準備書面(3)

令和２年（ワ）第■■■■■号事件
原告　■■■■
被告　株式会社ラボ生産ほか３名
　　　　　　　　　　　　　　準備書面（３）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　令和３年２月２２日
東京地方裁判所民事第４８部　　御中

　　　　　　　　　　　　　　原告訴訟代理人
　　　　　　　　　　　　　　弁護士　　■■■■

　被告ら第１準備書面に対する原告の反論は、次のとおりである。
第１　被告Ｘ　のパワハラ関係
　１　夜間勤務中止（廃止）（以下「夜勤閉鎖」ともいう｡）は、被告Ｘ　の独断
とみるのが相当であること。
　被告らは、被告Ｘ　が被告Ｚ　を通じて夜間勤務を取りやめることとして、平成
27年12月４日に夜間勤務従業員に通告したことは認めるが、それは被告Ｘ　の独
断ではなく被告会社の判断によるものと主張する。
　しかしながら、次の事実から、被告Ｘ　の独断によるものと解するのが相当であ
る。

　①夜勤閉鎖決定（同日午後９時頃)(甲14）は、事前の従業員の意思の確認、面
談､説明会､事前予告等何らの手続を経ることなく､突然の宣告ないし通告だった。
　②被告らがいう「勤務態度が良好でなく改善を図ったが奏功しなかった」という
のは、被告Ｘ　が勤務態度が良くないと考えた一部従業員に注意したが思い通りに
行かなかったことで、突発的感情的に夜勤閉鎖宣言をしたのではないかと推認され
る。

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　というのも、被告Ｘ　（グループ長）が通告させた部下である被告Ｚ　（所属正
社員）自身、発表直後に「自分も今さっき突然聞いた」と言っていたからである。
　③同じく当時の被告Ｘ　の部下であった被告Ｙ　も、12月５日午後２時20分に
に同被告から原告が受信した電子メール（ショートメール）で、「その話は、私は
今朝被Ｚさんから始めて聞いたので、詳細は分かりません｡」と述べており（甲15
：原告と被告Ｙ　間の電子メール)、ベテラン社員である被告Ｙ　でさえ事前に被
告Ｘ　や被告会社から何も聞かされておらず、かえって部下の被告Ｚ　（元パート
新人社員）から閉鎖決定を聞かされている。その理由については被告Ｚ　から何も
聞かされず、被告Ｚ　自身何も事情が分からない状況だった。
　以上のとおり、被告会社の夜間勤務体制の中止（廃止）という、夜間勤務従業員
の雇用契約内容の変更を伴う重大な事項について､被告会社から何らの説明もなく､
労働組合ないし労働者代表者（パート社員は労働組合員ではない｡）との事前協議
もなく、個別労働者との交渉も合意もないままに宣言通告した今回の夜勤閉鎖通告
は、到底被告会社の方針とは考え難く、したがって、被告会社が被告Ｘ　と通じて
従業員に通告したもの（実際は更に被告Ｚ　に通告させている）とは考えられない
から、被告らの上記主張は信用できない。
　２　夜勤閉鎖の違法性
　仮に被告会社の方針で夜勤閉鎖を通告したものであったとしても、原告ら夜間勤
務従業員は、午後９時から翌日午前６時までの夜間勤務を労働条件として雇用契約
を締結して労務に従事していたのであるから、ある日突然被告会社の一方的な判断
で原告ら労働者の同意なく雇用契約の内容を変更することは違法である｡被告らは､
夜間勤務従業員の反対を受けて翌日これを撤回したというが、従業員はそれぞれ勤
務形態に合わせて生活設計を組み立てているのであるから、被告らの突然の夜勤閉
鎖が専ら被告会社の都合による雇用契約を無視した形で実行されようとしたこと自
体、多くの夜間勤務従業員に不安を与え、職場に混乱を招いたことは、容易に想像
できる。混乱を生じなかったと否定するする被告らの主張が事実に反することは、

