上告受理申立書
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labo_worker 2023年01月15日(日) 14:43:11履歴
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上告受理申立書
令和４年（ネ受）第■■■■号 損害賠償請求上告受理事件
上告受理申立人 ■■■■
相手方 株式会社ラボ生産 外２名
上告受理申立書
令和５年１月４日
最高裁判所 御中
上告受理申立人代理人
弁護士 ■■■■
原判決は､法令の解釈に関する重要な事項を含むものであるから､民事訴訟法318
条1項により本上告受理の申立てをするものである。
第１ 相手方会社の安全配慮義務違反の前提となるＸ のパワハラ行為に関する原
判決の法令の解釈の誤り
１ 時効の援用に関する原判決の法令解釈の誤り
一審判決が被上告人の不法行為に係る損害賠償請求権の消滅時効について先行判
断し、Ｘ の不法行為責任及び被上告人会社の使用者責任について、その成否を検
討する必要がないとして判断を回避したことに対し、上告人は、被上告人らの時効
の援用の主張は抗弁であり、上告人は請求原因としてＸ のパワハラ行為と被上告
人会社の使用者責任を主張したのであるから、その判断を回避して抗弁の主張に対
する判断を行うのは、理由不備の違法を犯すもので許されないと主張した（控訴理
由書１頁)。
これに対し、原判決は、請求原因が認められるとしても、消滅時効が完成してい
-1-
ると認められるから、上告人の主張は採用できないというのであるが（判決書９頁
〜10頁)、原判決は、単に、一般的にそのように判断しているからと判示するのみ
で、結論が同じならいいではないかという説明だが、Ｘ のパワハラの認定は、被
上告人会社の安全配慮義務違反存否の前提となるものであるから、その判断の回避
省略は許されない。結果的にＸ の派輪は行為を否定しているが、一般論として請
求原因の判断を省略して抗弁を専行判断することは否定していない。自由心証主義
を逸脱した民事訴訟法247条に反するものというべきである。
２ Ｘ の「夜間勤務中止通告」及び「自分の胸に聞いてみろ」等の発言に関す
るパワハラ性を否定した原判決の判断の誤り
（１）パワーハラスメントに関しては、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇
用の安定及び職場生活の充実等に関する法律（略称「労働施策綜合推進法（いわゆ
るパワハラ防止法)｣）30条の２が、�／�場において行われる優越的な関係を背景
にした言動であって、��業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、��その雇
用する労働者の就業関係が害される行為をいうものとされ、具体的な内容について
は、同法に基づく厚生労働省の指針（令和2年同省告示第５号）が示されている。
しかし、パワハラ行為の定義及び行為類型については、既に平成24年１月に厚生
労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告
書」が同様の内容をまとめており、こうした政府及び検討委員会の会議等や幾多の
判例を通じてパワハラ行為が職場の就業関係を害する違法性を有するものであるこ
とは社会に広く周知され認知されてきたところである。相手方会社の就業規則も、
相手方会社が就業規則の全文ないし服務規程を提出しないためその定義は定かでな
いが、従業員のパワーハラスメント行為について、セクシャルハラスメント行為と
並んで服務規程に反するもので法令に違反した解雇事由に該当すると定めている
（就業規則15条)。
（２）原判決は、申立人が主張するＸ の夜間勤務中止（取りやめ）の発言、「自
