぁぁあ…!し、尻尾もダメだからね!!』
『い・や・♪』
『…いぢわる。』
そんな事を続けているうちに体温がさらに高くなってきた…。というか…。
『(な、なんか…足の付け根の辺りが…ムズムズするような、かゆいような……)』
『お腹もさわっていいですかぁ…?』
『おなか…だっ、ダメッ!!!絶対ダメ!!!』
そんなことしたら…お腹の下の…あそこ…見られちゃうよぉ…!
『ダメと言われると〜やりたくなっちゃうんですよ〜。覚えておいてくださいね♪』
そう言うとプリンは僕の体を強引に裏返す。
『!! やっ…!』
とっさに手を伸ばして足の間を隠すが、すぐにその手を引き離されてしまった―。
『やだっ…!みちゃらめええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』
『えのきだけ♪』
『えのっ!!!????』
ちょっっ!?えっ!!??何!?何だって!?今なんと!?なんでえのきだけ?脈略もなくえのき!?
突然えのき!?なぜえのき!?何がえのき!?…ナニがえのき?違う違う!それとこれとは全く関係が無い訳で!!!!!
キノコスープだからか!?野菜焼きの話をしてたから!?金庫でもやし栽培してたから!?
『えの…』
…なんだろうこの衝撃は。あえて言えば『ハンマーをシールドで防ごうとしたらシールドごと砕かれた』ような衝撃に似ている…。
落ち着こう。落ち着け。素数を…、いや素数なんて知らない。数字でいいや。
『いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく……』
えーっと…だ。つまり突然プリンが『えのきだけ』と言い出した。
ただし現在プリンはトリップ真最中で、別にアレとかソレとかコレは言っていないわけで…。
すなわちアレとは限らないことであり、逆に考えるんだ。『えのきならまだ正常』と考えるんだ。
『だけどせめてマカロニとかさぁ…って、あれ…?』
天井がゆがんでいない…。景色が普通に見える…。思考が…比較的にだけど、ハッキリしている…。
『混乱が解けた…?』
しめた!なぜか知らないけど混乱が解けた!少なくとも僕の理性は奇跡の生還を果たした!
『だけどまだメロメロは残っているかな…。』
きっと一回プリンに接触しただけで一撃必殺。僕の理性は瀕死になるだろう。
よし、頭の中も大分冷静に動くようになっている。後は…説得だ!
『プリン!落ち着いて聞いて欲しい。僕は落ち着いた、だから君も落ち着くべきだ?』
『はい?』
プリンは動きを止めてこっちを見ている。目を見てはいけない、引き込まれる。心を見ろ!
『いい?よーく聞いて。君はいいかもしれない。だけど僕はダメだ。なんでかわかる?
君が見ているのは誰?よく見て。ここには僕達が知っている、紫の瞳のポケモンはいないんだ。
ここにいるのは誰?目の前で喋っている僕は誰?僕はピカチュウ。そして、僕たちはそんな関係じゃあなかった。』
『………』
『ここまで来てようやくわかった。きっと僕は君が好きだったんだね。いくらなんでもメロメロだけでこんな風にはならないよ。
自分でも気づかないくらいの、淡い気持ちだけれど。気づいたんだ。』
『………』
『だけどね、もう一つわかった事がある。僕が好きなのは『彼のことが好きな君』なんだって。
自分の好きな人が他の人を好きでいる。ちょっと寂しい、だけどそれを望んでいる。おかしな話だよね。でも、これが本音。』
『………』
『さあ、もうわかったかな?僕はピカチュウ。君はプリン。彼の名は?そう、彼の名前はミュウツー。
ここにはいない。だけどどこかに必ずいる。ね?そろそろ、夢から覚めようよ。』
プリンは黙って僕の話を聞いている
『わかって…、くれたかな?』
『……はい。』
プリンは僕の元からゆっくりと離れていく…やった!説得成功!!…かと、思った。そう思いきや…。
『って…、プリン?』
プリンは急に仰向けに寝転がった。そして…
『プリン、女豹モード解除しました。襲い受けはダメだったんですね。おとなしくしてますから…優しくしてください。』
『ギャーーーーーーッス!!!全然説得通じてなーーーーーーーい!!!!』
一体なんだったんだ!あの超恥ずかしい説得は!!!!!!
『だから…、プリンを…、た・べ・て・♪きゃー!いや〜んvvv』
(プツーーーーーーーン!!!!)
『いただきます!』
ごめんなさい。カッコよく説得してみたものの、まだメロメロ効果残ってる+これまでの理性の吹っ飛びっぷり。
それでここまで耐えたほうが奇跡に近い。残念ながらピカチュウは野生の獣に成り下がります。
『やあん…恥ずかしいです。』
『今さら?何を言ってるのさ。』
さて、この後どうしたもんか。そういや、どうすればいいかは知らない。
ま、本能でなるようになるでしょう!!わっふるわっふる!ぽろっくぽろっく!