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日勤勤務に変更を余儀なくされた者が出るなど（夜勤パート社員パートＤは、昼夜
逆転現象により夜間勤務撤回後も約１週間日勤勤務をしている｡なお､後記４参照)､
原告が準備書面（１）で主張したとおりである。
　３　被告Ｘ　の暴言等のパワハラ行為
　こうした被告Ｘ　の一方的な夜間勤務中止宣告（夜勤閉鎖）自体、無権限かつ雇
用契約違反行為の押付けというべきパワハラ行為であるのみならず、原告がそのよ
うな理不尽な措置の理由を問い質した際に暴言を浴びせられたことは、訴状記載の
とおりである。被告らは、12月４日の夜勤閉鎖通告に対し、被告Ｘ　が夜勤従業
員の継続要望を受けて従業員と面談して継続することにして翌５日の夜間勤務終了
後（正確には６日朝ということになる｡）に夜勤従業員らに撤回を伝えたと主張し,
この間被告Ｘ　が原告に暴言を吐いたことはないと主張する。
　被告Ｘ　が夜勤閉鎖を撤回したのは12月６日朝であったことが、原告が夜勤パ
ート社員パートＣから受信した電子メールから窺えるところである（甲16:原告と
パートＣ間の電子メール)。
　しかし、原告が被告Ｘ　から訴状記載の暴言を吐かれるパワハラ被害を受けたの
は12月７日（月）である。12月４日（金）に被告Ｚ　が夜勤閉鎖通告をした当日
は被告Ｘ　は日勤勤務であるから夜間職場に顔を出していない。被告Ｘ　が翌５日
（土）に従業員と面談をしたと主張するが、原告は５日（土）、６日（日）は休日
であり面談を受けていない。原告が夜勤閉鎖後被告Ｘ　と顔を合わせたのは、パワ
ハラ被害を受けた12月７日だったのである。したがって、被告会社は、12月４日
と５日に限定して、被告Ｘ　の暴言パワハラ事実を否定したものに過ぎない。
　被告会社は、夜勤閉鎖の理由について、夜間勤務従業員の態度が良好でなく改善
を図るも奏功しなかったと主張するが、被告会社がそのような改善を図る措置を取
ったかどうかは知らない。何も知らされていない。
　４　被告らは､従業員の意思を尊重し配慮して夜勤閉鎖を撤回したものではない｡
　被告らは、中止しようとした夜間勤務を、従業員の意見を踏まえて撤回し、夜間

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勤務を継続したから､むしろ従業員の意見を聴いて配慮した結果だなどと主張する｡
　しかしながら、夜勤閉鎖を撤回したのは、被告会社にとって繁忙期で日勤従業員
だけでは作業が回らないからである。このことは、宣言当日被告Ｚ　が「夜勤なし
じゃ回せない｡」と発言していたこと、夜勤従業員が被告Ｘ　から夜勤閉鎖の撤回
発表を聴いて、パートＣが原告に送信した上記電子メール（甲16）の中に「繁忙
期で廃止は難ありだったみたい｡」との表現は、被告Ｘ　は夜勤閉鎖の通告をして
しまったものの、繁忙期の夜勤閉鎖は結局困難なことを改めて認識して撤回したも
のであることが窺える。７月ないし８月及び11月ないし12月は被告会社のプログ
ループの繁忙期であり、当時原告や正社員らほとんどの者は、今回の夜勤閉鎖によ
って業務が完了できなくなると感じていたのである。そして、被告Ｘ　から閉鎖の
理由について何らの説明も理由も示されず、直接通告した被告Ｚ　からも「理由は
言えない｡」と発言していたが、被告Ｘ　の夜勤閉鎖撤回発表時に聞かされた同被
告の「繁忙期の廃止は難あり」発言に関する上記パＣの電子メールなどから、結局
夜勤閉鎖の実施は困難と認めた被告Ｘ　ら被告会社側が撤回に追い込まれたもの
で、夜勤従業員に対する配慮でも何でもない。
　以上のとおり、被告らが雇用契約の変更を一方的に通告して夜勤従業員の不安を
あおり困惑を招いた上、職場を混乱させておいて、従業員の反対意見とそれに基づ
く夜勤体制の継続要請を受けて撤回に追い込まれたものであるから、従業員の意見
を尊重傾聴したり、配慮したものでは何らない。これらの意見聴取や配慮は、事前
の従業員との面接や交渉で行うべきである。むしろ、コンプライアンスの欠如、従
業員教育の不徹底を露呈して雇用契約の変更を独断で企図した被告Ｘ　の暴走を阻
止できなかった被告会社の労務管理の杜撰な実態を露呈したものというべきであ
る。
　５　被告らは、パＡは原告の要望を受けて仕方なく被告Ｘ　に原告の体調を伝え
る電子メールを送信したものではないと主張するが、そうではない。パＡは原告に
提案してすべて原告自身に電子メールを作成させて送信させたものでもない。

