控訴理由書
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控訴理由書 
令和４年(ネ)第■■■■号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 控訴人
被控訴人 株式会社ラボ生産 外２名
控訴理由書
令和４年７月１１日
東京高等裁判所第22民事部 御中
控訴人訴訟代理人
弁護士 ■■■■
控訴の理由は、次のとおりである。
第１ Ｘ のパワハラに関し、被控訴人会社の責任を否定した原判決の誤り
１ Ｘ の突然の一方的夜間勤務取りやめ通告と自分の胸に聞いてみろ暴言
（１）原判決は、�（神�27年12月４日のＸ （以下｢Ｘ ｣という｡）の夜間
勤務取りやめ宣告が実体的にも手続的にも問題があったことを認めながら、「夜間
勤務の取りやめがパワハラ行為に該当するかどうかはともかく」などとして、判断
を避けている(判決書18頁)。
また、原判決は、��同月７日控訴人から夜間勤務取りやめの原因を聞かれたＸ
が控訴人に対し「自分の胸に聞いてみろ」発言をしたことについては、原因につい
て自分で考えるように述べたものにすぎないとしてパワハラに該当しないと判示
し、その結果被控訴人会社の責任に言及しない(判決書18頁〜19頁)。
ア まず、被控訴人らの時効の援用の主張は抗弁であり、控訴人は請求原因とし
てＸ の上記�，離僖錺魯藕坩戮犯鏐義平猷饉劼了藩兌埓嫻い鮗臘イ靴燭里任△襪�
ら、その判断を回避して抗弁の主張に対する判断を行うのは、理由不備の違法を犯
すもので許されない。
-1-
そして、控訴人ら夜勤パート従業員の労働条件を無視して夜間勤務を突然取りや
めることによる重大な労働条件変更の決定をグループ長に過ぎないＸ ができるは
ずがなく、さしたる理由も従業員に対する説明もないままにしたＸ の一方的な越
権行為は、実質的にも手続的にも違法でありかつ社内を大混乱させるもので、案の
定これによって退職予告したパートＥ や一時日勤異動したパートＤら多くの従業
員からクレームや夜間勤務継続の要望が出るなど職場の労働環境を悪化させた明ら
かなパワハラ行為以外の何ものでもない。
また、夜勤パート社員にとって、夜間勤務の取りやめは、労働者を不安にさせ自
身の生活様式の変動に直結する重大な関心事であるから、控訴人がＸ に夜勤閉鎖
の理由を問い質すのはいわば当然のことで、Ｘ の「自分の胸に聞いてみろ。」発
言は、上司であり所属グループの長である責任者Ｘ がそれに対して説明を拒否す
る理由も必要性も全くない。突然の夜間勤務取りやめの宣告も、その理由の拒否に
ついても何ら正当性がない。しかし、Ｘ からされた暴言は、上記発言に止まらな
い。Ｘ は「（理由を）聞かんでいい。」と説明を拒否した上、あたかも控訴人に
責任を転換するように「自分の胸に聞いてみろ｡」と暴言を吐き、その上さらに｢う
だうだ言うな。仕事をしろ｡」と重ねて暴言をいたのである(訴状請求原因５頁、原
告準備書面（4）の２頁、甲23、24）。これについては、さらに後日Ｘ の解雇発
言に先立ち、同人から「お前がしゃべってばかりいるからだ｡」と言われ、何時ど
こでの話か問うと結局言い掛かりだと認めたのである（訴状請求原因５頁）。、こ
のＸ の発言ないし態度は、単に「うるさい。余計なこと言わずにお前らパート社
員はだまって仕事だけしていればいいんだ｡」という趣旨の発言であるから、いわ
ばパート社員に対する差別的思想に基づく蔑視発言に他ならない。これをパワハラ
でないという原判決の感覚が全く理解できないのである。
そして、この一連のＸ の暴言は、被Ｚも目撃しているはずであるが（甲23､24
の２頁、被告Ｚ 本人調書1〜2頁、陳述書（乙6の2））、Ｘ は「記憶が定かで
ない｡｣、被控訴人Ｚ は「Ｘ の暴言はなかった｡」と否定するのみであって、現
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場の状況から彼らの供述は不自然なもので虚偽といってよく、信用に値しない。
イ Ｘ の「自分の胸に聞いてみろ｡」発言は、その経緯からみれば、被控訴人
らが主張するように控訴人に自省を求めた発言でなく､また､原判決が言うように、
単に「原因については自分で考えるように述べるにすぎず｣（判決書18頁）という
ようなものでないことは明らかで(原告準備書面(6)の４〜５頁)、夜勤パート社員
の重大な労働条件変更を通告する以上、グループ長のＸ には当然にその理由につ
いて説明義務がある。にもかかわらず説明責任を果たさずに「聞かんでいい｡｣「自
分の胸に聞いてみろ｡｣「うだうだ言っているときとちゃうやろ。今は仕事しろ｡」
なる言い方は、組織を束ねる長にふさわしくない了見の狭い人間によるあたかも原
因が控訴人にあるかのごとき侮辱的発言である。
しかし、夜間勤務取りやめが控訴人に原因がないことは、被Ｙが聞いてくれと指
示した被Ｚが控訴人が原因でないことは明言しているのであるから(甲15、甲23、
甲24)、部下を統率する上司Ｘ の他人を見下す無用な責任転換パワハラ発言であ
る｡Ｘ がこのような発言をする何らの必要性も必然性もないパワハラ発言である。
にもかかわらず､「原因について自分で考えるように述べるものに過ぎない｡」と
する原判決の判事は、極めて皮相的で当時の状況を子細に検討してパワハラを認定
する意思が全くうかがえない。
（２）Ｘ の供述（陳述書及び尋問結果）が信用性に欠けること
ア Ｘ は、夜間勤務を中止するに際し、昼間勤務に変更できるかどうか従業員
の意向を確認したとか、個別面談したなどと供述するが（Ｘ 本人調書２頁）、そ
のような事実はなく、実態は、夜間勤務の中止を一方的に通告した上で、日勤に異
動できる者は申出するように促し（甲14)、可能でない者は退職を余儀なくされて
いる。面談と言うより、夜間勤務中止宣告後に多くの夜勤従業員から不満やクレー
ムとともに夜勤継続の要望が訴えらえた状況があり、日勤異動に同意した者がほと
んどなかったことから明らかなように（甲14、Ｘ 本人調書８頁)、やむなく撤回
したに過ぎない。
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イ Ｘ が控訴人から夜間勤務の中止理由を聞かれて「自分の胸に聞いてみろ」
発言をしたことについて､「思い出せません｡」とする供述(Ｘ 本人調書８〜９頁)
は、当時のやりとりの詳細に関する録音物が存在する上、被控訴人Ｚ も現場に居
合わせた状況があり（甲24、23のほか原判決も認定している。判決書17頁)、そ
の内容は夜間勤務の中止の理由等のやりとりに関する経緯から十分合理的で信用で
きるのに対し（甲23、24)、Ｘ は単に覚えていないと否定するのみで、被Ｚも同
調するが（乙６の２，２の（4))、結論をいうのみで、合理的な説明はない。
（３）控訴人は、Ｘ の夜間勤務を一方的に取りやめる（夜勤閉鎖）パワハラ発言
をしたことの裏付け証拠として、甲14（画像)、何らの予告も事前協議もなかった
突然の宣告だったことにつき甲15（控訴人と被控訴人Ｙ のメール)、撤回に配慮
がないことにつき甲16（控訴人とパートＣの電子メール)、自分の胸に聞いてみろ
発言は甲23（録音物)、甲24（録音概要)、甲35（原告陳述書）３頁の提出したこ
とに加えて原告本人尋問の結果が裏付けており､立証は十分であることを指摘する。
２ 被控訴人会社の責任
（１）原判決は、上記のとおりＸ の夜勤勤務の取りやめのパワハラ該当性の判断
を避けた上で、２日後の６日にＸ が撤回して夜間勤務が継続されることになった
ことや、控訴人からパワハラとして被控訴人会社に対応を求めることがなかったこ
とをもって、被控訴人会社が特段の対応をしなかったことについてパワハラを放置
した安全配慮義務違反は認められないと判示する(判決書18頁)。また､「自分の胸
に聞いてみろ」との発言については、前記のとおり夜間勤務取りやめの原因を聞か
れたことに対する返答でありパワハラに該当しないとして、被告会社の責任に言及
がない(判決書18頁)。
しかしながら、労働条件を一方的に変更告知するパワハラ行為が後日撤回された
からとか控訴人が当時被害を申告しなかったからといって被控訴人会社の責任が生
じないとか違法性が消滅するものではない｡「自分の胸に聞いてみろ」発言が侮辱
的なものでパワハラに該当することは既に述べた。
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（２）問題は、前記（１）のアのとおり、控訴人ら夜勤パート従業員の労働条件を
無視してさしたる理由も従業員に対する説明もないままに日勤異動を提示したX
の一方的な越権行為は（甲14)、社内を大混乱させたことは明らかで、現に多くの
混乱した従業員からクレームが出された。このX の重大な勤務体制の変更は、被
控訴人会社も直ちに認識したはずであり、結局職場を混乱させたまま従業員の反対
で撤回を余儀なくされたもので、決してX 自身が違法行為を認識して反省し撤回
したものではない。このような重大な違法決定を被控訴人会社が知りながら、X
が自ら撤回するまで被控訴人会社がX に対して指導、処分その他何らかの是正措
置を積極的に講じた状況はうかがえず、これを放置したというほかない。かつ、X
が権限を逸脱した違法行為(パワハラ）に対して、被控訴人会社がその責任を問
うたり、法令や社内規定に違反するとしてX を処分した状況もうかがえない。こ
うした被控訴人会社の対応が、X の上記(2)のイの第２のパワハラ行為を招いた
というべきである。
（３）そもそも被控訴人会社が日頃従業員教育・指導・研修・啓蒙等パワハラ防止
対策を怠っていたことがX やその後の被控訴人Y 及び同被Zら中間管理職の一
連の労基法違反行為や権限逸脱ないし濫用行為に至っているのであって、被控訴人
被ZはX の夜間勤務取りやめという違法通告を目撃しながら被控訴人会社に何ら
の報告も対応も求めていない。X の一連のパワハラ行為を発生させたこと自体が
被控訴人会社の日頃の良好な職場環境の保持ないしパワハラ防止義務に反する被控
訴人会社の責任は明らかである。
被控訴人会社が、今回の件で、X に対して何ら懲戒等の処分も再発防止策も講
じていないことも、被控訴人会社のパワハラ問題に対する日頃の無策を物語るもの
で、上記環境保持ないし措置義務違反を構成する被控訴人会社の責任は否定できな
いと言わねばならない。
２ 解雇発言
（１）X のパワハラ行為
-5-
ア 原判決は、�々義平佑�以前からX の上記解雇発言を訴えていることを認め
ながら、平成28年６月頃、X から「お前なんかいつでも解雇できる。数か月余
分に払えばいいんだから｡｣「時給を下げてやる。埼玉県の最低賃金の時給に下げ
てやる｡」旨の暴言を受けたとする控訴人の主張は裏付け証拠がないとか、��否認
するX 発言は不合理でないとはいえない、などとの理由でこれを控訴人の主張を
認めない。��X 発言を裏付けるものとして提出したパC発言(甲18、25)につい
ては、反対尋問を経ていないとの理由でその信用性を否定する。そして、��X の
上記パワハラ発言について記憶がないとするX や被控訴人Y の供述について嘘
と疑う証拠もないなどとして、控訴人のX パワハラ発言を認めない(判決書 19
頁)。
控訴人が、X のこの解雇発言の経緯を述べ、前日に控訴人と被控訴人Y との
間に、同被控訴人の新たな作業の指示の意義等についてやりとりがあり、その翌日
の本件X の解雇発言当日に、X との面談の場に被控訴人Ｙ も立ち会っている
のである（甲19)。被Yは前日新たな作業を控訴人に指示した事実、その仕事の意
義を控訴人が被Yに質問した事実、翌日X と控訴人の面談の場に被控訴人Y が
立ち会った事実を認めているのであって（被告Ｙ 本人調書７〜８頁)、控訴人の
甲19の事実は相当程度裏付けられているのであるから、信用性を疑うことは出来
ない。
原判決は､Ｘ から解雇発言をされたこという控訴人の一貫した供述の信用性と、
単に言った覚えはない、記憶にないと否定するだけのＸ 供述の信用性を十分に比
較検討し吟味した状況はうかがえない。原判決がＸ の否認供述を不合理でないと
いう理由が定かでない。また、上記パＣ発言について、原判決が反対尋問を経てい
ないなどとしてその信用性を否定するが､裁判所は人証請求の釈明を求めなかった。
当事者に尋問について打診も勧告もしないままこのような独断が許されるのか。反
対尋問を経ていないという理由で控訴人提出証拠(甲18、甲25）の信用性を疑い否
定するのであれば、裁判官は職権でパＣを証人として採用するか、あるいは当事者
-6-
に請求を勧告すべきである。にもかかわらず、何ら尋問を経ることなく控訴人が提
出した上記証拠（録音とその反訳書）の信用性を否定することは許されない。心理
不尽の違法を犯すものといわなくてはならない。
原判決は、Ｘ の前記解雇発言はそもそも、前記１の（1）及び（2）の「自分の
胸に聞いてみろ｡」｢うだうだ言うな。仕事しろ｡」といったパワハラ発言が当該
解雇発言や雇止め発言に繋がっていることをどれだけ理解しているのか(訴状５頁、
原告準備書面(4)の２頁、原告準備書面(6)の４頁)。
イ 原判決の論理は、あたかも控訴人の主張を否定する際に使用するマニュアル
のごとき表現で、誠に説得力がない。結局直接証拠がない限り、被控訴人らが否認
する以上、その否認が嘘と言えない限り控訴人の趣向を排斥すもので、当事者の主
張が対立した場合の詳細な間接証拠による事実認定を放棄するものである｡しかし､
この後も同様の論理で控訴人の主張を排斥しており、誠に誠意のない判決である。
控訴人は、裏付け証拠としては、甲18（録音反訳書)、25（録音物)、甲19（解
雇発言経過)、甲35（原告陳述書）を提出しており、原告本人尋問の結果を総合す
れば、被控訴人らからはＸ 本人の供述以外これを裏付ける反証は提出されなかっ
たのであるから、控訴人の証明は十分であると考える。
ウ Ｘ の供述が信用性に欠けること
Ｘ は、解雇発言についても同様「解雇しますと言った覚えはありません｡」と
いうだけで、その前後のやりとりについても「ちょっと記憶にないです｡」と言葉
を濁すのみである（Ｘ 本人調書)。しかし、被控訴人Ｙ はその場に居合わせて3
人で話をしたことがあったこと、また、前日控訴人から新しい作業の指示や意味や
評価について聞かれたことををそれぞれ認めており（被Ｙ本人調書７頁)、これら
の事実は前日の控訴人と被控訴人Ｙ のやりとり（原告陳述書８頁の６項(1)）及
び解雇発言時のやりとりを述べる控訴人の供述を裏付けており（原告陳述書８頁の
６項（2))、Ｘ の供述に対して控訴人の供述は十分信用に値するのである。
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（２）被控訴人会社の責任
Ｘ のいう解雇発言は、何ら正当な理由のない突然の一方的な解雇権濫用発言た
るパワハラ行為である。こうした繰り返されるＸ のパワハラを始めとする被控訴
人Ｙ 及び同被Ｚら中間管理職による本件一連のパワハラ行為が随時頻発している
ことは、とりもなおさず被控訴人会社のパワハラ問題に関して従業員殊に中間管理
職に対する教育、研修、啓蒙が不十分であることを物語っている。このことは、控
訴人の供述からも、また、被控訴人らの研修等の立証がないことからも明らかであ
る。社内におけるパワハラ行為が職場環境を悪化させ効率的な業務の執行を阻害さ
せるものとして大きな社会的問題となっている今日、会社が挙げてその防止に務め
る義務が課されている状況にあって、被控訴人会社がかれらのパワハラを防止でき
なかったこと自体が日頃の指導研修啓蒙義務違反として安全配慮義務を懈怠したこ
とに他ならないのである。
３ 「雇止め」及び「日勤異動」発言
（１）Ｘ のパワハラ行為
ア 原判決は、控訴人が提出したパＡのＸ 宛電子メール（甲３）が存するが、
契約更新拒絶や日勤への異動の話があったことを前提とした内容ではないとして、
控訴人が平成28年９月19日頃、Ｘ から「次の契約だが、君の仕事の能力が低い
ので、このままなら更新はない｡｣「そこまで言うなら、日勤に来い。俺が直接評