『……………………!………………?…………!?……』

何やら外が騒がしくなってきた。あー、また誰か暴走してるんでしょ。僕には関係ないけど。
『うるさいなぁ…集中できないじゃないか…。』
『どき…どき…vv』
――…………!!!…ッ!!!………!!!!!………!!!!!!!―――
『あー、もー!うーるーさーいー!!!』
あれ…?この声は部屋の外からじゃないな…。なん、だ…?

――だめええええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!――

『ッ!?うわああああああああああ!!!!!!!』
『ぷりゅっ!?』
その時僕は、ありったけの力と電気をこめて、“雷”を撃った―

―カッ!―と眩い光と、とんでもなく巨大な破壊音―――

天井を突き破り、床を黒く焼き、プリンはその衝撃で壁まで吹き飛ばされた。
『ハァ、ハァ…。はぁ〜〜〜〜。』
聞こえたいた“声”は部屋の外ではなく頭の中から聞こえていた。そう、僕自身の声だった。
どうやら僕の“理性”とやらは相当にしぶとかったようで。千切れ飛んだと思ったのに皮一枚で繋がっていたわけだ。
『あ、もやし…』
金庫に入っていたもやしも黒焦げになっていた。もやしを燃やした―。シャレにしても面白くないな。
『う、う〜ん…』
『プ、プリン?』
今度こそ元に戻ってくれ―!!必死に心から祈る!!!
『あいっ!プリンはツーしゃまの犬なのでしゅ〜〜〜♪』
『戻ってなーーーーーーーい!!!!』
『恋〜それはLOVE〜〜♪こぉ〜い〜は〜ばいおれんすバイオレンス♪デスローーーーーーーイ!!!!!』
『ええええーーーーーーーっ!!??』
歌って踊ったと思いきや強烈な回し蹴りを仕掛ける!!!とっさに手近にあった金庫(!)でガードする!
『も、持てるもんだね…これが本当の火事場の馬鹿力…』
…が、盾にした金庫が真っ二つに崩れ落ちる。
『えええええええ!!!???ちょっ、ちょっとーー!!!
なにこれ!ふざけてんの!?回し蹴りのレベルを超えてるって!!回し蹴りってレベルじゃないよ!!!』
いや、それよりも症状悪化してる!?最初が戦闘モード。次がLOVEモード。そして現在はその複合だから…
『てへっ世界で一番愛してます。今日は二人の記念おうふくビンタ乱舞!!!』
『意味不明だから!!!全く意味が通じてないから!!!!』
ついツッコミを入れてしまったが、それが命取りだった。
『(かっ、かわし切れない!!)』
その時だった!

〔あーあーあー、テステステス。ただいまマイクのテスト中。マイクのテスト中―。〕

『!?』
突然の館内放送にプリンの動きが止まった。
『この声は…カービィ?』

〔諸君!僕はマキシムトマトが好きだ!あま〜いケーキが好きだ!おいしい食べ物なんでも大好きだ!!!〕

そういえばカービィも食堂で大暴れしていた。カービィも正気を失ってからまだ元に戻っていないのだろうか?

