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「皆さん用意はいいデスカー? ポッキーゲームスタートですヨー。3回勝負、各自Fightデス!」

金剛さんの声を聴きながら、頭はどこかふわりと別の場所にあるような感覚であった。
面白そーだしやってみようと言う北上さんの言葉に、何故頷いてしまったのだろうか、そう後悔ともなんとも言えぬことを思う。
どうせ頷かなければ頷かなかったで、どうしてあんな機会を逃してしまったんだと嘆く羽目になるのだから、どっちにしろ同じことなのだけれども。
ポッキーを持ったまま正面にいる北上さんを直視できずに、軽く視線をそらしながら、そんなことを考える。
動揺しきっているこちらとは対照的に、面白そうなゲームをやってみようという北上さんは照れも動揺もしていなくて、その差がなんとなく寂しい。

「大井っちー、どしたのー?」
「な、なんでもないわよ」
「そう? んじゃ始めましょー。ふぁい、ろぉーろ」


正面からひゅうと息をのむ音が聞こえ、ポッキーの振動が一旦止まる。
目を閉じたせいで、北上さんの息遣いがやけにはっきり感じられる。
そして何より距離感が把握できず、心の準備が余計にできない。見ているときよりもたちが悪かった。
次第に近くなる振動に慌てて目を開けば、まさに目前といったところに北上さんの顔があった。
息継ぎの吐息が頬に当たる。チョコレートなんかよりもよほど甘い香りに、思わず肩がはね、耳まで赤く染まる。
ぱきり。
びくりと跳ね上がった拍子にあっけない音でポッキーが折れた。
わずかに残念に感じながらも、これで一安心だと胸に手を当てそっと息をつく。
心臓よ早くもとに戻れと念じながら、軽く微笑んで北上さんに告げる。

「折っちゃいましたし、私の負けですね」
「ん。そだね」
「それじゃあ――」
部屋にでも戻りましょうか。
そう続けようとしたとき、北上さんはもう一本ポッキーを取り出して赤らんだ表情で軽く笑った。
「2回戦、行きますか」
そういえば3回勝負だったなと、もはやとろけてしまった頭で考える。
心臓は、持つのだろうか。

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