大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


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メルロ・ポンティ

【行動の癒合的/可換的/シンボル的形態 formes syncretique/amovibles/symboliques】
 メルロ・ポンティ(『行動の構造』)
 癒合的形態とは、いわゆる本能的な行動のレベルであり、与えられる刺激に対して、それに癒合している特定の行動で反応するだけであり、組換えがきかない。可換的形態とは、学習、すなわち、組換えが可能となるレベルであるが、
ここにおいて、行動のシグナルとなるのは、単独の刺激ではなく、それに意味を与えている場全体の構造である。シンボル的形態とは、自乗された構造、すなわち、そのような構造の構造を設定するものであり、これによってシグナルが与えられなくともそれに代るシンボルを自ら見出すことができ、ここに人間的行動は位置する。

【習慣的/現勢的身体 le corps habituel/actuel】
 メルロ・ポンティ(『知覚の現象学』)
 身体には、習慣的と現勢的の2つの層がある。前者は非人称的であるが、後者は人称的である。習慣的身体は現勢的身体の保証人として働く。幻影肢は、現勢的身体の層ではすでに失われた手の所作が、習慣的身体の層ではまだ姿を見せている現象である。

【生きられた世界 le monde ve゙cu】
 メルロ・ポンティ(『知覚の現象学』)
 第一の哲学的行為は、客観的世界の手前の生きられた世界に戻ることである。
客観的世界などというものは、すでに知的抽象の産物であるのに対して、生きられた世界は、身体が精神とまじりあった経験であり、これは事実としては明らかでありながら、主知主義的な反省によってはくみつくしえず、それゆえ、知的解明を拒否している。そしてまた、このような世界おいては、精神よりも身体の方がより根源的な事実として問題となる。しかし、このような身体は、あくまで主体、すなわち、受肉せる主体なのである。

【受肉せる主体 sujet incarne】
 メルロ・ポンティ(『知覚の現象学』)
 私とは、精神ではなく、まさに身体である。しかし、これは、身体でありながら客体ではなく、あくまで主体なのである。このような身体によって我々はこの世界のただ中に錨をおろし、この世界に住み着き、世界と一体化している。
これこそが世界の根源的構造であって、精神もまたここにおける反省によって身体と相関的に派生してくるものである。つまり、精神とは、身体とは別の独立の実体なのではなく、身体的機能の統合の程度 le degre d'integrationの違いにすぎず、身体とは連続的なものである。精神が身体に作用するとは、身体的機能が生命の水準以上に高く統合されることであり、また、身体が精神に作用するとは、行為の組織が緩んで、より低い統合の構造に場を譲ることなのである。そして、思惟主体もまた、世界を越えるものではなく、むしろ、語る主体として世界の中に受肉しているのであり、言葉が表わすのは、主体の内面的思惟などではなく、言語的な意味作用の世界で主体がとる位置なのである。

【語られた言葉/語りつつある言葉 parole parle / parlante】
 メルロ・ポンティ(『知覚の現象学』)
 言語は沈殿し、間主観的な既得物からなる制度を作り、そこにおいては、言葉の意味は自明に思われる。これが、語られた言葉であり、この既成の言語形式や表現は、思惟の要素となるが、しかし、これらの組合せもまた、大半は、すでに考えられてしまった事柄の反復という空談でしかない。しかし、また、考えられたことのない組合せは、より高次のレベルに統合して、意味を創造するのであり、これが、語りつつある言葉である。これは、語る主体の意図によって、思考的に先取りされた世界の開示へと行方を定め、自己の存在可能性へと企投しつつある言葉の欠如としての思惟であり、これが、言葉として体現されて思惟となるのである。

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