〔我が愛武器、諸君らが愛してくれたパラソルは消えた、何故だ!飛行能力持ちキャラが増えた。
諸君らはこれを復帰が有利だと甘んじているのではないのか?しかし、それは重大な過ちである。
なぜならば!パラソルの真の魅力は攻撃力にあらず!癒しなのです!!!気づきました!!!
見ろ、人がちらしずしのようだ!!!!ヨーグルトは滅びぬ、何度でも蘇るさ!!!ケフィア?違うな、ブルガリアだ!!〕

何やら熱心に演説をしているみたいだけど、全く意図がつかめない。…というより意味すらわからない。
『わ、わけがわからない…。どっかで聞いたようなセリフをごっちゃにしてるだけなんじゃあ…。』

〔ご飯を残すわりぃごはいねぇ〜がぁ〜!このカービィがっ!月と太陽と星に代わってお仕置きだよっ!
ぷにぷには正義!ぽよぽよは正義!ぷにぽよは正義!餅肌!!弾力!!MY・ジャスティスッッッッ!!!!!!
えー、コホン。そういう訳で、一番カービィ!!!歌いますっっっっ!!!!!!〕

『演説が全く関係ないいいいいいい!?』

〔ざあぁあぁぁぁ〜〜〜んんんんん〜〜〜こぉおぉくぅうぬぅわぁああぁあぁ〜〜〜てぇんしのぉおよぉうにぃぃいいいい〜〜〜〜♪♪
しょぉおおぅぅううう〜〜〜ねぇぇぇ〜〜んんん〜よぉぅ〜〜〜♪♪♪
しぃいぃんわぁぁにいぃなぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁああああれぇええぇええぇぇぇえええぇぇぇええええ〜〜〜〜〜♯♭♪♭♪〕
〜チャーチャーチャラッチャ、チャチャチャラチャラッチャー♪〜(※例のあの曲がバックに流れています)

ああ…、今日はよく意識の飛ぶ日だなぁ…。

〔あぁあぉおいぃいいぃぃいいいぃいいいいいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜♪
かっぜぇええぇぇがぁあ〜〜いぃいm―――――《ブツッ!!》―――――〕

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

…今度は本当に走馬灯を見た気がする。
『…まだ、生きている…。』
どうやらカービィの歌にスピーカーの方耐え切れずに壊れたらしい。もしもあんな歌をフルコーラスで歌われていたら…
『…恐ろしい。』
『う〜…耳が痛い…です…。』
『うん…。ってプリン!?』
流石にこのパターンにはもう慣れたのでとっさに身構える。が…、
『ん…?ピカチュウ、どうしたですか?』
『え…?プリン…だよね?』
『…プリンじゃなければ何に見えるんですか?ボールですか?お団子ですか?それとも…』
そしてハッとしたように叫んだ。
『…あああああっ!!!ご、ごめんなさい!!!ごめんなさいです!!!』
『へっ?ごめんって…。ま、まさか…』
…覚えている?あの超絶恥ずかしい告白まがいの説得や、性欲を持て余ししそうになったこととか、
え…マカロニとか…その他もろもろ…。イヤアアァァァ!!恥ずかしい!死にたい!!!むしろ殺してくれ!!!
『お、覚えてるの…?』
『…ギガインパクトといいながらメガトンパンチぶちかました後、とび蹴りしたところまでは覚えてるです…。』
『ええっ!?そ、そうなの?その、後は…?』
『…覚えてないです。まるっきり。まさか、その後も何かしでかしてたです!?』
『えっと、回し蹴りされた。これ、金庫。真っ二つになってる。』
『ひゃああああ〜〜〜!!!あっ、後は!?後はなんですか!?』
…まさか、言えるわけがない。プリンがどんな事をしていたかなんて。とてもじゃないが言えるわけが無い。
『………そ、それだけ。あとは、ずーっと気絶してたよ。』
『そ、そうですか…。ちょっとホッとしました…。ピカチュウはずっと見ていてくれてたんですか?』
『えっ!?う、うん!そう!』
『そうなんだ、ありがとうです。そうだ!フシギソウ!フシギソウは大丈夫ですか!?』
『え…っと、いや、ずっと部屋にいたから…。』
そうだった。ごめんねフシギソウ、それどころじゃなくてすっかり忘れていた。
『気絶はしていたけど、大丈夫だとは思う、よ。床にめりこんでいたけど。』
『あわわわ〜〜!やっぱりみんなの言うとおり最初からお部屋に戻って寝ていればよかったです!!
本っ当にごめんなさい!!!!ピカチュウもケガとかしなかったですか!?』
プリンはわたわたと慌てふためいている。自分が大変な事をしでかしたとパニックになっているようだ。思いっきりしでかしていたけど…。
『だっ、大丈夫だよ。本当!それに元に戻ったんだから謝れば許してもらえるよ、きっと。』
『本当ですか…?』
『そうだよ。それにみんなお互い様だもんね。』
『とりあえず、外に出てみようか…』