価してやる｡」などとパワハラ発言を受けたこと（請求原因３項（1）のウ、原告準
備書面（5）の５頁）を裏付けるものではないとする(判決書20頁)。
しかしながら、甲３のＸ 宛の電子メールは、平成28年９月19日頃にＸ の雇
止め予告の発言（パワハラ）を受けて、当時の経緯及びやりとりの状況を記載した
甲20の経過説明書記載のとおりの経緯で作成され送信されたものである。自分な
りに労災による受傷の影響の中で精励していることをＸ に説明して理解を求めた
ところ、Ｘ から、そこまでいうなら俺が査定してやるから日勤に来いと異動を命
じられたのである。Ｘ は当時日勤のアマアルバムグループのグループ長も兼ねて
-8-
いたから日勤異動は単なる打診ではなく一方的な命令だったのである。ただし、控
訴人が所属するプロアルバムグループでなく、作業内容の全く異なる新たな職場で
もあるアマアルバムグループで（異動先がアマアルバムグループであることは、被
告Ｘ 陳述書（３頁）や被告ら第３準備書面３-４頁から認められる｡）かつ日勤業
務というこれまでと労働環境が大きく変わり、しかも夜勤手当がなくなり実質支払
賃金が減額となる部署への突然の異動命令でありながら予告も打診もなく通行され
たもので、その意味でパワハラ二次被害の面がある。
夜勤勤務の控訴人がグループ長に一方的に日勤を命じられた以上、控訴人にとっ
ては、Ｘ にそうした権限があるかどうかはともかく、従わないと解雇もありうる
とのおそれから不満ながらも異動の覚悟をした。そして、Ｘ の意図は、異動先で
不良の査定をして控訴人の雇止めの正当性を基礎付けるための異動を求めるもので
はないかとの思いから、パＡチーフには、Ｘ に雇止めを撤回してほしいとの控訴
人の思いを伝えた上で、いまできることとして異動先において不良の査定を避ける
べく、そのためには、Ｘ に自身の健康問題を明確に伝えることと、日勤のアマア
ルバムグループに異動になったら、控訴人の健康状態、すなわち控訴人の労災後遺
障害の内容と程度を理解してこれにマッチした作業の担当となるように責任をもっ
て業務分担を指示してほしい旨伝えて配慮を求めるため、甲３の電子メールを作成
してＸ に送信したのである。
雇止めの予告に対して精一杯控訴人がそれまでの自身の努力を説明した結果Ｘ
から出された日勤異動は雇止め前の代案ないし雇止め猶予案であり、控訴人は日勤
での仕事ぶりを査定して改めて結論を出すといわれたグループ長のパワハラに該当
するような不当な通告ないし命令であると感じつつ、Ｘ の部下として健康状態の
許す限り良い査定を獲得するため頑張るつもりだった。つまりその時点では、もと
より雇止め予告を撤回してほしい気持ちはあったが、撤回や日勤異動の取消しを直
接求めるためのメール送信をしたものではなかったから、原判決がいうような前提
の文章になっていなかったに過ぎず、したがって、このことからＸ の上記発言が
-9-
なかったことにはならない。むしろそうしたＸ の発言を踏まえた甲３の電子メー
ルだったことが理解されるべきである。
そして、翌20日にパＡパートリーダーを通じて電子メールを送信してもらいＸ
に配慮方求めたのであるからその因果関係は明らかであるのに、記載内容が必ず
しも雇止めや日勤異動を前提としたものではないとの形式的な理由のみでパワハラ
行為を否定した原判決の誤りは明らかである。そうでなければ、控訴人は何のため
にわざわざパートリーダーを介してまで、行動に出たというのであろうか。
なお、控訴人は、被控訴人らが言うように（被告ら第３準備書面４頁)、アマグ
ループへの移動取りやめをＸ に要望したことはないし､パＡに伝えたこともない｡
現に甲３にもそのような記載はない。また、この異動の件は、その数日後に控訴人
の業務中にＸ がやってきて「このまま夜勤を続けてください。あなたは運が悪か
った｡」と言われ､Ｘ が控訴人の日勤異動と雇止めを事実上撤回した（甲35の16
頁)。このときは、説明や質問等それ以上のやりとりは一切なかったので撤回の理
由は不明だが、控訴人にマッチする作業はアマグループには見当たらなかったこと
からすれば、この雇止め・日勤異動通告も夜間勤務のとりやめ同様Ｘ の思い付き
的な軽率判断だったものと思われる。
イ 原判決は、控訴人の陳述書（甲35)、控訴人本人の供述（原告本人調書）そ
の他控訴人の雇止めに関する経過報告書（甲20）等の間接証拠を含めて、控訴人
の主張を裏付ける客観的証拠がないとする。他方、記憶がないとするＸ 供述をそ
の信用性を疑わせる証拠はないとして、控訴人の主張を否定した(判決書21頁)。
ここでも原判決は、間接証拠には目をくれずに、直接証拠が存しない限り事実認
定出来ない旨宣告する通り一遍のワンパターンのマニュアル認定を施すもので、誠
に遺憾である。Ｘ の記憶がないとする本人尋問に対する供述については、控訴人
がその信用性を疑うに足る十分な主張立証を尽くしているにもかかわらず、記憶に
ないとするＸ 発言を信用する。他方控訴人の供述の信用性については、一貫して
主張している点等相当程度信用性を認めながら、結果的にその信用性を疑い、何ら
-10-
の根拠も示さずに虚言と認定して排斥する。まさに結論ありきの原判決の判断は経
験則に反するもので、到底承服できない。
ウ Ｘ の供述が信用性に欠けること
雇止めについても同様Ｘ は｢覚えていない｣を連発するだけで(Ｘ 本人調書11
頁、12頁)、その前後のやりとり中「日勤に来い」と言った記憶はあると認めなが
ら、被Ｙの同席事実や自身の雇止め発言といった自己に不利益な発言のみ認めない
のであるが、このようなＸ の否定供述は合理性がなく信用性に乏しいものと言わ
ざるをえないのである。
Ｘ は、陳述書で、Ｘ が控訴人に提案指示したアマアルバムグループへの日勤
異動を控訴人が取りやめることを要望していたのでパＡの考えで甲３の電子メール
を作成させたとか、控訴人が体調不良を理由に異動の取りやめを要望するため甲３
の電子メールをＸ に送信したなどと供述し(乙６の１の３頁)、Ｘ の雇止めや日
勤異動を一方的に命じたパワハラとは無関係と述べている。しかし、控訴人が甲３
の電子メールには何ら日勤異動の取りやめなど要望していない。かえって、このよ
うなＸ の供述は、日勤異動に対しては控訴人はいい顔をして受け容れ面談を終え
たというＸ 自身のの法廷供述と明らかに矛盾するものである（Ｘ 本人調書１３
頁､１８頁)。雇止め発言を記憶がないとするＸ 供述は到底信用に値しないのであ
る。
そもそも、Ｘ は､「雇止めの話を控訴人にしたことは覚えていない｡」「被Ｙの
同席やその場で被Ｙを叱ったことは覚えていない｡｣と言いながら(Ｘ 本人調書11
〜12頁、14頁）、「日勤に来い。俺が査定してやる｡」という言葉は記憶あるとい
う（同13頁)。これらは控訴人の主張を相当程度裏付けるものである。他方、Ｘ
は、そのときの面談の場で、控訴人から「時給を上げてほしい」と要望されたなど
と証言するが、事実に反する証言であるばかりか、そのような供述はそれまでＸ
が全く主張していなかった事実である。Ｘ はさらに、被控訴人ら代理人の補充質
問に対して「日勤に異動して自分の側で成果を見せてほしいという話をしたら、控
-11-
訴人は話合いが決着したみたいないい顔をして、頑張りますと答えて面談が終わっ
た｡｣（同１８頁）などと取って付けたような証言をする。しかし、これまたそれま
で主張していない内容の新たな供述であって、雇止めや日勤の異動を宣告されてそ
こで査定をして改めて判断するような不利益通告をされた控訴人が、そのような言
動ないし対応をすることはありえず、その直後の控訴人の送信したメール（甲３）
に照らしても、Ｘ の証言は何ら裏付けのない架空の全く信用に値しない供述であ
る。
むしろ、控訴人が主張し供述するように（甲２０)、平成28年９月19日頃にＸ
から「このままなら更新はない｡」と雇止めを予告されたこと、控訴人が労災後遺
症を抱えて自分なりに努力していることを説明したところ、日勤に来い、俺が評価
してやると異動を求められたこと、それに対して、パＡから控訴人の健康問題を伝
える内容の電子メール(甲３)を送信してもらったこと、Ｘ から日勤異動の取消し
を聞かされたこと、以上の経緯に鑑みると、控訴人の供述は十分合理的に信用に値
するものであって、甲３の記載について、単に「更新拒絶や日勤への異動の話があ
ったことを前提とする内容ではない」ことを理由にＸ の雇止めパワハラ発言を否
定するのは誤りである。
（２）被控訴人会社の責任
前記２の（２）と同一であるので、援用する。
付言すると、Ｘ は、グループ長という所属アルバムグループに100人以上の部
下を擁する責任者の重責にありながら（Ｘ 本人調書６頁）、部下の労働条件の突
然の変更（夜間勤務取止めによる日勤異動、賃金引下げ）ないし契約の終了（解雇、
雇止め）といった権限外の処分を乱発したり（同６頁、15頁)、そうした労働者に
対する合意のない一方的な不利益処分を禁止した労働基準法や労働契約法あるいは
パワハラ行為を禁止して解雇事由と定めた就業規則等の法令及び社内規則を十分に
理解しているとは到底言い難いＸ の言動は（この点は有給休暇の権利の知識を欠
いていた同じグループ長の被控訴人Ｚ も同じ)、被控訴人会社の日頃の従業員教
-12-
育指導研修の欠如を物語っており、こうした被控訴人会社の怠慢がＸ や被控訴人
Ｙ 、同被Ｚのパワハラ行為を次々生じさせ、これらを防止できなかったことに尽
きるので、被控訴人会社の安全配慮義務違反はこの点からも指摘できるのである。
第２ 被控訴人Ｙ のパワハラ行為を否定した原判決の誤り
１ 被控訴人Ｙ のパワハラ行為
（１）原判決は、�々義平佑�主張する平成29年8月15日に、梱包作業中頚椎椎間
板ヘルニアによる頸部等の痛み、しびれによる症状再燃により作業を中断したこと
について、被控訴人Ｙ から「なぜ、作業を中断したのか｡｣「指示に従いなさい。
労災が再燃し悪化しても構わない｡｣「訴訟を起こしても構いません｡」「指示に従
うことが重要だ。会社の責任になってもかまいません｡｣「訴訟を起こしてもかま
いませんよ｡」などと暴言を受けたとするその被控訴人Ｙ の発言を裏付ける客観
的証拠がないとする一方で、��業務内容は会社が決めるものだから会社の指示に従
う必要があると言っただけだとする被控訴人Ｙ の弁解を理解できるとし、�Ｈ鏐�
訴人Ｙ が控訴人が主張するような言い方（パワハラ発言）をすることが自然であ
る事情はないなどと判示する(判決書22頁)。
ア しかしながら、控訴人は、被控訴人Ｙ から請求原因記載のパワハラ発言を
受けたことを一貫して供述している事実(甲４、甲26〜28、乙４、乙５)、被害直後
に控訴人が被控訴人会社に電子メール(甲４)で被控訴人Ｙ のパワハラ行為を送信
している事実、これを受けて幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長が控訴人との面談を設
定した事実、控訴人はこれ以上の被害を避けるため一時有給休暇を取得して被控訴
人Ｙ との共同作業から離脱した事実(原告本人調書19−20頁）などの諸事実を
総合すれば、甲４の被控訴人Ｙ によるパワハラ被害内容を記載した電子メールの
存在は明白であるから、原判決の上記�，了愿Δ賄�たらない。
イ この点被控訴人らは､パＡの送信事実も被控訴人会社の受信事実も否認する。
しかしながら、後記（2）のとおり幹Ｓの発言から被控訴人会社の受信事実は明
-13-
らかであるのに、控訴人の求めた電子メールの提出に応じない(原告準備書面(3)の
８頁､被告第３準備書面４頁)。すなわち､控訴人が指摘するように(原告本人調書22
頁)、甲26及び27、乙４の冒頭幹Ｓが「ちょっと、詳細見させてもらいました。・
・｣「一応読ませてもらったんですけど、・・」とある記載(例えば、乙４の１頁）
からすれば、この電子メールの送信と被控訴人会社が受信して幹Ｓらが確認してい
ることは明らかである(控訴人の供述によれば、パＡは部Ｈに送信した旨述べたと
いう（原告本人調書18頁）。
ウ そして、控訴人が労災請求をして認定された労災の後遺症による頸部の痛み
等の症状を訴えてていたことは被控訴人Ｙ も認めていること(被告Ｙ 本人調書
２頁)、被控訴人Ｙ が当時ストレスと精神的不安定で(乙５の）33〜34頁)常習的
にパワハラ言動を有し、要監視状況にあったことは幹Ｓ統括部長ら会社幹部も認識
していたこと（乙５の５頁)、パワハラ被害時の状況は、原告陳述書（甲35の12
項（1）ないし（3)､）及び原告本人調書（15頁以下）記載のとおりで、日頃の通
常作業の仮定の中で生じたもので控訴人の供述に不自然なところはないのに対し、
他方後記（４）のとおり被控訴人Ｙ の供述の不自然不合理性等の諸事実を総合す
ると、被控訴人Ｙ が本件当時控訴人が労災後遺症による肩、四肢のしびれ、痛み
の再燃で作業を中断したことに対して、被控訴人Ｙ が控訴人に暴言を吐いたとす
る事実が存したとみても何ら不自然でも不合理でもなく、上記のとおり控訴人が被
控訴人Ｙ からパワハラ被害を受けて直ちに電子メール（甲4）で被控訴人会社に
報告して救済を求め、その結果幹Ｓ・部Ｈ面談が実現している事実、控訴人は有給
休暇を数日取得して当面の被控訴人Ｙ との共同作業の機会を回避したことなどの
事実が認定できるのであるから、原判決の上記��及び��の判事が失当であることは
明らかである。
エ 被控訴人らは、被控訴人Ｙ と控訴人の人間関係が不良で業務運営に支障が
出たことを理由に幹Ｓ・部Ｈ面談が設定されたかのごとき主張をするが（被告第５
準備書面３頁)、この点幹Ｓ・部Ｈはこの不仲事実を否定していることから(乙４の
-14-
40頁21〜24行)、被控訴人らの上記主張は前提を誤っている上、幹Ｓ・部Ｈの面
談目的を被控訴人Ｙ のパワハラ行為から目をそらそうとする主張であって、到底
認められない。
（２）原判決は、甲４の証拠は電子メールそのものではないとして控訴人のパワハ
ラ被害の裏付けとならない旨判示するが(判決書22頁)、控訴人がパＡに依頼して
送信して被控訴人会社に送信してもらった電子メールの内容がまさに甲４である。
甲４に記載のある「控訴人が8月16日の梱包作業中にヘルニア症状(労災後遺症)
が出始めたため、だましだまし作業を続けていたが、収まらないので作業を中断し
た｣事実が記載され､このことで朝方被控訴人Ｙ から｢なぜ作業を中断したのか｡」
と叱責されて作業を続けるように命令され「指示に従いなさい。労災が悪化しても
構わない｡」等々の暴言を吐かれるパワハラ被害を受けたのである。
このことは、幹Ｓ・部Ｈ面談で、電子メールの内容を幹Ｓらが面談の冒頭で控訴
人に確認しており、そこに幹Ｓ｢一応読ませてもらったんですけど､・・｣(乙４の１
頁19行)､と述べて電子メールを受信していることを前提に幹Ｓが話を始めている。
そして、幹Ｓ「以後で締めくくりで間違いないですか｡」（同２頁６行)、と甲４と
同一の記載のある内容を確認し、幹Ｓ「今お体なんですけど、途中で、だましだま
しということだったんですけど、以前からこういう作業は体がきついんですとかい
う話は・・｣（同２頁20行）と幹Ｓが控訴人に質問したのは、甲４の「ある程度だ
ましだまし行ったのですが収まらず、・・」の記載のとおり被控訴人会社が受信し
た電子メールにも同一の記載があることを受けた幹Ｓの発言であることは明らかで
ある。こうした乙４の証拠(甲26、27と同じ）が存するのであるから(この点は既に
原告準備書面(5)の第３の４項(９頁）で指摘したとおりである｡)、甲４の証拠が
電子メールそのものではないとか控訴人のパワハラ被害の裏付けとならないなどと
する判事の誤りは明らかである。
（３）原判決の上記判事は、要するに控訴人の主張を裏付ける間接事実がそれなり
に存するが直接裏付ける証拠ではないから、結局控訴人の主張するパワハラ事実を
-15-
認定できないとするものと解される。
ア しかし、そうであれば、パワハラ加害者が真実を述べ、控訴人が虚言を弄し
て社内を混乱させたことになる。果たしてそうした認定が正しいといえるのか。つ
まり彼らの各供述の信用性を十分に比較吟味した結果とは思えない。単に疑わしい
だけで事実とは言えないと一蹴し、まるで何事もなかったように平然と判示する。
