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273 sage 2010/08/07(土) 13:14:16 ID:A4v+6PuR



事件と生理は忘れた頃訪れる。

亜美にとって、それは正しく大事件だった。
よくよく聞いてみると、なんと今日は大河が実家のほうに泊まるとかで不在らしいのだ。
つまり、その期に乗じて亜美を誘ったのだ、という事である。
亜美は大河も一緒だと思い込んでいたから、この事実は大変なサプライズであった。
当然、期待感もうなぎ上り。
(んっふっふっふ… 高須くんの家で二人っきり…… しかも、高須くんの特製ディナー付き!!)
弛みっぱなしの顔で、半ばスキップぎみに高須家へ向かう亜美だった。

(ざまぁみろタイガー。 高須くん家でご飯なんて、あんたにとっちゃぁ、日常茶飯事でしょうが、あたしにとっては超重要イベントよ!
もしかしてフラグ立った? スカイツリーなみにドドーンって立っちゃった?)

…そういう思考自体が、かなーり負け犬臭に満ちている、なんてことは大人な皆さんなら指摘しないだろう。
だって、亜美ちゃん、超嬉しそうだし。

時間を遡る事、1時間ほど。 亜美は授業が終わると速攻で一旦家に帰った。
入梅宣言したとたんに天気がよくなるってのはありがちな笑い話。
そして今日も、人の見ていないところで、ワキのしたのニオイをくんかくんかチェックしたくなるような、暑い日だった。
いかな超絶美少女の亜美といえど、準備は必要なのだ。
シャワーを浴びて念入りに体を磨き、ここはお約束の勝負パンツをすちゃっと着用。
さらには、以前モデル仲間からもらっておいたゴム製品をしっかりサイフに忍ばせるあたり、流石、エロチワワ。
(よーし、準備万端!)
………なんの準備ですか、何の。 飯食いに行くんじゃないんですか、あんた。 …なーんてことはいいっこなしだ。

こうして、通りに再度姿を現した亜美は、いつもの自称が決して誇張では無いと思える超絶美少女なのだが……。
(高須くん、初めてかな… もしそうだったら、やっぱあたしがリードしないといけないよね…)
(いやいや、案外すでにタイガーとやっちゃってて、凄く上手だったら? ど、どうしよう… そしたら任せちゃってもいいのかな…)
(あ、でもでも、それでマグロ女とか思われちゃったらヤベーし…)
(いやいやいや、さらに斜め上を行って、へんな性癖があったら… こっ、コスプレさせられたり… し、縛られたり………。)
(……………………………。)
(………………縛られるのは…アリかも……んふっ……。)

頭の中はすっかりピンク色な、夢見る乙女(ドM疑惑つき)。
それが人気絶頂の現役女子高生モデル、川嶋亜美18歳 (処女) だった。

一方、高須竜児は…
こっちはこっちで色々あるようだ。
かのうやで万引きGメンを引き連れつつ、食材を物色する。
(川嶋は健康に気をつかってそうだし、ダイエットとかしてそうだしな… 大河の時より食材には気をつかうぜ…)
(さて、川嶋といえばやはり肉より魚が好きそうだが…うーん…どれもピン!とこないなぁ…)
(お。『米沢三元豚』か… 流石に高いが… ブタ肉の冷しゃぶ……… おう、この線でいくか!)
そんな感じですっかり主婦化しているわけだが、竜児とて健全な高校三年男子である。
お目当ての食材をゲットしての帰路、これからの亜美との食事について、思いを至らせないはずもない。
なにせ、あの亜美と二人っきり数時間過ごすのである。
竜児の認識においても、亜美は『クラスで一番の美少女』とかいうレベルではない。
その顔、プロポーション、仕草、それら全てにおいて隔絶したレベルの美しさなのは否定しようが無い。
家路を辿りつつ、竜児もまた、亜美について考えを巡らせていた。

(川嶋と二人っきりか… いや、前にもあったよな… 清掃中に雨に降られて… ストーカーを撃退して…)
(そうか、あれからもう一年経ったんだな。)
(………あの時は………あ、危なかった………。)
(今日もまた俺をからかって、迫ってこないだろうな……。)
(いやいや、まさかな。 今はクラスも違うし、最近あまりからかって来ないし……大丈夫だろう。)
(だが、もしまたあんな風に迫ってこられたら……………………………)
(おおぅ! 何考えてんだ!俺! ダメだ、ダメだ。 その気になって押し倒しでもしたら……今度こそ二度と口をきいてもらえん
ようになるぞ!)