分の胸に聞いてみろ」等の発言があったことは認めながら、係る発言はパワハラ行
-2-
為に該当しないと判示する。
原判決は、Ｘ が夜間勤務従業員間にトラブルが生じたとして感情的になって、
何らの説明もないままに突如朝礼時に申立人ら夜勤従業員を前にして夜間勤務の中
止取りやめを宣言して、彼らに日勤に異動するか退職を迫った上記「夜間勤務中止
通告」をした事実、また、その理由を問うた申立人に対して、その事実はないのに
あたかも申立人に原因があるかのような「自分の胸に聞いてみろ」「うだうだ言う
な。仕事をしろ｡」といった暴言を浴びせた事実について、これらの事実を認定し
ながら（判決書6頁、一審判決書16頁)、これらＸ の発言がパワハラに該当しな
いと判示する。しかし、パワハラに該当しないとするその理由について原判決は何
ら判断していない。
原判決がパワハラの定義、成立要件を判断しないままに、申立人が主張するＸ
の該当行為のパワハラ該当性を判断しえないはずである。そうすると、原判決が、
Ｘ の夜間勤務中止の通告に関する上記行為について理由なくパワハラを否定した
のは、理由不備として別途上告したとおりであるが、パワハラに関する上記定義な
いし要件を踏まえて一審判決の判断を是認した原判決を見る限り、上記3要件のう
ち、�ゝ擇哭△鰐世蕕�であるから、原判決が、相手方会社の安全配慮義務違反を否
定する判示のところで、夜間勤務中止通告が2日後には撤回され従業員に通知され
たことに言及しているところから判断すると（判決書11頁)、原判決が、パワハラ
行為が存在するのにこれを間もなく撤回したことを理由に��の要件に該当しないと
判示したものと解せられるのであるが、しかし、��の要件に該当することは申立人
が主張立証しているところであるから（控訴理由書2頁、甲14〜16、甲23、甲24､
甲35の4項)、原判決は事実を誤認しただけでなく、��の要件を充足していても後
で取り消せばパワハラ行為といえなくなるとしてパワハラの解釈を誤ったもので、
このような原判決の特異な見解はパワハラ行為に関する上記法令の解釈に関する重
要な事項について判断を誤ったものというほかない。
（３）次に、「自分の胸に聞いてみろ」等の発言については、原審が判断を支持し
-3-
た一審判決の理由によると、単にＸ が申立人に「原因については自分で考えるよ
うに述べたものに過ぎない｡」とみてパワハラ性を否定しているのであるが、Ｘ
の発言はこれだけでなく、その前後のやり取りがある。したがって、総合的にパワ
ハラの成否を判断すべきであった。
Ｘ の申立人に対する「自分の胸に聞いてみろ」発言に至る経緯は、Ｘ が夜間
勤務中止の理由・原因を申立人から聞かれたことに対して、Ｘ は原審が引用する
ような単に係る一言を浴びせただけでなく、Ｘ が夜勤パート社員の重大な労働条
件変更を通告する以上、グループ長のＸ には当然にその理由について説明義務が
あるにもかかわらずその説明責任を果たさず､「聞かんでいい｡」と言い返し、「自
分の胸に聞いてみろ｡」｢うだうだ言っているときとちゃうやろ。今は仕事しろ。」
と暴言を吐いたのである。自らその説明責任を果たさないだけでなく、その批判を
許さないその手法と言い方は、組織を束ねる長にふさわしくない人間があたかも原
因は申立人にあるかのごとき侮辱的発言によって責任転嫁したのである。夜間勤務
中止の原因が申立人にないことは、Ｙ が聞いてくれと指示したＺ が申立人が原
因でないことは明言しているのであるから(甲15、甲23、甲24)、部下を統率する
上司Ｘ の上記の一連の発言は、まさに他人を見下す無用な責任転嫁の暴言と言う
べきパワハラ発言以外の何ものでもない。Ｘ がこのような発言をする何らの必要
性も必然性もないパワハラ発言であり、このことは控訴理由書において既に指摘し
た（控訴理由書3頁イ部分)。
しかるに、原判決は、Ｘ の申立人に浴びせた暴言の上記一部の発言のみ取り上
