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9-93

ギャグです。またもカービィ組中心、けどアイク×にょルス前提。相変わらずメタナイト変態注意



 ストック制のチーム戦が終わった。今回の勝者はメタナイトとカービィのチームだった。
観戦者は勝者におめでとうと盛大な拍手を送り、また敗者には頑張ったねとこちらにも拍手を送る。
 だが、控え室に戻り。勝利を喜ぶべき勝者のまわりには何故か重苦しい空気が漂っていた。否、精確には、メタナイトのまわりには、だ。
「元気出せよメタナイト。今回のは君のせいじゃないって」
「私のせいで…カービィは……」
 彼に負けたはずであるリンクが懸命に励ましているが、その言葉を聞いているのかもわからない様子で
メタナイトは俯きブツブツと何か呟いている。辺りの重苦しさは悪化するばかりだ。
何とか元気づけようと悪戦苦闘しているリンクを遠巻きに、先の乱闘で彼と同じチームだったデデデは
放っておけばいいのに、と心中で悪態をついた。



 事情はこうだ。カービィとチームを組むことで今回メタナイトはいやに張り切っており、
戦闘が終わるまでにカービィのストックは一個たりとも減らさせない、寧ろ一パーセントのダメージも負わせないと心中で決めていたらしい。
事実デデデにA連打を決めてきたメタナイトは
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃらりゅるryカービィに手ェ出したら殺すぞコラァアアア!!!!!」
と、力みすぎで舌が回りきらないほどであった。(最後のほうは呂律が回らなかった結果であり意味はない)
 その勢いとマジな殺気に気押されたこともあり、ランチャーやらスコープやらハンマーらを乱用しまくるメタナイトに
リンクとデデデは為す術もなく吹っ飛ばされていったのだが。
 戦闘も終盤に差し掛かった頃。リンクは先にストックを尽くしてしまい、ステージにはストックももう残されていない、
あと一発攻撃を加えれば容易に吹き飛んでしまうほどに満身創痍状態のデデデがいた。
対峙するメタナイトのほうは僅かなダメージしか負っておらず、ストックもまだ余っている。よく考えずとも勝負は決まっていた。
 それに無意識のうち油断していたのかもしれない。とどめとばかりに、メタナイトは容赦なくデデデにボム兵を投げつけた。
 デデデはかろうじてそれをかわした。
 そして、デデデの背後には。メタナイトが最初に誓った通り、ストックが減るどころかダメージ一つ負っていないカービィがいた。
 気付きメタナイトが目を見開いたときにはボム兵はカービィに直撃、カービィは遥か彼方のお星さまになっていた。
 結局ストックを使い直ぐに戻ってきたカービィによってデデデも呆気なく吹き飛ばされ、乱闘は終了。
嬉しそうにカービィが振り返ると、そこには茫然自失状態のメタナイトがいた。
 そして今に至る。



「ねえ、げんきだして、めたないと。ぼくはだいじょうぶだから」
 カービィもメタナイトのそばに付き添い、その背を短い手で撫でながら懸命に励ましていた。
カービィとしては本当に気にしていないのだが、メタナイトが立ち直る気配はない。
「あんなところにいたぼくもわるかったんだから…」
「何を言う、お前は何も悪くないのだカービィ…。あの態度に比例して図体のデカいペンギンの背後に気をくばらなかった私が悪いのだ。
そうとも、あのペンギンが無駄に図体がデカいのも悪いのだ。やはり今のうち輪切りにしておいたほうが…」
 何かとばっちりを受けた気がしたがデデデは聞こえなかったふりをすることにした。
「我慢するな、罵りたければ罵るがいいカービィ。寧ろ罵ってほs」
「ののし…?」
「いや、やはり何でもない、こちらの話だ。とにかく怒りたければ怒ってもよいのだ」
 カービィは難しい言葉はわからないが、どうやらこのまま声を掛け続けていても埒が明かないことは理解した。リンクもお手上げのようである。
 カービィは何かよい方法はないかと知恵を絞り、そして思いついた。
丸い手でぽよぽよとつついて、メタナイトの意識をこちらに向けさせる。
「ね、ね、めたないと」
「…何だ、カー」
 カービィは、一瞬顔を上げたメタナイトの隙をつき、素早く仮面を外した。
 そしてメタナイトが慌てる間もなくその顔に接近し。