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（１）パＡは､原告の体調不良を知らなかったという。しかし､原告は「合体工程」
（表紙とアルバムの本体貼り合わせ）の専任担当であったが、平成27年初頭から
パＡチーフパートナー（正社員を代行する地位にあるパート社員)(以下「チーフ」
という｡）らの指導を受けて「合わせ工程」を学んでいてこれも兼任するようにな
った。合わせ工程は大判の写真を両手に持ち、写真を目視するため頭部を下げて品
質検査をするものだったが、同年７月に原告が頚椎椎間板ヘルニアと診断されてリ
ハビリ担当医から動作制限を指示されたため､パＡにその旨話をして「合わせ工程｣
を外れて「合体工程」に専任するようになった経緯がある。リハビリ期間中、原告
は身体の不安の中で､どのような負荷でどんな動作で作業が可能かなど痛みを抱え､
パＡから「大丈夫か」と声を掛けられながら試行錯誤していた。こうした状況は、
パＡも原告の作業可能能力や現状把握に努めていたもので、原告の体調不良はそれ
なりに理解していたと思われる。そうしたパＡが、原告から体調に関する健康状態
に関する体調の配慮方報告を依頼されて、拒否する理由はなく、しぶしぶ仕方なく
対応したものとは考え難い。
（２）パＡが原告の依頼を受けて、やむなくサポートしたとか、仕方なくサポート
したとか、だからメールの作成も送信も原告にさせて、自分はメールの作成に何も
関わっていないなどとする被告らの主張は、部下の健康状態の伝達依頼を受けたチ
ーフの態度として不自然である。事実は、原告準備書面（1）の第1の１の（2）記
載のとおりで､パＡは原告の依頼を受けて十分配慮の上サポートしているのである｡
（３）原告のようなパートナー社員（正社員でないパート社員）は共有パソコンを
使用できるから、原告もそれを使って電子メールを作成して送信したものと思われ
るとする被告らの主張は、事実に反する。
　当該パソコンは、夜間帯は主にパＡチーフが会社からの指示を受けたり会社に報
告をしたり会社間の送受信用に常用しているものである｡一般のパートナー社員(以
下パート社員という｡）が使用するのは、給与明細の確認と出力、年末調整申告の
処理等限定的で、上記給与明細なら閲覧可という慣行でのみ使用されていた。その

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場合は、上司ら正社員（夜勤の場合はパＡチーフ）に声を掛けてその強化を得て使
用していたもので、それ以外の用途でパート社員が使用することはなかった。原告
らパート社員が気兼ねなく自由に使えたものではない。パート社員は該当パソコン
を共用パソコンと表現したり、そのように認識してはいない。このことは、パート
社員は原告を含め正社員から電子メールを受信する環境にないとしていること（被
告ら第１準備書面４頁）からも窺えるところである。送信についても一般パート社
員（オペレーションパートナーと呼ばれる｡）（以下「一般パート社員」という｡）
は、メールアドレスが与えられておらず、チーフに伝言を依頼するほかなかった｡
　被告らの主張によれば、パＡチーフは、白紙委任の自己名義の送信文書を原告に
作成させ、その記載内容を確認もせずにパＡの上司である被告Ｘ　に原告から電子
メールを送信させたことになるが、正社員を代行するチーフとして被告会社からそ
の能力を認められていたパＡが、そのような無責任な自身の行動を許容するはずが
なく、被告らの主張は信用し難いものであって､事実は、原告準備書面（1）の第１
の１の（2）記載のとおりである。

