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[言霊(8-10)]

約束…。
竜児は覚えているのか……あの調子じゃ忘れてるよね、多分。
言った事、全てを記憶出来る訳じゃないのは仕方無い事。
でも…それだけは覚えていて欲しかった。
『全てが片付いて、その時に竜児が私の事を想っていてくれたら、また告白させて欲しい』
と…私は竜児に伝えていた。
私から告白しようが、彼からだろうが結果は同一だろう、しかし…どうしても私の方から彼に想いを伝えたい。
だって私は『受け入れる』んじゃなく『受け入れて』貰いたいから。
『一緒に居て良い』と川嶋亜美を受け入れて貰って、横並びで歩みたい。認められたい。
それに私から約束したのだから守らないと筋が通らない。
だけど修学旅行一日目の晩に告白してくれようとして、凄く嬉しくかったけど。
ホッとしたけど残念だった。そんな感じ。
まあ乙女心は複雑なんだよ。
ともかく…私達は一つの契機を迎えようとしている。
スタートラインであり、チェックポイントでもある。二人ともポジションにはついていて、あとはどちらがシグナルを青く点灯させるかだけ。
ねぇ竜児、私に…シグナルを点けさせてよ。

それが私の『覚悟の表われ』なんだ。
『私は身も心も愛しい貴方のモノになりたい』
それを体現する事なの『告白する』ってのは。
帰路に着くバスの車内、皆が疲れ果てて眠りこける中……私は車窓から流れる景色を見ながら想いに耽る。
帰ったら彼に告げよう…紡ぐ言葉一つ一つに想いを載せて。

.
「えぇ〜良いですか、家に帰るまでが修学旅行です。帰り道で事故をしないように、では解散!」
学校に到着し、グラウンドの台上で学年主任がお決まりの台詞で締め、疲れ果てた生徒達がゾロゾロと校門へ向かう。
時刻は既に八時近く、人波を掻き分け、竜児の側に寄る。
祐作達、お馴染みのグループで固まり何か楽しそうに一言、二言…能登君に背中を思い切り平手で打たれた彼の姿が目に入る。
「竜児」
「ん、おぅ」
その背後から近付き、制服の裾を軽く引いて呼ぶ、すると彼が柔らかい笑みを返してくれた。
「お疲れ様、ねぇ…一緒に帰らない?」
私は簡潔に要件を伝える。
「おぅ、…って訳だ、また月曜な、お疲れさん」
彼が皆に手を振り、私と並ぶ。
「よし、帰ろうぜ」
私は頷いて答とする、余計な言葉なんて必要無い……かな。

「楽しかったな、修学旅行」
「ん、まあ…ね。スキーはスキーで、うん。楽しかったよ、なんだかんだ言っても」
彼の家へ歩みを進めながら私達は話に花を咲かせる。
だけど、ちょっとづつ会話は途切れがちになり、最後にはお互いに何も喋れなくなる。
それは話す事が無くなった、とかじゃなく…『照れ』なんだと想う。
今までは周りに誰かが居て、そっちに気が取られていたから……。
たった数日、一緒に居る機会が少なかっただけ。けど寂しかった、側に居て欲しい人と逢えなかったから、手は届くのにいつもみたいに戯れ合えなかったんだもん。
だから、こうして二人きりなのが……嬉しいの。それは竜児も想ってくれているんだ…。
乾いたアスファルトを革靴が打つ音だけが聞こえる。
私は彼の手にそっと触れる。『日常』へ戻る一歩を踏み出す。
間を空けず、すぐ繋いでくれた彼は頬にほんの少し朱が差し、それは多分、私も同じで…。
このまま時間がゆっくり過ぎろ、と念じてしまうくらい暖かくて…。
この道を彼と初めて歩んだ日は鞄を介して…今は直接触れて肩を寄せて歩む。
ちょっぴりフライング気味だけど…もう心は繋がっている。

でも不確かなのは事実で、それを確実なモノにする機会を伺っていた。
途中の公園、それとも歩むを止めずに、何処で想いを伝えるか…考えて、あぐねて、結局は何も言い出せずに彼の家に着く。
「家まで送って行くから、荷物置いてくる。ちょっと待っててくれ」
彼が手を放そうとするのを離せない。ギュッと握ってポツリと呟く。
「亜美ちゃん疲れちゃった…」
そう言うのがやっと…。いざ告白となると、緊張するんだ…やっぱり。
結果は解っていても、ね。過信する訳じゃないけど、さ。
「おぅ…………少し休んで行くか?」
竜児が落着かない様子で前髪を弄りながら、そう言ったのは…きっと私と同じ事を考えているからだ。
『約束』を覚えてない彼は、私へ想いを告げようとしてくれている。
「そうしようか、な」
なら、言われる前に言ってしまえばいいだけ。
彼について階段を上り、鍵を開けてくれる間に私は深呼吸。
ドアが開き、明りが灯されていない真っ暗な玄関の中へ入る。
静まり返った室内に響くのは頭一つ上で聞こえる竜児の息遣い、続いて、やっちゃん愛用のスカルプチャーの甘ったるい匂いが鼻をくすぐる。

柔らかい淡黄色の光に照らされる中、靴を脱ぎ、先を進む彼について行く。
「イィンコちゃ〜ん、ただいま……って、おぅっ」
部屋に入って彼が発した第一声は『家族』への挨拶。
それは彼が私と『何から話していいのか解らない』から…戸惑っているから……声が裏返ってるし。
ブサインコと話して、タイミングを見計らって……そう考えたのかもしれない。
「寝てるじゃん」
で、考える事は私も一緒な訳だ。
何かしらのキッカケがあれば始めれるのに、出端を挫かれた。
件のインコちゃんは、血色悪い舌をダランとクチバシから垂らし、白目を剥いてピクピクと痙攣し……末期の、いや熟睡している。
「おぅ…爆睡してるな、おぅ…おぉう」
鳥籠の覆いを被せ、彼が数度くぐもった声で呻く。
苦悩……といった感じか。
私は卓袱台の前に座り『何かキッカケ、キッカケ……何でも良い、一旦話し始めれたら…』と思考を巡らせる。
部屋の中を見渡し、頭を抱えた彼を一瞥し…最後に見付けたのはマグカップ。
やっちゃんが出勤前に何かを飲んだのだろう、卓袱台の中心にチョコンと置かれている。
何気なしにソレを見続ける、するとパズルのピースがはまったみたいに閃いた。

「ねぇ竜児、アレ飲みたい。ほら…何だっけ、ホットミルクに蜂蜜を入れたヤツ」
と、私に背を向けたままの彼に語りかける。
一番初めに『高須竜児』を意識した時、私は今みたいにココ…高須家の居間に居た。
ずぶ濡れの濡れ鼠みたいになって、冷えた身体を震わせてたっけ。
そんな時に竜児が飲ませてくれたのは蜂蜜が入ったホットミルク、妙に印象に残っていたのだ。
一時期はハマって、家で毎日飲んでた。
それは……私にとって『高須竜児』を連想させるモノの一つになったのだ、マグカップを見て閃いたのは、それをキッカケに行動に移そうという事。
「ん?あぁ…牛乳があれば、な」
口数少なめに彼が私の横を通って台所に向かい、冷蔵庫を開ける音がした。
私は卓袱台の上に乗せた手を見詰め、背後の気配を感じながら次に発すべき言葉を選ぶ。
『ありがとう』そう言った後に『美味しい』
これは鉄板、そして問題はそこから。
何でも良い、出始めの言葉から続けて自然な形で告白に移る。
重要な『出始め』をどうするか…。
何気ない一言が良いのか、想いを含ませるのが良いか、疲労した頭をフル回転させて考える。

文法を作っては消し、何度も何度も脳内で反復させて違和感が無いか確かめて、新たな単語に置き換えては繰り返す。
でも、答なんか見付からなくて……ふと疑問を感じる、作った言葉に想いを載せれるのか、と。
作り物なんか嫌だと散々に宣っておいて、重要な局面でソレに逃げるのは……矛盾を感じた。
仮面に隠された『亜美』を見てくれる彼に、ゴテゴテに飾った言葉を紡いでも、見てなんかくれない……そう気付いた。
なら…どうしよう、また出た所勝負?
それは、ちょっと…ね。
………素直に紡げば良いのかな。
『好き』
そう、変な言い回しなんかせずにストレートに……うん。そうだよね、緊張してガチガチに固まって、無理して背伸びしても駄目。
彼に受け入れて貰うのに、私が仮面を被ったままじゃ意味が無い。
全てを見てくれなくなるもん。よし決めた、亜美ちゃんは…素直になる。
「亜美、ほら熱いから火傷するなよ」
そう決意したのと同時に、彼が私の横に屈んでマグカップを手渡してくれた。
「ありがとう」
お礼を言って、彼が対面に座るのを見守る。
熱を冷やす為に数度静かに息を吹き掛けると、マグカップの中に白い波紋が広がる。

鼻孔をくすぐる甘く柔らかい香り、まずは一口ゆっくり口に含む。
口内に広がる甘い温もりを舌の上で転がし、優しい味を楽しむ。そして飲み込み、喉の渇きを潤し体内で広げる。
続けて、舐める様にチビチビと少しづつ味わい、フッと息を吐いてカップを唇から離す。
「やっぱり甘い…よ、美味しい。私が作っても、こんなに甘くならないんだよね」
降ろしたカップに視線を向けたままポツリと呟く。
「蜂蜜、少ししか入れてないぞ?もしかして入れ過ぎたか」
「ううん、ちょうど良いかな。あとね、竜児が作ってくれたから…甘いんだよ。だから凄く甘くて優しい味になるの」
そういう言い回しをしたのは、告白の下地を作るため。アドリブ…思いつくままに本心を紡いだ。
両手で包んだマグカップの側面を、人差し指の爪でカリカリ弱く掻いて、私は顔を上げる。
「今から大切な事、言うよ?お願い…最後まで聞いて?」
「お、おうっ。聞くっ、最後まで聞くぞ」
間髪を入れずに竜児が了承してくれた、私は優しく微笑んで彼をジッと見詰める。
とうとうこの瞬間を迎えるんだな…。ほんの数ヶ月前なら夢物語だと諦めていた光景。

