控訴答弁書

令和４年（ネ）第■■■■号　損害賠償請求控訴事件
控訴人　控訴人
被控訴人　株式会社ラボ生産　外２名

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　令和４年８月２９日

　　　　　　　　　　　　　　　　控訴答弁書

東京高等裁判所第２２民事部ホに係　御中

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　電話　■■■■■■■■■■■
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　FAX　■■■■■■■■■■■
　　　　　　　　　　　　　被控訴人ら訴訟代理人
　　　　　　　　　　　（担当）弁護士　■■■■
　　　　　　　　　　　　　　　弁護士　■■■■
　　　　　　　　　　　　　　　弁護士　■■■■
　　　　　　　　　　　　　　　弁護士　■■■■
　　　　　　　　　　　（担当）弁護士　■■■■

第1　控訴の趣旨に対する答弁
　１　本件控訴を棄却する。
　２　控訴費用は控訴人の負担とする。
　　との判決を求める。

　　　　　　　　　　　　　　-1-

第２　控訴の理由に対する反論
　１　はじめに
　　(1)　被控訴人らの事実上、法律上の主張は原審にて詳述したとおり
　　　　であり、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決の結論は正当で
　　　　ある。
　　　　　他方、控訴人は、当年7月１１日付け控訴理由書にて、原判決
　　　　には理由不備があるなどと主張するが、それらは原審における主
　　　　張を繰り返したり、独自の見解をもって原判決を論難するものに
　　　　過ぎない。したがって、本件控訴には理由がないから、直ちに棄
　　　　却されるべきである。
　　(2)　以下、必要と認める限度で、上記控訴理由書に反論する（特に
　　　　言及しない点であっても、被控訴人らは事実を否認し、主張を争
　　　　う｡)。
　　　　　なお、特に明記しない限り、略語は原判決の例によるが（ただ
　　　　し､「被告」は「被控訴人」に改め､「被告会社」については「被控
　　　　訴会社」､「被告Ｘ　」については「Ｘ　」という｡)、原判決にない
　　　　略語は、原審における被控訴人ら主張書面の例による。
　２　Ｘ　のパワハラ行為があったとはいえず、被控訴会社は債務不履
　　行に基づく損害賠償責任を負わないこと
　　(1)　平成２７年１２月の夜勤取りやめの告知等がパワハラに当た
　　　らないこと
　　　ア　Ｘ　は、社内で従業員間のトラブルがあったことから（なお、
　　　　突発的なものではなく、継続的なものであった｡)、夜勤を中止
　　　　しようと考えた。そこで、平成２７年１２月４日、まずは被控
　　　　訴人Ｚ　からその旨夜勤担当の従業員に予告し、翌日、Ｘ　が
　　　　自ら従業員に夜勤取りやめを告げた。その際、Ｘ　は、従業員
　　　　間のトラブルがあり、そのままでは夜勤を継続することができ
　　　　ないと説明した。その上で、Ｘ　の指示を受けた被控訴人Ｚ　
　　　　は、夜勤担当者が昼間勤務に変更することができるかどうかを
　　　　確かめるため、アンケート用紙（甲１４）を夜勤担当者に回覧
　　　　し、意思確認をした（被告Ｘ　本人１～２頁、被告Ｚ　本人１
　　　　～２頁)。