イ 普段控訴人の労災後遺症に理解を示していたパートロが自身の指示書仕分け
工程作業が終了すると控訴人の梱包固定を代わってやってくれていた。被控訴人Ｙ
もこの事実を目撃して知っていたのに、パワハラ被害当日パロが欠勤したため控
訴人は交代してもらえず、そこで控訴人は梱包作業をおおかた済ませたところで、
被控訴人Ｙ に断って作業を中断したというのである(原告本人調書）16〜17頁、
原告陳述書甲35の12項（1）ないし（3))。ところが、被控訴人Ｙ は断ったとき
は何も言わなかったのに、夜勤終了間際になって片付け仕事をしていた控訴人に向
かって､虫の居所が悪かったのか控訴人のことを日頃良く思っていなかったからか、
訴状記載の暴言を浴びせたのである。このパワハラ事実は、普段の作業交代状況、
そのことを被控訴人Ｙ も知っていたことを含めてパートロの尋問によって、当日
の被控訴人Ｙ の取った対応ないし言動が特異なものであったことを証明できるも
のと考える。
ウ ところで、被控訴人会社が、パワハラ被害を受けて幹部Ｓ 統括事業部長と
部長Ｈ グループ長が面談を設定しながら、当事者、特に加害者とされる被控訴
人Ｙ から十分な事実確認とともに事実確認に争いがある場合は関係者らの事情聴
取等が行われずに、事実認定ができないままに作業体制の現状維持ないし妥協を控
訴人に求めたことに問題がある。すなわち、被控訴人Ｙ については夜勤を異動で
きないとして､今後とも同被控訴人の指示に従ってほしいとする現状維持の提案(乙
５の16頁19行、17頁9-10行)、あるいは、代案�，箸靴謄傳舛隆浜�下に入り週４
日勤務となるか、代案�△箸靴篤�勤異動で夜勤手当がなくなるが補償なしの妥協案
を示された（乙５の17頁19行〜18頁6行、26頁2-5行)。そのいずれかか被控訴
-16-
人Ｙ との上記共存しかないとされた。
被控訴人会社としては、事が就業規則（甲39）が委任した服務規程におそらく
禁止事項として定め（規則37条、38条)、就業規則上解雇事由と明示しているパ
ワハラスメント行為（規則15条7号）という重大事案であるから、外部委員等に
よる第三者委員会を設定して徹底的な調査を実施をすべきだった。単にホットライ
ンを設けたとか社内報に掲載したと主張するだけで、何らこれに関する周知も徹底
もなく、研修も実施しておらず、社員のほとんどが現実にパワハラに関する知識も
救済手段、方法等もしらない現状にあっては、被控訴人会社の日頃の安全配慮義務
の懈怠は明らかである（Ｘ 本人調書16頁、原告本人調書20頁)。
控訴人は、幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長との第１回面談で、両名共に控訴人の
労災事実や後遺症に付いて何も知らなかったこと（乙４の7頁）や控訴人と被控訴
人Ｙ の関係が良好でないことも知らなかったことを初めて知った（乙４の40頁
22-24行)。幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長は控訴人の聴取後被控訴人Ｙ に面談
して聴取しているが、にわかに信じ難いが、被控訴人Ｙ は、幹Ｓらから面談目的
ないし理由を聞いていないという。甲４のメールに記載されている控訴人の被害事
実について、これを指摘されたり事実確認をされなかったというのである（被告Ｙ
本人調書 12頁〜14頁)。これが事実なら、幹Ｓらは何のために控訴人や被控訴
人Ｙ との面談を設定したのか。甲４で被害を被控訴人会社宛てに申告した控訴人
のパワハラ被害救済の申立てに対して、被控訴人会社は何も対応らしい対応、事実
確認のための調査を行わなかったことになる。幹Ｓ統括部長の尋問が必須と思われ
る。
（４）被控訴人Ｙ の供述が信用性に欠けること
パート社員である控訴人の上司に当たる正社員被Ｙのパワハラ行為を裏付ける控
訴人の陳述書（甲35）及び本人尋問の結果の信用性は、被害後直ちにパＡに苦情
の申入れをし（甲4)、被Ｙとの同時勤務を避けるため有給休暇を取得したこと（乙
４の46頁５〜６行、48頁16〜22行、69頁24〜28行、70頁３〜５行)、及び苦
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情を受けて当時のグループ長部長Ｈ 及びその上司統括部長幹部Ｓ が当事者と
個別に面談を開始していることから明らかである。にもかかわらずぱわはらが存在
しなかったというのであれば、これらのメールや面談は何だったのか、原判決に合
理的かつ説得力ある説明はない。被控訴人らは、甲４の電子メールは送信も受信も
なく存在しないなどと否定し（被告ら第１準備書面３頁、第３準備書面４頁)。幹
Ｓ、部Ｈ第２回面談の事実も知らないとして事実上否定していたのであって(被告
ら第１準備書面３頁、第３準備書面５頁)、これらの事実は被控訴人Ｙ の供述の
信用性全般に関わるものと考える。
控訴人から「指示には従えない｡」と言われたと主張する被控訴人Ｙ の発言や、
それに対し同被控訴人が「作業内容はこちらで決めるので、指示に従うように｡」
などとする発言（被告Ｙ 本人調書４頁）は、それだけとりあげればありうる主張
に聞こえるが、控訴人は上記の発言をしたことは明確に否定しており（原告本人調
書23頁)、詳細は原告準備書面（6）の第２の３（6頁）記載のとおりである。そし
て、被控訴人Ｙ 自身は当時控訴人との関係が良くなかったことを認めており（被
Ｙ本人調書６頁)、かねて被控訴人Ｙ の言動に問題があり、幹Ｓ統括部長、部Ｈ
グループ長共に同被控訴人に改善の見込みがなく要監視状態にあったことを認めて
いる経緯に照らし（乙５の５頁18−23行、33頁26行以下、34頁13−18行、26
−30行)、本件パワハラ問題について、こうした弁解は被控訴人Ｙ が自身パワハ
ラ発言を否定するため考えた言い訳とみるほかないのである。
２ 被控訴人会社の責任
原判決は、被控訴人Ｙ のパワハラ行為の存在を否定したことから、被控訴人会
社の責任を論じていない。
しかしながら、上記のとおり被控訴人Ｙ のパワハラ行為は明白であり、同被控
訴人が被控訴人会社の業務の執行に際して控訴人に与えた損害について、被控訴人
会社は、民法715条１項に基づき使用者としてこれを賠償すべき責任を有する。
なお、控訴人の労災後遺症について、そもそも被控訴人会社は一貫して控訴人の
-18-
労災認定請求だけ認め､その結果は知らないとして自社の従業員の労災認定の有無､
その後の症状や後遺障害の有無・程度について無関心である。したがって、労災被
害者の担当すべき作業内容や職場の労働環境の整備改善等関するに配慮がみられな
いのである。そして、控訴人が被Ｘグループ長時代に労災の認定を申請した事実や
甲３に記載された後遺障害状況等について、被Ｘが甲３で控訴人の労災後遺障害の
症状を認識しえたとしても､この点後任の部Ｈグループ長に引継ぎを怠ったため(乙
５の４頁3-4行「原告さんは会社に言ってある（訴えるは誤記）という一言で、・
・・、私は残念ながら聞いてなかったわけなんですよ｡｣)、同グループ長が上記事
実を認識して被控訴人Ｙ に控訴人の作業に対する適切な配慮を求める指導ができ
なかった被控訴人会社側の過失を認めざるをえないのである。すなわち、被控訴人
会社は、幹Ｓ・部Ｈが供述するように被控訴人Ｙ の精神不安定と常習的なパワハ
ラ言動と控訴人に対する適切な配慮が必要であることを認識していたのに十分な始
動ができていなかったことを認めているという背景の中で（乙５の33頁、34頁)、
被控訴人Ｙ の本件パワハラ行為が発生したのであるから、被控訴人会社の安全配
慮義務違反も明らかである。
第３ 被控訴人Ｚ のパワハラ行為を否定した原判決の誤り
１ 被控訴人Ｚ のパワハラ行為
（１）原判決は、�々義平佑�、令和２年６月25日に有給休暇を取得するため、本
来有給休暇を請求する書面を提出すればよいことは承知していたが、当時は新型コ
ロナ感染症下における被控訴人会社の勤務体制に関する考えがあるのではないかと
の配慮から、同年５月６日にあらかじめ部Ｊグループ長代理に休暇を取得する選択
肢について問い合わせた上で、同人から有給休暇で取得されたい旨回答を得ていた
こと(甲６の２)、��部Ｊに上記問い合わせをした同月14日に後控訴人が有給休暇
の請求書を作成したこと(甲５)、��ところが、その後同年６月25日が「出勤」と
されているシフト表が６月10日に作成されていること(甲７)に気付いた控訴人が、
-19-
同月１９日に上記部Ｊにメールしてシフト表の誤りを指摘し、同日は有給休暇請求
済みであることを伝えたが、部Ｊから何ら返事がなかったこと(甲７、甲８の２)、
�す義平佑�６月２５日に出勤しなかったところ、その後６月分賃金の支払日である
同年７月１５日に､「有給休暇」扱いではなく､「欠勤」でもなく「休業」として処
理されていたことを知った。�イ修隆嵌鏐義平唯據，�、同年７月７日に「有給休暇
は売上が正常化しない限り認めない。休暇については休業申請にされたい」旨の電
子メールを部下従業員（社員）に送信し、併せてプロアルバムグループの作業所内
の掲示板にこの電子メールの内容を掲示し､�Δ海譴鰺癸呼�の夜勤開始時の朝礼(原
判決のいうミーティングのこと。被告ら第１準備書面４頁参照）で、社Ｌがこれを
控訴人らプロアルバムグループのメンバー（パート社員）に説明伝達したこと。��
同月13日、14日のグループ内の電子メールや１３日の朝礼で訂正謝罪したことな
ど以上の各事実を認めながら、被控訴人Ｚ の有給休暇拒否によるパワハラ行為を
否定した。
すなわち、原判決は、控訴人の有給休暇の請求は５月６日であり、６月１０日の
シフト表で「出勤」扱いされていて有給休暇の処理がされていなかったものである
ところ、被控訴人Ｚ の有給拒否及び休業要求指示は同年７月７日にあったもので
あるから、同被控訴人の労働基準法に違反する指示通告とは因果関係がないという
のである(判決書26頁)。
控訴人の請求と被控訴人Ｚ ないし被控訴人会社の有給拒否の流れは概ね時系列
的に上記のとおりだが、ただし、７月７日の電子メールは社員宛てのもので、控訴
人らパート夜勤社員には休業・公休明けの翌８日夜の勤務開始前の朝礼で社Ｌから
伝えられているのである。
（２）ところで、被控訴人Ｚ が控訴人の有給休暇の請求を拒否したものかどうか
を判断する基準は原判決がいう７月７日ではない。この日は、単に以前の同旨の伝
達が理解されていないようだと説明しているとおり、被控訴人Ｚ はかねて有休拒
否の意向を有していたことが伺えるからである。現に後記（３）のとおり、その頃
-20-
複数の日勤・夜勤のグループのメンバーが７月７日までに有給休暇を拒否されてい
るからである。
原判決も、被控訴人Ｚ が上記７月７日に送信した上記電子メールに「有給につ
いては以前にも共有しましたが、理解されていないようなので、改めて共有指示し
ます｡」としてこのことを認めている。したがって、控訴人の有給休暇の請求とそ
の拒否対応は、まさに被控訴人Ｚ が控訴人らの有給休暇の請求が依然行われいて
その都度有給休暇を認めず変更措置を講じてきたことを踏まえて、改めて被控訴人
Ｚ が有給休暇拒否の指示を考えていた時期におけるものであること、現に控訴人
の有給休暇の請求に対して結果として当初「出勤」最終的には「休業」処理された
ことは、被控訴人Ｚ がした有給休暇の請求は認めずに休みを取りたいときは休業
申請するようにとの指示（甲9の１）と同一内容のものであることから、被控訴人
Ｚ が部Ｊや社Ｌを通じて控訴人にもこの有給休暇拒否措置を現実化したものと合
理的に推認できるのである。
（３）このことを裏付ける新たな証拠（甲30の2、甲38の1及び38の2）を提出
する。
ア 甲30の2は、甲29の冒頭に録音されているものであるが甲30の記載から
省略されていたもので、本来甲30の冒頭に記載すべき午後8時の朝礼開始前約8
分間のパＡと控訴人ほか（パト）のやりとりである。
このやりとりから、その頃パＡも理不尽な有給休暇の請求を拒否されたこと及び
パＡは（おそらく担当者の部Ｊに）抗議したが、覆らず欠勤処理されたことから被
控訴人会社への強い不満と怒りが表現されている（甲30の2)。有給休暇請求の手
続は、書面を社Ｌに提出し、これを部Ｊが事務処理していたというのであるから、
被控訴人Ｚ の部下である部Ｊや社Ｌが関与していたことは明らかで、部Ｊが単独
で判断したことは考え難く、グループ長である被控訴人Ｚ の意を受けた部Ｊがパ
Ａの有給休暇の請求を認めず、欠勤扱いにしたものと合理的に推認できる。すなわ
ち、パＡは甲30の2（原資料は録音媒体である甲29）記載のやりとりのとおり、7
-21-
月8日の上記朝礼の約1カ月前の控訴人と同じような時期に有給休暇の請求をした
ところ、これが認められずに欠勤処理されことに労働基準法違反であるとして憤慨
しているのである。
イ また、甲38の1及び甲38の2のシフト表は、前者は部Ｊが通例月初に作成
して掲示するシフト表で、パＡの甲30の2の発言にある有給休暇を請求して取得
しようとしたた日は7月1日と思われる。すなわち、甲38の1のシフト表の夜勤
帯の「パＡ」の7月1日欄は「／」で既に欠勤扱いされたことがわかる（シフト表
上欄参照)。パＡが有給休暇を請求して同日当該休暇により休んだつもりだったの
に、7月2日に掲示されたシフト表をみて欠勤扱いされたことから、7月8日の朝
礼で憤慨し苦情をぶつけたことがうかがえる。
その他甲38の1のシフト表（7月2日更新）からは、日勤帯の「パチ」が７月７
日、14日を各「欠勤」に、同様日勤の「パリ」がやはり7月7日を「欠勤」に、
同様「パヌ」が7月17日を「欠勤」にされている。
その後被控訴人Ｚ は、７月13日になって、同月7日に自ら発した電子メール
やこれを掲示板に掲示した有給休暇拒否の通告を撤回し、同月20日に更新した新
たなシフト表（甲38の2）によって上記有給休暇請求問題に対応した。すなわち、
「パＡ」と「パリ」は「●」の「有休」に､「パチ」と「パヌ」は､「緑◎」の「事
前申請休業」に変更されている（なお、この緑色記載は、このとき限りの運用)。
この変更措置は、彼らが当初は「有給」休暇を請求していたと考えられるのであっ
て、「パチ」と「パヌ」は上記13日の撤回メール（甲9の2）による被控訴人会社
の意向を受けて「休業」に妥協した結果シフト表に反映されたことがうかがえる。
しかし、控訴人の6月25日の有給休暇の拒否は、同月末日締め翌7月15日賃金の
支払の関係で、控訴人の変更は間に合わなかったと考えられる（被控訴人Ｚ の撤
回通知は7月14日19時40分だった（乙1)）。
ウ こうした経緯に鑑みると、被控訴人Ｚ のプロアルバムグループの部下従業
員に対する有給休暇の請求に対する拒否の指示なり意向は、その頃部Ｊや社Ｌに十
-22-
分に浸透していたことがうかがえるのである。
そうすると、被控訴人Ｚ が7月7日に電子メールで発信しあるいは掲示板に掲
示して従業員に向けて「有給については以前にも共有しましたが、理解されていな
いようなので、改めて共有指示します｡」と通告しているのは、それ以前に控訴人
が有給休暇を請求した5月6日時点（甲6）ないし請求書を作成し提出した同月14
日時点（甲5）で被控訴人Ｚ の有給休暇拒否の方針が固まっていたかどうかはと
もかく、遅くとも部Ｊがこれを無視して控訴人の「有休」を認めずに「出勤」に変
更するシフト表を作成した6月10日時点か（甲7）、あるいは控訴人のシフト表の
誤りを指摘した問い合わせに応じなかった同月19日頃には（甲8の2）、被控訴人
Ｚ がこの方針を決めて、控訴人だけでなく他の複数の従業員にも同様の対応をし
たことが認められるのである。
実際はパＡも控訴人もその場にいたパトもあらかじめそのような被控訴人会社の
方針は7月7日ないし8日以前には聞いたことはなかったから（甲30の2）、以前
から従業員間でこうした被控訴人Ｚ の有給休暇に関する被控訴人会社としての方
針なり意向を共有していた明確な事実はないのに、被控訴人Ｚ は、これは、グル
ープリーダーが決めた既定の運用方針だ(甲9参照）と強弁して時節柄(新型コロナ
感染症の流行による売上減少といった背景があった）強行突破すべく、あたかも皆
