大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


---------------------------------------------------------------------------- E 18世紀の諸科学

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 十八世紀は、十七世紀のような革命的転換はもはやないが、その形而上学的な《理神論》の影も薄らぎ、むしろ《唯物論》的に淡々と研究が進んだ。
 まず、数学においては、前世紀にニュートンとライプニッツによって発明された〈解析〉が、とくに大陸においてライプニッツの記号法をもとに大きく発展した。イギリスは、ニュートンこそが本家であるという数学史的主張にばかり力を入れ、その方法自体を研究しようとはしなかったため、以後、数学の潮流からひどく遅れをとることになる。また、一筆書きの問題から〈トポロジー(位相学)〉が、軍事上の必要から〈図学〉が始められた。
 代数学においては、特定の方程式の解を求めるのではなく、一般に方程式に解が存在するか、という〈存在定理〉が問題の中心となり、数学の性質を大きく変えた。つまり、個別的な問題を解く〈算術〉から、数学的概念とそれらの相互関係を研究する〈数学〉に変ったのである。
 化学、物理学では、〈燃焼〉や〈熱〉、〈電気〉が問題の焦点となった。〈燃焼〉は、当初は、炎と混同されており、[ものを燃やすと〈フロギストン(燃精)〉が出ていく]と考えられていた。しかし、金属の燃焼においては、むしろ、重さが増加することが知られたため、[〈フロギストン〉は負の重さを持つ]とすら考えられた。そのうち、化学技術の発展によって、〈フロギストンなし空気〉の製造に成功し、ラヴォアジエ(Antoine Laurent Lavoisier 1743-94 )は、これを〈酸素〉と名付け、計量測定によって、[〈燃焼〉は酸素の急激な化合である]ということを発見した。彼はこのような研究を重ね、〈質料保存の法則〉を発見し、元素論や、それに基づく合理的な物質命名法など、今日の化学の基礎を『化学要論』(1789)にまとめた。しかし、ここにおいては、〈フロギストン〉を否定した彼も、〈熱〉に関しては、[〈熱〉は〈熱素〉という元素の一種である]としている。いずれにしても、この天才化学者も革命の狂乱の中でギロチンの犠牲となってしまった。
 熱はまた、〈温度計〉の発明によっても研究されていた。そして、気化や凝固が研究され、物質ごとの〈比熱〉や、融解や気化の際の〈潜熱〉が調べられた。さらにまた、〈熱〉の正体はともかく、試行錯誤を重ねながら、技術者たちによって〈蒸気機関〉が発明され、巨大な力を使えるようになり、これが原動力となって、《産業革命》が引起こされた。
 一方、アメリカ独立にも寄与したフランクリン(Benjamin Franklin 1706-90)は、凧によって雲から〈電気〉をとりだすという、とんでもない実験に成功した。また、[カエルの筋肉の中には電気がある]ということも発見され、〈電気〉に関するうさまざまな研究が始まった。
 生物学では、〈博物誌〉が起こった。これは、植物、動物のみならず、ときには鉱物にも及び、多様なものを整理する分類法が、リンネ(Carl Linnaeus 1707-78 )によって確立された。しかしまた、このような試みによって、分類ばかりでなく、さまざまな生物の連続的関係にも注目されるようになった。
 また、天文学や生物学から地質学が派生し、地形形成の研究や、化石による年代測定が行われ、ふたたびまた、化石から古生物学や、比較解剖学が成立し、進化論の基礎を築いた。

【ラプラスの魔 Lapace's spirit】
 ラプラス
 自然界は、ニュートン力学という厳密な因果法則によって規定されているがゆえに、自然の構成素の初期条件をすべて完全に把握できるならば、そこから力学的に計算して、当然、未来もすべて完全に予言可能である。このような全初期条件を完全把握は実際は困難であるが、これのできるとんでもない悪魔ならば、未来も知っているのであり、それゆえまた、現在において全未来は完全に決定されてしまっているのである。
 ラプラスは、数学、天文学を専門としたが、この概念によって、[自然は力学法則によって規定された機械である]という《自然機械論》を明確に提示し、また、[現在において全未来は完全に決定されてしまっている]という《決定論》を主張したのである。もちろん、今日、自然の絶対的蓋然性を認める量子力学によって、このような決定論は否定されているが、それまでの哲学的影響力は、理性万能の思潮とあいまって、絶大であった。

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Posted by fljmgrx 2013年11月14日(木) 15:40:28 返信

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