『うわ…。』
『こ、これは…。』
部屋の外は予想以上に惨状になっていた。なんかもう、グッチャグッチャ。
『ル、ルカリオー、大丈夫?しっかりして!』
『ううう…。ピカチュウ、か?それにプリンも…。』
『ルカリオ!よかった〜。』
『ごめんなさい、ご迷惑かけて…。』
『一体…何が起きたんだ?』
『えーと…とりあえずカービィに感謝、かな?』
『『?』』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

その後、僕たちは館内の生存者(しつこいようだが死んでいない)を探し歩いた。
予想通り、全員があちこちに倒れて気絶していたけど、驚いた事に本当にカービィの歌でみんな正気に戻ったらしい。
カービィ本人はその後放送室で眠っている所を発見された。恐らく歌いつかれて寝てしまったのではないかと言われている。
目が覚めた時にはカービィも元に戻っており、症状が出ていた間の記憶はほとんど無いらしい。
ただ、「すごく楽しかった♪」そうだ―。

夕方…
『なんかすごい疲れた…。』
夕日に照らされた中庭を散歩しながら今日一日を振り返る―。

まず一つ。今までプリンの事は友達だと思っていたけど、どうやら違った。僕はプリンに好意を持っている。
二つ。ただしそれは、友情以上恋愛未満、あるいは恋に近い友情―。まあつまり、特にどうこうしようとは思っていない。
三つ。意外にも僕の理性は相当強い。多分そこらの人間よりよっぽど強いのではないかと。あるいはチキン君なのか。

『もう少し大人だったらもっとスムーズに抑えられたのかな?』
いや、こーゆーのは逆に大人の方が制御できないような気がする。なんとなく。
というか、野生ポケモンが野生に忠実にじゃないのはどうなんだろうと…逆に悩んでしまう。
ただ、もしも僕もあのスープを飲んでいたら、とっくに襲っていただろう。それはある意味セーフ。
『…はぁ。本当に色々ありすぎた。…恋愛恐怖症にならなければいいな…。』
『ピカチュウー!こんなところにいたのですか!』
『あ…、プリン…。』
ちょっとギクっとしたけど、すぐにいつも通りに会話を始める。
『もう具合はいいの?』
『はいっ!あとみんなに謝ってきて許してもらえましたよ。フシギソウは『いいパンチだったぜ!』て褒めてくれたです。…もう出し方わかんなくなったけど。』
『よかったね。それにしても…本当に今日は大変だったね…。』
「そうですね〜。なんだか色々と大変でした。」
「おーーーい………」

「あれ?どこかで声が聞こえませんでした?」
『そういえば…。』
「ここだよーーー!!!ここーーーーーーー!!!!」
声はすれども姿は見えず…。一体どこから聞こえて来るんだろう?
「ここだって!ここーーーー!!!真横!!!右右!!!」
『え?』
言われた通りに振り向くと…
ルイージ首から上だけ出して地面に埋まっていた!!!
『うわーーーーーーーーー!!!!』
『プリーーーーーーーー!!!!!!???これは…えっと、る、る、る〜〜〜…ルイージ!!!』
あ、やっとプリンやっと名前覚えたんだね。

