大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


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ヤスパース

【突破を通じての超越 Transzendieren durch Bruch】
 ヤスパース(『哲学』)
 なにものかを対象的にとらえようとするとき、必ず限界に突き当り、その突破を通じてはじめて、非対象的であったより広い地平が開かれる。このような地平は、包括者 Umgreifende であり、私たちがそれである自我存在 Ichsein としての人間と、存在そのものがそれであるものとに分けられ、後者はさらに客観存在 Objektseinとしての世界、自体存在 Ansichseinとしての超越者に分けられる。

【世界定位 Weltorientierung】
 ヤスパース(『哲学』第一巻)
 世界定位とは、現存在する諸客体に関する知識であり、それゆえ、世界に関する知識であるが、それは完結することのない無限の過程であるがゆえに、ただ定位(方向付け)にすぎない。諸科学は、事実的世界定位として、断片的に諸客体を認識し、一面的に世界像を提示しようとする。これに対して、哲学は、哲学的世界定位として、むしろ、このような定位の限界を明らかにし、完結する世界像の不可能を認識する。

【実存照明 Existenzerhellung】
 ヤスパース(『哲学』第2巻)
 客体に関する事実的世界定位の認識は哲学的にその限界で挫折し、自我存在へと超越する。つまり、自我は、世界に関与するがゆえに現存在でありうるのだが、しかし、このような不確かさを直視して、普遍的知識作用を営む孤独な可能的実存の照明へと第一の飛躍を遂げる。この可能的実存は、他我と、現実の共同性を基礎とし、目的性と合理性を媒体とし、理念と所属性を紐帯とする方向の実存的交際 existentielle Kommunikationを求めるが、しかしながら、これは、自我を浅はかさで満たし、歴史的に特殊な現存在の規定としての、また、歴史内に普遍的な死・苦・争・責としての、さらにまた、全体的な世界や自我の二律背反的な解決されざる不確かさとしての限界状況に至って、そのような交際の限界である現実的実存そのものが、一回限りの、歴史的な、代理不可能なものとして、照明される第二の飛躍を遂げる。そして、ここから、自我が突破され、さらなる超越者の地平が開かれる。すなわち、絶対意識として、愛や信仰や想像による、超越者に係わる実存の存在確信である。
 つまり、実存とは、けっして客体とならなず、むしろ、自我がそこから思惟し行為する根源であり、この自我自身との関係において自我の超越者と関係するものなのである。

【暗号解読 Chiffrelesen】
 ヤスパース(『哲学』第3巻)
 人間の思考や意欲が役立たなくなった限界状況において、形而上学的な地平が開かれる。しかし、この超越者は、すべてを超越する存在それ自体であり、永遠無限な絶対者である。それゆえ、このような超越者は対象化されえず、実存にとっては、反抗と帰依、没落と上昇、昼の法則と夜の情熱、多者と一者のような二律背反でしかない。しかし、世界の中の現象はすべて、この超越者の暗号なのであり、実存は、これによってこの超越者の語りかける言葉を解読することができる。とくに挫折の暗号 Chiffre des Scheiternsにおいて、「存在は存在する」という実存の存在確信を得ることができるのである。

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