大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


---------------------------------------------------------------------------- C ユダヤ哲学

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 ユダヤ(ヘブライ)人はかつて遊牧生活をしていたが、前16Cころ、パレスティナの地に定住した。
 また、その一部はエジプトに移住していたが、しかし、エジプト王国の圧制を受け、前13C末、伝説的預言者モーゼの指導のもとに出エジプトし、パレスティナに戻った。そして、この際の苦難と宗教的体験が後のユダヤ教の根幹を形成した。
 かくして、パレスティナにヘブライ統一王国が形成され、前10Cにはダヴィデ王、ソロモン王という名君をえて全盛し、イェルサレムに巨大な城都を建設して、その中心に神殿をすえた。
 しかしながら、ソロモン王の死後、王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂し、両国は抗争を続けた。そして、イスラエル王国は前8C末にはオリエントを統一した強大なアッシリア帝国に滅ぼされ、また、ユダ王国も前6C初には新バビロニア王国に征服され、バビロンへの移住を強いられた。このバビロン捕囚にあって、ユダヤ人たちは苦難を自分たちの不信仰の責任と考え、同前6C末にペルシアによって解放された後には、パレスティナに戻って、イェルサレムに神殿を再建し、神ヤーヴェへの忠誠を誓った。ここにユダヤ教は始まるのである。しかし、ユダヤ人たちはこのように帰郷は認められたとはいえ、独立を許されたわけではなく、あいかわらずペルシア王国の、後には、エジプト王国やシリア王国の支配下にあったのであり、国家にかわるものとして律法に基づくこの宗教的共同体に民族のアイデンティティとした。
 だが、このような歴年の他民族支配にあって、しだいにこの民族的統一はゆるんでいってしまい、前2Cころには、ローマやギリシア、エジプトなどの各地に移住するユダヤ人たちもふえていった。彼らはディアスポラと呼ばれ、当時の文化的共通語であったギリシア語を身につけ、現地の影響を強く受けた生活習慣や思想に変っていった。しかしながら、ユダヤ教の信仰を捨て去ってしまったわけではなく、町ごとに会堂(シナゴーグ)が設けられ、そこでギリシア語に翻訳された聖書でもって律法や民族の歴史などが学ばれ続けた。一方、同じころ、パレスティナにおいてはユダヤ解放戦争が起こって独立を獲得し、強固な民族的信仰を再建する。しかし、それも前1C半ばの大国ローマの攻撃にあってはあっけなく陥落し、ヘロデ大王(イエスの時代のヘロデ・アンティパス王の父)がローマの支配下における分国王としての地位を認められたにすぎず、彼の死後のAD6年には、ガリラヤなどを除くパレスティナの中心地域は総督によるローマの直接統治が行なわれるようになる。
 1C初のイエスの一件の後も、一般のユダヤ人たちは彼が聖書に預言された救世主であるなどとはすこしも考えず、あいかわらず救世主を待望し続けた。とくに、パレスティナのユダヤ人たちはローマに反抗的であり、AD66年には、小さな暴動がユダヤ人を強大なるローマ帝国との全面戦争におとしいれてしまう。そして、その結果は、70年のイェルサレムの徹底的な破壊と虐殺であった。
 その後、ユダヤ人たちはイェルサレムに戻ることを禁じられ、流浪の民となる。それでも当初は、ユダヤ教はローマ帝国内で公認された宗教であったのだが、しかし、4C初、キリスト教が公認され、果ては国教化されるにいたって立場は完全に逆転し、ユダヤ人の法的・社会的地位は次第に低下していった。

アレキサンドリアのフィロン(Philon ho Alexandreios BCc30-ADc45)
 イエスと同時代のアレキサンドリア在住のユダヤ人。富裕著名な家庭に育ち、当時、アレキサンドリアがヘレニズム文化(ギリシア風文化)でもあったため、ユダヤ的伝統とともに、プラトンやストアのギリシア哲学も学び、これによってユダヤ教を合理化し、神学的体系として整えようとした。また、ローマ皇帝崇拝問題に関しては、アレキサンドリアのユダヤ人を代表してローマにその義務免除の歎願におもむき、カリグラ帝に謁見したりもしている。彼はこのように、指導力もあったようだが、しかし、政治はあまり好まず、観想と著作の生活をおくった。
 そして、実際、彼の著作は幸いにもほとんど完全に保存されている。そのおもなものはモーゼ五書に関するものであり、比喩的解釈を大胆に用いて、異教徒のためにユダヤ教の本質を歴史的・哲学的に紹介し、また、ユダヤ人のために聖書の注解を行っている。
 彼によれば、まず絶対超越的な神が存在し、これに対して、この世の物質も存在する。純粋完全である神は、不純不完全な物質とは関係しえない。それゆえ、神は、神から生じるさまざまな力(イデア、天使、ロゴス)を媒介として物質を支配している。かくして、神はこの世に関しても絶対的なのである。しかし、人間は神に由来する霊が物質に由来する肉に閉じ込められている。それゆえ、人間は肉の欲望を断ち切って霊を解放し、神に近づかなければならない。そして、その完全なる形態が神と人間とが合一となるエクスタシス(忘我)なのであるが、しかし、これには神からの啓示が不可欠なのである。

【預言】

【選民思想】

【知恵】

【黙示】

【タルムード】
 2〜5Cのラビ(ユダヤ教師)たちの『聖書』(キリスト教から言えば『旧約聖書』)に関する所説を集めた書。

【カバラ Kabbalah】
 『イェツィラー』『ゾーハル』の2書に基づくユダヤ教系の密教。フィロン哲学から発展したとされる。

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