ほんの少し勇気を振り絞って、素直に気持ちをぶつけてみたら……夢が現実に変わっていった。
「私さ…竜児が好き……好きで好きで大好きで堪らないよ。
想っただけで胸が優しい気持ちで満たされて、ポカポカ暖かくなる。
見詰められると素直になれて、もっと見て貰いたくなる……今より沢山、優しくして貰いたいよ」
さっきまで悩んでいた事なんて嘘みたいに、私の唇は震えながら想いを紡いでいく。
何を言おうか、そんな事なんて考える暇が無いくらい勝手に……。
「竜児と触れ合って、戯れて、気持ちが繋がって、楽しくて、嬉しくて、…幸せで、まだ見てない部分も見てみたい。
本当の私を愛してくれる人に見て貰いたい………竜児に見て欲しい、見せてもいいかなぁ?
私を竜児の一番にして、よ。やっちゃんでも、インコちゃんでも、大河でも、実乃梨ちゃんでも無く……たった一人だけの一番にして貰いたいよ」
それは、彼が私を想ってくれていると解っているからこそ紡げる。
絶対の信頼を寄せているから、懇願できるんだ。
「貴方の事が、ずっと好きでした。私と付き合って…くだ、さい」
と、私は『伝えたい言葉』を『言霊』にして彼へ贈る。

初夏の日に燻り始め、胸の内で燃え上がって衰えない恋心を……障壁を越えて、やっと紡げれた。
「……初めは、結構戸惑ったんだぞ、こう見えても。
聖夜祭の準備をしてて、亜美に想いを告げられて、その…誘われて。
…あの時から亜美に恋してたんだろうな、俺は…。
心の余裕が無くて気付けなかったし、櫛枝が好きだったから、考えを頭の隅にやって……気付かないフリをしてた」
私の告白から数泊を置いて、彼が語り始めた。
「心の奥底ではあの瞬間、お前に惚れちまったから俺は抱いたんだ…今になって考えると。
好きだって言ってくれた…色んな事から守ってくれて、辛い時に側に居て包んでくれて…嬉しくて、惹かれていったんだ。
自分の気持ちに嘘なんかつけなくなった。
俺は亜美の事が好きなんだって…」
竜児が語る言葉、それに偽りが無い…飾った言葉で無いのは迷い無い表情で理解出来た。
「自覚したら、もうお前しか見れなくなってた。あとはパズルのピースを填めていくみたいに、亜美が心を占めていった。
…けど全然足りない、まだ亜美を手に入れて無いから。亜美、好きだ……俺と付き合ってください」

彼が紡いでくれる言葉を全て聞き、私は顔が、全身が熱くなっていく。
だって……私が告白して、その返事なのかと思ったら……いつの間にか告白されてたんだもん。
……そうだよね、それが竜児の答なんだ。
横に並び立ってくれる、対等に歩みたいから……あえて返答じゃなく、告白し返してくれた。
「ぷっ…それじゃ答になってない、告白じゃんソレ。
でも嬉しい……だから答は"はい"だよ。
ふふふ、次は亜美ちゃんの告白の返事を頂戴?」
照れ隠しに、ちょっぴりからかって……肝心な言葉は返す。
「おぅ、俺の返事も"はい"だ。
……亜美、愛してるぞ」
「あ…」
卓袱台越しに身を乗り出した彼の両腕が、私の肩を包んで優しく引き寄せる。
倒れてしまいそうになったマグカップを慌てて持ち、そのまま動けなくなる。
胸がドキドキ、頭が沸騰してしまいそうな照れ、それは『愛してる』と言われたから。
緊張してマグカップから手を離せなくて、ギュッと握る。この両手で竜児を抱き返したいのに自由が利かない。
「う、うん」
震える声で返事し、しばらくの間は彼に抱かれるまま身動き出来ずにいた。

「わ、私も竜児を愛してる……誰よりも」
竜児の心地よい温もりに絆されていた。
身体がフワリと浮く様な恍惚感から我に帰った私は、慎重にマグカップから手を引き剥がして恐る恐る彼を抱き返す。
「っん、は…ち、ちょっと待って、ねっ?マグカップ…倒しちゃいそ、う……んんっ」
それを合図に彼が私の首に柔らかい唇をあてがう。もちろん、当てるだけで済む訳が無く軽く吸われる。
「お、おうっ!すまん」
竜児が私から離れて、軽く頭を下げる。
それをチラリと見ながら残ったホットミルクを一気に飲み干す。
熱い…ちょっと舌を火傷した、ヒリヒリする。
今さらだけどさ、私…凄く照れてるし緊張してる。まるで初めて触れ合った時のように。
潤した喉がすぐに渇いて、身体も頭も沸騰しておかしくなっちゃいそう。
それと、せっかく竜児が作ってくれたのに残すのは…嫌じゃん?
そんな要因が絡まりあって一気飲みなんてバカをやらかした、…ヤバいよ、キョドってないかな。
「ん、ご馳走さま。くすっ…竜児、続きしよっか?」
私は立ち上がり彼の側へ歩いていき、手を差し延べる。
「竜児の部屋に行こっ?」
「ああ」
彼も立ち上がり、私の手を引いて部屋へ向かう。

真っ暗な部屋の中へ入り、私は後手で襖を閉じる。
そして…お願いをしてみる。
「今日、亜美ちゃん帰りたくない。ずっと竜児と居たい………泊まっていってもいい?」
今までにも何度か『背伸び』はしてきた、程度に差はあっても、どれも私達にとっては初めての事でドキドキしていた。
今日は『彼氏と初お泊まり』という背伸びをしてみようかな…って、竜児が許してくれたらだけど。
「そりゃあ、俺だって一緒に居たいけど…。世話になってる親戚の人が心配しないか?」
と、竜児が聞いてくる。まあ修学旅行から帰った当日に泊まるとか言われたら、普通はそう言うよね。
「今日は居ないんだよ誰も、帰っても一人きりなの」
でも、何の考え無しには言ったりしない。今言ったように『泊まってもバレない事情』があるからお願いしたのだ。
「そうだったのか、…なら泊まっていけよ。一泊二日、三食付きで。
って待てよ、泰子が帰って来たらどう言い訳するかな」
「私が今、言った事をそのまま伝えたら良いんじゃない?
"彼女が一人きりで寂しそうだから泊めた"って」
「いやいやいや…ああ、…嘘付いてもバレるよな。仕方無い、それでいこう」

ほんの少しだけ迷ったが、彼はすぐに納得した。
私はガッツポーズし、同時に期待に心を躍らせる。
舞い上がってしまったの、嬉しくてね。
触れ合うだけじゃなく、彼と一夜を過ごせる、……何事にも代えがたい『御褒美』に。
だから電灯を灯そうとした竜児を制し、手を引いて畳の上に押し倒す。
「ってぇ」
「明りなんて良いからさ、…もう我慢出来ないもん、…ねっ?良いよね」
彼の腰の上に馬乗りになり、上体をグッと寄せる。両手首を力強く押さえ付けて…。
「ま、まあ待て…せめてベッドの中で、大家に文句を言われ………っ」
『その先は言わせない…、今は私だけ見ててよ』
そんな想いを込めて、竜児に唇を重ねる。
「んむ…ひゅうひぃ…んんっ、くちゅ」
顔を徐々にずらしながらグイグイと寄せる、閉じられた彼の唇を甘噛みして舌を這わせながら。
「ちゅ、ぱ、は…ふ。ん、ん、んう…っん」
唇の僅かな隙間を探り当て、一気に舌を口内へ潜らせると竜児が微かに震える。
甘く舌先で戯れるなんてしない、口内の奥へ奥へと舌を滑らせて絡めとる。
くちゅり、と舌同士が絡む水音が発つと……もう駄目。我慢出来なくて夢中で貪ってしまう。

私の中の『女性』が燻る、たった数日逢う事が出来なかっただけで…欲求に身を焦がされてしまっていた。
「ふ…あ、りゅ、うじぃ…触って……、あ、ふっぅ」
彼の拘束を解き、私は身を捩らせておねだりする。
竜児が上体を起して、私を抱き抱える。そして右手がリボンを解きに掛かる。左手はお尻に……。
「っ…あ、は、がっついちゃ…やぁ…っん!」
焦った手付きでブレザーとブラウスのボタンが外され、下着を押し上げられる。
「仕方無いだろ?ほら…久し振りだし」
そう言って竜児が胸に吸い付く、夢中でチュパチュパ…。赤ちゃんみたい。
「あっ…う…ふっ!ん、はっ!亜美ちゃんは、ひぅっ!逃げ、ないからぁ、あんっ!」
約四日振りだもんね。
もう私が宥めても、止まらないの…。そりゃあ私も…だけどさ。
乳首を甘く噛まれ、断続的に強く吸われて、舌先が躍る。
私の身体が快感で跳ねる、繋がった気持ちが生み出す情熱に焦がされて…発情していく。
「あっ、あっ…んんっ、んあっ!」
彼の頭を抱き締め、私は声を震わせて甘く鳴く。
お尻を揉まれ、指先が徐々に内太股へ伸びていくのを感じて、抱き締める両手に力が増していく。

