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我が家の腹黒様〜それぞれの思惑とちょっぴりの好奇心編〜

2009/11/05(木) 00:18:44 ID:yaDWtEcd



泰子ならともかく、奈々子はその薄い化粧の何処に時間をかけているのだろうか?
化粧なんて全く…とは言わないものの、極々、控え目な下地だけの様に見える。
いや、自分が気づかないだけで、奈々子なりのこだわりがあるのだろうか?
もし、自分という存在が…傲慢で自惚れに過ぎる考えだが、もしも、自分という存在が奈々子にそうさせているのだとしたら…どんなにか、嬉しいことだろうなぁ〜
自惚れたって良いじゃない。だって年頃だもの。−りゅうじ−
などと、アホな事を考えながら、ぼんやりと遠くの空を眺めていた。渡り廊下の窓の外。空寒く、風吹き、秋の空気。
外の気温は冷めたけどボクの心は暖かい。高須魔法瓶
「お〜い。高須君や。」
ぼーっとしてたところに背後からいきなり声をかけられる。
何か、最近このパターン多いな…余程、浮かれてんだな、俺。
「何だ、櫛枝か。どうしたんだ?こんなトコに。」
声と口調で解っていたが、振り返って一応、定文型を返しておく。
「何だ、櫛枝か−っとはご挨拶だね。私はこの先の部室に用があるのだよ。
高須君こそ、こんなトコ−っで何してんのさ?」
一々、物真似しながら返してくる。そして、割と似ている。相変わらず、芸の細かい奴だと少し、感心させられる。
「別に、何もしてねぇけど…ちょっと外見てただけだよ。」
「1人残されて、からかわれ続けるのが嫌で教室を抜け出したけど、
まさか、WCまで奈々子嬢を追いかける訳にも行かないから、何となく廊下でぼんやりしてた訳じゃないんだ?ふぅ〜ん。」
「………何だよ。」
「他意はありませんよ。ありませんったら。なぁ〜んもね。」
「別にそんなんじゃねぇよ。」
「あっそ。ちなみに、奈々子嬢ならとっくに教室に戻ってきてたぜ?
可哀想に高須君が居ないもんだから、今もからかわれ続けてるんじゃないかな?」
「今すぐ戻る。」
「なんつって。満更でも無さそうだったし良いんじゃない?急がなくても。それより、ちょっと私の−
「櫛枝も、本令鳴る前には戻れよ。じゃ。」
「………。変わっちまったね。君は。」

かつての憧れの変わっちまったドライな声は、駆け足出した竜児の耳に届かなかった。

藪蛇を悔いつつ、教室に戻ってみたら、竜児が居ない。
「高須君なら花摘みだぜ。」
と、櫛枝ちゃんから聞かされたが、あんまり良い予感はしなかった。
確か、さっきまで教室の隅に亜美ちゃんやタイガちゃんーと居なかっただろうか?
それが何故、こうして自然に溶け込んで居るのだろう…
櫛枝実乃梨は見た目通りの単純なだけの娘ではないかも知れない。
「んじゃ、私はちょっと部室に用があるから。ちゃんと良い子にしてるんだぜ?大河。」
自分は帰宅部だから、詳しくは知らないが、朝のこの時間帯に部室に一体何の用があるというのか。
竜児が櫛枝実乃梨を好いていた事は、なんとなく知っていた。誰から聞いた訳じゃない。ただの勘。
けれども、竜児はこうして、あたしを選び、あたしと付き合っている。
あたしが勝った。櫛枝実乃梨との比較であたしが選ばれた訳じゃない事は承知している。
竜児君はそんな人じゃない。だから、あたしは竜児君が好きなのだ。竜児君もあたしが好きで、あたしも竜児君が好き。
そもそも、同世代の男の人は信用ならない。だから年上の大人の人が良い。と、思い続け、信用に足る素敵な同世代の男の人にやっと巡り会えたのに。
結局、こうして不安になるのは、あたしの心の問題なのだ。
誰からアプローチを受けたって竜児君はあたしを裏切りはしない。でも、あたしがこんなに嫉妬深い女だって知ればどう思うだろう?
それでも、底抜けに優しい彼は受け入れてくれそうな気がする。あたしを優しく包み込んで、安心させてくれそうな気がする。
とにかく、今は、一刻も早く竜児の顔が見たかった。
−早く、あたしを安心させて−
「でもさ、お手洗いまで追いかけてくなんて高須君たら、奈々子にゾッコンどころじゃないね。
羨ましいようなウザイような…あたしだったらちょっとイヤかも。ね?奈々子もちょっと引いてたりする?」
冗談ではない。今は、あたしが追いかけそうだ。
あたしは5分に1度は竜児君を視界に入れないと、きっと死んでしまう。
「そんな訳無いでしょ?竜児君があたしの事を想ってくれて、それであたしがイヤなハズが無いじゃない。」
ホント、お願いだから、早く戻ってきて…