げて、これを単にＸ が申立人に「原因については自分で考えるように述べたもの
に過ぎない｡」と矮小化して判断をしている。しかし、これは前後のやりとりを含
めた全体事実を十分把握しないままに事実関係を誤認し、その結果Ｘ がグループ
長という責任者の立場を利用して一方的に原告ら夜勤パート社員らから夜勤を奪う
というまさに権限外の行為をして何らの説明をしないのであるから、パート社員が
その理由の説明を求めるのは極めて自然で当然の質問だったはずである。
-4-
（４）それでもなお原判決が、Ｘ の上記暴言についてパワハラ行為を否定したの
は、パワハラ行為に関する上記法令ないし相手方会社の就業規則の解釈を誤った
ものと言えなくないのであるが、むしろ、原判決は、上記�，覆い鍬�の要件を満た
してもなお�△筬�の要件について高度かつ回復し難い侵害というような何らかの限
定する新たな要件を必要とし、これを満たさなければパワハラに該当しないと判断
したものと解することができ、そうであるとすると、原判決は、パワハラ行為につ
いて一般的に考えられている上記要件と異なる上記法令の解釈をしたものと言いう
るから、原判決には同法令に関する重要な事項について判断したものであるから、
本上告を受理して、最高裁判所としてパワハラの統一的な判断を下すべきものと考
える。
第２ 相手方Ｚ の「有給休暇は認めない。休業申請にするように」旨の暴言のパ
ワハラ性及び相手方会社の責任に関する判断
１ 相手方Ｚ の有給休暇拒否に関するパワハラ発言
（１）申立人は、�〜蠎衒�Ｚ が、同年7月8日にアルバムプログループ作業所内
に設置された連絡掲示板（ホワイトボード）に、アルバムプログループ長兼アマア
ルバムグループ長である同Ｚ 名で、部下の社Ｌをして「有給休暇は売上が正常化
しない限り認めない｡｣｢休業の申請をするように｣｢有給は使用しない運用とする｡｣
などとする指示事項を掲示させた労働基準法に違反する有給休暇の使用巨に宣言を
原告らパート社員（正社員にはその頃別途メールで通告）らに通告したパワハラ行
為（甲9）及び�⊆尊欷狭陲�請求した有給休暇の取得が相手方会社に拒否され、同
年6月分の申立人の給与明細（甲10）には、原告が請求した6月25日に有給休暇
を取得した扱いになっておらず、他方有給休暇の請求をすることなくした「欠勤」
でもなく、有給休暇の請求があったことを前提にそれに代わるものとして要請され
た場合に認めようとした「休業」扱いとされていた事実から、これは上記の経緯に
照らし、相手方Ｚ が、部下である部Ｊグループ長代理や上記社Ｌらと当面の有給
-5-
休暇取得を拒否する方針と当時の運用に基づいて行ったと解せられるパワハラ行為
であると主張した（訴状8頁、一審判決における主張の整理8頁、甲9)。
（２）しかしながら、一審判決は、相手方会社が�，了�実を認め（一審判決書主張
の整理部分9頁）、同判決も申立人の主張する事実を認めながら（一審判決書：争
点に対する判断24頁、25頁）、�，了�実がパワハラに該当するかどうか判断しな
い。そして、有給休暇の請求を承認する権限があるのは部Ｊグループ長代理だなど
として相手方Ｚ が部Ｊに申立人の6月25日の有給休暇を承認しないように働き
かけた証拠はないなどとして､相手方Ｚ の上記�△離僖錺魯藕坩戮鯣歿Г垢襪�(一
審判決書26頁)、原判決も上記�△離僖錺魯藕坩戮鯣歿Г垢襪世韻如↓，了�実のパ
ワハラ行為の該当性について何らの判断もしない（判決書12〜13頁)。
この�，糧獣任琉簣海砲弔い討�､理由不備である旨別途上告理由書で主張した(上
告理由書第1の2の(2))。
ただし、原判決は､Ｘ の前記「自分の胸に聞いてみろ」発言と同様､上記7月7
日付け相手方Ｚ 名義の正社員向けメールや同月8日に同メールを掲示板に掲示
し、社Ｌが朝礼で説明した事実だけでは、申立人に対するパワハラ行為には該当し