でも、お尻の下から差し込んだ左手をそこから動かすのは自由が利かないみたい。
今度は……太股の間に右手が滑り込み、左手は肩口に。
「やぁっ…あ…あぁ…やっ、りゅ…う…ひぃ」
下着の上から人差し指が優しく縦になぞる。敏感な部分を始点にして、膣口が終点で、何度も何度も反復する。
下腹部に加わる淡く蕩ける微弱な痺れ、可愛がられる胸から伝わるのは強い快感の奔流。
脇の下を通った彼の左手が胸を揉みしだく。肌触りを確かめるように五指を埋めて、零れる柔肉の感触を楽しんでいる。
「ひあっ!?あぁっ…はぅ、はっ!はあ…はっ!あうっ!!」
カリッと竜児が乳首を噛む、一瞬だけ息が詰まり身体が跳ねる。
蕩けてしまいそうな刺激に酔う、徐々に汗ばんでいく肢体を彼の腰に絡ませて押し付ける。
思考が霞む…熱いの、お腹の中がジワジワと疼いていく、切なくて堪らない。
「ふっ!ふっ…うぅんっ!んう!は…」
彼の指が躍る下腹部をグイグイ押し付け、少しでも刺激を強めようと擦り付ける。
胸元に竜児が強く吸い付いてマーキングされると悦びが私を襲って、サカリのついた身体が腰を振らせる。
…発情した『亜美』が、そうさせる。

「焦らしちゃ…やぁ、我慢出来ないの、はあ…はあ、竜児ぃ…切ないよぅ…」
甘えた声で鳴いて、彼の気を引こうとする。
いやらしい……淫乱みたいに、竜児がそう躾たんだよ?
竜児が喜ぶから……見せてあげたくなる。だから隠さないもん。
「んんっ…あ♪…ふ、あ、あぁっ…」
下着の脇から忍び込んだ指先が秘部を撫でる。優しく優しく、指の腹がくすぐる。
気持ち良くてゾクゾクしちゃう…。
『もっと可愛がって』
そう切なそうに鳴き、身体を捩らせて彼に知らせる。
そして…もっと『姦る気』を出させようと行動にも移す。
右手を彼の下腹部に持っていき、ズボンの上から大きくなったおちんちんを揉み揉み…。
頬を寄せて、スリスリ擦り付け、耳元で甘く喘ぐの…。
竜児が微かに呻き、腰を震わせた。それが嬉しくて私は、愛情を込めて擦る。
密着した身体の隙間で互いの手が触れ、愛撫に精を出す。
「はあ…はあ…気持ち良い?んん…もっとして欲しい?」
「お、おうっ。気持ち良いぞ、は…」
衣擦れの音に交ざるのはベルトのバックルが奏でる金属音…、私の手が鳴らす。カチャカチャってね。

「ん?ふふ、竜児…ヤル気満々だぁ。凄く熱い…」
彼と横向きに寝転がり、チャックを下げて下着の中へ手を忍ばせる。
同時に竜児は私の下着を脱がせ……敏感な部分を摘む。
「は…ぁん、ひあっ、あっ!」
愛液を纏わせた指が揉むように摘んで転がす、時折弾かれて小刻みに擦られる。
私は腕枕して貰った頭を彼の顔に近付け、舌舐めずりして唇に吸い付く。
「んっ…ふ…あふ、ちゅぷ、ぴちゃ、…あは…っ!」
すぐに受け入れてくれた彼が絡ませる舌が、私の口内を蹂躙していく、唾液を贈られ咀嚼すると堪らなくなる。
敏感なクリトリスを…いじめられて、秘部が蕩ける。トロントロンにほぐされ、熱く、強烈な痺れを伴って疼く。
息継ぎをしようとしても、重ねた唇を離す暇を与えられない。
ううん、忘れてしまう。むしろ…離したくない…かな?
でも竜児の方が先に根をあげちゃった…残念。
私は親指の腹でおちんちんの先を優しく擦って、薬指と人差し指で作った輪で緩く扱く。
可愛い『やんちゃ竜児』と遊んであげてるんだ。
「んんっ。はっ…はっ、は…う、ひっ!ひあぁあ…」
刺激をいくら与えられても満たされない、より焦れて、燻って、疼く。

期待に心踊らせ、溢れる愛液……それを竜児がわざと鳴らす、くちゅくちゅ…って。
羞恥を感じても、私の気持ちとは裏腹に…彼が愛撫しやすいように………勝手に足が開いていく。
焦らすように膣口を人差し指と中指で撫でられ、ほんの少し挿入ては抜かれ、緩やかな抽送が続く。
「あっ、あっ…くふっ!ふ、うぅん…んあっあ…」
それでも刺激に飢えた私には充分で…。発情した喘ぎを漏らしながら足で彼の身体を引き寄せ、彼の指先に秘部を擦り付けて慰める。
逆手で握ったおちんちんの根元を搾るように扱く。速く、強く…遅く、優しく。不規則に…。手の平の中で揉みしだきながら。
「くっう…亜美、も、もっと優しくし、てくれ……少し痛い」
竜児が私にそう伝えてきた、夢中になってて気付かなかった…。
「んん…、じゃあ…こういう風にしたら……痛くない、よね?ん…」
そう言いつつ、私は手の平を自分の口元へ…。
そう。口内に溢れた唾液を使えば…痛くないよね?
そして唾液を纏わせた手の平を、再び下腹部へ。
お詫びに『イイコト』してあげる。
「ふっ!うぅ…、はっ!」
拳を緩く握って、親指と人差し指で作った輪の中へゆっくりゆっくり『挿入て』あげるの。

ふふっ♪竜児の大好きな、エッチぃ事だよ…。ほらほらぁ…。
おちんちんの頭をヌルヌルな手の平の中で揉みながら締め付ける。
竜児が腰を震わせる、少し息も絶え絶えで…すっごく気持ち良いんだ?
「ひあっ!あっ!あんっ!ん、うぅ…あひっ!」
でも竜児も負けてない、人差し指と中指を根元まで膣内に挿入て、私を啼かせる。
こうして二人で戯れ合うと自然と笑みが零れる……悦びの笑みが。
顔を真っ赤にした私達はクスクス笑いながら、互いの鼻先でも戯れ合う。
「亜美ぃ…で、出そう、……っ?」
男の子って『溜まる』んだよね、数日間『出してない』だけで我慢が利かなくなる…。
それを処女の頃から知識としては知ってはいた、そして竜児と触れ合う内に理解を深めた。
「だぁめ、竜児は亜美ちゃんをちゃんと可愛がってくれないもん、だ・か・ら…まだ出させて あ・げ・な・い」
達してしまいそうになって、愛撫がおざなりになった彼に意地悪してみる。
「それに"もったいない"じゃん、手でイッちゃったら……ぷぷっ。男ならこれくらい我慢出来るよねぇ〜。
ねぇ、り・ゅ・う・じぃ〜?」

彼をニヤリと見やり、私は仕返ししてみる。
「ひでぇ…、亜美よ、それは男にとって生き地獄なんだ、解るか?頼む、俺を解き放て」
そう冗談まじりに、でもしっかり不満を漏らす彼を見て私は気付く。
『口ほどには気にしてない』
そう勘付いてしまう、天邪鬼な私はそんな姿を見たら、もっといじめてみたくなる。
「ふぅん…じゃあ、こうしよっかぁ?
あと三分、我慢出来たら出させてあげるよ。
でも我慢出来なかった……亜美ちゃんが満足するまで寝かせない、どう?」
まあ…嘘だけど、竜児が嫌がる事はしたくないし。
こう言ったら、竜児がまた愛撫に熱を込めてくれるかな…って考えて言ってみただけ。
「おぅ…、どっちに転んでも俺が得するような………、亜美、分かった。三分耐えたらいいんだな?」
うんうん、そうだよね〜我慢出来ないよね。仕方無いなぁ、亜美ちゃんは天使みたいに優しいから今回は許して……って
………………あれぇ?

「九時半前だな、…三十分になったら始めてくれ」
壁掛け時計の蛍光塗料で淡く光る分針をチラリと見た彼が、私にそう言った。
「う、うん…任せといて」
私は、自分の予想とは違う展開に戸惑っていた。
竜児に意地悪するつもりで言っただけなのに、なんか凄い乗り気でさ…。
言い出しっぺな私は否定する事が出来ずに困ってしまう。
……本当は甘々な戯れ合いをしたいのに…数分前の自分の浅はかな行動を後悔する。
仕方無い、なら主導権を握られる前に前述通りに『イかせればいい』
『絶対にイかせてみせる』
どうでもいい些細な事ではあるけど、ちょっとした対抗心みたいなものが生まれる。
私は彼の横顔をジッと見詰め、再び舌舐めずりする。
愛くるしいチワワだって犬なんだよ、解る?御先祖様は狼……狩ってあげる。
「……覚悟しなよ?亜美ちゃんが"一分掛からずに一滴残さず搾取ってあげる"泣いちゃっても知らないんだから…」
分針が九時半を差す直前、挑戦的な笑みを浮かべて彼の腕の中から抜け出る。

そして彼の足の間に割って入り、正座する。
続いて上体を前のめりに倒し、下腹部に顔を埋めていく。

だが、おちんちんの先が鼻先に触れるくらいの距離で停止し、彼の反応をチラリと伺う。
起こる筈の快感が来ない事に、焦れた様子を見せる竜児を上目遣いで観察。
竜児も顔を上げて私を覗き込む、あはっ…先が読めないでしょ?
言っとくけどマジだよ、一分は言い過ぎだけど三分以内なら…自信がある。
私は舌先に唾液を絡め、唇に含ませる。
「うおっ!?」
舌を僅かに唇から覗かせて、ゆっくり顔を近付けていく。
そして舌先がおちんちんの先に触れると同時に、窄ませた唇を引っ掛けながら一気に根元まで呑んであげるの。
手加減なんかしてあげない、強く吸い付きながらパクッ…ってね。
「ちゅぶっ!ちゅっ、ぷっ!!んん…、ちゅばっ!」
上顎に擦り付け、唾液を絡ませた舌でねっとりしゃぶり回す。
すると竜児がビクッビクッて跳ねるの、抑えれずに、洩れる喘ぎからして…だいぶ『良い』みたい。
「ぴちゃ!ぴちゃっ…ちゅっばっ!ちゅっば!!」
おちんちんの頭から根元まで速く、激しく、私は髪を左手で押さえて口内へ抽送し続ける。
右手は根元付近をシコシコ…親指と中指の輪で絞りながら、漏れる先走りを啜る。