「何、死にそうな顔してんだ。ほら、笑えよ。ばかちー」
どう見てもボロボロのあたしに、空気を読まずか、それともあえて、か…
ちび虎は憎々しくもバケツいっぱいの罵声を浴びせてくれた。
「…実乃梨ちゃんは?」
「さっき部室行った。何か用事あるって。」
「ふぅん。で、高須君は?」
「トイレ」
「…あそ。別にど〜でもいいけど。」
「ばかちーこそ、何処行ってたのよ?」
「うるさい。今日、放課後スドバ寄るよ。」
「…寄れば?」
「あんたも来んの。後、実乃梨ちゃんと。」
「はぁ!?何であたしが。」
「奢るから。」
「だから、何で。」
「奢るから。」
これを最後の言葉に決め、あたしは席に突っ伏した。
放課後まで、絶対顔を上げないし、誰とも口聞かない。もういい。このまま寝てやる。



何分経ったろう。ムカムカして、とても寝れない。だからといって顔を上げる気力も度胸もない。
奈々子に続き、高須君も教室に戻ってきたらしく、また教室の真ん中の方は盛り上がっている。
耳も塞げりゃ良いのに…聞きたくもない会話が耳につく。


「あ〜。コホン。皆、奈々子と高須君ををからかうのは、もう止める様に。」
今まで、散々、からかっておいて、麻耶ちゃんが急に手のひらを返した。
そして、一拍置いて、
「ところで、竜児君、今日のお昼なんだけど…屋上で2人で食べない?」
と、奈々子。
…なるほどね。そういえば、麻耶ちゃんは祐作にお熱でしたっけ?
幼なじみのあたしじゃ役不足だってか!?キューピッド役には役者が不足してますか?。
ですよね〜こんな負けチワワには頼れませんよね。こんちくしょう。
「おう。勿論、良いけど。」
「決まりね。実は、あたし、お弁当作ってきたのよ。」
「へ?実は、俺も奈々子の分と2人分作ってきたんだが…」
白々しい。全てが白々しい。予定調和。ネタバレされた後でドラマ見せられてる気分。
どうせ、この後は、祐作がロクに考えもせず
「おお。弁当が四つか。残しちゃ勿体無いな。」
みたいな事を言うんだろう。そしたら麻耶が
「だよね〜。あたしとまるおで食べてあげよっか?」
とか言うつもりなんだろう。
はいはい。もう、いいって。昼休みに屋上でダブルデート気取りですか?おめでてーな。
勝手にすりゃいいじゃん。あたしには関係ねぇし。ふん。もういい。寝る。もう絶対、寝る。

ばかちーがボロボロになって戻ってきたと思ったら、今度はみのりんがボロボロで戻ってきた。
「スドバ?…うん、解った。あ、部活なら、今日は休むから。
え?体調?大丈夫。コーヒー飲んだら治るから。多分。」
とか言って、ばかちーと同じ体勢で寝込んでしまった。
一体、教室の外では、どんな恐ろしい事があるというのか。私は、今日は一切、教室から出ないと固く心に誓った。
それにしても竜児の奴、幸せそうだ。相変わらずの酷い面だけど。ププッ。
竜児が幸せそうだと、私まで嬉しくなるのは何故だろうね。今朝摂ったカルシウムのおかげか、それともケフィアの為せる技か…
飼い犬が主人の元を離れていくのは寂しい気持ちもあるけど、今は、それよりも竜児の幸せを喜んでいる自分がいる。
他人の幸せを喜べるなんて、単なる綺麗事だって思ってた。
ずっと、周りで幸せそうにしている奴らが、どうしようもなく、憎くて、憎くて、憎らしくて
全て、ぶち壊してやろうと、暴れ回った事もあったっけ?
私がこんなにゆとりを持てる様になったのは、犬を飼ったおかげかな?
アニマルテラピーってホントに効果あったんだね。
あの、幸せな光景を邪魔にならない場所で、見続ける事が出来るなら…私はずっと心安らかで居られそう。
でも、いつかは、見納めになるだろう。竜児はもう、私のモノじゃないから。
いや、最初から私のモノじゃなかったな。竜児は竜児だ。それでも、今、この時は竜児を見ていたいと思う。
今は、まだ言えないけど、『ありがとう』と、伝えられる日が来れば良いな。