　　　　　　　　　　　　　　-2-

　　　　　夜勤取りやめを切り出した後、Ｘ　は、夜勤担当者（従業員）
　　　　の意見を聴き、最終的にこれを実現することはなかった。それ
　　　　は、あくまでも従業員間のトラブルを解消するのが目的であっ
　　　　て、何らハラスメントを意図するものではなく、反対に、労働
　　　　者の就業環境を改善するために必要な方策だったからである。
　　　　　したがって、夜勤取りやめの告知とその撤回が、控訴人に対
　　　　するパワハラに該当するとはいえない。
　　　イ　控訴人は、夜勤取りやめによって多くの従業員からクレーム
　　　　等があり、職場の労働環境を悪化させたと主張するが、そのよ
　　　　うな事実はない。
　　　　　夜勤から日勤に異動することができないので退職すると被控
　　　　訴会社に申し出た従業員もいなかった（被告Ｘ　本人８頁）。
　　　ウ　被控訴人らは、Ｘ　が、夜勤取りやめの理由について「自分
　　　　の胸に聞いてみろ」と控訴人に述べたかどうか知らない。Ｘ　
　　　　はもとより、被控訴人Ｚ　も、Ｘ　が控訴人に暴言を吐いたと
　　　　いう記憶はない（被告Ｘ　本人８～９頁、被告Ｚ　本人２頁)。
　　　　　また、仮にＸ　が「自分の胸に聞いてみろ」と控訴人に述べ
　　　　たところで、夜勤取りやめの原因を自分で考えるように述べる
　　　　ものにすぎず、これがパワハラ行為に該当するとはいえないと
　　　　の原判決の判断は正当である。
　　　エ　控訴人も、幹Ｓ、部Ｈとの面談において、パワハラであると
　　　　申告するどころか、Ｘ　について「Ｘ　さんとちょっと話をし
　　　　てると、そうそう悪い人でもないのかなという、いろいろと必
　　　　死なのか未熟なのか、いろいろ困ってるのか、まあ行き違い。
　　　　そんな厳しいことはいいませんよ。結構広い気持ちではいる、
　　　　広い人間でいるつもりではあります｣「特にＸ　さんに対して
　　　　は、個人に対してはどうとも」と述べ（乙４[６１頁])、それま
　　　　でのＸ　の言動について理解を示し、意に介していなかった。
　　　　そうであるからこそ、控訴人は、この点について、損害賠償請
　　　　求の催告書すらＸ　及び被控訴会社に送付しなかったのであ
　　　　る（甲１２，１３参照)｡
　　　　　この点からしても、Ｘ　が控訴人に対するパワハラ行為をし

　　　　　　　　　　　　　　-3-

　　　　たとはいえない（この点は、後記(2)･(3)の点についても妥当す
　　　　る｡)。
　　(2)　Ｘが平成２８年６月頃にパワハラをしたとはいえないこと
　　　ア　Ｘ　は、控訴人を解雇すると言った記憶はない。被控訴会社
　　　　において解雇無効に関する訴訟や労働審判が係属していたか
　　　　どうか関知してもいない。それに加え、被控訴会社において、
　　　　時間給が上がることはあっても下がることはあまり聞いたこ
　　　　とがない（被告Ｘ　本人９～１０頁)。
　　　イ　被控訴人Ｙ　についても、Ｘ　の控訴人に対する暴言を聞い
　　　　たことがない（被告Ｙ　本人２頁)。
　　　ウ　このように、Ｘ　が控訴人を解雇したり、時間給を下げると
　　　　いう発想を持つこと自体がなく、控訴人が主張するようなパワ
　　　　ハラ発言をＸ　がしたといえるような客観的な証拠はない。
　　　エ　原判決では、平成２９年８月頃から控訴人がＸ　のパワハラ
　　　　行為を主張している旨認定しているが、それでさえパワハラが
　　　　あったという平成２８年６月から１年近く経過しているので
　　　　あるから、控訴人による知覚、記憶、表現及び叙述のいずれに
　　　　も誤りが生ずる可能性が高く、信用性があるとはいえない（こ
　　　　の点は、控訴人が主張する他のパワハラ行為にも基本的に当て
　　　　はまる｡)。
　　　　　その一例として、控訴人は、部Ｈの発言に自らの考えを付加
　　　　して記憶していることがあったことを指摘しておく。控訴人は、
　　　　幹Ｓ・部Ｈとの面談において、部Ｈが過去に「何でも思いどお
　　　　りにいくとは思わないでください。あなたの仕事は会社で決め
　　　　ます。あなたが決めるのではないと。これは労災を防止する能
　　　　力がない、つもりがない」と発言したと断じたが、部Ｈがその
　　　　ように発言した事実はなく、実際には控訴人が「自分の仕事は
　　　　自分で決めます」と言っただけであり、控訴人が「労災を防止
　　　　する能力がないという解釈」を付け加えていた（乙４[３３～３
　　　　４頁])。控訴人が事実と主張する事柄には、自らの解釈、意見
　　　　等が混入しており、真実とは異なっているおそれがある。
　　　オ　他方、当時、Ｘ　がグループ長を務める部署には約１００名