「ちゅくっ、ちゅっ!ちゅっっっ!!ちゅぶっ!!!」
おちんちんの先を舌先で抉り、裏筋、頭の下は小刻みに…力強くしゃぶる。
竜児は弱いんだ…コレ。
目一杯吸って、擦って、唇と指で締め上げる、キュ〜ッて……。
唾液でヌルンヌルン…、暖かくて柔らかい舌と口内で堪らなくさせる。
早くも竜児の腰がガクガクしてて、おちんちんをさっきからビクッビクッ!って暴れさせてジワジワ溢れさせてるし……先走り。
射精ちゃいそうなんだぁ、ふぅん。
でも、まだ一分も経ってないよ?
溜まってるから?
あは…ウソだぁ、ギリギリまでイジメたげる。
『意地悪でしてるんじゃないんだから、大好きな竜児に気持ち良くなって欲しいから、亜美ちゃん頑張ってるんだよ、ねっ?』
「う!あ!あ、亜美ぃっ……!!」
愛情と加虐、それらの意味を含めた上目遣いで竜児を見詰めながら抽送に熱を込める。
それでも彼は耐える、勝ち負けでは無く、この快感を少しでも永く感じたくて…なんとなくだけど、そういう風に見えた。
じゃあ…御褒美。
亜美ちゃんはさっき貰ったから、次は竜児の番。

「ちゅっ!ちゅっっっくっ!!ちゅうぅっっっ!!」
おちんちんの頭を咥えて、唇で甘噛みしながら扱く。舌でねっとりねぶり、強く吸ってあげる。
竜児が身体を跳ねさせ、切なそうに啼く。
もう限界なのだろう、締めた根元が膨張し指を押し返そうとする、暴れながら…。
だが私は指の力を緩めない。それでもジワジワ染み出る先走り、ううん……竜児のミルクを唾液と共に咀嚼し、責め続ける。
「はむっ、ちゅぷっ!ちゅぷ、ちゅっぷ!!んふ♪んっ!ぐぽっ」
左手でタマタマを揉み揉み、舌で敏感な部分をぬちねち責め、強く吸引して激しく抽送。
容赦無く、そして愛情たっぷりの求愛を贈る。
「っは!っく…ふ!あうっ!う、あ、亜美っ!!も、もう…やめ…」
彼が苦しそうに私の名を呼び、身を捩って悶える。
その様を見たら、射させてあげたくなる。
てか…これ以上は可哀相だし、時間切れになりそう。
私は締めた指をパッと離して、素早くおちんちんの先を舌で弾き、甘く吸い付く。
「っん!…は、はあ!はあっ…はっ!」
「っ…ふ…、ふ…あ、んんっ、ちゅっ、ちゅっ」
すると竜児が私に腰を押し付けて、口内へ熱いミルクを吐き出す。

舌を丸めて表面でソレを受け止め、短い間隔で優しく抽送する。甘く吸い、彼が全てを出しきるまで愛撫を止めない。
「ん、んっ…。あ…む、ちゅる…」
達して敏感になった彼には、そんな弱い愛撫ですら強い快感らしく、気持ち良さそうな声を洩らしている。
出す物が無くなってもヒクヒクと痙攣し続けるおちんちんを最後に一回、優しく口付けしてから口を離す。
私は身体を起し、乱れ髪を手櫛した。
噎返る様な熱くて濃ゆい竜児のミルク…。私は口元を手で隠して唾液と一緒に咀嚼する。
…愛しい彼の精液を飲み込む様子を見せつける。
「んくっ…、っふ…。竜児ぃ…早すぎなんですけどぉ〜、ぷぷっ」
喉に絡み付く精液に噎せそうになった、が、軽く咳払いすると楽になる。
一拍置いて惚けた表情の彼をからかい、指先で脇腹をつつく。
「あのなぁ……あんなに激しくされたら我慢出来る訳ねぇだろ、それに、だ…溜まってたら誰だって堪えれないんだし……」
右腕で目元を隠して竜児が言い訳する。
「はいはい、竜児は頑張りまちたねぇ〜亜美ちゃんが褒めてあげる、よしよしぃ☆」

普段は落ち着いている彼が見せた幼い一面、可愛いな…って想う自分がいた。
咎められて慌てる子供みたいな彼を情けないとは思わない。
むしろ母性がくすぐられる。
だから彼の側に座って膝枕してあげる。
からかい半分、ときめく胸の鼓動を隠して猫撫声で竜児の頭を撫でるの。
「ま…亜美ちゃんが本気になったらこんなもんだわ。ふふ♪ねぇどうだった、気持ち良かった?」
と、私は竜児に聞いてみる。
「…半端無く。おぅ、前から思ってたけど亜美って、かなりエロいよな……ってぇ」
続けて何かを言おうとした彼の額にでこピンを喰らわして黙らせる、そして両手で頬を寄せて撫でる。
「そういう時は愛情が深いって言うのよ。分かった?ほれほれ」
両手で挟み込んだ頬をグリグリ、円を描く様に弄ぶ。
彼に言われた事は図星、ちょっぴり恥かしいから、誤魔化しついでに八つ当たりしてみた訳だ。
「わかっひゃ、わかっひゃから止めてふりぇ」
竜児が笑いを堪えながらそう言ったので、私は両手をパッと離して次のステップに進む事にした。
「はいよ。じゃあ次は竜児が頑張る番ね、よいしょ…」

私は膝から彼の頭を退して慎重に降ろす、そして寝転がったままの彼に伝える。
「舐めて…」
竜児の頭の上を跨いで膝立ちの私はスカートを指で摘んでたくしあげ、甘えた声でせがむ。
「あ…」
彼に腰を掴まれグッと引き寄せられる。秘部に当たる暖かい吐息…くすぐったい、期待で胸がドキドキしてる。
「ふあっ…、あ。は…」
彼の顔に乗ってしまわないように気を付けながら、たくしあげたスカートから指を離す。
それを合図に竜児の舌がクリトリスに触れた。瞬間、蕩けるような甘い刺激に腰が跳ねる。
「あっ、あん、ひあっ、はあ…は…、あふっ!」
暖かい舌先で小刻みに敏感な部分を転がされ、その毎に私の身体が跳ねる。
燻ったままの火種が燃え上がる。疼きが切なさに変わって堪らなくなっていく。
焦らすように唇で優しく啄まれ、私は秘部を竜児に擦り付けておねだり。
すると彼がクリトリスを吸ってくれる…腰砕けになりそうな快感が背筋を走っていく。
「あっ!!ああっ!!んうぅ……!!」
甘く吸われながらねぶられ、刺激に身を捩らせ、…お腹の中がキュンと痺れる。
思考を蕩けさせる電流に背筋が反り虜になって…酔わされる。

「あふっ…っ!!ふっ、んんっ!!……ひうっ!?や…、あっん!!」
私を貪り続ける竜児が、先程のお返しと言わんばかりに責め立てる。
強く強く吸引され、弾くように小刻みな舌遣いでねぶられる。
ゾクゾクした歓喜の震えが止まらず、腰が引けてしまいそうになる。
「ん、んう…、ふっあっ!!あ、ああっ!!っ…ひあん!!」
でも逃れられない…、私の腰を掴んだ彼からは。
だから私は恭順する、竜児にされるまま秘部を口で溶かされる。
彼の丁寧な舌遣いに淫され、荒々しく吸われて悦ぶ。
私は『キモチイイ』と伝えたくて秘部を擦り付け必死に求愛、甘い啼き声で彼を誘う。
「やあぁあっ…っあ!!りゅうじぃ!りゅうじぃっ!!」
一旦、燃え上がった欲求は鎮火しない、より勢いを増して少しでも愛撫を味わおうと貪欲にさせる。
彼の舌や唇はもちろん、鼻息ですら自身の欲望を満たす糧にしろと本能を揺すぶる…。
それは物理的要素も、だが、心理的要素という意味でも、だ。
『亜美ちゃん、竜児の顔の上に乗っちゃってる。
恥かしい所を舐められて、吸われて…凄く気持ち良いよぅ。
やだ…エッチな匂いを嗅がないで。恥かしい、でも止めないで…』

蕩け、酸欠気味の頭が思考するのは…そんな事ばかり。
「あんっ!!んんっ、んっ、っ!………きゃふぅっ!!」
そして、それらの要因が絡まりあって、私は軽く達してしまう…。「はっ!はあ…っはあ…んう。あはぁ…」
畳に両手をついて、震えの止まらない身体を支える。
視界が白く融け、ジンジンと耳鳴りがした。
恍惚感に包まれ、頬の筋肉が弛緩する。
熱くなった『亜美の女の部分』が痙攣して、微弱な電流を全身に巡らせていた。
そして『竜児』が足らなくて寂しそうにキュン…って縮まって、泣いている。
『まだ欲しいよ…』
と…。
「あ、亜美…苦し、い…」
「ん…んん」
敏感になった身体には、微かな吐息すら心地よい刺激をもたらす。
…いや、待て竜児は何て言った?…苦しい?
息も絶え絶えな声を聞き、惚けていた私は我に帰った。
彼が私の太股を弱々しく叩いている、なら取るべき行動は一つしかない。
「ご、ごめん、大丈夫?」
私は彼の顔の上から退く、どうも達した後にお尻で顔面…塞いじゃったみたい…。
「お、おぉうっ…。息が出来るって素晴らしい」
ガバッと起き上がった竜児が深呼吸し、首を鳴らす。