 ちゅ。

 口付けた。



 ***

 乱闘が始まる数分前の出来事である。
「なにしてるの?」
 誰もいないと思っていた場所から声が聞こえて、ぎょっとしてマルスとアイクは体を離した。
 視線を落とすと、そこには不思議そうな眼差しで二人の動向を見守るカービィの姿があった。
 次の乱闘に出るため一足早く控え室にきたところ、さきの乱闘に出ていたマルスとアイクが体を寄せあい
互いの唇を重ねていたのを見掛け、好奇心のままに声を掛けたのである。
 生憎カービィの故郷であるプププランドにはキスという習慣はない。
「ね、なにしてたの?」
 悪意など欠片もない、まさに純粋そのものの瞳をきらきらと輝かせ、再びカービィは聞いた。
 知らないのだから、それがどんなに相手を困らせる質問なのかもわからない。
 ここで「キスをしてましたサーセンwwwww」などと正直に言って、無知な相手にキスについて一から教えられる奴がいるのだとしたら、
恐らくそれはガノンドロフやワリオくらいのものだろう。
 どうしたものかと頭を掻いているアイクに対し、あからさまにおろおろしているマルスは、
何かそれらしいことを言って誤魔化さなければと瞬時に頭を働かせた。
 そして。
「えーと、これはね、その…おまじないなの!」
「おまじない?」
「そ、そう、おまじない!」
 咄嗟の言葉であったが、思いがけず興味を抱いた様子のカービィにマルスはそのまま話を進行させる。
「好きな人が落ち込んでいたり悲しんでいたりするときにこのおまじないをすると、たちまち好きな人を元気にするの!
さっきアイクが僕にやられてたでしょ?だから元気づけようと思って、その、おまじないを…」
「ああ、そっかあ」
 苦しくなり最後のほうは尻切れとんぼだったにも関わらず、カービィは納得したように笑った。
一先ずうまく誤魔化せたことにマルスは安堵する。
「じ、じゃ、カービィもやってみるとよいよ!じゃあね!」
「うん、じゃあねー」
 そうしている間にも控え室に他の戦士達が集まってきたのを見てとり、マルスは適当に話をまとめると
ズルズルとアイクを引きずりながら控え室を出ていった。カービィは無邪気に手を振りそれを見送った。
「いいのか、あんな適当なこと教えて」
 未だ引きずられながら、廊下をすたすたと逃げるように歩くマルスにアイクは問いかけたが、それは綺麗に黙殺された。

 ***



 カービィとしては、マルスが言っていたことを思い出し、メタナイトを元気づけるためにそれを実行しただけにすぎないのだが、
ここにいる人物達はそんな事情を知る由もない。
 リンクとデデデは予想外の出来事にピシリと凍り付いている。普段見ることの叶わないメタナイトの素顔が
露出していることにも気付いている様子はない。またメタナイトも固まったまま素顔を隠そうともしない。
 未だ空気の変化に気付かないでいるカービィは顔を離すと、悠々と仮面を元に戻した。
 身じろぎもしないメタナイトににこりと笑い掛ける。
「げんきでた?ね?」

 カービィがしたことはあながち間違いではない。確かにメタナイトは元気になった。
 ただ、元気の方向性が違っただけであり、同時に押してはいけないスイッチを押してしまっただけである。
「…カービィ」
「ぽよ?」
 ゆらり、とメタナイトがカービィを見た。立ち直ったのかと思いカービィは嬉しそうに笑う。メタナイトの背後に立ち上る邪気には気付かない。
 我に返ったリンクがそれに気付いたときには遅かった。
 カッとメタナイトの双眼が閃光を放った。

「もう我慢ならん!!うおおおお俺のものになれカービィイイイイイイイ!!!!」
「ぽよ――?!!」
「やめんかこの変態がー!!!」
 リンクが止める間もなく、メタナイトが遮二無二カービィに飛びかかった。それに驚いたカービィが咄嗟に避けることもできず押し倒されそうになり、
しかし直前、デデデが投げつけた特製ハンマーにより、メタナイトはカービィに触れることなく遥か彼方までぶっ飛ぶこととなった。

 後にこの話をリンクから聞いたマルスが、どう訂正すべきか思い悩む姿が見られたという。
2008年03月21日(金) 17:13:56 Modified by smer




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