　　　　　　　　　　　　　　-4-

　　　　のスタッフがおり、年２回面談を行っていたこともあり（被告
　　　　Ｘ　本人１１～１２頁)，このように多数の面談を行っている
　　　　中、個々の面談でいかなる発言をしたか記憶していないことが
　　　　あっても何ら不自然はない。
　　　　　そして、Ｘ　が記憶している限度においては、控訴人と話し
　　　　た内容を供述した。すなわち、控訴人から時給を上げてほしい
　　　　との要望があったため、評価があっての時給アップという制度
　　　　であったため､「私の近くでその成果を見せてください」と日勤
　　　　にすることを提案したところ、控訴人は「頑張ります」と「話
　　　　合いが決着したみたいなすごくいい顔」をしたことを記憶して
　　　　いる（被告Ｘ　本人１３～１４頁、１８頁)。
　　　　　このように記憶していることとそうではないことを区別して
　　　　供述しているのであり、Ｘ　の供述の信用性を疑わせる事情は
　　　　ない。
　　　カ　よって、原判決が控訴人の主張するような事実を認めなかっ
　　　　たのは当然である。
　　(3)　Ｘ　が平成２８年９月１９日頃にパワハラをしたとはいえな
　　　　いこと
　　　ア　Ｘ　に対する電子メール(甲３)が送信された経緯は、原審・
　　　　被控訴人ら第１準備書面（２頁）にて述べたとおりである。何
　　　　の脈絡もなく（当然、控訴人が主張するようなパワハラ発言も
　　　　なく)、パＡから同電子メールを受信したため、Ｘ　は驚いた。
　　　　Ｘ　は、控訴人の症状（ヘルニアで首等が痛むこと）は知って
　　　　いたし、その症状を無視して作業を無理強いすることもなかっ
　　　　たからである（被告Ｘ　本人３～４頁)。
　　　イ　Ｘ　及び被控訴会社が、控訴人の症状を理由として、雇止め・
　　　　解雇等をした事実はないし、そのようなことをうかがわれる記
　　　　載は上記電子メール（甲３）にはない。
　　　　　被控訴人Ｙ　は、控訴人を解雇するような上司に意見を述べ
　　　　たことはない。控訴人が有期雇用から無期雇用に転換した頃、
　　　　「後半工程の中心的な存在になるように」とむしろそのまま働
　　　　き続けるよう控訴人を励ましていた（被告Ｙ　本人３，６頁)。

　　　　　　　　　　　　　　-5-

　　　ウ　したがって、この点についてもＸ　のパワハラ行為を認めな
　　　　かった原判決の認定は正当である。
　　(4)　被控訴人会社に責任があるとはいえないこと
　　　　夜勤取りやめが実現されることはなく、Ｘ　にパワハラ行為が
　　　あったとはいえない以上、被控訴会社に安全配慮義務違反がある
　　　とはいえないとの原判決の判断に何ら誤りはない。
　３　被控訴人Ｙ　のパワハラ行為があったとはいえず、被控訴会社は
　　債務不履行又は使用者責任に基づく損害賠償責任を負わないこと
　　(1) 被控訴人Ｙ　が平成２９年８月１５日にパワハラをしたとはい
　　　えないこと
　　　ア　原審・第５準備書面（３～５頁）及び前記２(3)アにて述べた
　　　　とおり、被控訴人らは、控訴人の症状に配慮しながら作業に従
　　　　事させていたのであるから、被控訴人Ｙ　が「労災が再発して
　　　　悪化しても構いません｡」などと控訴人に述べることはあり得な
　　　　い（被告Ｘ　本人３～４頁、被告Ｙ　本人６頁)。
　　　　　前記２(2)エにて指摘したとおり、控訴人は「自分の仕事は自
　　　　分で決めます」と言い張ることがあり、被控訴人Ｙ　が「指示に
　　　　従ってください」と注意したことがあったとしてもそれがパワ
　　　　ハラ行為に当たることはない。
　　　イ　被控訴人Ｙ　としては、当初控訴人との関係は良好であった
　　　　ものの、控訴人が望むままに残業をさせることはできないと伝
　　　　えた後から、控訴人の被控訴人Ｙ　に対する態度が硬化したも
　　　　のと認識しており、控訴人は、興奮してくると白目をむいて大
　　　　声で話すこともあった（被告Ｙ　本人５、８頁)。挙句に、控訴
　　　　人は、被控訴人Ｙ　のことを「感情的に言えば、あんなやつ」
　　　　（乙４[５０頁])､「サイコパス｣(危険､異常な人間という意味）
　　　　と言ってはばからない（原告本人３５頁)。
　　　　　このように控訴人が一方的に被控訴人Ｙ　を敵視している状
　　　　況下で、控訴人は、被控訴人Ｙ　から被控訴人会社の指示どお
　　　　り作業をするように指導されたことを曲解し（あるいは不服に
　　　　思い)、パワハラがあったと主張しているのであるから、信用性
　　　　があるとは到底いえない。