ないことを暗黙のうちに判示したとみるのであれば、原判決は前記パワハラ�，覆�
し��の要件とは別の要件ないし理由に基づく判断によりパワハラ行為性を否定した
ものとも考えられ、そうすると、結局原判決は、パワハラに関する法令の解釈に関
する重要な事項を含む判断をしたものであるから､最高裁判所は本上告を受理して、
統一的なパワハラ行為の認定の要件を示すべきである。
２ 安全配慮義務違反に関する法令の解釈の誤り
原判決は、相手方Ｚ のパワハラ行為に関する安全配慮義務違反についても、Ｘ
が夜間勤務取りやめを撤回した事実を引用していることから（判決書13頁)、必
ずしも相手方Ｚ の場合の理由が定かでないが、相手方Ｚ が自ら発した有給休暇
拒否通告を後日撤回したことをもって安全配慮義務違反には当たらないというよう
である。
-6-
しかしながら、申立人が主張した相手方会社の日頃の安全配慮義務の懈怠（パワ
ハラ防止や労働法制遵守等に関する教育・研修なし、解雇、雇止め、配置等人事権
の濫用、有給休暇拒否行為の横行、パワハラ行為の再発防止策や加害者に対する懲
戒処分の不履行等々）を問題にしているのであって（控訴理由書５頁、12頁、18
頁、29頁)、Ｘ の夜間勤務中止通告やＺ の有給休暇拒否通告などの一行為のみ
取り上げてそのようなパワハラというべき行為の存在を認定しながら、グループの
社員の反発を受けて撤回した側面のみみて結局パワハラ行為の認定自体をなかった
ものとする原判決の判断は、既に幾多の法令や判例あるいは運用によって定着して
いるパワハラ行為の解釈に関して原判決が独自の解釈を持ち込んでパワハラ行為の
認定を否定し、相手方会社のパワハラ行為後の修正があればそれをもって安全配慮
義務を履行したもので不履行はないとするものであるから、原判決に、前記法令の
解釈に関する重要な事項を含んだ誤った判断であるというべきである。
-7-
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上告受理申立書 
令和４年（ネ受）第■■■■号 損害賠償請求上告受理事件
上告受理申立人 ■■■■
相手方 株式会社ラボ生産 外２名
上告受理申立書
令和５年１月４日
最高裁判所 御中
上告受理申立人代理人
弁護士 ■■■■
原判決は､法令の解釈に関する重要な事項を含むものであるから､民事訴訟法318
条1項により本上告受理の申立てをするものである。
第１ 相手方会社の安全配慮義務違反の前提となるＸ のパワハラ行為に関する原
判決の法令の解釈の誤り
１ 時効の援用に関する原判決の法令解釈の誤り
一審判決が被上告人の不法行為に係る損害賠償請求権の消滅時効について先行判
断し、Ｘ の不法行為責任及び被上告人会社の使用者責任について、その成否を検
討する必要がないとして判断を回避したことに対し、上告人は、被上告人らの時効
の援用の主張は抗弁であり、上告人は請求原因としてＸ のパワハラ行為と被上告
人会社の使用者責任を主張したのであるから、その判断を回避して抗弁の主張に対
する判断を行うのは、理由不備の違法を犯すもので許されないと主張した（控訴理
由書１頁)。
これに対し、原判決は、請求原因が認められるとしても、消滅時効が完成してい
-1-
ると認められるから、上告人の主張は採用できないというのであるが（判決書９頁
〜10頁)、原判決は、単に、一般的にそのように判断しているからと判示するのみ
で、結論が同じならいいではないかという説明だが、Ｘ のパワハラの認定は、被
上告人会社の安全配慮義務違反存否の前提となるものであるから、その判断の回避
省略は許されない。結果的にＸ の派輪は行為を否定しているが、一般論として請
求原因の判断を省略して抗弁を専行判断することは否定していない。自由心証主義
を逸脱した民事訴訟法247条に反するものというべきである。
２ Ｘ の「夜間勤務中止通告」及び「自分の胸に聞いてみろ」等の発言に関す