「いやぁ〜凄かったぞ、途中から亜美が顔にアソコを押し付けてきて酸欠になりそうだった」
苦笑し私をチラリと見やった竜児を咎める事は出来ない。
私には羞恥を隠したくて顔を伏せる事だけしか…。
「う…、だって気持ち良かったんだもん」
「だろうな、凄く濡れてたし……口の周りまでお前の………ぐはっ!」
恥かしさ、照れ…。それらを隠したくて竜児の脇腹を手刀で突く、少し強めに。
「ふふっ♪可愛い彼女にイジメしちゃ ダ・メ・だ・ぞ?」
気を抜いていた彼は、予期せぬ反撃を喰らって脇腹を手で押さえる。
「好きな娘はイジメたくなるだろ?…亜美が可愛いくなるから、な…」
と、顔を真っ赤にしてボソボソ呟く竜児。
「亜美ちゃんは何もしなくても犯罪レベルじゃねってくらい超々可愛いし。きゃは♪」
私は笑いながら冗談ぽく言った後、彼を背後から抱き締める。
彼の首の横を通って胸の前で交差させた腕をダランと垂らし、耳元で優しく聞いてみる。
「竜児は、亜美ちゃんを……もっとイジメてみたい?」
彼がピクッと耳を動かしたのが、寄せた頬に伝わる。

「…したいな、いや、する。亜美…来いよ」
「んう…」
彼が立ち上がり私を引き寄せて、抱き上げてくれた。
背中と膝裏に腕が触れたと思ったら、フワリとした浮遊感。
私は声を出す事すら出来ず、竜児の腕の中で身体を縮こませる。
……お姫様抱っこ、女なら誰でも一度は憧れる抱かれ方。
それは私も例外では無く……高鳴る胸の鼓動を抑えれる事なんて無理。
彼が一歩歩く毎に身体が揺れる、私は彼にしがみついて震えてみせる。
竜児の庇護を受けたくて、優しく抱いて欲しくて甘える姿を晒す。
そしてベッドに寝かし付けられ、瞬く間に制服を剥れる。丁寧に…でも焦りを見せつつ。
早く繋がりたいんだ、私も竜児も。
だから私も彼の制服を脱がすのを手伝う。
ボタンを外す、肩から袖を滑らせる……もう慣れちゃった、何回もこうして脱がしあっていると。
彼が私の両膝を手で割って左右に広げ、腰を密着させる。秘部を熱い『竜児』が優しく擦る。
「ふ…、は、あ…、は…」
竜児が右手でおちんちんを持って秘部に頭を擦り付けてくる、それを私は僅かな喘ぎで返し、甘く疼く身体を捩らせる。

同時に彼の左手は枕の下に隠したコンドームを探している。
自分でも何個かは持っていたい、竜児がそう言ったのが修学旅行の前夜。
ほら前日に言われたから、実はちょっとだけ………期待していた。
修学旅行中に一回くらいはするのかなって……考えてた、それはナイショにしておく。
まあ、機会なんて無かったけどさ。
そう考えている内に、ゴムを着けた彼が膣におちんちんをあてがう。
「挿入るぞ」
「うん、来て?」
そう答えると膣口に圧迫感を感じて、すぐに押し拡げられる感覚がした。
「んん…んぁ、は…う」
閉じられた膣内を擦り、ゆっくり掻き分けて挿入ってくる快感は、甘い痺れを伴って全身を巡る。
被膜越しでも伝わる質量と熱、それは太くて、硬くて、熱い…。
「りゅうじぃ…」
性という名の奔流に、理性の堰は押し流されて……私は溺れる。
竜児が浅い呼吸で、膣の柔らかさを味わう様に進んで…火傷しそうな高熱を以て私を溶かす。
「ひあ、あ…、ん、あう」
私が全てを受け入れると、彼に一回突き上げられて甘い吐息を洩らす。
奥を打たれる刺激、彼に覚えさせられた『竜児の味』だ。切なさが霧散する。そして、またすぐに戻ってくる。

「あ、は…ぁ。んぅ、ん。んん」
ゆっくり引き抜くと、張り出しに掻かれる。元気いっぱいに反り返ったおちんちんを押し込まれると、膣内の敏感な場所が擦れて堪らない。
ゆっくりゆっくり均す様に優しく…腰が蕩ける浮遊感に絆される。
竜児が私の膝頭を持って左右に大きく開脚させ、より奥へ突進む。
「はっ!は…ぁあ!ひぅっ!」
緩慢な抽送が続く、奥へ届く一瞬だけ力強く腰を打ち付けて、グリッと大きく円を描く様に抉る。
私は身体を跳ねさせ、腰をクイクイッと擦り付けてサカる。
「亜美。腰が動いてるぞ……気持ち良いか?」
膣奥を抉り続けながら彼が問う。
「う…ん、ねぇ…ギュッて抱き締めて欲しいな」
私は両手を広げてねだる。そう、甘えん坊になってしまう…。
彼が身体を倒して、背中の下に両手を潜らせて強く抱き締めてくれる。
私も抱き付き、腰に足を絡ませて寄せる、こうすると彼の体重が掛かった腰への負担が減る、そして何より落ち着く。
大きくて暖かい竜児に抱かれて、守られている気持ちになるんだ…。
「亜美って、抱き付くのが好きだよなあ。俺としては動き難い…」
と、彼が言った。私は彼と額を合わせ、ジッと見詰めて教えてあげるの。

「良いじゃん、男は細かい事を気にしちゃ駄目よ。…こうしてたら暖かいし、気持ち良いもん。竜児と繋がってるって実感出来るから」
「おぅ。分かったよ、じゃあ続きするからな」
言葉の上では淡々と、でも愛情は目一杯載せて紡いでくれた彼への返事は、抱き付く力を強める事で返す。
「あはぁ…、あ、あぁ。はっ…ん」
抽送は短く緩やかに、熱を帯びた身体を蕩けさせていく甘い甘い痺れ。
視界も思考もトロンと融解していく…。彼の首筋に頬を寄せて温もりを共有する。
「う…あ、あっ!あぁっ…あっ!あんっ!」
彼の抽送の勢いが速まっていき、突き上げられる力が強まる…。
おちんちんが奥を抉る。膣内を擦りながら拡げて暴れ回り、私のお腹から伝わる疼きは電流に変わる。
その痺れる電流は腰から背中を渡り、全身へと拡散していき…力が入らなくなる。
「あっ!りゅうじぃっ!と、蕩けちゃうよぅ…、はっ!はっ!はふっ!!」
彼を受け止める膣肉は離したくないと言わんばかりにキュッと締めて、美味しそうにしゃぶり付いてる。
膣内でおちんちんがビクッと跳ねて、硬さを増し…女の部分を荒々しく叩く。

「はっ!腰…抜けそ、う…気持ち良い!」
彼が私を揺さぶりながら耳元で呟く。
そして荒々しく抽送して私を乱れさせる。
奥にガツガツ打ち付けられ、私は甲高く啼いて嫌々する様に頭を左右に振る。
「やあぁっ!!やっ!ああぁっっ!!ら、めぇえっ……壊れちゃうっ!!あんっ!!」
そんな彼の愛情が籠った乱打が嬉しくて、発情したチワワはキャンキャン啼きながら腰を振って甘えてしまう。
サカリのついた犬みたいにお尻をフリフリ…気持ち良い場所に当たるように擦り付けて、
咥え込んだおちんちんを柔肉で揉み、吸い付いて、キュウゥッッと締め上げる。
『勝手に腰が動いちゃう…気持ち良くて止まらないよぅ』

フワフワと心地良く翔んでいるような快感が堪らない、だから彼の身体の下で甘えて夢中でおねだり。
「んむ!あっふ、ちゅっ!ちゅくっ!んんっ!!」
背中から後頭部に回された彼の手が私を抱き寄せ、近付いてきた唇が重なる。
私は彼の舌を甘噛みして受け入れる。贈られる唾液を啜り、絡め取って、今度は自分の唾液を彼に含ませる。
お腹の中がジンジンと痺れて、高まっていく欲求に焦がされる。汗ばんだ肢体を寄せ合い、互いの熱を貪って喘ぐ。

「…あ!ふっ!…んう、あうっ!!」
グッと彼が私を引き寄せ、身体を抱き起こして下から貫く。
胡座をかいた彼の上に私がしがみついてる格好になって、お尻を掴まれて荒々しく突き上げられる……。
自重も合わさり、子宮を押し潰されそうになる圧迫は私を酔わせ、淫らにしていく。
「はあっ、はっ!はっ!!は…!りゅ、う…じぃっ!くふぅっっ!!」
彼にしがみついて腰を振る。そう、一緒に躍る。
膣肉でおちんちんを絡め取り、もっと突いて、もっと可愛がって、と求愛するの。
「亜美っ!う…あ、すげ…ぇ!ふ…止まんねぇっ」
そう言って彼は更に強く、激しく抽送する。
お腹の中…子宮に打ち付られる気持ち良さに背筋が反る、一打毎にズンと響く雷撃が絶えず襲う。
身体の芯まで痺れる快感が堪らなくて、乱れた呼吸で腰をガクガクさせて…貪るのに夢中。
今の私はだらしなくトロンと蕩けた表情をしているだろう。
それを竜児に見られていると思うと、興奮して気持ちが高ぶっていく。
『発情した女の顔』を見て、竜児がおちんちんを硬くして求めてくれているから…。
だから泣いて、啼いて、隠さずに晒け出す。大好きな竜児に見せてあげる。

「ひゃうっ!!あんっ!あんっ!!ら、めぇっ!らめ…らめっ!!イッちゃう!!あみちゃんっイッちゃうよぅう!」
頭の中でチリチリと何かが爆ぜる音がする…、ギュッと閉じた瞳が見ているのは白い光がストロボを焚いたようにチカチカしている光景。
おちんちんに擦られて膣が熱く痺れ、ノックされ続けて震えが絶えず襲う。
達する直前の切なさと疼きに身悶えし、甲高く啼いて懇願する…『イかせて』と…。
「はっ!はっ!!お、おうっ!!イッちまえよ!!くっ!」
「ああっっっっ!!!!」
竜児が前後に私の身体を揺する、子宮をグリグリって……擦って掻く。新たに加えられた刺激に私は耐えきれなくなり…絶頂を迎える。