　　　　　　　　　　　　　　-6-

　　　ウ　また、甲第４号証が電子メールそのものではないことは明ら
　　　　かであり、部Ｈ・幹Ｓの面談においても、両名は同メールを受
　　　　信したことを認めていない。あくまでも控訴人が自らのタブレ
　　　　ットに打ち込んだ自らの主張を両名に示しただけである。この
　　　　ことは部Ｈが「じゃあ原告さんの今タブレットでお持ちの内容
　　　　を、原文ほぼほぼまま」と述べたのに対し、控訴人が「ええ。…
　　　　（中略）…メールでお伝えしようと思ったのを、いきなりじゃ
　　　　ちょっと駄目なんで、帰ってからちょっと一生懸命、ううって
　　　　うなりながら作った感じでした」と創作したことを説明してい
　　　　ることからも明らかである（乙５[２頁])。それゆえ、甲第４号
　　　　証が控訴人の主張を客観的に裏付けるものでないとした原判決
　　　　の認定に誤りはない。
　　　エ　したがって、控訴人が主張する被控訴人Ｙ　のパワハラ行為
　　　　自体を認めることができないと判断し、被控訴人Ｙ　の不法行
　　　　為責任を否定した原判決は正当である。
　　(2)　被控訴人会社に責任があるとはいえないこと
　　　　　被控訴人Ｙ　にパワハラ行為があったとはいえない以上、被控
　　　　訴会社に使用者責任及び安全配慮義務違反があるとはいえないと
　　　　の原判決の判断に誤りはない。
　　４　被控訴人Ｚ　のパワハラ行為があったとはいえず、被控訴会社は
　　　債務不履行又は使用者責任に基づく損害賠償責任を負わないこと
　　　(1)　被控訴人Ｚ　は控訴人の令和２年６月２５日付け有給取得を拒
　　　　否していないこと
　　　　ア　被控訴人Ｚ　は、控訴人から直接有給取得の申請を受ける立
　　　　　場にはなかったから、令和２年６月２５日に控訴人が有休を取
　　　　　得しようとしていたことは関知していないし、被控訴人Ｚ　が、
　　　　　部Ｊグループ長代理に対し、控訴人に有給を取得させないよう
　　　　　に指示したこともない（被告Ｚ　本人３～４頁)。
　　　　イ　また、被控訴会社は、控訴人が主張している休暇願い（甲５）
　　　　　が提出されているか探索したが､発見するには至らなかった（被
　　　　　告Ｚ　本人３頁)。上記休暇願いを別にすれば、控訴人が有休を
　　　　　取得することができなかったことはないのであるから（原告本

　　　　　　　　　　　　　　-7-

　　　　　人３４頁)、被控訴人Ｚ　が控訴人に有休を取得させないように
　　　　　指示、妨害した事実などない。
　　　　ウ　したがって、原判決が被控訴人Ｚ　のパワハラ行為を認定せ
　　　　　ず、その不法行為責任を認めなかったことに誤りはない。
　　　(2)　控訴理由書２１頁(3)記載の控訴人の新たな主張に対する認否
　　　　ア　同ア記載の事実のうち、令和２年７月、パＡの有休申請が拒
　　　　　否されて欠勤処理されたことは否認し、その余は知らない。主
　　　　　張は争う。
　　　　　　控訴人は同月１日のことをいうようであるが、同日は有休と
　　　　　して処理されている（甲３８の２)。
　　　　イ　同イ記載の事実のうち、部Ｊグループ長代理がシフト表を作
　　　　　成、掲示すること、パＡが令和２年７月１日に有休を取得した
　　　　　こと、被控訴人Ｚ　が同月１３日になって有休取得に関する考
　　　　　えを改めたこと、パチにつき同月８日及び１４日は休業扱いと
　　　　　されたこと、パリが同月７日に有休を取得したことは認め、パ
　　　　　ヌにつき同月１７日は休業扱いとされたことは否認し（欠勤の
　　　　　ままであった｡)、その余は知らない。主張は争う。
　　　　　　パヌは欠勤のままであったことからしても、各労働者の希望
　　　　　に沿って勤怠が決定されていたことが分かる。
　　　　ウ　同ウ記載の事実のうち、被控訴人Ｚ　のメール（甲９）に記
　　　　　載されている限度で認め、その余は知らない。主張は争う。
　　　(3)　被控訴会社に責任があるとはいえないこと
　　　　　　被控訴人Ｚ　にパワハラ行為があったとはいえないし、被控訴
　　　　　会社が、被控訴人Ｚ　のメール（甲９）記載の運用を容認したわ
　　　　　けではない以上、被控訴会社に使用者責任及び安全配慮義務違反
　　　　　があるとはいえないとの原判決の判断は正当である。
　　　５　結論
　　　　　以上のとおり、控訴人が主張する控訴の理由はいずれも採用する
　　　　ことができないから、本件控訴は直ちに棄却されるべきである。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上

　　　　　　　　　　　　　　-8-