BBSPINKレズ・百合萌え板の【艦これ】艦隊これくしょんで百合スレのSSまとめサイトです

五月二十日
出撃した先で手のひらサイズの深海棲艦を見つけたので思わず連れ帰ってしまった。幸運にも司令官に許可をもらうことが出来たので飼育をしてみようと思う。
暁は「響のこと心配して言ってるのよ?」と最後まで反対していたが大丈夫だろう。昆布やわかめなどの海藻をもぐもぐ食べているだけで安全そのものだ。
空母ヲ級と外見がそっくりなので電が「くぅちゃん」と名前をつけた。なかなかセンスがあると思う。

五月二十三日
くぅちゃんは身振り手振りでこちらと意思の疎通を図ろうとすることがある。残念ながらその全てを私たちが読み取ることは不可能だが、最近になって少しなら伝わってくるようになった。
例えば遊んで欲しいときは、豆粒程度の小さな艦載機を飛ばしてこちらにアピールをする。食事が欲しいときは頭上部を軽くこつこつとぶつけてくる。
かまって欲しいときに袖を引っ張ってくる暁と何ら変わらないな、と本人に言ったら真っ赤に照れて怒ってしまった。可愛らしいものだ。

五月二九日
くぅちゃんの成長は非常に早い。身長がもう私の膝上くらいまできていることに気付いて驚いた。また、ここ最近動きが鈍くなったように感じる。遊ぶ頻度も極端に下がっている。
何かの前兆なのだろうか? 健康上の理由でない事を祈るばかりだ。

六月二日
まさかまゆを作って動かなくなってしまうとは思わなかった。大体私の胸あたりくらいまである大きさのそれは現在私の枕元に置いてある。雷は開口一番「大福?」と言ったが正にそんな感じの外見だ。表面もふわふわしている。
深海棲艦の生態はやはり謎が多い、と実感させられた。これからくぅちゃんはどうなるのだろうか。

六月九日
この飼育日記も今日で終わりを迎えることとなった。ついでに書くと私の人生も終わりを迎えるかもしれない。これらの文書はは一応遺言として扱って貰っても構わない。
今朝起きてすぐ第一の違和感に気付いた。枕元のまゆを確かめようと思ったらどこにもなかったのだ。おかしいなと思う間もなくまた第二の違和感、右腕の柔らかい感触に気付く。若干寝ぼけたままその腕にしがみついているものを確かめようと目を向けた。
右側にいたのは全裸で私の腕を抱いて眠る女性。不測の事態に軽くパニックになり「ふえぁ!?」と叫んだのが運の尽きだったのか、その時同室の暁達が目を覚ましてしまった。
暁は目に涙を浮かべ、電と雷は軽蔑の目でこちらを見て部屋を出て行った。違う、何かの間違いだと弁解する暇もなかった。
呆然とする私に素っ裸の彼女がこう自己紹介した。「初めまして、くぅちゃんこと正規空母加賀です」
どうやら深海棲艦は成長すると艦娘になることがあるようだ。完全に納得することは出来ないままだったが、このまま何もしないというわけにはいかないので適当な服を着せて一緒に食堂へ向かった。
食堂に入ると同僚がひそひそとこちらを見て話を始めた。もう一部で噂が広がっているのかと落胆したがもはやどうしようもない、無視を続けるのが一番だと和食セットを二つ注文、隅の方に席を取って二人で黙々と食べ始める。今思えばあれは青葉さんの仕業だろう。
そこへ、不運な事に赤城さんが訪れる。前世での縁もあり最も加賀さんと会いたがっていた人物だ。あら、新入りの方ですか? と彼女が尋ねる。私がそれに答えるよりも早く加賀さんが返答した。
「はい、加賀型一番艦加賀です。そしてこちらがママの響です」と。
ど、どういうことですか何で加賀さんがここにいるんですかそういうプレイなんですか、と肩を掴んで揺さぶられたがこっちが聞きたい。ママって何だママって。しかも丁度そこへ暁が魚雷を手にしてやって来た。
「ふふふ、その女が響を悪い子にしてるのね……」と光のない目でいわれたものだからたまらない。六割以上朝食を残して一目散に駆け出した。
そんなわけで現在私は工廠裏で声を潜めてこの飼育日記を書いている。加賀さんもとなりにいてくれるのはうれしいが、彼女と私では酸素魚雷持ちの暁と彗星ガン積みの赤城さんを止めることは出来ないだろう。二人は今も血眼で私たちを捜しているはずだ。
今私に出来るのは、北上さんや雪風たちが目に光のない彼女達を止めてくれるよう願うことだけだ。
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