あぁ〜早く、お昼になんないかな〜。元々、授業なんて真面目に受けてないけど、今日は、いつも以上に身が入らないよ。
『奈々子、怒ってる?』
『何の事?』
『つい、でしゃばちゃった事。チャンスだと思ったから。ゴメン。』
『別に良いわよ。
ナイスアドリブだと思ったけど?』
『そう?だったら良いんだけど……
お邪魔じゃない?』
『お邪魔する気なの?(笑
一緒に、お昼食べるだけじゃない。』
『ホントは2人きりで食べたかったんじゃない?』
『2人きりも良かったわね。けど、昨日、竜児君のお家でご飯頂いたもの。
それに、そんな機会は、これからいくらでもあるんだから、気にしなくて良いわよ。』
『ありがとう。奈々子。』
『それより、自分の事はどうなの?』
『ヴッ……(汗』
『テンパったりしちゃダメよ?』
『ど〜すりゃ良いのかなぁ?』
『…そうね、あたしが思うに−−−
不意に、ヒョイと携帯が宙に浮いた。
「木原さぁん?さっきから多目に見てたけどね、もう限界。もう、ゆりちゃん我慢の限界です〜
ずっと、携帯弄ってるわよね?面白くありませんか?そんなに面白くありませんか?
ですよね。三十路独身の『こころ』解説なんて聞きたくないわよね。
でもね、これ文部省に指定されてるの。わたしもやりたくてやってる訳じゃないの。最優先強制コードなの。
禁則事項。そう禁則事項なの。あ、大事な事だから二回言いました。
だから、没収。放課後まで、携帯は没収〜ぅ♪」
「えぇ〜そんなぁ〜」
「はぁ〜い。じゃあ授業続けま〜す。」
ゆりちゃんは、あたしの携帯を掠め取り教壇へと登って行った。
斜め後ろを涙目で振り返ってみれば、奈々子が悪戯っぽく、ちょこっと舌を出して笑っていた…
ふぇーん…携帯無しじゃ、午後の数蕎茲蟇曚┐蕕鵑覆い茲ァ
三角関数とかマジ意味解んないし…タンジェントって軍手の事じゃないのぉ〜?

健全な女子高生にとって、携帯は命そのものだと言うが…
しかし、授業中に弄っていたのは誉められた事では無いし、何も永久に没収される訳では無いしな。
木原には可哀想だが、どうしようもないな、コレは。うむ、仕方ない。
だが、携帯弄ってる木原が咎められて、後ろで爆睡かましてる亜美と櫛枝を完全スルーというのはどうなのだろう?
いささか、公平性に欠く裁定ではないだろうか。ここは、俺が抗議すべきだろうか?
いや、まてまて、正しいからと言って、常に直接的な行動が善だとは限らん。
大体にして、亜美は仕事、櫛枝は部活で疲れている。学生の本分は勉学だが、時には休息も必要だろう。
それに今、俺が騒ぎ立てれば、真面目に授業を受けている他の生徒はどうなる?
彼らは、亜美や櫛枝が寝てようが、起きていようがどっちでも良い筈。当然だ。
そんな下らない事で騒ぎ立てる俺は、彼らにとって迷惑に他ならないではないか。
結局、授業の進行を妨害する形になるのだから。
しかし、それは幼なじみ、チームメイトという特別な関係の者を依怙贔屓している事にならないか?
事は小さい。たかが、授業中の居眠りだ。でも、もしコレが大きな問題だった時、果たして俺は、亜美や櫛枝の不利益と知りながら、告発出来るだろうか?
ううむ。やはり、俺は生徒会長という身分にありながら、結局は、一個人としての感情を優先するんだろうな……
もし、貴方なら…どうしますか?会長。