さん共有していたはずだと一方的に決め付けてグループのメンバーに責任転換した
ものとみるのが相当である。その意味で被控訴人Ｚ やその部下部Ｊ、社Ｌのあか
らさまかつ常習的な労基法違反行為を宣言する有給休暇拒否通告は極めて悪質なパ
ワハラ行為であり、グループ長被控訴人Ｚ 、事実上有給休暇の請求の可否を判断
してシフト表を作成するグループ長代理部長Ｊ 及び有給休暇の請求書を受け付け
たり朝礼等で被控訴人Ｚ の意向を夜勤パート社員らに伝達してきた社員Ｌ の3
名が共同一致して行動しない限り実行的な運用ができないと考えられる共同パワハ
ラ行為とみることができるから、被控訴人Ｚ らとその使用者である被控訴人会社
の責任は誠に重大である。
-23-
（３）以上のとおりであるから、有給休暇取得を承認する権限を有しているのは部
Ｊグループ長代理であり、被控訴人Ｚ が控訴人の有給休暇の取得を拒否するよう
な働きかけをした証拠はないとする原判決の判示(判決書26頁）は、実態をみてい
ない誤った判断であることは明らかである。
ア グループ長代理に過ぎない部Ｊにそれだけの権限があるなら、部Ｊ自身が発
信すればいいはずで、被控訴人Ｚ が敢えて有給休暇請求不可や撤回の通達（甲9
の1、乙1）を発する意味はない。
そもそも有給休暇の請求は形成権とされており､原則拒否できないのであるから､
請求に対して承認、不承認という概念は存しない。部Ｊは単なる事務処理手続の担
当者とみるべきである。にもかかわらず、部Ｊがそれ以上の権限を行使濫用して有
給休暇の請求握りつぶしや、請求の拒否（欠勤）あるいは変更（出勤や休業）等の
措置を講ずる違法行為はできないものであるにもかかわらず、敢えてこれを行った
のは、その長である被控訴人Ｚ の指示ないし意向に基づく措置であったと考える
ほかなく、結局は被控訴人Ｚ の責任であることは論を持たない。
部Ｊはグループ長である被控訴人Ｚ の直属の部下であり、被控訴人Ｚ の有給
休暇拒否の施策と有給休暇請求に対する休業や出勤等への変更代替措置の方針は、
控訴人ら複数の従業員の有給休暇の請求を拒否した上記6月頃には十分知悉してい
たものとみるべきであるから、本件控訴人に対する有給休暇拒否行為には、社Ｌの
�ゝ找棒禅畚颪量技覬Ｆ森坩戞↓⊆劭未�7月8日に朝礼で被控訴人Ｚ の発信した
電子メールの有給休暇拒否内容（甲9の1）を説明し（甲30の1）、��その際控訴
人やパＡから抗議を受けながら被控訴人Ｚ に抗議を受けたことを報告せず、翌日
再度同様の有給休暇を認めない旨の伝達をしているのであるから（被告Ｚ 尋問調
書7〜8頁、甲31、甲29)、こうした社Ｌの言動と部Ｊの上記�〕�給休暇事前承認､
�⇒�給休暇請求書無視、�Ｍ�給休暇を否定してシフト表で「出勤」に変更、�ぅ轡�
ト表の誤りを指摘する問合せ無視といった一連の行動を総合すれば、彼らは上司で
ある被控訴人Ｚ の指示を受けて被控訴人Ｚ を補助した部Ｊ及び社Ｌの共同行
-24-
為、あるいは被控訴人Ｚ との明示黙示の共謀と考えるのが相当である。被控訴人
Ｚ ら3名の行為は、被控訴人会社の従業員による労働基準法を無視した違法な権
利妨害によるパワハラ行為以外の何ものでもない｡その責任者たる被控訴人Ｚ が､
パＡや他の従業員の有給休暇の請求を拒否しながら、控訴人に限って関与しなかっ
たとは到底考え難いから、原判決の上記判事が当を得ないものであることは明らか
である。
イ 被控訴人Ｚ の「有給については以前にも共有しましたが、理解されていな
いようなので、改めて共有指示します｡」との上記通告は、以下のとおり部Ｊや社
Ｌに向けたものであるとともに、なお有給休暇を請求してくる日勤・夜勤のプロア
ルバムグループ従業員向けの言葉であったと考えられる。すなわち、部Ｊが控訴人
の上記�，両伐颪紡个靴突�休の使用を助言したことの不適当を指摘した被控訴人Ｚ
が部Ｊに然るべき対応を指示した結果､今更有給休暇を拒否できなかった部Ｊが､
そのため請求自体を無視して出勤のシフト表を作成したものの、控訴人の指摘を受
けて困った挙げ句適切な対応ができず、結局請求書が提出されなかったことにした
ものと考えるのが極めて自然かつ合理的で、事案の流れから見てつじつまが合うの
である。
しかしながら、原判決が合理的な当時の上記状況を容れず、被Ｚのあずかり知ら
ない中での部Ｊの独断だと認定する以上、部Ｊや社Ｌの尋問は必須であるが、これ
を怠った原判決の訴訟指揮は釈明権不行使による心理不尽の違法を犯す不適切なも
ので、その結果被控訴人Ｚ ないし部Ｊのパワハラ行為の判断を誤った違法がある
から、原判決は取り消されなければならない。
（４）さらに、原判決は、控訴人が有給休暇の請求をしたこと自体証拠がないとま
でいう。原判決は、控訴人名義の有給休暇請求書（甲5）が作成されていることか
ら被控訴人会社に提出した可能性があると認めながら、確実に提出されたとは言え
ない、提出後紛失した可能性があるなどという(判決書26頁)。
ア しかしながら、前者は合理的な推認を否定するもの、後者は被控訴人会社の
-25-
重大な過失を認定すべきであるのにこれを不問にして、返って控訴人に不利益に評
価しようとする不合理な判断であり、原判決のあまりに被控訴人会社に加担した偏
波なものの見方には到底納得できない。
被控訴人会社によれば、原判決も認定したとおり（判決書23頁)、有給休暇の請
求は、所定の「休暇願」をグループの社Ｌに提出し、社Ｌから部Ｊに送られて処理
されることになっているのであるから、社Ｌに確認を要するところ、控訴人は甲5
や控訴人の陳述書等必要な主張立証をしているにもかかわらず、被控訴人らからは
休暇願の提出がなかったと主張するのみで、社内に関係者を抱えながら何ら自身の
主張を裏付ける反証行為をしなかった。にもかかかわらず、裁判所はこの点事実確
認も求釈明もしないままに「休暇願」の提出自体否定したもので、認定自体経験則
に反するだけでなく、審議不尽の違法を犯すもので許されない。
イ なお、有給休暇の請求は、法は特段その行使方法を定めているものではない
から、本来有給休暇請求の意思表示が被控訴人会社に伝われば権利の行使があった
ことが認められるべきものである。控訴人は、請求書を作成し、その後シフト表に
有給休暇の請求が反映されいないことを控訴人が担当者部Ｊグループ長代理に通知
しているのであるから、この時点をもって控訴人の有給休暇請求の意思が被控訴人
会社の担当者に到達伝達されて請求権について権利の行使があったと見ることがで
きるのである。この意味でも控訴人の権利行使の主張を否定する上記判事の認定に
誤りがあることは明らかである。
（５）原判決は、被控訴人Ｚ による令和2年7月7日付け電子メールの内容や同
日作業所内の掲示板に掲示した同趣旨の前記（1）の�イ了惻�内容が労働基準法に
違反する不相当な指示で反省すべきものであることを認めながら、数日のうちに撤
回して謝罪したことと具体的な有給休暇取得の妨害が生じた証拠がないとの理由
で、この点のパワハラ行為も否定した(判決書27頁)。
しかしながら、前記夜間勤務取りやめの例と同様、パワハラ行為は後日口頭で撤
回を表明すれば違法性が消滅するとか、具体的な実害結果が生じない限り成立しな
-26-
いというものではない。しかも、撤回は上司に指摘されたという被控訴人らの主張
はにわかに信用し難く、7月8日の朝礼時に控訴人やパＡから労働基準法に違反す
る措置ではないか旨抗議を受けていた経緯があり、それでも当初は運用を強行しよ
うとしたが結局はやむなく撤回に追い込まれた面がある。かつ、撤回まで約1週間
を要していること、それまで被控訴人Ｚ らが控訴人以外にも複数の従業員の有給
休暇を拒否していた経緯があることなどの諸事実に照らすと何ら酌量すべき事情は
ない。
まして、控訴人は現実に有給休暇の取得を妨害拒否された被害者本人であり、そ
の控訴人が他のプロアルバムグループメンバーと共に一斉にグループ長たる被控訴
人Ｚ から有給休暇の請求をするなと指示され、社Ｌからは請求がなかったことに
され、部Ｊからはシフト表で請求を無視されてパＡや上記パチ、パリ、パヌらが受
けた欠勤や休業扱いと同様の措置を受けたのであるから、被控訴人会社から被控訴
人Ｚ を中心としたいわば組織的なパワハラ行為を受けたのである。控訴人は、今
後共再び有給休暇の請求を頭から拒否される現実的な妨害行為のおそれを感じて、
同グループのメンバーであるパＡらともども抗議したというのであるから、控訴人
が相当の精神的苦痛とともに有給休暇の取得を拒否され休業処理された結果賃金を
減額される具体的な損害を被ったこともまた明らかである。
（６）被控訴人Ｚ の供述が信用性に欠けること
ア 本件は、労働者の労働条件に関する基本法である労働基準法における有給休
暇制度について、全く理解と認識に欠ける者がグループ長を務めている結果起こし
たパワハラを伴うトラブルである。被控訴人Ｚ の上記知識の著しい欠如は、誤り
とその違法性を指摘されるまで全く気付いておらず(パＡや控訴人からクレームが
付けられたことは甲29、30から明らかであるのに、被控訴人Ｚ は従業員から質
問がなかったと否認するなど被控訴人Ｚ のその不自然な陳述書や本人尋問に対す
る供述からは撤回に至った理由が全く不明である｡)、かつ、社内における有給休の
暇の行使手続も部下の社Ｌや部Ｊ任せで指示をしていないと供述し、あるいは、自
-27-
身はグループ長として、グループ長代理に過ぎない部Ｊの権限を包括して具有する
はずであるのに、出勤休業等の勤怠を決定する権限は部Ｊにあるなどと部下に責任
転嫁したり（被告Ｚ 本人調書14頁)、自身が作成した電子メールの掲示やパート
従業員への伝達方法等事実関係を全く把握していない供述をするなど（同5頁、7
頁)、質問内容さえ容易に理解しようとしない同被控訴人の供述内容及び供述態度
は極めて不自然、無責任というより、部下の勝手な行動とばかり自身のグループ長
の責任を回避する意図がありありうかがえる不自然かつ支離滅裂な虚偽供述である
（被告Ｚ 本人調書４頁以下の反対尋問に対する供述)。
にもかかわらず、こうした被控訴人Ｚ の何の脈絡も整合性もない不自然不合理
供述を鵜呑みにして「控訴人の有給休暇の取得の権限を有しているのは、被控訴人
Ｚ でなく部Ｊグループ長であるところ、被控訴人Ｚ が部Ｊグループ長に対して
控訴人の有給休暇を認めないように具体的に働きかけたことをうかがわせる証拠も
ない｡」などと全く見当外れの判示をしているが、その判断の誤りは、上記（3）
で指摘したとおりである。
イ 被控訴人Ｚ が、令和2年7月7日付けの電子メールで「有給休暇について
以前も共有したが、理解されていないようなので、改めて共有指示します｡」とし
て、有給休暇の使用制限を通告し、事実上有給休暇に変わる「休業」を推奨してい
いる事実(甲９）は、これと併せて、それ以前の経緯、すなわち、パＡが１か月前
に有給休暇の請求を拒否されて欠勤扱いにされて憤激している事実(甲30の2)、
控訴人が同年6月25日に休暇指定した有給休暇請求書を作成し(甲5）これを提出
したとする控訴人の供述、同年5月6日事前に部Ｊに休暇の取得方法を打診しその
ときは控訴人の有給休暇の取得を了承していた部Ｊが(甲6、6の2)、その後部Ｊ
がにわかに変節して控訴人の当日のシフト表(出勤表）で出勤扱いにし(甲7)、こ
のことを控訴人から指摘されたにもかかわらず無視を決め込んでその訂正に応じな
かった事実(甲8、8の2)、結果として控訴人は被控訴人会社から一方的に「休業」
処理されている事実(甲10、11）等の事情を総合すれば、これらの事実は有給休暇
-28-
請求書が提出されてその行使が存在したことが前提の事実であるから、請求書が提
出されていないとか社内で紛失した可能性があるなどとする原判決の判示は、実態
をみない誤った認定であることは明らかで、被控訴人Ｚ の当時の有給休暇使用制
限の意を受けた社Ｌや部Ｊが計画的に請求書がでていないことにしてうやむやに処
理しようとして行ったと認めるほかなく、また、このように会社ぐるみの有給休暇
を使用させない作業所内のルール、雰囲気作りによるパワハラ行為だったと解する
のが極めて自然かつ合理的で経験則にも合致するものというべきである。
２ 被控訴人会社の責任
原判決は、被控訴人Ｚ のパワハラ行為の存在を否定したことから、被控訴人会
社の責任を論じていない。
しかしながら、被控訴人Ｚ のパワハラ行為は上記のとおり明白であり、同被控
訴人が被控訴人会社の業務の執行に際して自らあるいは部下の部Ｊをして故意又は
過失によりパワハラ行為を行いその結果控訴人に与えた損害について、被控訴人会
社は、民法715条1項に基づき使用者としてこれを賠償すべき責任を有する。この
点は、原判決が判示するように部Ｊ単独による違法な有給休暇拒否なるパワハラ行
為であったとしても被控訴人会社の使用者責任が生ずることに変わりはないが、し
かし、前記のとおり本件の控訴人の請求した有給休暇の拒否行為は、被控訴人Ｚ
を筆頭にその指示意向に基づく部Ｊ、社Ｌらが結託した共同不法行為であってその
責任者はグループの長たる被控訴人Ｚ にあるのであるから、被控訴人会社の使用
者責任は明らかである。
そして、以前から共有していたはずの有給休暇使用制限問題についてもこうした
重大な違法行為繰り返していながら、被控訴人会社は被控訴人Ｚ について何らの
処分もしないほど寛容である(被告Ｚ 本人調書15頁)。被控訴人会社のグループ
長ら幹部職員に対するパワハラ行為防止のための実質的な研修や教育は全くされて
いない。そして、被控訴人会社のパワハラ問題に関する無関心さと無策の実態を如
実に物語っており、被控訴人会社の日頃の安全配慮義務の懈怠も明らかである。
-29-
第４ 原判決総括
原判決は、被控訴人ら3人(Ｘ 、被Ｙ，被Ｚ）による7件(Ｘ 4件、被Ｙ1件、
被Ｚ2件)のパワハラ行為をすべて否定した異常なものである。グループ長クラス
のパワハラが常態化していた被控訴人会社にあって、原審で、被控訴人（被告）ら
はＸ を含めて、控訴人（原告）の主張に対して否認するだけで、反証らしい反証
をしなかった（乙4及び乙5は、甲26）を被告側で反訳したもので、原告が反訳
した甲27、28と概ね同一である。人証についても当初予定がないとして誰一人請
求しなかった｡)。しかるに、一つのパワハラ行為も認定しなかった原判決には承
服できず、内容的にはいわば結論ありきの判決といわざるを得ない。
その論法は、すべて控訴人の主張を裏付ける客観的証拠がないという点と否認す
る被控訴人らの供述が不合理とは言えないという同一ワンパターンの判示で説得に
欠ける。当事者双方の主張ないし供述を比較検討した体裁を装っているが、その実
主張が対立していているともはや直接裏付ける証拠がない以上判断できないという
理由で、十分な審理を尽くすことなく立証責任の名目で安易に控訴人の主張を排斥
した軽率な結論と思えるのである。間接事実を十分に吟味検討し信用性を比較検討
して慎重に判断した痕跡がない。パワハラを否定する結論のための理由付けをした
ものとしか感じられない（例えば、記憶にないというＸ の供述については、単に
その信用性を疑わせる証拠がないとするだけで結果的に信用性を認める一方（21
頁)、継続的に一貫して主張する控訴人の供述については、その信用性について特
段虚偽であるとか信用できないとする根拠について理由を挙げることなく何ら判断
せずに結果として採用しない｡)。
かくのごとき裁判官の判断手法は、直接証拠がない限り事実認定をされることは
なく、多くの場合1対1で直接目撃者もないような事件ではパワハラ被害者の主張
が認められないことになりかねない｡被害者は泣き寝入りを強いられることになり、
事実上裁判の拒否に等しい。
-30-
控訴人 控訴人
被控訴人 株式会社ラボ生産 外２名
控訴理由書
令和４年７月１１日
東京高等裁判所第22民事部 御中
控訴人訴訟代理人
弁護士 ■■■■
控訴の理由は、次のとおりである。
第１ Ｘ のパワハラに関し、被控訴人会社の責任を否定した原判決の誤り
１ Ｘ の突然の一方的夜間勤務取りやめ通告と自分の胸に聞いてみろ暴言
（１）原判決は、�（神�27年12月４日のＸ （以下｢Ｘ ｣という｡）の夜間