第２　被告Ｙ　のパワハラ関係
　１　原告の労災認定を被告会社が知らないとする点について
　被告会社は、原告が労災による給付申請の事実を知っていたことを認めながら、
その認定結果について知らないと主張する。
　原告が平成27年７月に頚椎椎間板ヘルニアを発症し、その頃川口労働基準監督
署に労災申請をして、同年12月頃、診断された同月24日を災害日とする労使認定
を受けて、療養補償給付を受けたことは、訴状記載のとおりである（７月24日に
労災認定を受けたとする点は訂正する｡)。被告は、同年８月からリハビリを受け
ており、翌28年１月に症状固定となってリハビリが打ち切られたが、なお頸部等
に痛みやしびれ等の後遺障害が残存した。
　原告は平成29年８月の本件当時肩から四肢にかけてのヘルニア症状の痛みをこ

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らえて作業をしていた。こうした原告の身体の状況は、職場の上司・同僚の誰もが
労災認定の有無はともかく、頸椎の障害事実を認識し、被告Ｚ　は、平成27年発
症時に原告が「合体工程」の作業に戻った当時、「無理をするな｡」を声を掛けら
れており、これに対し原告が「リハビリだけでは、手術しない限り一生治らないそ
うだ｡」と会話している。また、この29年８月当時、被告Ｙ　のパワハラを受けて
梱包工程から離脱するまで、辛いときは担当医の指示で頸部にタオルを巻いて固定
して作業していたから、社Ｌからは「何ですか。それ｡」と言われ、側で原告の作
業を見ていた被告Ｙ　が「首ですって｡」と応答している。夜勤パートも同僚らも
そうした原告の傷害事実を認識していた。
　被告会社は、その後もの労災請求の結果を知ろうとしていなかったというのであ
るから、自己の使用する労働者である原告の健康被害の状態に関する労災認定結果
に何の関心もないことを物語っている。したがって、被告が安全に業務に従事しう
るよう業務内容、場所、労働時間その他労働環境について何らの配慮をしてこなか
ったことを意味する。
　２　パＡが原告が作成した甲４の内容の電子メールを送信したことはないとする
被告らの主張について
　原告が当時のパＡエキスパートパートナー（業務に精通した指導的立場にある熟
練したパート社員を意味する）に対して、平成29年８月16日、甲４の内容で被告
会社に連絡方送信依頼し、パＡはそのとおり送信したものと考える。ただし、実際
はパＡが被告会社の誰に伝えたか、また、電子メールの送信方法で伝えたか、プリ
ントして交付したか、口頭報告かは不明だが、パＡが用意したパソコンのテキスト
ファイルに原告が甲４の原稿を入力する方法でパＡに送信依頼したのであるから､
パＡはそのままパソコン内の電子メールソフトを利用してメールを送信したものと
考える（原告準備書面（1）の第１の２の（1))。この甲４の内容が被告会社に伝わ
ったことは、これに基づき幹部Ｓ　統括事業部長が、同年８月18日に第１回面談
（答弁書で被告らが認めるところである｡）を、同年９月４日に第２回面談を実施

