最終更新: centaurus20041122 2014年04月16日(水) 22:22:25履歴
年が明けて、いつのまにか春になっていた。
僕は高校3年生となった。
一日一日にだと、時間が遅く感じているのに、過ぎてしまえばいつのまにか通過しているように感じる。
受験生にとっては、そのくらいのスピードでカレンダーはめくれていくものだ。
明里からの手紙は届かず、澄田との距離はそのまま。佐々木は受験する大学を決めたようだ。
「そういえば」
いつもの情報交換のとき、佐々木がなんだかラフな感じて話題を変えてきた。
「遠野くんのこと、好きだっていう子の代理の人たちから呼び出されてさ」
「え」
誰だろう……。澄田以外にもいるのか。いや、この場合、澄田の代理人なのか。
「私とつきあってるのかって聞かれた」
「うん」
「もちろん、違うよって答えたら、つきあってる子はいないか、好きなコはいないか、そんなことを聞かれた」
「そうか……」
「知らないから、『知らない』って答えておいたよ。それと……私がいうことでもないと思うけどさ、あまり女の子のこと、泣かしちゃ、ダメよ?」
「……」
「あと1年でこの島を出てくつもりなんでしょ? だったら」
「ん……わかってる。ごめん、いろいろ迷惑かけて」
「ま、私が晴れて東京の女子大生になったら、お詫びに案内してよ」
「え?」
「住んでたことあるんでしょ?」
「あ、ああ……でも、小学生のころだから、新宿とか代々木近辺だけだよ」
「十分よ!! とにかく、勉強がんばろう」
「そうだね」
模試の結果はまずまずだった。
明里に近づくために。
勉強をしていた。
そういえば、高校3年になって変わったことの一つに、携帯電話の入手がある。
とはいっても、自宅と学校と塾と、そのくらいしか電話番号の登録はないけれど。
携帯電話の番号を知らせるために明里に手紙を書こうか。
はがきだけでも。
いや、年賀状さえ今年は書けなかった。
その携帯にはメール機能があった。
僕は最近見るようになった、夢のことを書いては消していた。
気持ちのいい風のふく小高い丘の上で、夜明けを待っている。
そんな夢。
傍らには女の子がいる。
いつも、顔が見える直前で起きてしまうのだけど。
本当はそんな話を書きたい相手に、僕の手は届かなくなっていた。
(つづく)
僕は高校3年生となった。
一日一日にだと、時間が遅く感じているのに、過ぎてしまえばいつのまにか通過しているように感じる。
受験生にとっては、そのくらいのスピードでカレンダーはめくれていくものだ。
明里からの手紙は届かず、澄田との距離はそのまま。佐々木は受験する大学を決めたようだ。
「そういえば」
いつもの情報交換のとき、佐々木がなんだかラフな感じて話題を変えてきた。
「遠野くんのこと、好きだっていう子の代理の人たちから呼び出されてさ」
「え」
誰だろう……。澄田以外にもいるのか。いや、この場合、澄田の代理人なのか。
「私とつきあってるのかって聞かれた」
「うん」
「もちろん、違うよって答えたら、つきあってる子はいないか、好きなコはいないか、そんなことを聞かれた」
「そうか……」
「知らないから、『知らない』って答えておいたよ。それと……私がいうことでもないと思うけどさ、あまり女の子のこと、泣かしちゃ、ダメよ?」
「……」
「あと1年でこの島を出てくつもりなんでしょ? だったら」
「ん……わかってる。ごめん、いろいろ迷惑かけて」
「ま、私が晴れて東京の女子大生になったら、お詫びに案内してよ」
「え?」
「住んでたことあるんでしょ?」
「あ、ああ……でも、小学生のころだから、新宿とか代々木近辺だけだよ」
「十分よ!! とにかく、勉強がんばろう」
「そうだね」
模試の結果はまずまずだった。
明里に近づくために。
勉強をしていた。
そういえば、高校3年になって変わったことの一つに、携帯電話の入手がある。
とはいっても、自宅と学校と塾と、そのくらいしか電話番号の登録はないけれど。
携帯電話の番号を知らせるために明里に手紙を書こうか。
はがきだけでも。
いや、年賀状さえ今年は書けなかった。
その携帯にはメール機能があった。
僕は最近見るようになった、夢のことを書いては消していた。
気持ちのいい風のふく小高い丘の上で、夜明けを待っている。
そんな夢。
傍らには女の子がいる。
いつも、顔が見える直前で起きてしまうのだけど。
本当はそんな話を書きたい相手に、僕の手は届かなくなっていた。
(つづく)
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