勤務取りやめ宣告が実体的にも手続的にも問題があったことを認めながら、「夜間
勤務の取りやめがパワハラ行為に該当するかどうかはともかく」などとして、判断
を避けている(判決書18頁)。
また、原判決は、��同月７日控訴人から夜間勤務取りやめの原因を聞かれたＸ
が控訴人に対し「自分の胸に聞いてみろ」発言をしたことについては、原因につい
て自分で考えるように述べたものにすぎないとしてパワハラに該当しないと判示
し、その結果被控訴人会社の責任に言及しない(判決書18頁〜19頁)。
ア まず、被控訴人らの時効の援用の主張は抗弁であり、控訴人は請求原因とし
てＸ の上記�，離僖錺魯藕坩戮犯鏐義平猷饉劼了藩兌埓嫻い鮗臘イ靴燭里任△襪�
ら、その判断を回避して抗弁の主張に対する判断を行うのは、理由不備の違法を犯
すもので許されない。
-1-
そして、控訴人ら夜勤パート従業員の労働条件を無視して夜間勤務を突然取りや
めることによる重大な労働条件変更の決定をグループ長に過ぎないＸ ができるは
ずがなく、さしたる理由も従業員に対する説明もないままにしたＸ の一方的な越
権行為は、実質的にも手続的にも違法でありかつ社内を大混乱させるもので、案の
定これによって退職予告したパートＥ や一時日勤異動したパートＤら多くの従業
員からクレームや夜間勤務継続の要望が出るなど職場の労働環境を悪化させた明ら
かなパワハラ行為以外の何ものでもない。
また、夜勤パート社員にとって、夜間勤務の取りやめは、労働者を不安にさせ自
身の生活様式の変動に直結する重大な関心事であるから、控訴人がＸ に夜勤閉鎖
の理由を問い質すのはいわば当然のことで、Ｘ の「自分の胸に聞いてみろ。」発
言は、上司であり所属グループの長である責任者Ｘ がそれに対して説明を拒否す
る理由も必要性も全くない。突然の夜間勤務取りやめの宣告も、その理由の拒否に
ついても何ら正当性がない。しかし、Ｘ からされた暴言は、上記発言に止まらな
い。Ｘ は「（理由を）聞かんでいい。」と説明を拒否した上、あたかも控訴人に
責任を転換するように「自分の胸に聞いてみろ｡」と暴言を吐き、その上さらに｢う
だうだ言うな。仕事をしろ｡」と重ねて暴言をいたのである(訴状請求原因５頁、原
告準備書面（4）の２頁、甲23、24）。これについては、さらに後日Ｘ の解雇発
言に先立ち、同人から「お前がしゃべってばかりいるからだ｡」と言われ、何時ど
こでの話か問うと結局言い掛かりだと認めたのである（訴状請求原因５頁）。、こ
のＸ の発言ないし態度は、単に「うるさい。余計なこと言わずにお前らパート社
員はだまって仕事だけしていればいいんだ｡」という趣旨の発言であるから、いわ
ばパート社員に対する差別的思想に基づく蔑視発言に他ならない。これをパワハラ
でないという原判決の感覚が全く理解できないのである。
そして、この一連のＸ の暴言は、被Ｚも目撃しているはずであるが（甲23､24
の２頁、被告Ｚ 本人調書1〜2頁、陳述書（乙6の2））、Ｘ は「記憶が定かで
ない｡｣、被控訴人Ｚ は「Ｘ の暴言はなかった｡」と否定するのみであって、現
-2-
場の状況から彼らの供述は不自然なもので虚偽といってよく、信用に値しない。
イ Ｘ の「自分の胸に聞いてみろ｡」発言は、その経緯からみれば、被控訴人
らが主張するように控訴人に自省を求めた発言でなく､また､原判決が言うように、
単に「原因については自分で考えるように述べるにすぎず｣（判決書18頁）という
ようなものでないことは明らかで(原告準備書面(6)の４〜５頁)、夜勤パート社員
の重大な労働条件変更を通告する以上、グループ長のＸ には当然にその理由につ
いて説明義務がある。にもかかわらず説明責任を果たさずに「聞かんでいい｡｣「自
分の胸に聞いてみろ｡｣「うだうだ言っているときとちゃうやろ。今は仕事しろ｡」
なる言い方は、組織を束ねる長にふさわしくない了見の狭い人間によるあたかも原
因が控訴人にあるかのごとき侮辱的発言である。
しかし、夜間勤務取りやめが控訴人に原因がないことは、被Ｙが聞いてくれと指
示した被Ｚが控訴人が原因でないことは明言しているのであるから(甲15、甲23、
甲24)、部下を統率する上司Ｘ の他人を見下す無用な責任転換パワハラ発言であ
る｡Ｘ がこのような発言をする何らの必要性も必然性もないパワハラ発言である。
にもかかわらず､「原因について自分で考えるように述べるものに過ぎない｡」と
する原判決の判事は、極めて皮相的で当時の状況を子細に検討してパワハラを認定
する意思が全くうかがえない。
（２）Ｘ の供述（陳述書及び尋問結果）が信用性に欠けること
ア Ｘ は、夜間勤務を中止するに際し、昼間勤務に変更できるかどうか従業員
の意向を確認したとか、個別面談したなどと供述するが（Ｘ 本人調書２頁）、そ
のような事実はなく、実態は、夜間勤務の中止を一方的に通告した上で、日勤に異
動できる者は申出するように促し（甲14)、可能でない者は退職を余儀なくされて
いる。面談と言うより、夜間勤務中止宣告後に多くの夜勤従業員から不満やクレー
ムとともに夜勤継続の要望が訴えらえた状況があり、日勤異動に同意した者がほと
んどなかったことから明らかなように（甲14、Ｘ 本人調書８頁)、やむなく撤回
したに過ぎない。
-3-
イ Ｘ が控訴人から夜間勤務の中止理由を聞かれて「自分の胸に聞いてみろ」
発言をしたことについて､「思い出せません｡」とする供述(Ｘ 本人調書８〜９頁)
は、当時のやりとりの詳細に関する録音物が存在する上、被控訴人Ｚ も現場に居
合わせた状況があり（甲24、23のほか原判決も認定している。判決書17頁)、そ
の内容は夜間勤務の中止の理由等のやりとりに関する経緯から十分合理的で信用で
きるのに対し（甲23、24)、Ｘ は単に覚えていないと否定するのみで、被Ｚも同
調するが（乙６の２，２の（4))、結論をいうのみで、合理的な説明はない。
（３）控訴人は、Ｘ の夜間勤務を一方的に取りやめる（夜勤閉鎖）パワハラ発言
をしたことの裏付け証拠として、甲14（画像)、何らの予告も事前協議もなかった
突然の宣告だったことにつき甲15（控訴人と被控訴人Ｙ のメール)、撤回に配慮
がないことにつき甲16（控訴人とパートＣの電子メール)、自分の胸に聞いてみろ
発言は甲23（録音物)、甲24（録音概要)、甲35（原告陳述書）３頁の提出したこ
とに加えて原告本人尋問の結果が裏付けており､立証は十分であることを指摘する。
２ 被控訴人会社の責任
（１）原判決は、上記のとおりＸ の夜勤勤務の取りやめのパワハラ該当性の判断
を避けた上で、２日後の６日にＸ が撤回して夜間勤務が継続されることになった
ことや、控訴人からパワハラとして被控訴人会社に対応を求めることがなかったこ
とをもって、被控訴人会社が特段の対応をしなかったことについてパワハラを放置
した安全配慮義務違反は認められないと判示する(判決書18頁)。また､「自分の胸
に聞いてみろ」との発言については、前記のとおり夜間勤務取りやめの原因を聞か
れたことに対する返答でありパワハラに該当しないとして、被告会社の責任に言及
がない(判決書18頁)。
しかしながら、労働条件を一方的に変更告知するパワハラ行為が後日撤回された
からとか控訴人が当時被害を申告しなかったからといって被控訴人会社の責任が生
じないとか違法性が消滅するものではない｡「自分の胸に聞いてみろ」発言が侮辱
的なものでパワハラに該当することは既に述べた。
-4-
（２）問題は、前記（１）のアのとおり、控訴人ら夜勤パート従業員の労働条件を
無視してさしたる理由も従業員に対する説明もないままに日勤異動を提示したX
の一方的な越権行為は（甲14)、社内を大混乱させたことは明らかで、現に多くの
混乱した従業員からクレームが出された。このX の重大な勤務体制の変更は、被
控訴人会社も直ちに認識したはずであり、結局職場を混乱させたまま従業員の反対
で撤回を余儀なくされたもので、決してX 自身が違法行為を認識して反省し撤回
したものではない。このような重大な違法決定を被控訴人会社が知りながら、X
が自ら撤回するまで被控訴人会社がX に対して指導、処分その他何らかの是正措
置を積極的に講じた状況はうかがえず、これを放置したというほかない。かつ、X
が権限を逸脱した違法行為(パワハラ）に対して、被控訴人会社がその責任を問
うたり、法令や社内規定に違反するとしてX を処分した状況もうかがえない。こ
うした被控訴人会社の対応が、X の上記(2)のイの第２のパワハラ行為を招いた
というべきである。
（３）そもそも被控訴人会社が日頃従業員教育・指導・研修・啓蒙等パワハラ防止
対策を怠っていたことがX やその後の被控訴人Y 及び同被Zら中間管理職の一
連の労基法違反行為や権限逸脱ないし濫用行為に至っているのであって、被控訴人
被ZはX の夜間勤務取りやめという違法通告を目撃しながら被控訴人会社に何ら
の報告も対応も求めていない。X の一連のパワハラ行為を発生させたこと自体が
被控訴人会社の日頃の良好な職場環境の保持ないしパワハラ防止義務に反する被控
訴人会社の責任は明らかである。
被控訴人会社が、今回の件で、X に対して何ら懲戒等の処分も再発防止策も講
じていないことも、被控訴人会社のパワハラ問題に対する日頃の無策を物語るもの
で、上記環境保持ないし措置義務違反を構成する被控訴人会社の責任は否定できな
いと言わねばならない。
２ 解雇発言
（１）X のパワハラ行為
-5-
ア 原判決は、�々義平佑�以前からX の上記解雇発言を訴えていることを認め
ながら、平成28年６月頃、X から「お前なんかいつでも解雇できる。数か月余
分に払えばいいんだから｡｣「時給を下げてやる。埼玉県の最低賃金の時給に下げ
てやる｡」旨の暴言を受けたとする控訴人の主張は裏付け証拠がないとか、��否認
するX 発言は不合理でないとはいえない、などとの理由でこれを控訴人の主張を
認めない。��X 発言を裏付けるものとして提出したパC発言(甲18、25)につい
ては、反対尋問を経ていないとの理由でその信用性を否定する。そして、��X の
上記パワハラ発言について記憶がないとするX や被控訴人Y の供述について嘘
と疑う証拠もないなどとして、控訴人のX パワハラ発言を認めない(判決書 19
頁)。
控訴人が、X のこの解雇発言の経緯を述べ、前日に控訴人と被控訴人Y との
間に、同被控訴人の新たな作業の指示の意義等についてやりとりがあり、その翌日
の本件X の解雇発言当日に、X との面談の場に被控訴人Ｙ も立ち会っている
のである（甲19)。被Yは前日新たな作業を控訴人に指示した事実、その仕事の意
義を控訴人が被Yに質問した事実、翌日X と控訴人の面談の場に被控訴人Y が
立ち会った事実を認めているのであって（被告Ｙ 本人調書７〜８頁)、控訴人の
甲19の事実は相当程度裏付けられているのであるから、信用性を疑うことは出来
ない。
原判決は､Ｘ から解雇発言をされたこという控訴人の一貫した供述の信用性と、
単に言った覚えはない、記憶にないと否定するだけのＸ 供述の信用性を十分に比
較検討し吟味した状況はうかがえない。原判決がＸ の否認供述を不合理でないと
いう理由が定かでない。また、上記パＣ発言について、原判決が反対尋問を経てい
ないなどとしてその信用性を否定するが､裁判所は人証請求の釈明を求めなかった。
当事者に尋問について打診も勧告もしないままこのような独断が許されるのか。反
対尋問を経ていないという理由で控訴人提出証拠(甲18、甲25）の信用性を疑い否
定するのであれば、裁判官は職権でパＣを証人として採用するか、あるいは当事者
-6-
に請求を勧告すべきである。にもかかわらず、何ら尋問を経ることなく控訴人が提
出した上記証拠（録音とその反訳書）の信用性を否定することは許されない。心理
不尽の違法を犯すものといわなくてはならない。
原判決は、Ｘ の前記解雇発言はそもそも、前記１の（1）及び（2）の「自分の
胸に聞いてみろ｡」｢うだうだ言うな。仕事しろ｡」といったパワハラ発言が当該
解雇発言や雇止め発言に繋がっていることをどれだけ理解しているのか(訴状５頁、
原告準備書面(4)の２頁、原告準備書面(6)の４頁)。
イ 原判決の論理は、あたかも控訴人の主張を否定する際に使用するマニュアル
のごとき表現で、誠に説得力がない。結局直接証拠がない限り、被控訴人らが否認
する以上、その否認が嘘と言えない限り控訴人の趣向を排斥すもので、当事者の主
張が対立した場合の詳細な間接証拠による事実認定を放棄するものである｡しかし､
この後も同様の論理で控訴人の主張を排斥しており、誠に誠意のない判決である。
控訴人は、裏付け証拠としては、甲18（録音反訳書)、25（録音物)、甲19（解
雇発言経過)、甲35（原告陳述書）を提出しており、原告本人尋問の結果を総合す
れば、被控訴人らからはＸ 本人の供述以外これを裏付ける反証は提出されなかっ
たのであるから、控訴人の証明は十分であると考える。
ウ Ｘ の供述が信用性に欠けること
Ｘ は、解雇発言についても同様「解雇しますと言った覚えはありません｡」と
いうだけで、その前後のやりとりについても「ちょっと記憶にないです｡」と言葉
を濁すのみである（Ｘ 本人調書)。しかし、被控訴人Ｙ はその場に居合わせて3
人で話をしたことがあったこと、また、前日控訴人から新しい作業の指示や意味や
評価について聞かれたことををそれぞれ認めており（被Ｙ本人調書７頁)、これら
の事実は前日の控訴人と被控訴人Ｙ のやりとり（原告陳述書８頁の６項(1)）及
び解雇発言時のやりとりを述べる控訴人の供述を裏付けており（原告陳述書８頁の
６項（2))、Ｘ の供述に対して控訴人の供述は十分信用に値するのである。
-7-
（２）被控訴人会社の責任
Ｘ のいう解雇発言は、何ら正当な理由のない突然の一方的な解雇権濫用発言た
るパワハラ行為である。こうした繰り返されるＸ のパワハラを始めとする被控訴
人Ｙ 及び同被Ｚら中間管理職による本件一連のパワハラ行為が随時頻発している
ことは、とりもなおさず被控訴人会社のパワハラ問題に関して従業員殊に中間管理
職に対する教育、研修、啓蒙が不十分であることを物語っている。このことは、控
訴人の供述からも、また、被控訴人らの研修等の立証がないことからも明らかであ
る。社内におけるパワハラ行為が職場環境を悪化させ効率的な業務の執行を阻害さ
せるものとして大きな社会的問題となっている今日、会社が挙げてその防止に務め
る義務が課されている状況にあって、被控訴人会社がかれらのパワハラを防止でき
なかったこと自体が日頃の指導研修啓蒙義務違反として安全配慮義務を懈怠したこ
とに他ならないのである。
３ 「雇止め」及び「日勤異動」発言
（１）Ｘ のパワハラ行為
ア 原判決は、控訴人が提出したパＡのＸ 宛電子メール（甲３）が存するが、
契約更新拒絶や日勤への異動の話があったことを前提とした内容ではないとして、
控訴人が平成28年９月19日頃、Ｘ から「次の契約だが、君の仕事の能力が低い
ので、このままなら更新はない｡｣「そこまで言うなら、日勤に来い。俺が直接評
価してやる｡」などとパワハラ発言を受けたこと（請求原因３項（1）のウ、原告準
備書面（5）の５頁）を裏付けるものではないとする(判決書20頁)。
しかしながら、甲３のＸ 宛の電子メールは、平成28年９月19日頃にＸ の雇
止め予告の発言（パワハラ）を受けて、当時の経緯及びやりとりの状況を記載した
甲20の経過説明書記載のとおりの経緯で作成され送信されたものである。自分な
りに労災による受傷の影響の中で精励していることをＸ に説明して理解を求めた
ところ、Ｘ から、そこまでいうなら俺が査定してやるから日勤に来いと異動を命
じられたのである。Ｘ は当時日勤のアマアルバムグループのグループ長も兼ねて
-8-
いたから日勤異動は単なる打診ではなく一方的な命令だったのである。ただし、控
訴人が所属するプロアルバムグループでなく、作業内容の全く異なる新たな職場で
もあるアマアルバムグループで（異動先がアマアルバムグループであることは、被
告Ｘ 陳述書（３頁）や被告ら第３準備書面３-４頁から認められる｡）かつ日勤業
務というこれまでと労働環境が大きく変わり、しかも夜勤手当がなくなり実質支払
賃金が減額となる部署への突然の異動命令でありながら予告も打診もなく通行され