「ピ、ピカピーカー!?」
「『どうして埋まってるの?』こっちだって好きで埋まってるんじゃないよ!!!ピクミン達に埋められたんだよ〜〜〜。」
『知らない間にそんな事になっていたなんて…。とりあえずプリン、誰か他の人呼んできて!!』
『はいっ!!!』

プリンが連れてきた人たちのおかげで、無事埋められていたルイージを掘り出してあげた。
ずいぶん長いこと埋まっていたようで泣きながら今までのことを話す。

「…よってたかって突かれるは叩かれるは、あげくに埋められるわ…。しかも誰も気づいてくれないし!!!
僕が流されそうになったとき必死に『助けて!!!』って叫んだのに兄さんも誰も気づいてなかったし…。」
「済まないル…イージ君。ピクミン達が迷惑をかけてしまって。」
「…オリマーさん。なんか、少し間が開きませんでした?
「そんな事は無いさ。ルイー…ジ君。」
連れてきたのはオリマーさんとドンキーとヨッシー。微妙なメンバー選択な気もする。
「ルイージさん大変でしたね。でもマリオさんも大変だったんですから許してあげましょうよ。」
「ヨッシーはドンキーと意味不明な話しかしてなかったじゃないか…。」
「俺ずっとバナナの話ばっかりしてた気がするなぁ…。よく覚えてないけど。」
「僕は相対性理論についても話したような…。で、何ですかそれ?」
「知りたいなら後で教えてあげようか?」
「それにしたって誰か一人くらい気づいてくれたってさ〜」
「仕方ないですよ。だって ル イ ー ジ さ ん ですから!」
「…それ、理由になってないんだけど。」
ヨッシーの言ってることは確かに理由にはなっていない。だけどある意味一番納得する理由な気もする…。
四人の会話を横で聞く。そうだ、ルイージに部屋ともやしを滅茶苦茶にしたのも謝っておかなきゃ。

