中世・近世ヨーロッパ史(だいたい西暦1155〜1857)の歴史の研究および考証(意見・情報交換、議論など)をする研究会のwikiです。歴史の情報共有の場として、あるいは、単なる情報交換の場として。歴史好きの方、お待ちしております。認証されれば誰でも編集可能です。

二方面、多方面作戦ということですが、これは主に戦争、とりわけ大国同士が全面的に争うような場合に際して、戦争の目的はより素早く戦局を好転させ早期に終結へと向かわせることである、ということを主眼に置いた場合に「より早く戦争を決着づかせ、終わらせる」ために用いられる戦略である、ということをまず頭に入れておいてください。二方面、多方面作戦というのは簡単にいうと、敵と接している国境あるいは戦争時に接続可能、アクセス可能な敵との国境線あるいは境界線に際して、同時に二方面(つまり二面)あるいは多方面(三、四面以上)から同時に侵攻をかけて一気に敵の戦線を打破する戦略のことを指しています。これらの作戦についてはあまり深く説明しませんが、戦略的に重要なのは「掎角」の項でも説明した通りゲームやその戦術というものはだいたいその物の二面あるいは二つの頂点を取ってしまえば、大抵は簡単に決着が付く、ものであって
ある程度敵との境界線が存在する場合にそのうちの二面か三面から這入って敵の領土に対して二面を取ってしまえば概ね決着が付く、ということなのです。例えばイスパニアとフランスが戦争するとして(16、17世紀の例で考えてくださいね)、イスパニア側に立ってフランスに侵攻するとします。地図を見ていただければ分かるかと思いますが、スペインとフランスの国境にはピレネー山脈があるので、順当にいってフランス側に入れるのは地中海側かビスケー湾側の開けた地点しかないことが分かります。となると、だいたいイスパニア側からフランス側に侵攻するのには二つぐらいしか陸路からは面がない、ということになりそのうちの一方から侵攻を仕掛けるよりも二面から同時に攻め入ったほうが、敵に面する面が増えることになりより多くチェックを入れることになるので(どちらか一方で勝てば戦局が開けるので)侵攻する際には有利になります。また海路も活用すると地中海側から上陸するかビスケー湾側から上陸するかはおいておいて四面が取れることになりますが、そもそも海から上陸作戦を仕掛けることのできる場合、というのは陸路から上陸地点を押さえている場合、のみで実際に上陸地点付近の敵を陸路からと挟撃するために上陸作戦を仕掛けられるか、というと必ずしもそうではありませんね。上陸作戦というのはそもそも敵と戦端を開くために海から敵の領土などに上陸することを指していますから、ただ戦線を広げるためだけの目的のためにわざわざ時間とコストのかかる上陸作戦を仕掛ける、というのはあまりおすすめできませんね。ちなみに、上陸作戦を仕掛ける場合も、二方面か三方面から上陸を仕掛けたほうが結果的にその地点を確保できる可能性は高まりますから、戦略において二面か三面を取ったほうが有利に戦局を進められるのは間違いなさそうです。さて話を戻しますね。敵の二面か三面あるいはそれ以上の面を取れば敵、防衛側の戦力が分散することになり一方的に侵攻する側には有利になる、ということなのですが例えば実際にイスパニアがフランスに侵攻したカンブレー同盟戦争などの際にはイスパニアはオーストリアと同盟していましたから、戦時前に結ぶ「同盟」という手段を使っても敵に対して三面、四面以上の戦線を開く手段にもなり得るわけです。例えばオーストリアというか神聖ローマ帝国側からならリグリア海に面した側からかあるいはスイス、アルザス地方側からかさらにはその北のロレーヌ地方側からか戦線を開くことができますので、結果的にどれもすべてから攻め込むではないにしろ三面、四面を開くこともできるわけです。軍事的侵攻の話なのでこうしてみるとちょっとおっかないかもしれませんが、まぁ戦略の話だと思って聞いてください。中世・近世のヨーロッパの場合は特に他国同士の戦争に際しても進軍路上の通過国からも通行許可を取らなければいけないので、結果的に敵国への進軍路、あるいは経路上の国・領地からの通行許可、というのは戦略上、とても重要になってくるわけなのです。