たもので、その意味でパワハラ二次被害の面がある。
夜勤勤務の控訴人がグループ長に一方的に日勤を命じられた以上、控訴人にとっ
ては、Ｘ にそうした権限があるかどうかはともかく、従わないと解雇もありうる
とのおそれから不満ながらも異動の覚悟をした。そして、Ｘ の意図は、異動先で
不良の査定をして控訴人の雇止めの正当性を基礎付けるための異動を求めるもので
はないかとの思いから、パＡチーフには、Ｘ に雇止めを撤回してほしいとの控訴
人の思いを伝えた上で、いまできることとして異動先において不良の査定を避ける
べく、そのためには、Ｘ に自身の健康問題を明確に伝えることと、日勤のアマア
ルバムグループに異動になったら、控訴人の健康状態、すなわち控訴人の労災後遺
障害の内容と程度を理解してこれにマッチした作業の担当となるように責任をもっ
て業務分担を指示してほしい旨伝えて配慮を求めるため、甲３の電子メールを作成
してＸ に送信したのである。
雇止めの予告に対して精一杯控訴人がそれまでの自身の努力を説明した結果Ｘ
から出された日勤異動は雇止め前の代案ないし雇止め猶予案であり、控訴人は日勤
での仕事ぶりを査定して改めて結論を出すといわれたグループ長のパワハラに該当
するような不当な通告ないし命令であると感じつつ、Ｘ の部下として健康状態の
許す限り良い査定を獲得するため頑張るつもりだった。つまりその時点では、もと
より雇止め予告を撤回してほしい気持ちはあったが、撤回や日勤異動の取消しを直
接求めるためのメール送信をしたものではなかったから、原判決がいうような前提
の文章になっていなかったに過ぎず、したがって、このことからＸ の上記発言が
-9-
なかったことにはならない。むしろそうしたＸ の発言を踏まえた甲３の電子メー
ルだったことが理解されるべきである。
そして、翌20日にパＡパートリーダーを通じて電子メールを送信してもらいＸ
に配慮方求めたのであるからその因果関係は明らかであるのに、記載内容が必ず
しも雇止めや日勤異動を前提としたものではないとの形式的な理由のみでパワハラ
行為を否定した原判決の誤りは明らかである。そうでなければ、控訴人は何のため
にわざわざパートリーダーを介してまで、行動に出たというのであろうか。
なお、控訴人は、被控訴人らが言うように（被告ら第３準備書面４頁)、アマグ
ループへの移動取りやめをＸ に要望したことはないし､パＡに伝えたこともない｡
現に甲３にもそのような記載はない。また、この異動の件は、その数日後に控訴人
の業務中にＸ がやってきて「このまま夜勤を続けてください。あなたは運が悪か
った｡」と言われ､Ｘ が控訴人の日勤異動と雇止めを事実上撤回した（甲35の16
頁)。このときは、説明や質問等それ以上のやりとりは一切なかったので撤回の理
由は不明だが、控訴人にマッチする作業はアマグループには見当たらなかったこと
からすれば、この雇止め・日勤異動通告も夜間勤務のとりやめ同様Ｘ の思い付き
的な軽率判断だったものと思われる。
イ 原判決は、控訴人の陳述書（甲35)、控訴人本人の供述（原告本人調書）そ
の他控訴人の雇止めに関する経過報告書（甲20）等の間接証拠を含めて、控訴人
の主張を裏付ける客観的証拠がないとする。他方、記憶がないとするＸ 供述をそ
の信用性を疑わせる証拠はないとして、控訴人の主張を否定した(判決書21頁)。
ここでも原判決は、間接証拠には目をくれずに、直接証拠が存しない限り事実認
定出来ない旨宣告する通り一遍のワンパターンのマニュアル認定を施すもので、誠
に遺憾である。Ｘ の記憶がないとする本人尋問に対する供述については、控訴人
がその信用性を疑うに足る十分な主張立証を尽くしているにもかかわらず、記憶に
ないとするＸ 発言を信用する。他方控訴人の供述の信用性については、一貫して
主張している点等相当程度信用性を認めながら、結果的にその信用性を疑い、何ら
-10-
の根拠も示さずに虚言と認定して排斥する。まさに結論ありきの原判決の判断は経
験則に反するもので、到底承服できない。
ウ Ｘ の供述が信用性に欠けること
雇止めについても同様Ｘ は｢覚えていない｣を連発するだけで(Ｘ 本人調書11
頁、12頁)、その前後のやりとり中「日勤に来い」と言った記憶はあると認めなが
ら、被Ｙの同席事実や自身の雇止め発言といった自己に不利益な発言のみ認めない
のであるが、このようなＸ の否定供述は合理性がなく信用性に乏しいものと言わ
ざるをえないのである。
Ｘ は、陳述書で、Ｘ が控訴人に提案指示したアマアルバムグループへの日勤
異動を控訴人が取りやめることを要望していたのでパＡの考えで甲３の電子メール
を作成させたとか、控訴人が体調不良を理由に異動の取りやめを要望するため甲３
の電子メールをＸ に送信したなどと供述し(乙６の１の３頁)、Ｘ の雇止めや日
勤異動を一方的に命じたパワハラとは無関係と述べている。しかし、控訴人が甲３
の電子メールには何ら日勤異動の取りやめなど要望していない。かえって、このよ
うなＸ の供述は、日勤異動に対しては控訴人はいい顔をして受け容れ面談を終え
たというＸ 自身のの法廷供述と明らかに矛盾するものである（Ｘ 本人調書１３
頁､１８頁)。雇止め発言を記憶がないとするＸ 供述は到底信用に値しないのであ
る。
そもそも、Ｘ は､「雇止めの話を控訴人にしたことは覚えていない｡」「被Ｙの
同席やその場で被Ｙを叱ったことは覚えていない｡｣と言いながら(Ｘ 本人調書11
〜12頁、14頁）、「日勤に来い。俺が査定してやる｡」という言葉は記憶あるとい
う（同13頁)。これらは控訴人の主張を相当程度裏付けるものである。他方、Ｘ
は、そのときの面談の場で、控訴人から「時給を上げてほしい」と要望されたなど
と証言するが、事実に反する証言であるばかりか、そのような供述はそれまでＸ
が全く主張していなかった事実である。Ｘ はさらに、被控訴人ら代理人の補充質
問に対して「日勤に異動して自分の側で成果を見せてほしいという話をしたら、控
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訴人は話合いが決着したみたいないい顔をして、頑張りますと答えて面談が終わっ
た｡｣（同１８頁）などと取って付けたような証言をする。しかし、これまたそれま
で主張していない内容の新たな供述であって、雇止めや日勤の異動を宣告されてそ
こで査定をして改めて判断するような不利益通告をされた控訴人が、そのような言
動ないし対応をすることはありえず、その直後の控訴人の送信したメール（甲３）
に照らしても、Ｘ の証言は何ら裏付けのない架空の全く信用に値しない供述であ
る。
むしろ、控訴人が主張し供述するように（甲２０)、平成28年９月19日頃にＸ
から「このままなら更新はない｡」と雇止めを予告されたこと、控訴人が労災後遺
症を抱えて自分なりに努力していることを説明したところ、日勤に来い、俺が評価
してやると異動を求められたこと、それに対して、パＡから控訴人の健康問題を伝
える内容の電子メール(甲３)を送信してもらったこと、Ｘ から日勤異動の取消し
を聞かされたこと、以上の経緯に鑑みると、控訴人の供述は十分合理的に信用に値
するものであって、甲３の記載について、単に「更新拒絶や日勤への異動の話があ
ったことを前提とする内容ではない」ことを理由にＸ の雇止めパワハラ発言を否
定するのは誤りである。
（２）被控訴人会社の責任
前記２の（２）と同一であるので、援用する。
付言すると、Ｘ は、グループ長という所属アルバムグループに100人以上の部
下を擁する責任者の重責にありながら（Ｘ 本人調書６頁）、部下の労働条件の突
然の変更（夜間勤務取止めによる日勤異動、賃金引下げ）ないし契約の終了（解雇、
雇止め）といった権限外の処分を乱発したり（同６頁、15頁)、そうした労働者に
対する合意のない一方的な不利益処分を禁止した労働基準法や労働契約法あるいは
パワハラ行為を禁止して解雇事由と定めた就業規則等の法令及び社内規則を十分に
理解しているとは到底言い難いＸ の言動は（この点は有給休暇の権利の知識を欠
いていた同じグループ長の被控訴人Ｚ も同じ)、被控訴人会社の日頃の従業員教
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育指導研修の欠如を物語っており、こうした被控訴人会社の怠慢がＸ や被控訴人
Ｙ 、同被Ｚのパワハラ行為を次々生じさせ、これらを防止できなかったことに尽
きるので、被控訴人会社の安全配慮義務違反はこの点からも指摘できるのである。
第２ 被控訴人Ｙ のパワハラ行為を否定した原判決の誤り
１ 被控訴人Ｙ のパワハラ行為
（１）原判決は、�々義平佑�主張する平成29年8月15日に、梱包作業中頚椎椎間
板ヘルニアによる頸部等の痛み、しびれによる症状再燃により作業を中断したこと
について、被控訴人Ｙ から「なぜ、作業を中断したのか｡｣「指示に従いなさい。
労災が再燃し悪化しても構わない｡｣「訴訟を起こしても構いません｡」「指示に従
うことが重要だ。会社の責任になってもかまいません｡｣「訴訟を起こしてもかま
いませんよ｡」などと暴言を受けたとするその被控訴人Ｙ の発言を裏付ける客観
的証拠がないとする一方で、��業務内容は会社が決めるものだから会社の指示に従
う必要があると言っただけだとする被控訴人Ｙ の弁解を理解できるとし、�Ｈ鏐�
訴人Ｙ が控訴人が主張するような言い方（パワハラ発言）をすることが自然であ
る事情はないなどと判示する(判決書22頁)。
ア しかしながら、控訴人は、被控訴人Ｙ から請求原因記載のパワハラ発言を
受けたことを一貫して供述している事実(甲４、甲26〜28、乙４、乙５)、被害直後
に控訴人が被控訴人会社に電子メール(甲４)で被控訴人Ｙ のパワハラ行為を送信
している事実、これを受けて幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長が控訴人との面談を設
定した事実、控訴人はこれ以上の被害を避けるため一時有給休暇を取得して被控訴
人Ｙ との共同作業から離脱した事実(原告本人調書19−20頁）などの諸事実を
総合すれば、甲４の被控訴人Ｙ によるパワハラ被害内容を記載した電子メールの
存在は明白であるから、原判決の上記�，了愿Δ賄�たらない。
イ この点被控訴人らは､パＡの送信事実も被控訴人会社の受信事実も否認する。
しかしながら、後記（2）のとおり幹Ｓの発言から被控訴人会社の受信事実は明
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らかであるのに、控訴人の求めた電子メールの提出に応じない(原告準備書面(3)の
８頁､被告第３準備書面４頁)。すなわち､控訴人が指摘するように(原告本人調書22
頁)、甲26及び27、乙４の冒頭幹Ｓが「ちょっと、詳細見させてもらいました。・
・｣「一応読ませてもらったんですけど、・・」とある記載(例えば、乙４の１頁）
からすれば、この電子メールの送信と被控訴人会社が受信して幹Ｓらが確認してい
ることは明らかである(控訴人の供述によれば、パＡは部Ｈに送信した旨述べたと
いう（原告本人調書18頁）。
ウ そして、控訴人が労災請求をして認定された労災の後遺症による頸部の痛み
等の症状を訴えてていたことは被控訴人Ｙ も認めていること(被告Ｙ 本人調書
２頁)、被控訴人Ｙ が当時ストレスと精神的不安定で(乙５の）33〜34頁)常習的
にパワハラ言動を有し、要監視状況にあったことは幹Ｓ統括部長ら会社幹部も認識
していたこと（乙５の５頁)、パワハラ被害時の状況は、原告陳述書（甲35の12
項（1）ないし（3)､）及び原告本人調書（15頁以下）記載のとおりで、日頃の通
常作業の仮定の中で生じたもので控訴人の供述に不自然なところはないのに対し、
他方後記（４）のとおり被控訴人Ｙ の供述の不自然不合理性等の諸事実を総合す
ると、被控訴人Ｙ が本件当時控訴人が労災後遺症による肩、四肢のしびれ、痛み
の再燃で作業を中断したことに対して、被控訴人Ｙ が控訴人に暴言を吐いたとす
る事実が存したとみても何ら不自然でも不合理でもなく、上記のとおり控訴人が被
控訴人Ｙ からパワハラ被害を受けて直ちに電子メール（甲4）で被控訴人会社に
報告して救済を求め、その結果幹Ｓ・部Ｈ面談が実現している事実、控訴人は有給
休暇を数日取得して当面の被控訴人Ｙ との共同作業の機会を回避したことなどの
事実が認定できるのであるから、原判決の上記��及び��の判事が失当であることは
明らかである。
エ 被控訴人らは、被控訴人Ｙ と控訴人の人間関係が不良で業務運営に支障が
出たことを理由に幹Ｓ・部Ｈ面談が設定されたかのごとき主張をするが（被告第５
準備書面３頁)、この点幹Ｓ・部Ｈはこの不仲事実を否定していることから(乙４の
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40頁21〜24行)、被控訴人らの上記主張は前提を誤っている上、幹Ｓ・部Ｈの面
談目的を被控訴人Ｙ のパワハラ行為から目をそらそうとする主張であって、到底
認められない。
（２）原判決は、甲４の証拠は電子メールそのものではないとして控訴人のパワハ
ラ被害の裏付けとならない旨判示するが(判決書22頁)、控訴人がパＡに依頼して
送信して被控訴人会社に送信してもらった電子メールの内容がまさに甲４である。
甲４に記載のある「控訴人が8月16日の梱包作業中にヘルニア症状(労災後遺症)
が出始めたため、だましだまし作業を続けていたが、収まらないので作業を中断し
た｣事実が記載され､このことで朝方被控訴人Ｙ から｢なぜ作業を中断したのか｡」
と叱責されて作業を続けるように命令され「指示に従いなさい。労災が悪化しても
構わない｡」等々の暴言を吐かれるパワハラ被害を受けたのである。
このことは、幹Ｓ・部Ｈ面談で、電子メールの内容を幹Ｓらが面談の冒頭で控訴
人に確認しており、そこに幹Ｓ｢一応読ませてもらったんですけど､・・｣(乙４の１
頁19行)､と述べて電子メールを受信していることを前提に幹Ｓが話を始めている。
そして、幹Ｓ「以後で締めくくりで間違いないですか｡」（同２頁６行)、と甲４と
同一の記載のある内容を確認し、幹Ｓ「今お体なんですけど、途中で、だましだま
しということだったんですけど、以前からこういう作業は体がきついんですとかい
う話は・・｣（同２頁20行）と幹Ｓが控訴人に質問したのは、甲４の「ある程度だ
ましだまし行ったのですが収まらず、・・」の記載のとおり被控訴人会社が受信し
た電子メールにも同一の記載があることを受けた幹Ｓの発言であることは明らかで
ある。こうした乙４の証拠(甲26、27と同じ）が存するのであるから(この点は既に
原告準備書面(5)の第３の４項(９頁）で指摘したとおりである｡)、甲４の証拠が
電子メールそのものではないとか控訴人のパワハラ被害の裏付けとならないなどと
する判事の誤りは明らかである。
（３）原判決の上記判事は、要するに控訴人の主張を裏付ける間接事実がそれなり
に存するが直接裏付ける証拠ではないから、結局控訴人の主張するパワハラ事実を
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認定できないとするものと解される。
ア しかし、そうであれば、パワハラ加害者が真実を述べ、控訴人が虚言を弄し
て社内を混乱させたことになる。果たしてそうした認定が正しいといえるのか。つ
まり彼らの各供述の信用性を十分に比較吟味した結果とは思えない。単に疑わしい
だけで事実とは言えないと一蹴し、まるで何事もなかったように平然と判示する。
イ 普段控訴人の労災後遺症に理解を示していたパートロが自身の指示書仕分け
工程作業が終了すると控訴人の梱包固定を代わってやってくれていた。被控訴人Ｙ
もこの事実を目撃して知っていたのに、パワハラ被害当日パロが欠勤したため控
訴人は交代してもらえず、そこで控訴人は梱包作業をおおかた済ませたところで、
被控訴人Ｙ に断って作業を中断したというのである(原告本人調書）16〜17頁、
原告陳述書甲35の12項（1）ないし（3))。ところが、被控訴人Ｙ は断ったとき
は何も言わなかったのに、夜勤終了間際になって片付け仕事をしていた控訴人に向