『どうせならあの豚魔王も埋まっていれば面白かったのに…。』
『は?』
突然プリンがとんでも無いことを言い出す。でもちょっとだけ想像してみる…。
『……それ、怖いよ。』
「プリンさん、あんまり人の悪口はだめですよ。」
『あ…。』
『聞かれちゃったね。』
しまった。ヨッシーは僕らの言葉もわかるんだったっけ。それどころか下手したら五ヶ国語どころか五世界語ぐらいは理解しそう。
この前、やっとピクミン語をマスターしたって話していたし。本当に相対…なんとか理論すら理解しそうだ…。
「豚とガノンさんに失礼ですよ〜。」
でもそれは微妙に違うような…。
「ん、ガノンさん?それなら僕見たよ。」
「えっ!?」
「僕が埋められて少し経って、何故だかロボットを引きずって来てさ。肩に抱いてそこのベンチに座っていた。
ロボは逃げようとしていたけどガッツリ捕まれて抜け出せなかったみたい。あれ間違いなく中毒症状だね。」
「へ〜。」
「意外だな〜。あのデコのオッサンでもキノコ中毒になるんだ。」
「まあシュールな光景ではあったけど僕はそれどころじゃなかったよ。
必死に助けを求めたのに気づいてくれないし。そのあと三時間も無言のまま座ってたんだよ。」
「三時間も!?そうか、ここまではカービィ君の歌も届いていなかったのだな。」
『うわぁ…。あんなのと延々三時間ですか。ロボも災難でしたね。』
『あんなのって…。』
…うん、あんなのだけどさ。…いよいよ僕も性格悪くなってきたかもしれない。
「で、突然ガノンさんが正気に戻ったらしく、ロボを殴って帰ったよ。当たり所悪かったのかショートして火花出ていた。かわいそうに…。」
『うわっ!流石は豚魔王。容赦のない外道ですっ!!』
「けどさぁ、僕だってかわいそうだとは思うわない?あの後ロボは他のみんなが見つけて運ばれたけど…、
だーれも僕に気づかなかったんだよ?5メートルも離れてないのにひどくない!?」
「そういえばロボットが故障してるって騒ぎになっていたな。ちゃんと修理して直ったようだが。」
「それは良かった!いや、だからやっぱ良くないって。どうして誰も僕に…」
「あ、そうそう忘れていた!」
「え?どうしましたオリマーさん。」
「おーい、いきなり無視しないでよ〜。」
「中毒症状が出た人達は、念のために副作用が無いか臨時健康診断を行うそうだ。医務室が空いたので向かってくれ。」
「そうですか。じゃあ僕ドンキーと行きますね。」
『と、言うことは…プリンもですね。ちょっと行ってきますね。早いとこすませないと豚…もといガノンに鉢合わせしたら嫌です。』
オリマーさんに連れられて三人は館内に戻っていった。それじゃあ僕も、もう行こうかな?
「も〜、まだ話があったのにー!!!」
あ、ちょっとかわいそうかも…
「ピーカピ。」
「え?聞いてくれるの?」
なんかすっごく嬉しそうにしてる。うんうん、聞いてあげるよ。
「そもそもさあ、なんか僕の扱いとか態度って悪くない?いや態度は別に悪くは無いんだよ。
ここのみんなは親切だしさ、でもね、もう少し存在に気を使って欲しいとか気づいて欲しいというのかさあ…。」
それより、もやしの事をなんて言えばいいだろう?『もやしを燃やした』じゃあシャレになっちゃうし…。
普通に『ちょっと部屋を借りたら大乱闘になりました』でいいのかなぁ…?
「……大体二人とも目の前に、というか5メートル先の地面に僕が埋まってるんだし気づいてくれても…。
まあ…、気づいたとしてもロボは動けないしガノンさんはトリップしてるから無理だっただろうけどさ。」
「ピィ〜ピカー?ピカピ、ピッピッカチュッ?」
「『全力で叫べばよかったんじゃないかって?』これさあ、一度埋まってみるとわかるけど圧迫されてあんまり声出せないんだよ。」
「ピカ…。」
ごめんね。知らなかったし、埋まりたくもない。
「後、声をかけづらかったってのもあるけど…。」
「ピ?」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

その後の調べで例のキノコを入れた犯人がわかった。なんと犯人はワドルディだった。
昨日ワドルディが山で変わったキノコを取ってきて、おいしそうだったために丁度次の日、
つまり今朝の朝食当番だったデデデ大王にナイショで食材に使ったそうだ。
部下の責任は上司の責任ってことで、現在デデデ大王は自主的にカービィカラオケオールナイトに付き合っている。
ただし、本当に自主的かどうかまではわからないけど…。

【カラオケルーム前】
「いっちまんねぇんとぉおおお〜〜〜にっせんっねんっまえからっっっA☆I☆SHI☆TE☆RU☆〜〜〜〜〜♪♪」
『…部屋の外にまで聞こえてる…。(※注:耳を塞いでいます)』

ちなみに、例のワドルディ大量召集は症状が出ていたわけじゃなく『その場のノリ』でやったらしい。

その夜―――
トレーナーの部屋の前に来てドアをノックする。中からトレーナーが笑顔で出迎えてきた。
「ピッカー!」
「うわぁピカチュウ!遊びに来てくれたんだね!!!うれしいなぁ〜〜。」
「ピカーピ?ピカピチュ?」
「え?今日は僕の部屋に泊まりたいの?もちろん大歓迎さ!!!!」
「ピカチュッ♪」