特にあの頃のヨーロッパの軍隊では大抵どこも戦力は同等の数が揃えば一緒ぐらい、ですからできるだけ消耗や無駄な戦いを避けたいのなら取れるだけ多くの面、最低でも二、三面から敵国に攻め入ったほうが、侵攻戦的には有利になるわけです。海を挟んで敵の領土に上陸する場合も、同じで敵の拠点港や拠点の街に合わせて二面や三面から仕掛けた方がより最終的な上陸に成功する確率が高いわけです。反対に、防衛側は逆にわざと敵の戦力を分散上陸させて、こちらも軍を分けて各個撃破するか、あるいは岐路や隘路(山間や入り組んだ土地、地点のこと)で待ち伏せて敵を撃破するか、もしくは(ある程度予測の付く場合は)敵の進軍路上に堂々と大軍を率いて待ち構えて正面決戦で打破する、などのことをしなければいけません。いずれの場合も、分散せて各個撃破するか計略などを用いて進軍中の敵と叩くか進軍路上で正面から待ち構えて撃破するか、にしろ敵と正面から戦わなければいけないのには変わりはありませんが、兵法や軍略書のそれにある通り敵との戦い方を工夫すればある程度の戦闘は勝つことができますので、いかに上手く闘ったかが戦闘に勝つ秘訣になるのです。逆にそこで動揺や混乱を来たしてしまえば、敵軍に粉砕されることは目に見えているわけです。二面、三面から自領に攻め込まれた上に同盟的にも二方面、三方面から攻め込まれるとなると、戦況的に押し込まれていることには変わりはありませんが、それでも相手を厭戦させたり戦況を引き延ばすことは可能で、逆にそれをすれば和平に持ち込んだりあるいは状況が好転するのを待つことも出来たりするわけです。なので、戦争の戦闘においてはいかに上手くゲームをするか、如何に戦局において上手く立ち回るか、ということが非常に重要になってくるわけです。最後に、局地戦について見ていきましょうか。局地戦とは大局的な戦いのそれとは別に、地方や小さな拠点での攻防を指しているのですが、ましてや本土での戦争となれば大局的のそれとその意に大差はありません。つまり確かに消耗や損耗としては大局的な、大軍同士の決戦のほうがより大きいのですが、本土での戦争において進軍路上で、敵側(侵攻側)の別動隊とぶつかった場合や僻地や隘路での戦闘になった場合(いわゆるゲリラ戦、ですね)はむしろその消耗は勝ち負けの結果に関わらず比較的少なく、対照的にその勝ちのウエイトは大きくなるわけです。つまり、局地戦で勝てば大局で勝てる可能性も高くなるのですが、それ以上に局地戦での勝ちを重ねていけば大局の劣勢を引っくり返すことも叶う、かもしれないということなのです。しかしながら、大局で負けてしまえば特に本土での防衛戦だったりすると総敗北してしまう可能性も高くなるわけなのですが、それでも「戦いの回数」だけでカウントすれば相対的に勝ちやすくかつ回数を重ねていけば十分局地戦のそれは戦局を左右し得る可能性もあるわけです。というわけで、簡単にまとめると局地戦の場合もいかに上手く勝つか、で全体の戦局を左右し得ることもあるよ、ということは覚えておいて損ではありませんね。また、局地戦の場合は計略などでより特に防衛側は勝ちやすい状況にある、ということは覚えておきましょうね。多方面作戦、あるいは四面、五面から攻め入る、ということを聞くと三国志の魏の司馬懿が蜀に攻め入る方策を聞かれたときに「五路より蜀に攻め入る」の策を献策した場面をつい思い浮かべてしまう人も多いかもしれませんが、それくらい二方面、あるいは多方面作戦というのは古来より戦いや戦略においては理に適したこと、ということと認識されていたということはお分かりいただけるか、と思います。長くなりましたが、二方面、多方面作戦とは概ねこういうことです。敵の二面、つまり掎角でしっぽと角の両方を掴めば戦局で有利に闘える、ということなのです。掎角も三国志で出て来る用語ですが、戦争の戦略においては昔からどこにいってもその基本概念や理念は変わっていなかった、ということなのですね。単純なものほど真理が潜む、ではありませんが昔の戦争の戦闘などの事象でも論理的に振り返ってみる価値もある、というわけなのです。

フランスへスペインとオーストリア(神聖ローマ帝国)から攻め入る際の予想経路

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