身体が蚤のように縮こまる感覚、強烈な電流が高熱を伴って全身を駆けていく。
筋肉がビクッと硬直し、捕らえどころの無い何かが爆散し目の前が白一色に染まって息が出来なくなる。
強い耳鳴りで無声、無音の世界で私は翔んでいた…。
それが数秒なのか数分なのか…時間の感覚も麻痺していて解らないけど、短く、永く、フワリフワリ真っ白な場所を漂う。
「………っ!…はっ!はっ…ぁ!んあ…ぁ、はあ…!」

耳鳴りが徐々に鳴り止む、それと同時に私の胎内を再び襲う甘く疼く刺激…。
それは…おちんちんが精液を吐き出す脈動。これ以上無い程に膨張してビクンビクン…達したばかりで敏感な膣肉を縦横無尽に叩いて暴れながら達している。
薄膜越しに感じる灼熱の飛沫と、子宮に押し当てられたおちんちんの頭が擦れる快感を受け、弛緩し始めた筋肉がまた一瞬硬直し、すぐにほぐれる。
「ん、ん、んぅ……!は…!あふぅ……」
バカになって動く事を止めない腰が惰性でゆっくり振られ、
膣肉で揉みしだきながら彼の精液を一滴も残さないと……搾取っている。
私は竜児の後頭部を撫で、首筋に軽く噛付く、一ヶ所…二ヶ所……。
『竜児は亜美ちゃんのだから……盗らないで』
見えない誰かに示唆する為にマーキングを彼に残していく。
その獣染みた情愛は私の求愛の証。
甘く心地よい余韻に耽り、ほてった身体の熱を冷ましながら、私は幸せな温もりを甘受する……。
「亜美、こっちを向けよ」
「ん、……あ」
フェイドアウトしていく白い世界の中、惚けていた私に彼が後戯をしてくれる。
「涎が出てる…綺麗にしてやるよ」

そう呟いて私の頭を腕で支え、朱の差した頬をした竜児が私の顎を舐める。
「んんっ。くすぐっ、た…い。んあ…」
顎、唇、頬、子犬が戯れるように舌が熱を残して滑っていく。
熱はすぐに気化し、冷たくなって…違う場所に軌跡を残す。
緩めていた両腕で再び彼を抱き締め、愛情表現に胸を躍らせる。
『どうしよう………また欲しくなってきた』
冷め始めていた本能に再度火が灯されて、ほてっていく…。
...
..
.
竜児の愛情が籠ったスキンシップが終わり、私は掛布団の中で優しく抱かれていた。
仰向けになった彼に抱き付き、腕枕されて……背中に回された左手が私を引き寄せていた。
ちょっとだけ…感じた『男らしさ』
今日の竜児は…強くて、惚れ惚れする程にカッコいい。
まあ…惚気なんだけどね。
狭いシングルベッドだからこそ、竜児を近くに感じれる。それは私にとって至上の喜び。なんだか……照れる。
そんな浮ついた事を考えているのは、きっと…私のサカリが収まっていないから。
優しい後戯を貰って燻り続ける欲求。それを太股をモジモジ擦り合わせて我慢している。
「風呂でも入るか、汗かいたし。流石に疲れた…早く寝たい」

と、竜児が私に洩らす。
まあ…二回も射せば疲れるよね。
でも私はまだ満足してないんだよ。ね?
「んふふ、竜児ぃ何言ってんのよ、さっき言った事、忘れちゃった訳?ん〜?」
良かった『保険』を掛けておいて…。
私は彼の身体にゆっくり馬乗りになって甘く囁く。
彼の頭の横についた両手で身体を支え、顔を覗き込み…微笑んであげるの。
「ん…、何か言っ、……おうっ!」
何かを言い掛け、すぐに思い出す。竜児の頭上で豆電球が光ったような錯覚を覚えた。いつの時代だよ…。
「まあ待て亜美、そんな急には無理だ。少し時間を置こう、すぐには勃たねぇよ。……おぉっ!?」
落ち着け、と、私を説得しようとする彼を黙らせる。
萎縮したおちんちんの上にお尻を乗せて、前後にスリスリ…。濡れたままの秘部を押し付けておねだり。
「大丈夫、すぐ元気にしてあげるから………んう」
発情した私は息を乱して愛撫する、何回も何回も…。
「あ…、ほら勃きてきたよ?ん、んん…」
すると竜が眼を醒まし始める。ちょっとづつ堅さを取り戻して熱くなっていく。
「亜美ちゃんは、まだまだ満足してねぇし……」

緩慢な腰遣いは段々と速くなって…クイックイッとエッチな動きに変わる。
おちんちんの裏筋にクリトリスを擦り付けて圧迫し、快楽に絆されて私は『女』から『雌』に戻っていく。
「何回出来るかなぁ……、竜児が何も射せなくなるまでしてみよっか♪
……寝かせない」
私は淫美な笑みを浮かべながら腰を持ち上げ………熱く脈打つおちんちんを、柔らかくほぐれた膣の中へ埋めていく…。

「ふぅっ…!っあ!はっ!はぁっ!あっ!!あっ!!」
もう何回目の契りだろうか?
四回…いや五回目か、数えている訳じゃないから、ハッキリとはしないけど確かそのくらい。
私は竜児の身体に馬乗りし、腰を前後に揺すって甘えていた。
しっかり繋がれた右手を握り返し、汗ばんだ肢体と乱れた髪を躍らせて…舞う。
膣の奥に食い込むように当てたおちんちんをグリグリ、惚けてしまう甘い痺れ。
「あはぁ…あ!ふ…!りゅうじぃ…気持ち……良い、よぅ…!」
根元まで埋めた彼で擦って、掻き回して、悦びに満ちた啼き声を漏らして貪る。
愛しい彼と共有する濃密な時間、甘く蕩ける快感に囚われてしまい……交わり続ける。
「んんっ!はあぅっ!!っう!」
円を描く様に腰を捩らせると加わる新たな刺激、それは熱を帯びて感覚が麻痺しかけた女の部分に鋭い電流を巡らせる。
「あっ!あふ、ぅ!!あぅ!ふぅっ!ふっ!……も、もうちょっとでぇ……イ、きそ…う!」
「うあっっ…っ!あ、亜美ぃ…」
それは発情した私にとって堪らない御褒美、気持ち良くて、切なくて、腰遣いは激しくなっていく。

覚えてしまった絶頂の味を忘れるなんて無理、あの心地良い浮遊感、脱力感が欲しくて求めてしまう。
キシキシとベッドが軋む音、はしたない水音、私と竜児の喘ぎ…。
それらの音は徐々に心拍と耳鳴りで聞こえなくなっていき、右手の親指に歯を立てて快楽の波間を漂う。
「あん…っ!あっ!!あ…ひっ!あっ!!あんっっっ!!!!」
そして上り詰めてしまう。真っ白な光が爆て、無音の世界で翔ぶ。
体温が上昇し、血液が沸き上がって…一気に冷めていく感覚。ブルッと身震いして、心地良い脱力感で惚ける。
「はっ!はあはあ…!っんく…ぅ!ん、あ…」
ガクガクと身体を震わせ、腰砕けになっても惰性で動いてしまう。
雌になっている私は、貪欲に精を求める。
避妊具を介してでも良い、彼との逢瀬の記憶を身体が欲していた。
「あは…竜児のおちんちん…凄いビクンビクンしてるよ?んう…気持ち良い?」
遅れて彼も達する。最後の一滴まで精液を射そうと暴れる、膣奥に押し当てたおちんちんの頭は変わらず元気いっぱい…。
膣内で敏感になった女の部分を弾いて、なぞって…悪戯ばかりする。……おしおきしなきゃ駄目だね。

「く、うぅ……、うあっ…あ、あ…」
彼のお腹に両手を乗せて、膣でギュッと締め付けて、ゆっくり腰を上げていく。
彼の弱々しい啼声に加虐心をくすぐられ、ゾクゾクとした高揚感が私を酔わせる。
「んふ♪…ふ、あ」
抜け出る寸前で止め、再び根元まで埋める。
ジン…と痛みにも似た強く甘い疼きに身体を震わせて、ふっ、と短く吐息を洩らす。
こうして互いの敏感になった部分を余韻を味わうように慰めて、後戯の代わりにする。
それは『おしおき』の名を借りた愛情表現。
ただ一度きりの意地悪なスキンシップ…。
私は彼の横に寝転がり、ギュッと抱き付く。
『熱が冷めるまで抱き合って、少しでも永く余韻を感じていたい』
そんな想いを竜児の胸に頬を擦り寄せて伝える。幸せな気持ちと共に…。
「あは…流石に疲れたね。私、身体に力入らない。今日だけで何キロか痩せた自信があるわ」
「お、おう…。確かにな。もう何も出ねぇ、残ってない。ふぅ…下手な運動より痩せれるぞ、コレは」
二人してグッタリと憔悴した声でポツリポツリ呟く。
激しい営みで乱れたシーツが汗を吸って不快感を覚える。だが襲ってくる眠気に、そんな事はすぐに思考の隅に追いやられた。

「亜美、風呂はどうする、眠いなら起きてから入るか?」
と、彼が問う言葉を半分夢の中で聞いていた。
「うん…そうする、ふあぁ〜……」
返事もそこそこ、大きく欠伸して意識を手放そうとする、けど、そこである事を思い出す。
『後始末しなきゃ…』
竜児からゴムを外して捨てなきゃ、だの、アソコを拭かなきゃ、だの…。
つまりは後処理、いつもしている事だから…無意識の内に癖がついていた。
ほら、やっぱりさ、放置するのは何か嫌だよね。
私は軋む身体を起して、ゆっくり竜児の下腹部に手を伸ばす。
「お、後始末は俺がやるから、亜美は寝とけよ」
「うんうん、任せといて…亜美ちゃんが綺麗にしてあげるから」
噛み合わない受け答えは、私の寝ぼけた思考が導き出している。
だから気付かなかったんだと思う……『色々』と。
墜ちる寸前の意識で、彼からゴムを外して精液が漏れないように縛る。
引き出したティッシュで汚れたおちんちんを優しく拭う。
それが終わったら、自身の体液を拭いて…はい終わり。
私はゴムをティッシュで包み、一纏めに丸めてゴミ箱へ向けて放る。
さあ寝よう、体力も気力も尽きそうだ。

