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108 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 07:54:53.69 ID:O9w5bkZC [2/4]
加賀型戦艦一番艦、加賀。それが、本来の私だった。私はあの年に解体され、部品は赤城さん、そして天城さんに使われる予定だった。
しかし、そうなる日は来なかった。西暦1923年。大正12年。関東大震災が起きた日。日本は未曽有の大災害に襲われた。
その被害は市井の住民だけではなく、軽巡洋艦那珂や波9、波10などといった艦船被害も起きた。……天城さんも。

そして、現在。私は赤城さんと共に無敵の一航戦として深海棲艦と対峙している。
「全機発艦!!」
赤城さんの凛とした声が響く。それと同時に、天山が深海棲艦に向けて飛び立った。
深海棲艦との制空権争いはすでに勝利しており、こちら側が艦載機を飛ばすのに何も支障はない。
天山の機銃が空母ヲ級の艤装をどうだ、と言わんばかりに剥いでいった。
それを好機と見て、私も流星を発艦させる。空母ヲ級は爆発音と共に轟沈した。
「……やりました」
これでこの区域の深海棲艦の殲滅を完了したことになる。小破した味方艦はいるものの、被害は軽微。私たちは旗艦を先頭として鎮守府に帰還した。
「第一艦隊、ただいま帰還しました。状況を報告いたします」
帰還の報告を受けて、提督は今後の処理にとりかかる。私たちは休養の命を受け、一先ず入渠することにした。
しばらく深海棲艦の殲滅にかかりきりだったため、久しぶりの休養となる。自室で艤装を外し、胸当てと矢筒を外す。改めて艤装を眺めてみると、少々汚れが目立ってきた気もする。
明日は休みだし、綺麗になるまで磨こうか。この艤装はあの人の遺した物ともいえる、大切な物だ。私と赤城さんをつなぐものでもあるのだから。
「加賀さん」
ドアをノックする音と一緒に赤城さんの声が聞こえた。はい、と応じるとドアが開いた。
「加賀さん、一緒にお風呂入りませんか?」
「……わかりました」
すぐに着替えの用意をして赤城さんと共に入渠ドッグへ向かう。ドッグと名はついているが、実際は浴場だ。
しかし、薬湯が使われていて疲労や傷の治りをよくする効果があり、艦娘には人気でもある。
「今日は疲れましたね」
「そうですね……」
道すがら、今日のことについていくつか言葉を交わした。と言っても、大体の場合は私は聞き役になる。
赤城さんからはいろんな話を聞ける。鎮守府内のこと、艦娘のこと、美味しいお店ができたということ。……お姉さん、つまり天城さんのこと。
赤城さんにとって天城さんは偉大な存在だったらしい。姉のように、立派な空母になる。それが彼女の口癖だった。
ふと、考えることがある。私が解体され……天城さんが生き残っていたら。歴史にもしは無いとはいうが、けしてありえないことではなかったのだ。
「……さん、加賀さん?」
「え…あ、どうしました?」
赤城さんが私を呼んでいたことに気が付かなかった。いけない、しっかりしなければ。
「加賀さん、ぼーっとしてたみたいでしたから…やっぱり疲れてますか?」
「いえ、そんなことは……」
「そうですか…」

109 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2013/11/26(火) 07:56:01.54 ID:O9w5bkZC [3/4]
いつの間にか入渠ドッグについていたようだ。中はちょうど誰もおらず、貸し切りのようになっている。
「丁度空いてますね。すぐ入りましょうか」
「はい」
道衣を脱ぎ、タオルを持って浴場へ。シャンプーやリンスは備付のものを使うことになっている。一部の艦娘はそんなこともないようだが。
かけ湯で汗や汚れを流す。疲れた体に熱いお湯が心地よい。そのまま浴槽に浸かった。入浴するときに思わずふう、とため息をついてしまうのは私が日本の艦船だからだろうか。
「いいお湯ですねー、加賀さん」
「…ええ、本当に」
「………」
それっきり言葉が途切れてしまってしまった。沈黙の時間が続く。少しして、再度赤城さんが口を開いた。
「加賀さん。……何か、悩み事とか、ありますか?」
「へ…?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「…悩み、というほどのものではないのですけど。もし、私が解体されていたらどうなったのかな、と思いまして」
「……それって、あのときのこと、ですか……?」
「はい。あの震災があって……天城さんの艤装を私に取り付け、私は空母になりました。……でも、本当は私が赤城さんたちの部品になるはずだった」
「…………」
「赤城さんと共に戦っていたのは、天城さんだった……」
「加賀さん……」
「時折、不安になるんです。私でよかったのか、と……」
そう、本来赤城さんの隣で戦うのは天城さんの役目だった。運命のいたずらと呼ぶにはあまりに……。
「わ、私は!」
「っ!?」突然赤城さんが大声を挙げた。
「あ、赤城さん…?」
「私は……加賀さんと、一緒でよかったと思ってますよ……。加賀さんと一緒に出撃して、最後の時も一緒で……」
「……」
「天城姉さんの部品が使われているからじゃない、私は、加賀さんのことが好きだから…最後まで一緒にいれてよかったって……」
赤城さんがこちらに体を寄せる。ほんのりと赤く染まった頬に、少し汗の香りがした。
「赤城さん……すみません、少し意地悪なことを言ってしまったようですね」
「う、加賀さん……」
そうだ、悩む必要などなかった。赤城さんは私と共に一航戦に配属された時から私のことをしっかりと見ていてくれたのだから。
「赤城さん……ずっと、私と一緒に戦ってくれますか?」
赤城さんの両肩をしっかりとつかみ、瞳を見据えて話しかける。赤城さんはこくりと頷いて、
「もちろんです。これからも末永くよろしくお願いしますね」
そう答えてくれた。

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