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しているのであるから、原告がパＡに送信依頼した甲４の内容が被告会社に伝達さ
れていたことは明らかで、その意味で、パＡが原告が作成した甲４のようなメール
を送信したことがないとか、甲４にある原告内容が当時作成されたことやその記載
内容の信憑性を疑う被告らの主張は当を得ないものである。
　被告会社が、パＡから送信又は交付を受けた原告作成の文書を所持しているもの
と思われるので、被告会社に該当文書の提出を求める。
　３　被告らは、第２回面談日である９月４日（月曜日である）は原告が有給休暇
を取得していたから面談したとは考えられないと面談事実を否認したので、被告会
社関係者の記憶喚起のため、９月４日は有給休暇を取得していたが、部長Ｈ　　グ
ループ長から第２回面談日として指定されたため、当日原告は歯科医院で抜歯され
止血のためガーゼを口に含んだ状態で面談に直行したという印象的な面談だったこ
とを指摘したのであるが、これに対し、被告らはなお面談したか不明であると主張
する。
　しかしながら、部Ｈグループ長は、同年９月１日の原告との電子メールで、第２
回面談の日取りについて「月曜日、通院後から16時まで調整」したい旨の意向を
示していることから､原告の（歯科）通院事実を認識していたことが窺える（甲17
:原告と部長Ｈ　　との電子メール)。原告は、面談冒頭面談相手の幹Ｓ部長及び
部Ｈグループ長に心配を掛けない配慮をして､事故や事件による格好でなく抜歯(前
歯２本）してきたばかりであること、抜歯して未だ出血が止まらない状態であるこ
とを説明し詫びた上で面談に望んだもので、話をするにも面談中終始口を十分開け
られないまま会話する不自然な状態であったから、両名共に記憶にないことは考え
にくいのである。

第３　被告Ｚ　のパワハラ関係
　１　被告会社に対する有給休暇請求手続
　被告らの主張する上記請求手続は認めるが、有給休暇の請求に対する対応の権限

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を有するとされる部Ｊグループ長代理が従業員から提出された有休休暇請求書面を
どのように管理保管していたかは知らない。
　２　原告の有休休暇請求事実
　被告らが、原告が令和２年（2020年）６月25日に有給休暇１日を取得する旨記
載した同年５月14日付け有給休暇請求書を同日被告会社に提出したとする原告の
主張を裏付ける当該請求書（甲５）が存在し、被告らもその書式の適法性を認める
にもかかわらず、社Ｌや上記部Ｊグループ長代理がこれを受け付けた記憶がないと
か書面が保管されていないなどと主張して、受付の可否を断定し得ないというのは
不自然というべきである。
　原告が上司社Ｌ　　に甲５の請求書を手渡す方法で提出したことは、原告準備書
面（１）記載のとおりである（同書面第１の３の(1))。部Ｊグループ長代理にも、
それに先立ち５月６日の電子メールで、６月25日に定期健診受診のため休暇をと
りたい、出来れば有給休暇の形で取りたい旨打診していたのであるから（甲６）、
部Ｊも被告の有給休暇請求の意向を知っていたはずである。その後の対応について
も確認のメールを送信している（甲８)。被告らは、原告が提出を失念したか意図
的に提出しなかったのではないかとまで言って疑うが、上記の事実に照らして、む
しろ社Ｌや部Ｊに当てはまる主張と思われる。いずれにしても、当時被告Ｚ　は、
有給休暇の使用を認めない方針を打ち出していた時期的状況に照らし、原告の有給
休暇の請求を握りつぶしたかして、同被告とその方針を共有する部Ｊもこれに呼応
して原告の適法な有給休暇請求権の行使を無視する方法で妨害したと考えるほかな
いのである。あるいは、被告会社の意向を受けたグループ長被告Ｚ　や部Ｊグルー
プ長代理（有給休暇に関する権限を有するとしている。被告ら第１準備書面３頁）
ら会社ぐるみの妨害といってよい。

