新海誠監督のアニメーション「秒速5センチメートル」の二次創作についてのサイトです。

ゴールデンウィークも終わった5月過ぎ。そういえば、理子がよく職員室に行って、先生と相談ごとをしている姿を何度か見ていた。
素行不良や成績不振とは無縁なはずの理子だけど、少し気になる。

「最近さ、理子、なにかやらかした?」

そう私が聞いたら。

「はへ?」

理子は突拍子もないような声で答える。
そんな顔をじっと見る。このコ、メガネ外せば、かなりかわいいのに。
そういうことを以前に言ったら「顔で選ぶ男子にロクなヤツはいない」と啖呵を切られたっけ。

「なんだか、職員室で先生たちと話してる」

「あ、部活の話」

「そう……、なんか最近いつも呼ばれてるみたいだから」

そういうと「ほら、私、副部長だからさ」と言う。

「ん? なんかあるの?」

「んーなんかさ、文科省で共同研究ってのがあってさ、それにエントリーしようとしてて。いろいろ書類を書かないといけなくて」

「へー、なんだか、大変ね」

「競争率高いんだけどさ、来年の研究だから、そのとき、たぶん私は部長になってるだろうし」

なんというか、傲岸不遜というのはこういうことをいうのだろうか。
でも、たぶん、そうなんだろう。学年トップの秀才で、部活の副部長。
そして、実はけっこう美形。背も高いし。
そう言ったら、「部活にうちの学年、私しかいないからね、がははは」だって。

実は、理子のこと、好きだという人がいて、いつも私がそばにいるから、私に相談してきた男子もいた。
私はいつものとおり、ぼーっとしてたからそのまま理子に言ったら、


「てめえで言ってこないような根性なしに用はない」。

一刀両断だった。

そのあと、どうやって、その男子に伝えようかと思ったけれど、理子が直接断りに行ってたようだ。


6月の修学旅行は沖縄だった。貴樹くんの住む種子島のはるか南に行ってしまった。
飛行機から見えるかなと思ったけれど、全然違う場所を飛んでたみたい。


手紙は相変わらず書けなくて。

いや、書かない、書きたい、書けない、そんなところをぐるぐると巡っていた。

ただ、勉強だけは続けていた。

何人かの男子からの申し出を断った。
たぶん、私は人のことを好きになることが怖くなっているのだと思う。


12月。

理子が奔走していた共同研究の話が掲示されていた、らしい。
というのは、理子はそのとき何も言わなかったし、私も勉強やバスケ部の部活で忙しくて気付けなかったからなんだけど。


私がその話を聞くのはずっとずっと後、翌年5月のことだった。

(つづく)

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