『に、してもカービィだけなーんか得していいなよなー。好き放題やっていただけで、それでいて本人知らないうち感謝されて。
晩飯のおかずもみんなから分けてもらっていたぜ。オイラもなんかすればよかったなー。』
『お前はバイクで突っ走って自爆してただけだもんなぁ〜。』
『うっせーなーー。』
カービィをうらやましそうにしているゼニガメを茶化すフシギソウ。すっかり元気そうでよかった。
『そういえばリザードンは?』
『外で遠吠えしている。なんかキノコで嫌なもの見たんだってよ。』
『正しくは『ハニー達に捧げるラブソング第二楽章』の作曲中。トレーナーに嫁を全部取られる幻覚を見たんだとさ。
んで、この馬鹿トレーナーは望みどおりのものが見れたそうでご機嫌だ。』
「いや〜、あんな体験なんて滅多にできないよねっ!ねっ!?」
後ろでトレーナーがとても嬉しそうにしている…。
『そ、そうなんだ…。』
『変なモンに目覚めなければいいけどな。それはそうと、ピカチュウ。』
『ん?』
『なんか悩みでもある?』
『えっ…?な、何で?』
『普通はさ、悩みがある時って一人になりたいとか、して欲しいとかって方が多い。けどお前はさ、逆にそういう時
みんなと集まって気を紛らわすタイプと見た。だから今晩泊まりに来たんじゃねーか?』
『…鋭いね。まあ、一人で考える時もあるけどね。』
『ん、ただの勘だったんだけど…当たってた?』
見抜かれている…。ひょっとしてこのメンバーを影で支えているのってフシギソウなんじゃあ…。
『大当たり。なんか一人で考え込むとよけいにこんがらがりそうだったからね。』

あの時―、中庭でルイージはこう言っていた。

「別に怖いから話しかけづらいって事じゃなくてね、その時の目が、ね。気になって。」
「チュウ?」
「なんていうかさ。切ないような、遠くを見つめるような…、まるで、どこかに大切な物を落としてしまったような―。
そんな感じの目をしていたんだ。そのままずっと無言で空を見つめたまま座ってたんだよね。」
「ピイ…。」
「だからさ、とてもじゃないけど話しかけづらくてさー。うん。」

キノコ中毒の症状が出ていた間の記憶は消えている人もいれば、一部が残る人もいたし全部覚えている人もいた。
“奴”がその時の事を覚えているかどうかなんてわからないし、もちろん僕がそれを知る事も無い。

ただ、何人かの人は『幻』を見たらしい。そして、その幻は、その人にとって思い入れの深い人が多かったという…。
…………。
果たして“奴”も幻を見ていたのだろうか?だとすれば、その『幻』の中に、一体、誰を映していたのだろうか―?
もしかすると――いや、まさか…ね。

『話くらいなら聞くけど?話たくなけりゃ、別にいーけど。』
『んー…。』
言うべきだろうか。もちろん全部は話さないけど、でもまあ、少しだけなら…
『なんて言うか…、三角関係に挟まれているっていうかな…?』
『あーー…。悪い、それは俺の専門外だわ。ごめん。』
『ううん、いいよ。』
『なになに?ピカチュウなんか悩みでもあんのー?あんまし思いつめるとハゲるぜ?』
『それはヤダ。』
『つーかお前が言うな。』
『だからうるせーよ!元からなんだからしゃーねーだろ?』
『たっだいまーーー!!!リザードン様華麗に復活!!ってあれ?ピカチュウじゃねぇか、どうしたんだ?』
『お泊りだってよ。』
『そうかそうか!ま、こいつらがうるさいだろうが気にするなよ。』
『『お前には言われたくない!!!』』
『あははは!』
三人の楽しそうな声が響く。やっぱり泊まりに来てよかった。なんだか気が楽になる。
「おかえり、リザードン!もう遅いし、みんなそろそろ寝ようか。」
電気が消えて部屋が暗闇に包まれる。今日は本当に色んな事があった。なんだかひどい目にあったし。
「ピカピカ…」
そういえば、やたらよく夢を見たっけなぁ。今夜はいい夢が見れますように…。


END

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2008年03月25日(火) 14:53:40 Modified by smer




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