そんな事を考えつつ、彼に寄り添おうとした時に…それは起こった。
「竜ちゃ〜ん……帰って来たのぉ?」
ガラッと襖が開かれ、呂律の回らない声が聞こえた。
そう。高須家の大黒柱やっちゃんである。
いきなりの事に私と竜児は驚き、ビクッと身体を震わせる。
「「「あ…」」」
そして…三人共、ピタッと固まる。裸体を隠す事も忘れてしまうくらいに…。
逆光で輪郭しか解らないが、やっちゃんは明らかに私達二人の姿を見ていた。
それを理解した時、私は頭の中がサーッと白くなっていく感覚を覚えた。
「あ、ああああ!お、おじゃ、お邪魔し、しています!!」
「お、おおおうっ!?や、やすっ泰子!た、ただいま!!」
口火を切ったのは私だった、慌てふためきながら竜児の下半身を掛布団で覆い、手で胸と下腹部を隠す。
それに釣られて、彼もガバッと起き上がり私に掛布団を被せ直して、焦った声でやっちゃんに挨拶。
「んふふぅ〜、そっかぁ竜ちゃんと亜美ちゃんはぁ〜"大人"になっちゃったんだぁ〜。
ゴメンねぇ?ゴソゴソって音がするからやっちゃんもビックリしたよぉ、反省、反省。お邪魔したでがんす。てへっ☆」

数秒の間を置いて、我に帰ったやっちゃんが破顔して私達を見ながら、そう言った。
見るからに酔っている筈なのに、口調はハッキリ。酔いも醒めるくらいビックリしたんだろうね。
『お邪魔虫はたいさぁ〜ん、おやすみ〜』
そう言い残して襖がススス…と擦れる音を発てながら閉まっていく。
ああ…良かった、ひとまずは大丈夫だ。少なくとも怒ってはいない。
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、残り10cm足らずという所でピタッと襖を動かす手が止まる。
何事かと私達は固まる。
「亜美ちゃん、ちゃんと避妊はさせるんだよぉ?」
「ひゃいっ!わ、わかりまひたっ!」
ニッコリ笑ったやっちゃんが顔を覗かせ、私を名指して淡々と言った。
噛み噛みになりながらも返した返事に満足したのか、再び時と襖は動き始める。
「…見られちゃったね」
「…おぅ。見られちまったな」
お互いポツリポツリと呟き、顔を見合わせる。そして沈黙する。
「まあ、とりあえず寝よう。俺達はおかしい事はしてないんだ。こ、恋人同士なら当たり前にする事だし、自然な事だろ。泰子だってそれは解ってるだろうから」
暫くして沈黙を破り、そう言ったのは竜児だった。

「でもさ、無断で泊まっちゃったし……」
彼の言う事はもっとも、大人なら解っている事。誰しもがそうして愛を育んできたのだから…。
でもそれ以前に、私はやっちゃんの許しを貰って泊まった訳では無い。
今さらながら、その事について詰めが甘かったと痛感する。
竜児に頼んでメールの一つでも送って貰えば良かったのだ、そうすれば彼に迷惑を掛ける事は無かった。
やっちゃんはまだ知らないのだ、私達が付き合い始めた事を。そして知らないなら、この事をどう捉えるか。
それはやっちゃんに対して、考えたく無い事を連想してしまいそうになる、だから即座に否定する。
「それこそ、さっき亜美が言った通りに言えば良い、俺は亜美を一人にさせたくないから泊めた、それで良いじゃねぇか。ともかく気にするな、俺に任せろ」
考えを巡らせていると、頭の上にポンと彼の手が乗せられる。
暖かくて大きな……竜児の手が私を優しく撫でてくれる。
優しいな本当に……元を正せば私の我儘が原因なのに、彼は私を守ってくれようとする。
それに甘えちゃって良いのかなぁ…?
「うん」
そして、私は良い意味で考える事を止めた。

彼と布団の中へ潜り、おやすみ、と一言紡いで私は瞳を閉じる。
朝になったら二人で経緯を話せば良い、ただそれだけの事。
何も心配は無い、やっちゃんだって解ってくれるよ、きっと…。
竜児となら、どんな事だって怖くない。一歩を踏み出せる。
だって私達は並び立つ関係になれるのだから、一緒に…………。
そこで私の意識は途切れた。
....
...
..
.
遠くでトントンと小気味良く何かを切る音がした…。
「ん…………ぅ?」
まだ意識がハッキリしない私は、冬の冷たい冷気に身を晒したくなくて、暖かい布団の中でまどろみ、その心地良いリズムを聴きながら惰眠を貪る。
眠いし、寒いし、疲れてるし…。何より休日なのだ、二度寝の一つや二つしたってバチは当たらない。
だが鼻をくすぐる美味しそうな匂いを捉え、手放そうとした意識が覚醒してしまう。
すると真っ暗だった視界に淡く白い光が映る。
それはカーテンを透いて差す朝日だと気付いた。
ああ、夜は明けたんだ。なら起きよう、いや…でも。
抗い難い倦怠感と眠気が再度、私の意識を沈ませようと甘く囁く。
………って待て待て、何かを私は忘れている。

そうだ…私は竜児の家に泊まったのだ。
すぐさま横に居る筈の彼を引き寄せて確かめようとする。
しかし一向に触れる事は無く、手繰り寄せたのは冷たい掛布団。
そこでようやく私は重い瞼を開ける。
「…………」
薄暗い天井が視界の先で揺れ、ぼやけて、徐々に姿形を明確にしていく。
先程届いた気味の良い音に交ざった雀の鳴き声。可愛らしく私の頭の中で響く。
これが、いわゆる『朝チュン』って言うヤツか…。
そっか…これが、ね。
毎朝聴いている筈の、ソレが急に愛しく想えてしまう。
頬が弛んでしまう、幸せだった。今、彼が側に居ないのは残念だけど、一夜を過ごした満足感が嬉しい。
一歩どころか二歩は前進した。節々が軋むような疲労や倦怠感と引換に得た充実感が活力を生み出す。
「ん〜〜〜っ!」
寝てなんかいられるか!
私は起き上がって掛布団を跳ね除け、大きく、長く伸びをする。
「さむっ!!」
そして身体に刺すような寒気を感じて、再び掛布団を纏う。
アホか…ありえない、いくら亜美ちゃんが『天然』っても………んふふ♪
ああ、駄目だ。何をしたって弛んだ頬が元に戻らない。

何度だって言ってやる、幸せなんだよ。
だけど浮かれてばかりもいれない、やっちゃんに謝らなければならない。
と言っても、ただ一言で済む事なんだけどね。
『勝手に泊まってごめんなさい』
そう、それだけ。身構えたってそれだけしか出来ないし、事実だし…、気楽に構えよう。
そう考えを纏めたところで、私はある物に気付く。
居間に置いておいた筈のキャリィバッグ。そして綺麗に畳まれた灰色のスウェットセットアップ。
彼が用意してくれたのだろう、つまりは着ろという事だ。
私自身のジャージもあるにはあるが、わざわざ用意してくれたのだ、好意に甘えるとしよう。
身を乗り出し、バッグを手繰り寄せ、中身を探る。
下着、下着…っと。余分に持って行っていて良かった、無かったら………最悪の場合は、何も着けずにいなければいけない。
汚れ物を着るのには抵抗があるし。
まあ、お風呂から上がるまでは適当で良いか。
そうだ、どうせなら竜児を驚かせよう。
思い立ったらすぐに実行という訳で、下着と共に取り出したのは制服のブラウス。
そして素肌の上にブラウスを着て、はい完了。
胸元のボタンを二つ、留めずに緩く着るの。

裾が膝上20cm位までしかないんだ、コレ。…エロいわ、うん。少し恥かしいかも。
ベッドから抜け出し、冷えた畳を忍び足で襖まで進む。
こっそり襖を開けて、彼以外が居ない事を確認して居間へ入る。
私から見て、背を向けている竜児は朝御飯の準備をしていた。
なるほどね、あの美味そうな匂いはお味噌汁の……、あ、何か良い。こういうの。
一夜を過ごしたんだな、と、実感出来る。
「おはよう。竜児」
私は彼に声を掛ける。
「おぅ、おはよう。早いじゃねぇ、……………か」
振り返って挨拶を返してくれた竜児が私を凝視して固まる。
そして顔を真っ赤にして口をパクパク、よしドッキリ成功。
「んん〜?どうしたのぉ、り・ゅ・う・じぃ」
サッと彼の側に素早く移動して、上目遣いでジッと見詰めながら聞いてあげるの。
「何て、か、かか格好して、んだよ」
わ、照れてる照れてる。ちょっと可愛い、竜児をからかうのって何回しても楽しいね。
ワクワクする、彼の反応一つ一つに胸がキュンと高鳴る…。
「何って?お風呂借りようと思って…ほらコレ」
そう平静を装って、彼に見せたのは両手で抱えたスウェットと下着。もちろん下着はわざと見えるように…。