るパワハラ性を否定した原判決の判断の誤り
（１）パワーハラスメントに関しては、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇
用の安定及び職場生活の充実等に関する法律（略称「労働施策綜合推進法（いわゆ
るパワハラ防止法)｣）30条の２が、�／�場において行われる優越的な関係を背景
にした言動であって、��業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、��その雇
用する労働者の就業関係が害される行為をいうものとされ、具体的な内容について
は、同法に基づく厚生労働省の指針（令和2年同省告示第５号）が示されている。
しかし、パワハラ行為の定義及び行為類型については、既に平成24年１月に厚生
労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告
書」が同様の内容をまとめており、こうした政府及び検討委員会の会議等や幾多の
判例を通じてパワハラ行為が職場の就業関係を害する違法性を有するものであるこ
とは社会に広く周知され認知されてきたところである。相手方会社の就業規則も、
相手方会社が就業規則の全文ないし服務規程を提出しないためその定義は定かでな
いが、従業員のパワーハラスメント行為について、セクシャルハラスメント行為と
並んで服務規程に反するもので法令に違反した解雇事由に該当すると定めている
（就業規則15条)。
（２）原判決は、申立人が主張するＸ の夜間勤務中止（取りやめ）の発言、「自
分の胸に聞いてみろ」等の発言があったことは認めながら、係る発言はパワハラ行
-2-
為に該当しないと判示する。
原判決は、Ｘ が夜間勤務従業員間にトラブルが生じたとして感情的になって、
何らの説明もないままに突如朝礼時に申立人ら夜勤従業員を前にして夜間勤務の中
止取りやめを宣言して、彼らに日勤に異動するか退職を迫った上記「夜間勤務中止
通告」をした事実、また、その理由を問うた申立人に対して、その事実はないのに
あたかも申立人に原因があるかのような「自分の胸に聞いてみろ」「うだうだ言う
な。仕事をしろ｡」といった暴言を浴びせた事実について、これらの事実を認定し
ながら（判決書6頁、一審判決書16頁)、これらＸ の発言がパワハラに該当しな
いと判示する。しかし、パワハラに該当しないとするその理由について原判決は何
ら判断していない。
原判決がパワハラの定義、成立要件を判断しないままに、申立人が主張するＸ
の該当行為のパワハラ該当性を判断しえないはずである。そうすると、原判決が、
Ｘ の夜間勤務中止の通告に関する上記行為について理由なくパワハラを否定した
のは、理由不備として別途上告したとおりであるが、パワハラに関する上記定義な
いし要件を踏まえて一審判決の判断を是認した原判決を見る限り、上記3要件のう
ち、�ゝ擇哭△鰐世蕕�であるから、原判決が、相手方会社の安全配慮義務違反を否
定する判示のところで、夜間勤務中止通告が2日後には撤回され従業員に通知され
たことに言及しているところから判断すると（判決書11頁)、原判決が、パワハラ
行為が存在するのにこれを間もなく撤回したことを理由に��の要件に該当しないと
判示したものと解せられるのであるが、しかし、��の要件に該当することは申立人
が主張立証しているところであるから（控訴理由書2頁、甲14〜16、甲23、甲24､
甲35の4項)、原判決は事実を誤認しただけでなく、��の要件を充足していても後
で取り消せばパワハラ行為といえなくなるとしてパワハラの解釈を誤ったもので、
このような原判決の特異な見解はパワハラ行為に関する上記法令の解釈に関する重
要な事項について判断を誤ったものというほかない。
（３）次に、「自分の胸に聞いてみろ」等の発言については、原審が判断を支持し
-3-