「はい。ぶっちゃけると、『私』も『K』も『未亡人』狙いです。『お嬢さん』は『未亡人』に近づく為の手段に過ぎません。
あくまでも『未亡人』が狙いですからね。つまり『未亡人』は作中において、元、旦那を含め3人の男に想いを寄せられている事になります。」
!?ナ…ナンダッテーーー
「はい。先生、質問です。」
「はい。何ですか、北村君。」
「今の先生の解釈は原文の何処にも相当しません。
何を根拠にその様な解釈が成り立つのでしょう?」
突発した、トンデモ解釈に余所事を考えていた俺は、一瞬で授業に引き戻された。思わず、手を挙げていた。

「甘いですよ北村君。国語というものは、原文が全てでは、ありません。
机の上で勉強し、紙の上で文学を理解する。理解したつもりになる。
フフフフフフ………糞喰らえですよ。良いですか?『そうではない』と明記されていない以上、あらゆる解釈が成り立ちます。
ぼくのかんがえたこころ?チラシの裏に書いとけ?良いですよ、別に。全然、おK。」
ビリビリビリビリビリビリ
景気の良い音を立て、季節を先取りした白い吹雪が舞い散った。
「そう。フフフ。そうです。元々、教科書なんて必要無いの。
だって、結婚の仕方が載ってないもの。合コンのノウハウも、お持ち帰りの仕方も、され方も。
なら、必要無いじゃない?将来の役に立たなくて、何が教科書ですか?
はい。次回からは『小悪魔AGEHA』を教材にします。各自、書店で購入しておくように。
起立!礼。残りは自習とします。」
ドスドスドス。ガラガラガラ。ピシャンッ!!


どうしてこうなった?

その後、担任の姿を見た者は誰もなかった。

トルネルを抜けると、そこは雪景色…とか、言ってる場合じゃねぇな。
「ねぇ、大河。何があったの?コレ。」
「あ、おはよう。みのりん。
なんかね、独身が『小悪魔AGEHA』買っとけってさ。」
はぁ?まったく、意味がわからない。
「ま、何でも良いや。それより、もうお昼じゃん。お腹減っちまったよ。
ぼくはおにぎりが食べたいんダナ。大河は、お昼どうすんの?」
「コンビニでパン買った。」
ちっちゃな手が、すっと、コンビニの袋を差し出してきた。
どれどれ?ちょいと拝見。
コーンマヨパンにお好み焼きパンにメロンパンね…
「これだけじゃ足らないんじゃない?
私もさぁ、超ローcalorieー弁当持ってきてんだけどさ、ちょいとモノタランなのよね。
久しぶりに学食行かない?ちょっと、体調が思わしく無いし、滋養つけなきゃ。カツカレー(大)が私を呼んでる気がするんだ。
したら、やっぱ、学食に行ってやらねぇとって 思うじゃん?人として。」
「良いよ。行く。そうだ。ばかちーも誘ってやろーよ。
おい、ばかちー。起きろ。飯だぞ〜」
大河がどれだけ揺すろうと、あーみんは一切、起きる気配は無さそうだった。
「大河、そんなんじゃ生ぬるいぜ。大樽とデメキン持ってきな。
あーみんみたいなカチカチタイプの子は寝込みを爆破するのが一番だからさ。」
「え?大樽?」
大河にはわからないネタだったか…だよね、この子、ぷよ専だもんね。
けど、あーみんには伝わった様で
「あんたら。煩いって、耳元で。あたしは起きてるよ。起きてるけど、寝てるフリしてんの。
今は、あんまり食欲無いから、ご飯なら2人で行ってよ。
それと、実乃梨ちゃん。G位自分で用意しときなさいよ。あたし、嫌いなの。寄生厨って。」
などと、顔も上げずに返してきた。
「失礼な。今の私はソロ専だよ。」
「…もしかして、実乃梨ちゃんて、寂しい奴?」
「…ちげぇよ。課金切れたんだよ。
良いよ。あーみんはそうやって、そこで腐ってれば良いじゃん。行こうぜ、大河。」
「え?え?」
「そういう事だから、ちび虎も、あたしの事はほっといて、ご飯行ってきな。
大丈夫。これは寝言。だよね?実乃梨ちゃん?」
「寝言なら仕方ないな。
…あったかくして寝ろよ。」
「…ありがと。」
「じゃ、大河。カツカレー(大)食べに行こっか?」

…どう考えても、寂しい奴だよな、今の私って………

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