かって､虫の居所が悪かったのか控訴人のことを日頃良く思っていなかったからか、
訴状記載の暴言を浴びせたのである。このパワハラ事実は、普段の作業交代状況、
そのことを被控訴人Ｙ も知っていたことを含めてパートロの尋問によって、当日
の被控訴人Ｙ の取った対応ないし言動が特異なものであったことを証明できるも
のと考える。
ウ ところで、被控訴人会社が、パワハラ被害を受けて幹部Ｓ 統括事業部長と
部長Ｈ グループ長が面談を設定しながら、当事者、特に加害者とされる被控訴
人Ｙ から十分な事実確認とともに事実確認に争いがある場合は関係者らの事情聴
取等が行われずに、事実認定ができないままに作業体制の現状維持ないし妥協を控
訴人に求めたことに問題がある。すなわち、被控訴人Ｙ については夜勤を異動で
きないとして､今後とも同被控訴人の指示に従ってほしいとする現状維持の提案(乙
５の16頁19行、17頁9-10行)、あるいは、代案�，箸靴謄傳舛隆浜�下に入り週４
日勤務となるか、代案�△箸靴篤�勤異動で夜勤手当がなくなるが補償なしの妥協案
を示された（乙５の17頁19行〜18頁6行、26頁2-5行)。そのいずれかか被控訴
-16-
人Ｙ との上記共存しかないとされた。
被控訴人会社としては、事が就業規則（甲39）が委任した服務規程におそらく
禁止事項として定め（規則37条、38条)、就業規則上解雇事由と明示しているパ
ワハラスメント行為（規則15条7号）という重大事案であるから、外部委員等に
よる第三者委員会を設定して徹底的な調査を実施をすべきだった。単にホットライ
ンを設けたとか社内報に掲載したと主張するだけで、何らこれに関する周知も徹底
もなく、研修も実施しておらず、社員のほとんどが現実にパワハラに関する知識も
救済手段、方法等もしらない現状にあっては、被控訴人会社の日頃の安全配慮義務
の懈怠は明らかである（Ｘ 本人調書16頁、原告本人調書20頁)。
控訴人は、幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長との第１回面談で、両名共に控訴人の
労災事実や後遺症に付いて何も知らなかったこと（乙４の7頁）や控訴人と被控訴
人Ｙ の関係が良好でないことも知らなかったことを初めて知った（乙４の40頁
22-24行)。幹Ｓ統括部長と部Ｈグループ長は控訴人の聴取後被控訴人Ｙ に面談
して聴取しているが、にわかに信じ難いが、被控訴人Ｙ は、幹Ｓらから面談目的
ないし理由を聞いていないという。甲４のメールに記載されている控訴人の被害事
実について、これを指摘されたり事実確認をされなかったというのである（被告Ｙ
本人調書 12頁〜14頁)。これが事実なら、幹Ｓらは何のために控訴人や被控訴
人Ｙ との面談を設定したのか。甲４で被害を被控訴人会社宛てに申告した控訴人
のパワハラ被害救済の申立てに対して、被控訴人会社は何も対応らしい対応、事実
確認のための調査を行わなかったことになる。幹Ｓ統括部長の尋問が必須と思われ
る。
（４）被控訴人Ｙ の供述が信用性に欠けること
パート社員である控訴人の上司に当たる正社員被Ｙのパワハラ行為を裏付ける控
訴人の陳述書（甲35）及び本人尋問の結果の信用性は、被害後直ちにパＡに苦情
の申入れをし（甲4)、被Ｙとの同時勤務を避けるため有給休暇を取得したこと（乙
４の46頁５〜６行、48頁16〜22行、69頁24〜28行、70頁３〜５行)、及び苦
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情を受けて当時のグループ長部長Ｈ 及びその上司統括部長幹部Ｓ が当事者と
個別に面談を開始していることから明らかである。にもかかわらずぱわはらが存在
しなかったというのであれば、これらのメールや面談は何だったのか、原判決に合
理的かつ説得力ある説明はない。被控訴人らは、甲４の電子メールは送信も受信も
なく存在しないなどと否定し（被告ら第１準備書面３頁、第３準備書面４頁)。幹
Ｓ、部Ｈ第２回面談の事実も知らないとして事実上否定していたのであって(被告
ら第１準備書面３頁、第３準備書面５頁)、これらの事実は被控訴人Ｙ の供述の
信用性全般に関わるものと考える。
控訴人から「指示には従えない｡」と言われたと主張する被控訴人Ｙ の発言や、
それに対し同被控訴人が「作業内容はこちらで決めるので、指示に従うように｡」
などとする発言（被告Ｙ 本人調書４頁）は、それだけとりあげればありうる主張
に聞こえるが、控訴人は上記の発言をしたことは明確に否定しており（原告本人調
書23頁)、詳細は原告準備書面（6）の第２の３（6頁）記載のとおりである。そし
て、被控訴人Ｙ 自身は当時控訴人との関係が良くなかったことを認めており（被
Ｙ本人調書６頁)、かねて被控訴人Ｙ の言動に問題があり、幹Ｓ統括部長、部Ｈ
グループ長共に同被控訴人に改善の見込みがなく要監視状態にあったことを認めて
いる経緯に照らし（乙５の５頁18−23行、33頁26行以下、34頁13−18行、26
−30行)、本件パワハラ問題について、こうした弁解は被控訴人Ｙ が自身パワハ
ラ発言を否定するため考えた言い訳とみるほかないのである。
２ 被控訴人会社の責任
原判決は、被控訴人Ｙ のパワハラ行為の存在を否定したことから、被控訴人会
社の責任を論じていない。
しかしながら、上記のとおり被控訴人Ｙ のパワハラ行為は明白であり、同被控
訴人が被控訴人会社の業務の執行に際して控訴人に与えた損害について、被控訴人
会社は、民法715条１項に基づき使用者としてこれを賠償すべき責任を有する。
なお、控訴人の労災後遺症について、そもそも被控訴人会社は一貫して控訴人の
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労災認定請求だけ認め､その結果は知らないとして自社の従業員の労災認定の有無､
その後の症状や後遺障害の有無・程度について無関心である。したがって、労災被
害者の担当すべき作業内容や職場の労働環境の整備改善等関するに配慮がみられな
いのである。そして、控訴人が被Ｘグループ長時代に労災の認定を申請した事実や
甲３に記載された後遺障害状況等について、被Ｘが甲３で控訴人の労災後遺障害の
症状を認識しえたとしても､この点後任の部Ｈグループ長に引継ぎを怠ったため(乙
５の４頁3-4行「原告さんは会社に言ってある（訴えるは誤記）という一言で、・
・・、私は残念ながら聞いてなかったわけなんですよ｡｣)、同グループ長が上記事
実を認識して被控訴人Ｙ に控訴人の作業に対する適切な配慮を求める指導ができ
なかった被控訴人会社側の過失を認めざるをえないのである。すなわち、被控訴人
会社は、幹Ｓ・部Ｈが供述するように被控訴人Ｙ の精神不安定と常習的なパワハ
ラ言動と控訴人に対する適切な配慮が必要であることを認識していたのに十分な始
動ができていなかったことを認めているという背景の中で（乙５の33頁、34頁)、
被控訴人Ｙ の本件パワハラ行為が発生したのであるから、被控訴人会社の安全配
慮義務違反も明らかである。
第３ 被控訴人Ｚ のパワハラ行為を否定した原判決の誤り
１ 被控訴人Ｚ のパワハラ行為
（１）原判決は、�々義平佑�、令和２年６月25日に有給休暇を取得するため、本
来有給休暇を請求する書面を提出すればよいことは承知していたが、当時は新型コ
ロナ感染症下における被控訴人会社の勤務体制に関する考えがあるのではないかと
の配慮から、同年５月６日にあらかじめ部Ｊグループ長代理に休暇を取得する選択
肢について問い合わせた上で、同人から有給休暇で取得されたい旨回答を得ていた
こと(甲６の２)、��部Ｊに上記問い合わせをした同月14日に後控訴人が有給休暇
の請求書を作成したこと(甲５)、��ところが、その後同年６月25日が「出勤」と
されているシフト表が６月10日に作成されていること(甲７)に気付いた控訴人が、
-19-
同月１９日に上記部Ｊにメールしてシフト表の誤りを指摘し、同日は有給休暇請求
済みであることを伝えたが、部Ｊから何ら返事がなかったこと(甲７、甲８の２)、
�す義平佑�６月２５日に出勤しなかったところ、その後６月分賃金の支払日である
同年７月１５日に､「有給休暇」扱いではなく､「欠勤」でもなく「休業」として処
理されていたことを知った。�イ修隆嵌鏐義平唯據，�、同年７月７日に「有給休暇
は売上が正常化しない限り認めない。休暇については休業申請にされたい」旨の電
子メールを部下従業員（社員）に送信し、併せてプロアルバムグループの作業所内
の掲示板にこの電子メールの内容を掲示し､�Δ海譴鰺癸呼�の夜勤開始時の朝礼(原
判決のいうミーティングのこと。被告ら第１準備書面４頁参照）で、社Ｌがこれを
控訴人らプロアルバムグループのメンバー（パート社員）に説明伝達したこと。��
同月13日、14日のグループ内の電子メールや１３日の朝礼で訂正謝罪したことな
ど以上の各事実を認めながら、被控訴人Ｚ の有給休暇拒否によるパワハラ行為を
否定した。
すなわち、原判決は、控訴人の有給休暇の請求は５月６日であり、６月１０日の
シフト表で「出勤」扱いされていて有給休暇の処理がされていなかったものである
ところ、被控訴人Ｚ の有給拒否及び休業要求指示は同年７月７日にあったもので
あるから、同被控訴人の労働基準法に違反する指示通告とは因果関係がないという
のである(判決書26頁)。
控訴人の請求と被控訴人Ｚ ないし被控訴人会社の有給拒否の流れは概ね時系列
的に上記のとおりだが、ただし、７月７日の電子メールは社員宛てのもので、控訴
人らパート夜勤社員には休業・公休明けの翌８日夜の勤務開始前の朝礼で社Ｌから
伝えられているのである。
（２）ところで、被控訴人Ｚ が控訴人の有給休暇の請求を拒否したものかどうか
を判断する基準は原判決がいう７月７日ではない。この日は、単に以前の同旨の伝
達が理解されていないようだと説明しているとおり、被控訴人Ｚ はかねて有休拒
否の意向を有していたことが伺えるからである。現に後記（３）のとおり、その頃
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複数の日勤・夜勤のグループのメンバーが７月７日までに有給休暇を拒否されてい
るからである。
原判決も、被控訴人Ｚ が上記７月７日に送信した上記電子メールに「有給につ
いては以前にも共有しましたが、理解されていないようなので、改めて共有指示し
ます｡」としてこのことを認めている。したがって、控訴人の有給休暇の請求とそ
の拒否対応は、まさに被控訴人Ｚ が控訴人らの有給休暇の請求が依然行われいて
その都度有給休暇を認めず変更措置を講じてきたことを踏まえて、改めて被控訴人
Ｚ が有給休暇拒否の指示を考えていた時期におけるものであること、現に控訴人
の有給休暇の請求に対して結果として当初「出勤」最終的には「休業」処理された
ことは、被控訴人Ｚ がした有給休暇の請求は認めずに休みを取りたいときは休業
申請するようにとの指示（甲9の１）と同一内容のものであることから、被控訴人
Ｚ が部Ｊや社Ｌを通じて控訴人にもこの有給休暇拒否措置を現実化したものと合
理的に推認できるのである。
（３）このことを裏付ける新たな証拠（甲30の2、甲38の1及び38の2）を提出
する。
ア 甲30の2は、甲29の冒頭に録音されているものであるが甲30の記載から
省略されていたもので、本来甲30の冒頭に記載すべき午後8時の朝礼開始前約8
分間のパＡと控訴人ほか（パト）のやりとりである。
このやりとりから、その頃パＡも理不尽な有給休暇の請求を拒否されたこと及び
パＡは（おそらく担当者の部Ｊに）抗議したが、覆らず欠勤処理されたことから被
控訴人会社への強い不満と怒りが表現されている（甲30の2)。有給休暇請求の手
続は、書面を社Ｌに提出し、これを部Ｊが事務処理していたというのであるから、
被控訴人Ｚ の部下である部Ｊや社Ｌが関与していたことは明らかで、部Ｊが単独
で判断したことは考え難く、グループ長である被控訴人Ｚ の意を受けた部Ｊがパ
Ａの有給休暇の請求を認めず、欠勤扱いにしたものと合理的に推認できる。すなわ
ち、パＡは甲30の2（原資料は録音媒体である甲29）記載のやりとりのとおり、7
-21-
月8日の上記朝礼の約1カ月前の控訴人と同じような時期に有給休暇の請求をした
ところ、これが認められずに欠勤処理されことに労働基準法違反であるとして憤慨
しているのである。
イ また、甲38の1及び甲38の2のシフト表は、前者は部Ｊが通例月初に作成
して掲示するシフト表で、パＡの甲30の2の発言にある有給休暇を請求して取得
しようとしたた日は7月1日と思われる。すなわち、甲38の1のシフト表の夜勤
帯の「パＡ」の7月1日欄は「／」で既に欠勤扱いされたことがわかる（シフト表
上欄参照)。パＡが有給休暇を請求して同日当該休暇により休んだつもりだったの
に、7月2日に掲示されたシフト表をみて欠勤扱いされたことから、7月8日の朝
礼で憤慨し苦情をぶつけたことがうかがえる。
その他甲38の1のシフト表（7月2日更新）からは、日勤帯の「パチ」が７月７
日、14日を各「欠勤」に、同様日勤の「パリ」がやはり7月7日を「欠勤」に、
同様「パヌ」が7月17日を「欠勤」にされている。
その後被控訴人Ｚ は、７月13日になって、同月7日に自ら発した電子メール
やこれを掲示板に掲示した有給休暇拒否の通告を撤回し、同月20日に更新した新
たなシフト表（甲38の2）によって上記有給休暇請求問題に対応した。すなわち、
「パＡ」と「パリ」は「●」の「有休」に､「パチ」と「パヌ」は､「緑◎」の「事
前申請休業」に変更されている（なお、この緑色記載は、このとき限りの運用)。
この変更措置は、彼らが当初は「有給」休暇を請求していたと考えられるのであっ
て、「パチ」と「パヌ」は上記13日の撤回メール（甲9の2）による被控訴人会社
の意向を受けて「休業」に妥協した結果シフト表に反映されたことがうかがえる。
しかし、控訴人の6月25日の有給休暇の拒否は、同月末日締め翌7月15日賃金の
支払の関係で、控訴人の変更は間に合わなかったと考えられる（被控訴人Ｚ の撤
回通知は7月14日19時40分だった（乙1)）。
ウ こうした経緯に鑑みると、被控訴人Ｚ のプロアルバムグループの部下従業
員に対する有給休暇の請求に対する拒否の指示なり意向は、その頃部Ｊや社Ｌに十
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分に浸透していたことがうかがえるのである。
そうすると、被控訴人Ｚ が7月7日に電子メールで発信しあるいは掲示板に掲
示して従業員に向けて「有給については以前にも共有しましたが、理解されていな
いようなので、改めて共有指示します｡」と通告しているのは、それ以前に控訴人
が有給休暇を請求した5月6日時点（甲6）ないし請求書を作成し提出した同月14
日時点（甲5）で被控訴人Ｚ の有給休暇拒否の方針が固まっていたかどうかはと
もかく、遅くとも部Ｊがこれを無視して控訴人の「有休」を認めずに「出勤」に変
更するシフト表を作成した6月10日時点か（甲7）、あるいは控訴人のシフト表の
誤りを指摘した問い合わせに応じなかった同月19日頃には（甲8の2）、被控訴人
Ｚ がこの方針を決めて、控訴人だけでなく他の複数の従業員にも同様の対応をし
たことが認められるのである。
実際はパＡも控訴人もその場にいたパトもあらかじめそのような被控訴人会社の
方針は7月7日ないし8日以前には聞いたことはなかったから（甲30の2）、以前
から従業員間でこうした被控訴人Ｚ の有給休暇に関する被控訴人会社としての方
針なり意向を共有していた明確な事実はないのに、被控訴人Ｚ は、これは、グル
ープリーダーが決めた既定の運用方針だ(甲9参照）と強弁して時節柄(新型コロナ
感染症の流行による売上減少といった背景があった）強行突破すべく、あたかも皆
さん共有していたはずだと一方的に決め付けてグループのメンバーに責任転換した
ものとみるのが相当である。その意味で被控訴人Ｚ やその部下部Ｊ、社Ｌのあか
らさまかつ常習的な労基法違反行為を宣言する有給休暇拒否通告は極めて悪質なパ
ワハラ行為であり、グループ長被控訴人Ｚ 、事実上有給休暇の請求の可否を判断