た一審判決の理由によると、単にＸ が申立人に「原因については自分で考えるよ
うに述べたものに過ぎない｡」とみてパワハラ性を否定しているのであるが、Ｘ
の発言はこれだけでなく、その前後のやり取りがある。したがって、総合的にパワ
ハラの成否を判断すべきであった。
Ｘ の申立人に対する「自分の胸に聞いてみろ」発言に至る経緯は、Ｘ が夜間
勤務中止の理由・原因を申立人から聞かれたことに対して、Ｘ は原審が引用する
ような単に係る一言を浴びせただけでなく、Ｘ が夜勤パート社員の重大な労働条
件変更を通告する以上、グループ長のＸ には当然にその理由について説明義務が
あるにもかかわらずその説明責任を果たさず､「聞かんでいい｡」と言い返し、「自
分の胸に聞いてみろ｡」｢うだうだ言っているときとちゃうやろ。今は仕事しろ。」
と暴言を吐いたのである。自らその説明責任を果たさないだけでなく、その批判を
許さないその手法と言い方は、組織を束ねる長にふさわしくない人間があたかも原
因は申立人にあるかのごとき侮辱的発言によって責任転嫁したのである。夜間勤務
中止の原因が申立人にないことは、Ｙ が聞いてくれと指示したＺ が申立人が原
因でないことは明言しているのであるから(甲15、甲23、甲24)、部下を統率する
上司Ｘ の上記の一連の発言は、まさに他人を見下す無用な責任転嫁の暴言と言う
べきパワハラ発言以外の何ものでもない。Ｘ がこのような発言をする何らの必要
性も必然性もないパワハラ発言であり、このことは控訴理由書において既に指摘し
た（控訴理由書3頁イ部分)。
しかるに、原判決は、Ｘ の申立人に浴びせた暴言の上記一部の発言のみ取り上
げて、これを単にＸ が申立人に「原因については自分で考えるように述べたもの
に過ぎない｡」と矮小化して判断をしている。しかし、これは前後のやりとりを含
めた全体事実を十分把握しないままに事実関係を誤認し、その結果Ｘ がグループ
長という責任者の立場を利用して一方的に原告ら夜勤パート社員らから夜勤を奪う
というまさに権限外の行為をして何らの説明をしないのであるから、パート社員が
その理由の説明を求めるのは極めて自然で当然の質問だったはずである。
-4-
（４）それでもなお原判決が、Ｘ の上記暴言についてパワハラ行為を否定したの
は、パワハラ行為に関する上記法令ないし相手方会社の就業規則の解釈を誤った
ものと言えなくないのであるが、むしろ、原判決は、上記�，覆い鍬�の要件を満た
してもなお�△筬�の要件について高度かつ回復し難い侵害というような何らかの限
定する新たな要件を必要とし、これを満たさなければパワハラに該当しないと判断
したものと解することができ、そうであるとすると、原判決は、パワハラ行為につ
いて一般的に考えられている上記要件と異なる上記法令の解釈をしたものと言いう
るから、原判決には同法令に関する重要な事項について判断したものであるから、
本上告を受理して、最高裁判所としてパワハラの統一的な判断を下すべきものと考
える。
第２ 相手方Ｚ の「有給休暇は認めない。休業申請にするように」旨の暴言のパ
ワハラ性及び相手方会社の責任に関する判断
１ 相手方Ｚ の有給休暇拒否に関するパワハラ発言
（１）申立人は、�〜蠎衒�Ｚ が、同年7月8日にアルバムプログループ作業所内
に設置された連絡掲示板（ホワイトボード）に、アルバムプログループ長兼アマア
ルバムグループ長である同Ｚ 名で、部下の社Ｌをして「有給休暇は売上が正常化
しない限り認めない｡｣｢休業の申請をするように｣｢有給は使用しない運用とする｡｣
などとする指示事項を掲示させた労働基準法に違反する有給休暇の使用巨に宣言を
原告らパート社員（正社員にはその頃別途メールで通告）らに通告したパワハラ行
為（甲9）及び�⊆尊欷狭陲�請求した有給休暇の取得が相手方会社に拒否され、同
年6月分の申立人の給与明細（甲10）には、原告が請求した6月25日に有給休暇