「……ふぅ…」
立ち止まって深呼吸。色々と硬くなってしまいそうな自分を落ち着ける竜児。
(グラビアから本物が抜け出して目の前に現れるようなものだからなぁ……あの性格だし、大河としょっちゅうやり合ってたから
麻痺しちまったが…。 本物は声とか匂いとか付いてくるから、破壊力が桁違いなんだよな……。)
(とにかく、変な雰囲気にならねーように、細心の注意を払うしかねーな。)
(いざとなったら……昨日覚えた物理の公式でも暗唱するか。 よし!覚悟完了だ!!)

ってな訳で、亜美とは180度違う方向に気合が入った、目つき以外は只の高校生、高須竜児18歳だった。


〜♪〜♪
上機嫌で竜児のアパートの前に辿り着いた亜美。
時計を見ると約束の時間より10分ほど早く着いてしまったようだった。
(うーん… あんまり早く着いたら、いかにも『楽しみにしてました』って感じでかっこ悪いよね…)
(やっぱりちょっと時間をつぶして、5分くらい遅れていくってのが正解でしょ、うん。)
こういう見栄っ張りなところも敗因なのだが……
後ろ髪を引かれつつも、今来た道を引き返す。
角を曲がって、竜児のボロアパートが見えなくなった、ちょうどその時だった。
携帯の着信音が鳴り響く。
滅多に聞かないその音は、竜児からの着信の時に割り振った音楽だ。
あわてて携帯をとる亜美。もちろん、最初の一声はうきうき声。
「もしもし。高須くん?」
『川嶋か?すまん!』
だが、竜児の第一声を聞いて、声が変わる。
「な、何? どうしたの?」
『本当にすまん! 今日の約束は中止ってことにさせてくれ。』
「え? ちょ、ちょっと!それどういう事よ!」
『実は急に大河から戻ってくるって連絡があって…実家で面白くないことがあったようで、めちゃくちゃ荒れてんだよ。』
「……なによ、それ。 大河が帰って来たって、高須くんには関係ないじゃん! 大河の家は別にあるのよ!?」
ほとんど悲鳴に近い抗議の声も、二人の普段の関係を知っていれば空しい台詞だ。
『直接家に来ると思う。 だから電話を掛けてきたんだろ。 本当にすまん、大河には今日お前を呼んだ事は教えて無いんだ。』
『大河の荒れ具合をみると、川嶋と鉢合わせしたら、危害を加えないとは保障できんし、無駄なトラブルは避けたい。』
「………信じらんない………」
『だから、今日のところは中止にしよう。 今度また機会があったらご馳走するからよ。』
「………信じらんない………」
『本当にすまん。 かならず埋め合わせは……… 川嶋?』
「………信じらんない、信じらんない、信じらんなーーーい! 何よそれ、あたしをバカにするにも程があるわよ!」
『あ、い、いや』
「なによ、大河、大河、大河って、いっつも大河の事ばっかり。 あたしのこと………どうでもいいなら誘わないでよ!!」
『ちがっ』ぷつん……