してシフト表を作成するグループ長代理部長Ｊ 及び有給休暇の請求書を受け付け
たり朝礼等で被控訴人Ｚ の意向を夜勤パート社員らに伝達してきた社員Ｌ の3
名が共同一致して行動しない限り実行的な運用ができないと考えられる共同パワハ
ラ行為とみることができるから、被控訴人Ｚ らとその使用者である被控訴人会社
の責任は誠に重大である。
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（３）以上のとおりであるから、有給休暇取得を承認する権限を有しているのは部
Ｊグループ長代理であり、被控訴人Ｚ が控訴人の有給休暇の取得を拒否するよう
な働きかけをした証拠はないとする原判決の判示(判決書26頁）は、実態をみてい
ない誤った判断であることは明らかである。
ア グループ長代理に過ぎない部Ｊにそれだけの権限があるなら、部Ｊ自身が発
信すればいいはずで、被控訴人Ｚ が敢えて有給休暇請求不可や撤回の通達（甲9
の1、乙1）を発する意味はない。
そもそも有給休暇の請求は形成権とされており､原則拒否できないのであるから､
請求に対して承認、不承認という概念は存しない。部Ｊは単なる事務処理手続の担
当者とみるべきである。にもかかわらず、部Ｊがそれ以上の権限を行使濫用して有
給休暇の請求握りつぶしや、請求の拒否（欠勤）あるいは変更（出勤や休業）等の
措置を講ずる違法行為はできないものであるにもかかわらず、敢えてこれを行った
のは、その長である被控訴人Ｚ の指示ないし意向に基づく措置であったと考える
ほかなく、結局は被控訴人Ｚ の責任であることは論を持たない。
部Ｊはグループ長である被控訴人Ｚ の直属の部下であり、被控訴人Ｚ の有給
休暇拒否の施策と有給休暇請求に対する休業や出勤等への変更代替措置の方針は、
控訴人ら複数の従業員の有給休暇の請求を拒否した上記6月頃には十分知悉してい
たものとみるべきであるから、本件控訴人に対する有給休暇拒否行為には、社Ｌの
�ゝ找棒禅畚颪量技覬Ｆ森坩戞↓⊆劭未�7月8日に朝礼で被控訴人Ｚ の発信した
電子メールの有給休暇拒否内容（甲9の1）を説明し（甲30の1）、��その際控訴
人やパＡから抗議を受けながら被控訴人Ｚ に抗議を受けたことを報告せず、翌日
再度同様の有給休暇を認めない旨の伝達をしているのであるから（被告Ｚ 尋問調
書7〜8頁、甲31、甲29)、こうした社Ｌの言動と部Ｊの上記�〕�給休暇事前承認､
�⇒�給休暇請求書無視、�Ｍ�給休暇を否定してシフト表で「出勤」に変更、�ぅ轡�
ト表の誤りを指摘する問合せ無視といった一連の行動を総合すれば、彼らは上司で
ある被控訴人Ｚ の指示を受けて被控訴人Ｚ を補助した部Ｊ及び社Ｌの共同行
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為、あるいは被控訴人Ｚ との明示黙示の共謀と考えるのが相当である。被控訴人
Ｚ ら3名の行為は、被控訴人会社の従業員による労働基準法を無視した違法な権
利妨害によるパワハラ行為以外の何ものでもない｡その責任者たる被控訴人Ｚ が､
パＡや他の従業員の有給休暇の請求を拒否しながら、控訴人に限って関与しなかっ
たとは到底考え難いから、原判決の上記判事が当を得ないものであることは明らか
である。
イ 被控訴人Ｚ の「有給については以前にも共有しましたが、理解されていな
いようなので、改めて共有指示します｡」との上記通告は、以下のとおり部Ｊや社
Ｌに向けたものであるとともに、なお有給休暇を請求してくる日勤・夜勤のプロア
ルバムグループ従業員向けの言葉であったと考えられる。すなわち、部Ｊが控訴人
の上記�，両伐颪紡个靴突�休の使用を助言したことの不適当を指摘した被控訴人Ｚ
が部Ｊに然るべき対応を指示した結果､今更有給休暇を拒否できなかった部Ｊが､
そのため請求自体を無視して出勤のシフト表を作成したものの、控訴人の指摘を受
けて困った挙げ句適切な対応ができず、結局請求書が提出されなかったことにした
ものと考えるのが極めて自然かつ合理的で、事案の流れから見てつじつまが合うの
である。
しかしながら、原判決が合理的な当時の上記状況を容れず、被Ｚのあずかり知ら
ない中での部Ｊの独断だと認定する以上、部Ｊや社Ｌの尋問は必須であるが、これ
を怠った原判決の訴訟指揮は釈明権不行使による心理不尽の違法を犯す不適切なも
ので、その結果被控訴人Ｚ ないし部Ｊのパワハラ行為の判断を誤った違法がある
から、原判決は取り消されなければならない。
（４）さらに、原判決は、控訴人が有給休暇の請求をしたこと自体証拠がないとま
でいう。原判決は、控訴人名義の有給休暇請求書（甲5）が作成されていることか
ら被控訴人会社に提出した可能性があると認めながら、確実に提出されたとは言え
ない、提出後紛失した可能性があるなどという(判決書26頁)。
ア しかしながら、前者は合理的な推認を否定するもの、後者は被控訴人会社の
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重大な過失を認定すべきであるのにこれを不問にして、返って控訴人に不利益に評
価しようとする不合理な判断であり、原判決のあまりに被控訴人会社に加担した偏
波なものの見方には到底納得できない。
被控訴人会社によれば、原判決も認定したとおり（判決書23頁)、有給休暇の請
求は、所定の「休暇願」をグループの社Ｌに提出し、社Ｌから部Ｊに送られて処理
されることになっているのであるから、社Ｌに確認を要するところ、控訴人は甲5
や控訴人の陳述書等必要な主張立証をしているにもかかわらず、被控訴人らからは
休暇願の提出がなかったと主張するのみで、社内に関係者を抱えながら何ら自身の
主張を裏付ける反証行為をしなかった。にもかかかわらず、裁判所はこの点事実確
認も求釈明もしないままに「休暇願」の提出自体否定したもので、認定自体経験則
に反するだけでなく、審議不尽の違法を犯すもので許されない。
イ なお、有給休暇の請求は、法は特段その行使方法を定めているものではない
から、本来有給休暇請求の意思表示が被控訴人会社に伝われば権利の行使があった
ことが認められるべきものである。控訴人は、請求書を作成し、その後シフト表に
有給休暇の請求が反映されいないことを控訴人が担当者部Ｊグループ長代理に通知
しているのであるから、この時点をもって控訴人の有給休暇請求の意思が被控訴人
会社の担当者に到達伝達されて請求権について権利の行使があったと見ることがで
きるのである。この意味でも控訴人の権利行使の主張を否定する上記判事の認定に
誤りがあることは明らかである。
（５）原判決は、被控訴人Ｚ による令和2年7月7日付け電子メールの内容や同
日作業所内の掲示板に掲示した同趣旨の前記（1）の�イ了惻�内容が労働基準法に
違反する不相当な指示で反省すべきものであることを認めながら、数日のうちに撤
回して謝罪したことと具体的な有給休暇取得の妨害が生じた証拠がないとの理由
で、この点のパワハラ行為も否定した(判決書27頁)。
しかしながら、前記夜間勤務取りやめの例と同様、パワハラ行為は後日口頭で撤
回を表明すれば違法性が消滅するとか、具体的な実害結果が生じない限り成立しな
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いというものではない。しかも、撤回は上司に指摘されたという被控訴人らの主張
はにわかに信用し難く、7月8日の朝礼時に控訴人やパＡから労働基準法に違反す
る措置ではないか旨抗議を受けていた経緯があり、それでも当初は運用を強行しよ
うとしたが結局はやむなく撤回に追い込まれた面がある。かつ、撤回まで約1週間
を要していること、それまで被控訴人Ｚ らが控訴人以外にも複数の従業員の有給
休暇を拒否していた経緯があることなどの諸事実に照らすと何ら酌量すべき事情は
ない。
まして、控訴人は現実に有給休暇の取得を妨害拒否された被害者本人であり、そ
の控訴人が他のプロアルバムグループメンバーと共に一斉にグループ長たる被控訴
人Ｚ から有給休暇の請求をするなと指示され、社Ｌからは請求がなかったことに
され、部Ｊからはシフト表で請求を無視されてパＡや上記パチ、パリ、パヌらが受
けた欠勤や休業扱いと同様の措置を受けたのであるから、被控訴人会社から被控訴
人Ｚ を中心としたいわば組織的なパワハラ行為を受けたのである。控訴人は、今
後共再び有給休暇の請求を頭から拒否される現実的な妨害行為のおそれを感じて、
同グループのメンバーであるパＡらともども抗議したというのであるから、控訴人
が相当の精神的苦痛とともに有給休暇の取得を拒否され休業処理された結果賃金を
減額される具体的な損害を被ったこともまた明らかである。
（６）被控訴人Ｚ の供述が信用性に欠けること
ア 本件は、労働者の労働条件に関する基本法である労働基準法における有給休
暇制度について、全く理解と認識に欠ける者がグループ長を務めている結果起こし
たパワハラを伴うトラブルである。被控訴人Ｚ の上記知識の著しい欠如は、誤り
とその違法性を指摘されるまで全く気付いておらず(パＡや控訴人からクレームが
付けられたことは甲29、30から明らかであるのに、被控訴人Ｚ は従業員から質
問がなかったと否認するなど被控訴人Ｚ のその不自然な陳述書や本人尋問に対す
る供述からは撤回に至った理由が全く不明である｡)、かつ、社内における有給休の
暇の行使手続も部下の社Ｌや部Ｊ任せで指示をしていないと供述し、あるいは、自
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身はグループ長として、グループ長代理に過ぎない部Ｊの権限を包括して具有する
はずであるのに、出勤休業等の勤怠を決定する権限は部Ｊにあるなどと部下に責任
転嫁したり（被告Ｚ 本人調書14頁)、自身が作成した電子メールの掲示やパート
従業員への伝達方法等事実関係を全く把握していない供述をするなど（同5頁、7
頁)、質問内容さえ容易に理解しようとしない同被控訴人の供述内容及び供述態度
は極めて不自然、無責任というより、部下の勝手な行動とばかり自身のグループ長
の責任を回避する意図がありありうかがえる不自然かつ支離滅裂な虚偽供述である
（被告Ｚ 本人調書４頁以下の反対尋問に対する供述)。
にもかかわらず、こうした被控訴人Ｚ の何の脈絡も整合性もない不自然不合理
供述を鵜呑みにして「控訴人の有給休暇の取得の権限を有しているのは、被控訴人
Ｚ でなく部Ｊグループ長であるところ、被控訴人Ｚ が部Ｊグループ長に対して
控訴人の有給休暇を認めないように具体的に働きかけたことをうかがわせる証拠も
ない｡」などと全く見当外れの判示をしているが、その判断の誤りは、上記（3）
で指摘したとおりである。
イ 被控訴人Ｚ が、令和2年7月7日付けの電子メールで「有給休暇について
以前も共有したが、理解されていないようなので、改めて共有指示します｡」とし
て、有給休暇の使用制限を通告し、事実上有給休暇に変わる「休業」を推奨してい
いる事実(甲９）は、これと併せて、それ以前の経緯、すなわち、パＡが１か月前
に有給休暇の請求を拒否されて欠勤扱いにされて憤激している事実(甲30の2)、
控訴人が同年6月25日に休暇指定した有給休暇請求書を作成し(甲5）これを提出
したとする控訴人の供述、同年5月6日事前に部Ｊに休暇の取得方法を打診しその
ときは控訴人の有給休暇の取得を了承していた部Ｊが(甲6、6の2)、その後部Ｊ
がにわかに変節して控訴人の当日のシフト表(出勤表）で出勤扱いにし(甲7)、こ
のことを控訴人から指摘されたにもかかわらず無視を決め込んでその訂正に応じな
かった事実(甲8、8の2)、結果として控訴人は被控訴人会社から一方的に「休業」
処理されている事実(甲10、11）等の事情を総合すれば、これらの事実は有給休暇
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請求書が提出されてその行使が存在したことが前提の事実であるから、請求書が提
出されていないとか社内で紛失した可能性があるなどとする原判決の判示は、実態
をみない誤った認定であることは明らかで、被控訴人Ｚ の当時の有給休暇使用制
限の意を受けた社Ｌや部Ｊが計画的に請求書がでていないことにしてうやむやに処
理しようとして行ったと認めるほかなく、また、このように会社ぐるみの有給休暇
を使用させない作業所内のルール、雰囲気作りによるパワハラ行為だったと解する
のが極めて自然かつ合理的で経験則にも合致するものというべきである。
２ 被控訴人会社の責任
原判決は、被控訴人Ｚ のパワハラ行為の存在を否定したことから、被控訴人会
社の責任を論じていない。
しかしながら、被控訴人Ｚ のパワハラ行為は上記のとおり明白であり、同被控
訴人が被控訴人会社の業務の執行に際して自らあるいは部下の部Ｊをして故意又は
過失によりパワハラ行為を行いその結果控訴人に与えた損害について、被控訴人会
社は、民法715条1項に基づき使用者としてこれを賠償すべき責任を有する。この
点は、原判決が判示するように部Ｊ単独による違法な有給休暇拒否なるパワハラ行
為であったとしても被控訴人会社の使用者責任が生ずることに変わりはないが、し
かし、前記のとおり本件の控訴人の請求した有給休暇の拒否行為は、被控訴人Ｚ
を筆頭にその指示意向に基づく部Ｊ、社Ｌらが結託した共同不法行為であってその
責任者はグループの長たる被控訴人Ｚ にあるのであるから、被控訴人会社の使用
者責任は明らかである。
そして、以前から共有していたはずの有給休暇使用制限問題についてもこうした
重大な違法行為繰り返していながら、被控訴人会社は被控訴人Ｚ について何らの
処分もしないほど寛容である(被告Ｚ 本人調書15頁)。被控訴人会社のグループ
長ら幹部職員に対するパワハラ行為防止のための実質的な研修や教育は全くされて
いない。そして、被控訴人会社のパワハラ問題に関する無関心さと無策の実態を如
実に物語っており、被控訴人会社の日頃の安全配慮義務の懈怠も明らかである。
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第４ 原判決総括
原判決は、被控訴人ら3人(Ｘ 、被Ｙ，被Ｚ）による7件(Ｘ 4件、被Ｙ1件、
被Ｚ2件)のパワハラ行為をすべて否定した異常なものである。グループ長クラス
のパワハラが常態化していた被控訴人会社にあって、原審で、被控訴人（被告）ら
はＸ を含めて、控訴人（原告）の主張に対して否認するだけで、反証らしい反証
をしなかった（乙4及び乙5は、甲26）を被告側で反訳したもので、原告が反訳
した甲27、28と概ね同一である。人証についても当初予定がないとして誰一人請
求しなかった｡)。しかるに、一つのパワハラ行為も認定しなかった原判決には承
服できず、内容的にはいわば結論ありきの判決といわざるを得ない。
その論法は、すべて控訴人の主張を裏付ける客観的証拠がないという点と否認す
る被控訴人らの供述が不合理とは言えないという同一ワンパターンの判示で説得に
欠ける。当事者双方の主張ないし供述を比較検討した体裁を装っているが、その実
主張が対立していているともはや直接裏付ける証拠がない以上判断できないという
理由で、十分な審理を尽くすことなく立証責任の名目で安易に控訴人の主張を排斥
した軽率な結論と思えるのである。間接事実を十分に吟味検討し信用性を比較検討
して慎重に判断した痕跡がない。パワハラを否定する結論のための理由付けをした
ものとしか感じられない（例えば、記憶にないというＸ の供述については、単に
その信用性を疑わせる証拠がないとするだけで結果的に信用性を認める一方（21
頁)、継続的に一貫して主張する控訴人の供述については、その信用性について特
段虚偽であるとか信用できないとする根拠について理由を挙げることなく何ら判断
せずに結果として採用しない｡)。
かくのごとき裁判官の判断手法は、直接証拠がない限り事実認定をされることは
なく、多くの場合1対1で直接目撃者もないような事件ではパワハラ被害者の主張
が認められないことになりかねない｡被害者は泣き寝入りを強いられることになり、
事実上裁判の拒否に等しい。
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