を取得した扱いになっておらず、他方有給休暇の請求をすることなくした「欠勤」
でもなく、有給休暇の請求があったことを前提にそれに代わるものとして要請され
た場合に認めようとした「休業」扱いとされていた事実から、これは上記の経緯に
照らし、相手方Ｚ が、部下である部Ｊグループ長代理や上記社Ｌらと当面の有給
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休暇取得を拒否する方針と当時の運用に基づいて行ったと解せられるパワハラ行為
であると主張した（訴状8頁、一審判決における主張の整理8頁、甲9)。
（２）しかしながら、一審判決は、相手方会社が�，了�実を認め（一審判決書主張
の整理部分9頁）、同判決も申立人の主張する事実を認めながら（一審判決書：争
点に対する判断24頁、25頁）、�，了�実がパワハラに該当するかどうか判断しな
い。そして、有給休暇の請求を承認する権限があるのは部Ｊグループ長代理だなど
として相手方Ｚ が部Ｊに申立人の6月25日の有給休暇を承認しないように働き
かけた証拠はないなどとして､相手方Ｚ の上記�△離僖錺魯藕坩戮鯣歿Г垢襪�(一
審判決書26頁)、原判決も上記�△離僖錺魯藕坩戮鯣歿Г垢襪世韻如↓，了�実のパ
ワハラ行為の該当性について何らの判断もしない（判決書12〜13頁)。
この�，糧獣任琉簣海砲弔い討�､理由不備である旨別途上告理由書で主張した(上
告理由書第1の2の(2))。
ただし、原判決は､Ｘ の前記「自分の胸に聞いてみろ」発言と同様､上記7月7
日付け相手方Ｚ 名義の正社員向けメールや同月8日に同メールを掲示板に掲示
し、社Ｌが朝礼で説明した事実だけでは、申立人に対するパワハラ行為には該当し
ないことを暗黙のうちに判示したとみるのであれば、原判決は前記パワハラ�，覆�
し��の要件とは別の要件ないし理由に基づく判断によりパワハラ行為性を否定した
ものとも考えられ、そうすると、結局原判決は、パワハラに関する法令の解釈に関
する重要な事項を含む判断をしたものであるから､最高裁判所は本上告を受理して、
統一的なパワハラ行為の認定の要件を示すべきである。
２ 安全配慮義務違反に関する法令の解釈の誤り
原判決は、相手方Ｚ のパワハラ行為に関する安全配慮義務違反についても、Ｘ
が夜間勤務取りやめを撤回した事実を引用していることから（判決書13頁)、必
ずしも相手方Ｚ の場合の理由が定かでないが、相手方Ｚ が自ら発した有給休暇
拒否通告を後日撤回したことをもって安全配慮義務違反には当たらないというよう
である。
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しかしながら、申立人が主張した相手方会社の日頃の安全配慮義務の懈怠（パワ
ハラ防止や労働法制遵守等に関する教育・研修なし、解雇、雇止め、配置等人事権
の濫用、有給休暇拒否行為の横行、パワハラ行為の再発防止策や加害者に対する懲
戒処分の不履行等々）を問題にしているのであって（控訴理由書５頁、12頁、18
頁、29頁)、Ｘ の夜間勤務中止通告やＺ の有給休暇拒否通告などの一行為のみ
取り上げてそのようなパワハラというべき行為の存在を認定しながら、グループの
社員の反発を受けて撤回した側面のみみて結局パワハラ行為の認定自体をなかった
ものとする原判決の判断は、既に幾多の法令や判例あるいは運用によって定着して
いるパワハラ行為の解釈に関して原判決が独自の解釈を持ち込んでパワハラ行為の
認定を否定し、相手方会社のパワハラ行為後の修正があればそれをもって安全配慮
義務を履行したもので不履行はないとするものであるから、原判決に、前記法令の
解釈に関する重要な事項を含んだ誤った判断であるというべきである。
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