最終更新: centaurus20041122 2014年03月24日(月) 15:59:18履歴
「明里っ!!」
貴樹の放った声が夏空に響いて、明里はそこに初恋の人を見つけた。
ずっと。
ずっと会いたかった人に。
声を出そうとしても、喉でつっかえて何も出てこない。
目は見開いたままで、息をすることも忘れかけた。
「来るならっ! どうして知らせなかったっ! どれだけ心配したと思ってるんだっ!」
がやがやしていた生徒達が、貴樹の一声で静まり、そしてまたガヤつく。
「あれ、遠野だろ?」
「知り合い?」
「どうしたの?」
そんなささやき声が夏風にさざめく。
「明里。呼んでるよ」
前を歩いていた理子が振り返り、凍ったままになっている明里に話しかける。
「あっ……ああ……」
声が出せない。
理子は明里の背中をバシッと叩いて言った。
「あんた、今行かないと、一生後悔するわよっ!」
びくんっと理子のほうを向いた明里は軽くうなづいて、それから数歩、貴樹のほうへ歩く。眩しそうな、泣きそうな、そんな表情で。
貴樹はもどかしげに続ける。
「手紙だって!」
「だって、貴樹くんは! 楽しそうで! もう私のことなんて!」
そこまで言うと、明里はぐっと吹き出しそうな涙をこらえて叫んだ。
「私なんて、いらないんでしょ!!」
夏風がグラウンドの砂を巻き上げ、二人の間に逆巻く。
貴樹の表情が意表を突かれたかのよう変わって、首を左右に振ると、まっすぐに明里を見すえて言い放った。
「俺がっ! 好きなのはっ! 明里だけだっ!」
その言葉が、明里の心の奥底にずっと沈んでいた、感情の氷ともいうべきものを瞬時に溶かした。そして、その瞳から流れ出ていく。
ゆっくりと歩き出した明里はやがて駆け出して、ぶつかるように貴樹に抱きついた。
一連のシーンを見ていた生徒達は一瞬息を飲み、「おおおおっっ」というような低い歓声をあげる。
朝礼台の横に並んでいた「えらい人たち」がポカンとしている。
「やばい……!」
理子が駆け出して、朝礼台の上の、マイクスタンド前で突っ立っていた女性に「マイク貸してください」と頼んだ。そして、有無を言わさず奪い取ってスイッチを入れる。
「この二人は」
理子の声が校庭に流れる。
「東京で知り合いました……初恋同士なんです。でも、」
涙声になっていく。話していて、まるで自分の身に起きたかのように理子は感じていた。
この二人は、本当に苦労したの。大変だったの、と。
「親の転勤で、引き裂かれて……。ずっと手紙だけでつながっていて」
名もない鳥が切ない鳴き声を上げた。
「5年ぶりなんです……会うのが……だから、しばらくこのままで……」
そういうと理子は涙が止められずマイクを遠ざける。
泣き声なんて流したくない。
理子の話を聞いて、もらい泣きしている生徒もいた。
グラウンドにいるみんなが、その中央で抱き合っている二人を見つめていた。
(つづく)
貴樹の放った声が夏空に響いて、明里はそこに初恋の人を見つけた。
ずっと。
ずっと会いたかった人に。
声を出そうとしても、喉でつっかえて何も出てこない。
目は見開いたままで、息をすることも忘れかけた。
「来るならっ! どうして知らせなかったっ! どれだけ心配したと思ってるんだっ!」
がやがやしていた生徒達が、貴樹の一声で静まり、そしてまたガヤつく。
「あれ、遠野だろ?」
「知り合い?」
「どうしたの?」
そんなささやき声が夏風にさざめく。
「明里。呼んでるよ」
前を歩いていた理子が振り返り、凍ったままになっている明里に話しかける。
「あっ……ああ……」
声が出せない。
理子は明里の背中をバシッと叩いて言った。
「あんた、今行かないと、一生後悔するわよっ!」
びくんっと理子のほうを向いた明里は軽くうなづいて、それから数歩、貴樹のほうへ歩く。眩しそうな、泣きそうな、そんな表情で。
貴樹はもどかしげに続ける。
「手紙だって!」
「だって、貴樹くんは! 楽しそうで! もう私のことなんて!」
そこまで言うと、明里はぐっと吹き出しそうな涙をこらえて叫んだ。
「私なんて、いらないんでしょ!!」
夏風がグラウンドの砂を巻き上げ、二人の間に逆巻く。
貴樹の表情が意表を突かれたかのよう変わって、首を左右に振ると、まっすぐに明里を見すえて言い放った。
「俺がっ! 好きなのはっ! 明里だけだっ!」
その言葉が、明里の心の奥底にずっと沈んでいた、感情の氷ともいうべきものを瞬時に溶かした。そして、その瞳から流れ出ていく。
ゆっくりと歩き出した明里はやがて駆け出して、ぶつかるように貴樹に抱きついた。
一連のシーンを見ていた生徒達は一瞬息を飲み、「おおおおっっ」というような低い歓声をあげる。
朝礼台の横に並んでいた「えらい人たち」がポカンとしている。
「やばい……!」
理子が駆け出して、朝礼台の上の、マイクスタンド前で突っ立っていた女性に「マイク貸してください」と頼んだ。そして、有無を言わさず奪い取ってスイッチを入れる。
「この二人は」
理子の声が校庭に流れる。
「東京で知り合いました……初恋同士なんです。でも、」
涙声になっていく。話していて、まるで自分の身に起きたかのように理子は感じていた。
この二人は、本当に苦労したの。大変だったの、と。
「親の転勤で、引き裂かれて……。ずっと手紙だけでつながっていて」
名もない鳥が切ない鳴き声を上げた。
「5年ぶりなんです……会うのが……だから、しばらくこのままで……」
そういうと理子は涙が止められずマイクを遠ざける。
泣き声なんて流したくない。
理子の話を聞いて、もらい泣きしている生徒もいた。
グラウンドにいるみんなが、その中央で抱き合っている二人を見つめていた。
(つづく)
このページへのコメント
やった!!!!!!
そうなんです!!
これなんです!!!
この展開をまっていたんです。
あのふたりには幸せになってほしい。
こうなってほしいのひとこと
この展開を見たくて、2次創作の世界まで来たんです。
ありがとうございます。
ほんとうに、ありがとうございます。