建設中のスカイツリーは、哀れ完成前に崩落した。

家に帰った亜美は、空腹のままベッドで膝を抱えていた。
部屋の明かりを点けることさえ忘れて…
(最後の最後まで諦めるなって? もう最後の最後までいっちゃってるんじゃないの? 惨めだよ… 惨め過ぎるよ、こんなの)
敗北感に打ちのめされていた。
(なんであんなの好きになっちゃったの? おかしいよ。 だって、あたしならどんなイケメンだってイチコロなのよ? それなのに
よりによって、どうしてあたしに見向きもしない奴、好きになってんのよ…… なんで嫌いになれないのよ…。)
泣いてはいなかった。
涙を流さないのは、亜美の最後の意地だったから。

何時間もそうしていて、夜の10時を回った頃だった。
携帯が今日二度目の着信音を奏でる。
暫く鳴って、それは止まった。
十数分後、また鳴り出し、また止まる。
………また鳴り出し、また止まる。

12時を過ぎた頃、ついに亜美はうんざりして携帯を手に取った。
「もしもし。」
『おう… 川嶋か… 悪い、非常識とは思ったんだが、どうしても話がしたくて…』
「……迷惑なんだけど。 もう電話しないで。」
『待ってくれ!切らないで聞いてくれ!』
「何時だと思ってるの? 超ウゼー。あんたの声聞いてるだけで腹たつから」
『判ってる、だが、聞いて欲しいんだ!』
「……はぁ…マジでウゼー奴………1分だけよ。」
『お、おう。 有難う。 その、今日は悪かった。次があるかどうかは判らないが、もし許してくれるなら…ちゃんと大河と話した
からな、今度は大河が居ても居なくても、オッケーだ。』
「…話ししたって…何を?」
『えっと… 川嶋と二人で会う約束をしてるって事だ。 もっとも、もう嘘になっちまったみたいだけどよ…。』
「…それで?」
『まぁ、予想通り、大喧嘩になった。 でもしっかり晩飯は食って行ったよ。 お前の為に用意したものだって知っててな……。
要するに許してくれたんだと思う。』
「………バカ…… 何言ってるのよ! すぐに大河の所にいって謝ってきな…」『いいんだよ。大丈夫なんだ。』
『大河が母親と仲直りして、今まで一緒に居て、いい友達に囲まれて……少しづつ変わってきたんだよ、俺達も。』
「…っ」
『お前、優しいよな。 なんか、性格悪そうに思えることもあるけど、時々すげぇいい奴で。どれが本当のお前なのかわからん。』
「あ、亜美ちゃんは何時だって超いい子だっつの……。」
『ははは。 そうだったよな。 …………今日は本当に悪かった。 正直、お前があんなに怒るなんて思ってなかった。…すまん。
勝手な話だけど、今日のことで余計に川嶋のことが知りたくなった…。 俺、今まで案外お前のことちゃんと見てなかったのかも
しれないな。』
「な、なにそれ。 言いたかったことってそれだけ?ばっかじゃね。」
『ほんと、いい加減な奴だよな、俺。 なんか訳のわからん話になっちまったかもしれないが、とにかく謝りたかったのと………
今思えば、たぶん、川嶋に許して欲しくって必死になってたんだな……虫のいい話だなこりゃ、ははははは。』
「………もう、とっくに1分過ぎたから…切るよ。 ………………その…………また誘って…ね。」
『!! お、おう!!』
「じゃね、おやすみ、高須くん」『おぅ、おやすみ!』

雨降って地固まる。
ちょっと学力的に残念な亜美でも、これくらいのことわざは知っている。
急に空腹を感じて部屋を飛び出す。 ホールにある姿見に映った顔は一転して明るい表情になっていた。

「…うん。 よし!」
「亜美ちゃん、今日も可愛い♪♪」

            〜 亜美ちゃんの平凡な一日 5 〜                            どっとはらい。



277 名無しさん@ピンキー sage 2010/08/07(土) 13:19:22 ID:A4v+6PuR
いじょ。
もうちょっとほのぼの系にしたいですね。
ではまた。ノシ

272 名無しさん@ピンキー sage 2010/08/07(土) 13:12:46 ID:A4v+6PuR
保守ネタいっときます。
なんか、本格的にちわドラ化してきたかも…

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