第４　被告会社の責任
　１　被告会社の責任を否定する被告らの主張は、被告Ｘ　らのパワハラ行為が存　

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在しないことを前提とした主張であり、全く当を得ないのもである。被告会社がパ
ワハラ被害に関する従業員の相談窓口等の対応体制を設けていたからといって、そ
れだけで安全配慮義務を尽くしたことにならず、体制を設けたことと、それが機能
してそれに従って被告会社が安全配慮義務を履行していたかどうかは別問題であ
る。
　２　コンプライアンス・ホットラインの記載された事業計画書が原告らパート社
員には配布されてないことは被告らも認めるが（被告ら第１準備書面５頁)、社内
報に一時上記ホットライン記事が掲載されたからといって、数頁ある社内報のごく
一部に小さく掲載されたもので、その一事をもって従業員に周知されていたことに
はならない。このホットラインの設置に関して、従業員らに何らの説明会も、ある
いはパワハラ防止等のための指導教育あるいは研修等は何ら実施されていない。原
告もそうした記事の存在を認識していない。被告会社からその存在を直接教示され
たことはなく､存在と利用方法について原告ら従業員が啓蒙されることもなかった｡
　３　被告らは、被告Ｘ　、同Ｙ及び同Ｚの各パワハラ行為を否定する。
（１）被告Ｘ　が事前の予告も説明も個別従業員との協議もないままに突然の夜間
勤務体制を中止する旨の通告をしたことは認めている。同被告にそのような権限の
ないことから、被告会社の意向だったと弁解しているものと思われる。
　しかしながら、例え被告会社の方針だったとしても、被告会社にそのような雇用
契約に反する一方的な契約内容を変更する権利のないことは明らかであり、違法で
あるから、被告のコンプライアンス体制は名ばかりの形骸化したものというべきで
ある。被告Ｘ　の夜勤閉鎖宣言がパワハラ行為に該当する違法なものであることは
明らかで、これを被告会社の方針に基づいてが実行したというのであれば尚更被告
会社の違法行為は明らかである。
（２）被告Ｙ　のパワハラ行為は、甲４の文面により被告会社に伝わり、本来原告
にとって取得の必要のなかった有給休暇を使用して同被告との接触を防止していた
という深刻な事態であるのに、これに対して被告会社のグループ長らが面談を設定

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したものの、十分な事実関係の調査を尽くすことなく原告に勤務時間の変更や忍耐
を強いるだけで被告Ｙ　に対する処分も再発防止対策も講じなかった。
（３）　原告の有給休暇請求に対する被告Ｚ　の対応は、手続上被Ｚの外社Ｌ､部
Ｊが関与しながら（新型コロナ感染症流行の問題から被告Ｚ一個人の方針でなく､
被告会社の方針だったのかも知れない｡)、働き方改革により国は積極的な有給休暇
の取得を促進する施策を講じている中で（平成30年10月にいわゆる働き方改革案
連法案が可決成立し、翌平成31年４月から順次施行されている。長時間労働の是
正はその改革の柱の一つであり、労働基準法を改正して年次有給休暇は付与するだ
けでなく取得させることが使用者に義務付けられ､その違反には罰則が適用される｡
使用者は、労働者の年次有給休暇の時期決定権に基づき、その取得時期について労
働者の意見を尊重すべき義務がある｡)、有給休暇の原則不許可を従業員らに通告
すること自体違法であることは明らかで、被告Ｚ　や部Ｊの独断だったとしてもそ
うした違法行為がまかりとおり、被告会社も何らそうした違法行為を阻止し得ない
労働環境にあることを物語る。被告らは、原告が持病の腎疾患の定期検査のための
有給休暇取得であることを甲５、甲６に知り得たのであるから、被告会社が原告の
生命・身体に関わる安全確保をしながら労働に従事できる環境作りに必要な配慮が
欠如していることを如実に物語る。
　被告らは、有給休暇の不許可方針は撤回したと言うが、被告Ｚ　ら担当者あるい
は被告会社の妨害により原告が有給休暇を取得できなかった結果を招来したことは
厳然とした事実である。有給休暇を認めない方針の下故意に請求を無視されたらど
うしようもないが、有休休暇の請求手続あるいはこれを行使させる手続にふびがあ
るのであれば、改善すべきものである。労働者から請求があったら、これを受け付
けたか、これをそのまま承認したかあるいは時季変更権を行使するのか速やかに請
求した従業員に通知回答することも考えられるが、従来どおりの手続のまま現在に
至っていて、被告会社から改善措置を講じられたことはないのである。

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