最終更新: centaurus20041122 2014年03月29日(土) 19:08:12履歴
Each Time 2
「あれ。なんか表情変わった。なにかあったの? 中2のクリスマスイブ」
「うん……。クラスメイトに告られた」
そういうと、明里は「やっぱり」と言ったふうに納得顔になった。
「さっき、中3までいって急に私のほうに話題を変えたから、怪しいって思ってたんだよね」
「バレてたのか……明里、そんなにスルドかったっけ」
「貴樹くんのことについてはスルドいよ。さあ、どんなふうに言われたのか教えて」
明里はまるで取調官みたいに言う。
「んー……中学はサッカー部だったから、普通に練習があって。その日は3時終わりだったんだ。それで、部室で着替えて、帰ろうとしたら、女の子が4人だか5人だか部室の前にいて、それで呼び出された」
「それ、他に部員いたから大変じゃなかった?」
「ああ、まあ……イブだったからね。なぜだかそわそわしてる奴もいたし。でも、まさか自分とは思わなくて」
「他の女の子はつきそい?」
「そう。さすがに一人じゃ、サッカー部の部室前で待ってるのは恥ずかしいからって。イブで部室前で待ってたら、もう目的がわかっちゃうじゃん? それで、校庭の端に大きな桜の木があるんだけど、そこに連れていかれて、『ああ、もう間違いない、どういうふうに断ろうか』って考えてた」
「どうして間違いないって思ったの?」
「うちの学校の伝説でさ、その桜の木の下で告白したらうまくいくっていうの」
「なんだかゲームでそういうの、あった気がする」
「うん、まあ、たぶんそこからの派生だと思うんだけど……それで告られて……『ごめん、好きなコがいるんだ』って答えたら、泣かれちゃって……。帰るに帰れなくて困っちゃって」
「それでどうなったの?」
「たぶん遠目に俺達のことを見てたんだと思うけど、15分たっても20分たっても動きがないし、女の子のほうが泣いてるみたいだってわかったんだと思う。手でしきりに涙をぬぐってたから。それで付添の女の子たちの一人がやってきて、『ちゃんと言えたの?』って聞いてて。俺は何もいえなくて。彼女は『ダメだった』って一言いって。なんか、自分が悪者になった気分になって……」
「そのコは何人目?」
「え……3人め」
「じゃあ、そのあともう1人いるんだ……」
「うん……結局、あとから来た子に慰められながら、その子は行ってしまって、俺だけ取り残されて。まだ、部室に鞄とかあるから、また部室に戻ったら、みんな残っててさ。いろいろ聞かれたけど、そういうの、ぺらぺらしゃべるのも違うじゃん」
「うん……女の子の立場からすると、あまり言ってほしくはないよね……」
「でも、あまり秘密めいたことにするとどんな噂になるかわからないから、『告られたけど、断った』って簡単に説明したら、3人くらい動揺してて」
「ええ? なんで? ……あ、わかった。その3人、もしかしてその女の子のこと……」
「うん、そういうこと。俺がいうことでもないけど、その女の子は割と人気のあるコだったから、呼び出されたときから嫌な予感はしてたんだよね……」
「それで?」
「うん……まあ、『なんであんなかわいい子を振るんだ?』って聞かれて、『好きなコが他にいるから』『誰だよ』『いや、まあ、いいじゃん』『よくないよ、俺がどれだけあいつのことを!』って、からみはじめて話がややこしくなりそうだったから、『遠くにいるんだ』って言ったんだ。そしたら、しばらくして俺に、東京に残してきた彼女がいるっていう噂が流れ始めて……」
「一緒に帰ってた女の子説と、東京彼女説、それと佐々木さん説。貴樹くんって謎の男だったんだね」
「なに考えてるのかわかんないって、佐々木にいわれたことあるよ」
苦笑しながら貴樹が応えた。
(つづく)
「あれ。なんか表情変わった。なにかあったの? 中2のクリスマスイブ」
「うん……。クラスメイトに告られた」
そういうと、明里は「やっぱり」と言ったふうに納得顔になった。
「さっき、中3までいって急に私のほうに話題を変えたから、怪しいって思ってたんだよね」
「バレてたのか……明里、そんなにスルドかったっけ」
「貴樹くんのことについてはスルドいよ。さあ、どんなふうに言われたのか教えて」
明里はまるで取調官みたいに言う。
「んー……中学はサッカー部だったから、普通に練習があって。その日は3時終わりだったんだ。それで、部室で着替えて、帰ろうとしたら、女の子が4人だか5人だか部室の前にいて、それで呼び出された」
「それ、他に部員いたから大変じゃなかった?」
「ああ、まあ……イブだったからね。なぜだかそわそわしてる奴もいたし。でも、まさか自分とは思わなくて」
「他の女の子はつきそい?」
「そう。さすがに一人じゃ、サッカー部の部室前で待ってるのは恥ずかしいからって。イブで部室前で待ってたら、もう目的がわかっちゃうじゃん? それで、校庭の端に大きな桜の木があるんだけど、そこに連れていかれて、『ああ、もう間違いない、どういうふうに断ろうか』って考えてた」
「どうして間違いないって思ったの?」
「うちの学校の伝説でさ、その桜の木の下で告白したらうまくいくっていうの」
「なんだかゲームでそういうの、あった気がする」
「うん、まあ、たぶんそこからの派生だと思うんだけど……それで告られて……『ごめん、好きなコがいるんだ』って答えたら、泣かれちゃって……。帰るに帰れなくて困っちゃって」
「それでどうなったの?」
「たぶん遠目に俺達のことを見てたんだと思うけど、15分たっても20分たっても動きがないし、女の子のほうが泣いてるみたいだってわかったんだと思う。手でしきりに涙をぬぐってたから。それで付添の女の子たちの一人がやってきて、『ちゃんと言えたの?』って聞いてて。俺は何もいえなくて。彼女は『ダメだった』って一言いって。なんか、自分が悪者になった気分になって……」
「そのコは何人目?」
「え……3人め」
「じゃあ、そのあともう1人いるんだ……」
「うん……結局、あとから来た子に慰められながら、その子は行ってしまって、俺だけ取り残されて。まだ、部室に鞄とかあるから、また部室に戻ったら、みんな残っててさ。いろいろ聞かれたけど、そういうの、ぺらぺらしゃべるのも違うじゃん」
「うん……女の子の立場からすると、あまり言ってほしくはないよね……」
「でも、あまり秘密めいたことにするとどんな噂になるかわからないから、『告られたけど、断った』って簡単に説明したら、3人くらい動揺してて」
「ええ? なんで? ……あ、わかった。その3人、もしかしてその女の子のこと……」
「うん、そういうこと。俺がいうことでもないけど、その女の子は割と人気のあるコだったから、呼び出されたときから嫌な予感はしてたんだよね……」
「それで?」
「うん……まあ、『なんであんなかわいい子を振るんだ?』って聞かれて、『好きなコが他にいるから』『誰だよ』『いや、まあ、いいじゃん』『よくないよ、俺がどれだけあいつのことを!』って、からみはじめて話がややこしくなりそうだったから、『遠くにいるんだ』って言ったんだ。そしたら、しばらくして俺に、東京に残してきた彼女がいるっていう噂が流れ始めて……」
「一緒に帰ってた女の子説と、東京彼女説、それと佐々木さん説。貴樹くんって謎の男だったんだね」
「なに考えてるのかわかんないって、佐々木にいわれたことあるよ」
苦笑しながら貴樹が応えた。
(つづく)
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