ライトローズの下着の上下、ちょっぴり大人っぽいヒラヒラレースも付いてるお気に入り。
「お、ぅ…。風呂は沸いているから、入って来いよ。ん、その間に朝飯も用意しとくし…」
竜児の視線がギュッと両腕で寄せた胸の谷間と下着を交互にチラリチラリ…。
料理をする事も忘れて見入っていた。
「りょーかい。あ、バスタオルを貸してくれない?
用意してたの全部使いきっちゃって無いんだ」
「ん、ああ」
私の言葉に我に帰った彼が、来いと手招きしてくれる。
そして脱衣所まで連れて行ってくれる、その背中を見ながら私は笑みを零す。
また一つ見付けた彼の一面が愛しくて、堪らなくて…。
思わず背後から抱き締めてしまいそうになるのを堪えて、手渡されたバスタオルを受け取る。寄せた胸を更にギュッと上げて寄せて…。
「ありがとう。ねっ…ところでさぁ、竜児はさっきからなんで前屈みな訳ぇ?」
受け取ると同時に私は、数秒前に見付けた彼の『変化』について聞いてみる。
「はあ………お前なぁわざとだろ?さっきから狙って…そういう事してんだろ」
溜息を一回、深く吐いて呆れ顔の竜児が私に返す。
「あ、バレてた?」
私はニコッと笑ってみせる。

「ここまであからさまだと誰だって気付くだろうよ、ほら早く風呂に入って来い」
「へいへい、ちぇっ、つまんねぇの…。
もっとビックリするかと思ってたのにぃ」
頬を膨らませて不貞たフリをして、彼に不満だと呟く。
すると、彼が困ったような顔をして頬を人差し指で掻きながら紡いでくれる。
「ビックリじゃなくて、ドキドキしたんだよ。亜美が色っぽいし綺麗だったから」
そうサラッと言ってくれちゃうのだ、竜児は……。
「へぇ〜、ふふ…そっか、そっかぁ。満点だね、ありがとう」
綺麗…綺麗かぁ、そんなの当たり前じゃん?
でも竜児に言われたら、格別の喜びがある。
彼が台所に戻る様を見守り、私は浴室に入った。
.
身体を洗い、乾いた汗でベタつく髪を洗って、崩れまくった化粧を落とす。
それらを終えた私は、狭い湯船の中で膝を抱えている。視界に入った胸には昨晩、彼が噛付いた痕が残っていた。
薄く残った噛み痕、強く吸われて内出血した部分…それは彼に刻まれたマーキング。
激しく求めて、求められた証を見付けては昨夜の情愛の想いに耽る。
昨日の竜児、凄かったな…。獣みたいだった、途中でバテたけど。

こんなに身体が怠くなるまでしたのって初めて……何回も何回も達せられて、凄く気持ち良かった。
また…機会があったら良いな。
やば…そんな事を考えてたらのぼせそう。急に身体が熱くなってきたし……。
お湯…そう多分、お湯が熱いからのぼせたんだ。だから、またこんな事を朝っぱらから考えてしまったんだ。
そう自分に言い訳して、素早く湯船から出る。
水の滴る髪に指を通して手櫛し、壁掛けからタオルを取る。
まずは髪を拭く、慎重に丁寧に…壊れ物を扱うように水気を吸わせていく。
続いて身体を拭いてから脱衣所へ…。
下着を右足から通して、次に左足、よし…。
実はコレ、初めて穿くんだよね…変じゃないかな?
と、洗面台の鏡で姿を確認してみる…………って何をしてるんだ。
昨日の今日じゃん、竜児が見る訳無いじゃん。あんな事を考えたせいだ…まだ身体が『バカ』のままなのだ。
また『欲張り』な事を考えない内に、残りをさっさと着てしまおう。
と、ブラを身に着けてスウェットに袖を通し、穿いて、ブラウスを畳んで髪を乾かす。
長々と時間を掛ける訳にはいかない、彼が待ってる、だから手早く、最小限に止めて脱衣所を後にした。

「あ。亜美ちゃんだぁ〜、おはよう」
居間に入ると、やっちゃんが私に挨拶をくれた。
「おはようございます」
そう挨拶を返すと、寝起きの目を擦って、ニッコリと微笑みを返してくれた。
ちなみに竜児は居ない、朝食の準備は出来ていて、卓袱台の上に載ってはいるが…何処に行ったんだろう。
「あ、あの…やっちゃん?」
まあ、すぐに戻って来るだろう。多分、何か用事でもしているんだと思う。なら彼が戻る前に、私はやっちゃんに謝っておこう。
「ん、どうしたの?」
つぶらな瞳を私に向けて、やっちゃんは私に問う。
「ごめんなさい。何も言わずに泊まっちゃって…、私が竜児くんに我儘を言って無理矢理に押し通しちゃったんです。
だから竜児くんは悪く無いんです」
そう言って、私は深々と頭を下げて謝罪する。
彼に累が及ばないように、叱られないように…。
「え〜?いいよぉ、謝らなくても。やっちゃんは怒ってなんかいないんだよ」
だが、間を置かずに届いた言葉は、怒りの欠片すら感じられない柔らかい声。
私は頭を上げて、やっちゃんの顔を見て確かめる。そこには、いつも通りのニコニコ笑顔があった。

「亜美ちゃんは竜ちゃんの事が好きなんだよね?竜ちゃんも亜美ちゃんが大好きなのぉ。
だから全然、問題なんて無いんだぁ〜。ふふっ♪竜ちゃんと仲良くしてくれたら、やっちゃんも嬉しいでやんすよ」
と、言って親指をグッと突き上げ、更に続ける。
「亜美ちゃんも竜ちゃんも、お互いの事をやっちゃんに話してる時は目がキラキラ輝いているんだよ。
うん、だからやっちゃんも嬉しい。
ちゃんと段階を踏んで仲良くお付き合いしてるなら、やっちゃんは叱れないもん、お邪魔虫だっ。ね?」
クスクス笑って、やっちゃんはこう最後に締めくくる。
「いつでもおいで?もう亜美ちゃんは、やっちゃんの子供も同然なの、そんな顔してたらやっちゃんも寂しいでがんすよ…」
頭を優しく一度撫でてくれる。やっぱり親子なんだ、こういう部分も似てる、竜児と。
「うんっ!」
私は彼にだけ向けていた笑顔を彼女にも向ける。
『家族』として『息子の彼女』として受け入れて貰った喜びを精一杯の笑顔に載せて示す。
「よしよし、やっぱり亜美ちゃんは笑っている方が可愛いよ。
あ、竜ちゃ〜ん!遅いよぉ、やっちゃんお腹ペコペコ!」

やっちゃんの母性に触れた私は、甘える子犬のように身を任せる。
そして玄関の開く音が聞こえると、戻って来た彼にそう言って両手をブンブンと振る。
「おぅ。泰子も亜美も悪かったな、じゃあ飯を食おうぜ」
竜児が居間に入って、笑いながら卓袱台の前に座る。
私の横であり、やっちゃんの対面。いつも通りの位置に…。
「どうしたんだ亜美、やけに機嫌が良いな」
「ん、別にぃ〜」
素っ気無く返した言葉とは裏腹に、私の心は暖かい優しさで満たされていた。
.
朝御飯を食べ終わり、再び眠りにつくやっちゃんを見守った後、私は制服に着替えて彼と外に出た。
制服に着替えた理由は簡単、スウェットのままキャリィバッグを引く姿は、いくら美少女な私でもミスマッチだからだ。
何より、一緒に居る彼に恥をかかせたく無い。
私はどんな時でも、愛しい彼の為に綺麗でいたいのだ。
ちなみに目的地は私の家、正確には親類の家だけど。
荷物を置いて、着替えたい。あと、竜児にも『初めて』を体験させてあげようと思ったのだ。
『彼女の部屋にお邪魔』
という初体験をね。
左手でキャリィバッグを持って引き摺り、右手は彼にしっかり繋がれている。

「そうだ、今日は何処か出掛けてみねぇか?
亜美の都合が良ければだけど」
行程の途中で竜児が私にそんな提案をしてきた。
「今日は仕事も予定も何もありませ〜ん。だから、うん………何処か行こうか」
もちろん私は二つ返事で返して、絡ませた指をより強く握り直す。
「初デート…だね」
そう一言紡いで、スッと静かに肩を寄せて…寄り添う。
「ああ、初デートだな」
彼も私と同様に紡いで、私達は沈黙する。
幸せな気持ちを噛み締めたくて…、私達は何も喋れなくなる。
高鳴る胸の鼓動を感じながら、一歩、また一歩と歩んでいく。
『行き先は後で決めるとして、まずは着替えなきゃ、それに気合い入れて化粧もして…』
「竜児、少し急ごう。ちょっとでも長くデートしたいし……一秒でも惜しいよ」
そして沈黙を破ったのは私、急く気持ちを抑えれなくなる。
「おぅ、なら速歩きで…。荷物があったら走れねぇし」
「ま、そうだね。亜美ちゃん、気合い入れておしゃれしちゃおうかな、スーパープライベート仕様で」
彼の紡ぐ言葉にもワクワクする気持ちを感じて嬉しくなる。だから大きく頷いて、彼に語りかける。

「現役モデルのセンスを見させて貰おうじゃねぇか」
「オッケェ〜。期待に答えたろうじゃん」
クスッと笑って紡ぎ、私は彼を見詰める。
寒空に差す暖かい陽射は、まるで私達の気持ちを代弁するように照らしている。
回り道して、色んな人とすれ違って、歩み寄って…。
今では彼と堂々と横並びで歩める。
『ちょっと先を進む』
いつの日かに紡いだ一言、それも忘れない。
互いに助け合って、どちらかが一歩先に進んだら引っ張っていくの。
そして最後の最後に横一直線でチェッカーを潜れば良い、そうなればと願う。
勇気を振り絞って紡いだ『言霊』
目一杯の愛情を載せて紡いでくれた『言霊』
まだ貰ってない『言霊』
いつかは得るし、私からも贈る。
やっと繋がった私と竜児の関係はまだ始まったばかり。
そう、やっと走り始めたのだ。
大好きな竜児と新たな関係、それを更に強く結びたくて私は『言霊』を贈る。
「竜児っ!」
「お、おうっ!」
私は深呼吸し、一拍置いて紡ぐ。
「大好きだよっ!」
ってね。




終わり

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