大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


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フッサール

【「事象そのものへ!」 Zu den Sachen selbst!】
 フッサール(『厳密学』)
 現象学の標語。すべての世界観、作意的な構成を退け、具体的な意識体験に即して、事象の厳密な記述を提唱する。しかし、この事象というのは、一般諸科学でのような、無条件に世界の存在を確信する自然的態度におけるいわゆる事実ではなく、事象を事象たらしめているその本質のことであり、また、この探究に伴って意識の構造も明らかにされる。このため、いわゆる素朴実在論的客観主義とは、むしろ対立するものである。

【現象学的還元 pha゙nomenologische Reduktion】
 フッサール(『イデーン』)
 事象の究極的な基礎付けを厳密に行うための現象学における方法。これは、「超越論的還元」と「形相的還元」からなる。
 我々は、日常生活や諸学問において、世界が経験とかかわりなく存続していると確信する「自然的態度」をとっているが、この「一般定立」のスイッチを切り、括弧に入れる「現象学的判断中止」を行うことで、この態度そのものが対象化され、現象学の領域である純粋意識が「現象学的剰余」として見出される。そして、このような操作を「超越論的還元 transzendentale R.」、「デカルトの道」と言う。
 また、個々の事実も、知覚や想像の「自由変更」によって経験的普遍性から本質的普遍性に高められ、経験の影響を受けない本質が明らかにされる。そして、このような操作を「形相的還元 eidetische R.」と言う。
 しかし、このような還元は、とくに前者は、あくまで個人の意識の中での「自我論的還元」すぎないため、晩年の『デカルト的省察』ではさらに、感情移入によって、世界を客観化する「間主観的還元 intersubjektive R. 」が、また、さらに『危機』では、このような還元以前の、与えられ方は変化しても絶えず前もって与えられている「生活世界」が考察された。

【ノエシス/ノエマ Noesis/Noema】
 フッサール(『イデーン』)
 認識の対象はノエマ的契機にすぎず、意識にはヒュレーとして一面的に射影され、意識の作用であるノエシスによって意識に内在する客観であるノエマとなっている。顕在的コギトは、あるものについての、非顕在的背景を伴ったノエマについての意識であり、すべての実在は意識の意味付与を通してのみ存在する。そして、このような意識の意味付与の作用を「志向性」という。
 充ちたノエマには志向的成層があり、まず、意味と諸性格からなり、さらに、意味は、中心点と諸述語、諸性格は、時間性格や存在性格からなる。意味は意識の内容であり、中心点と諸述語は、ノエシスの注意の変動態と綜合に相関するする。また、諸性格は、意味に付与されるものであり、時間性格として、現在化(知覚)においては、原的・有体的・現在的があり、現前化においては、想起(回想起・疑似想起・予想起)・写像・記号があり、また、現実性・可能性・問題性などの存在性格は、ノエシスの確信・期待・疑問などの信念性格に相関する。

【間主観性 Intersubjektivita゙t】
 フッサール(『デカルト的省察』)
 現象学的還元は、自我論的還元であり、自我に固有の領域は明らかにされるが、自我にとって他者であるものの領域はむしろ遮蔽されてしまった。しかしながら、この第2の領域もまた、あくまで私の他者経験という原初的世界の内在的超越として、第1の領域に含まれているのであり、それゆえ、この固有領域の中で、この固有領域を媒介として超越論的自我は客観的世界をも構成しうるのである。このために、まず、他者は、自我が類比統覚によって、原初的世界における他者の身体に対し、その類似性から、空間的に、感情移入 U゙bertragung を行うことで、ここの私があたかもそこにいるかのように構成される。このようにして、多くの他者が構成されることによって、原初的世界は、多くの主観に共通の客観的世界となり、本源的時間性も世界時間となる。そして、ここにおいて相互に他者の地平を理解する開かれたモナドである諸主観の共同体が、超越論的主観性なのである。

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