ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。


 つい先ほどまで、単なる街だったはずだった。
 ネオンサインの煌めきと、歩き行く人々。
 少しの喧騒と、車の流れ。

 それが恐るべき状況へと変貌したのは、一体何時ごろの事だったか。
 
 …………切っ掛けは爆発音だった。
 
 車同士が衝突し、燃料に引火したのか炎上が始まった。喧騒は怒号へと変わり、歩き行く人々は悲鳴と共に離れてゆき、また事故現場を見守っていた。

「運転手が出てきたぞ!」

 炎上する車から身を引きずるように一人の女性が出てきた。
 火傷か打ち身か、呻くような声を上げながらも命からがら脱出して、覚束ない足取りでもなんとか車から離れた地面まで来て、倒れた。

「誰か、救急車! それと消防車を――――――――――」

 そこへ近寄り彼女を助け起こした一人の男性。
 正義感が強く、突発的な事故でもある程度の冷静さを維持し、速やかにしなければならないこと、連絡せねばならない場所を思い出し、周囲に声をかけた。
 
「早く連絡を……痛ッ!」

 彼は善良な一般男性だった。巷においては珍しく、人を見返りもなく助けることを厭わない誠実な人間……だった。
 彼は痛みを感じた手を目の前に掲げ、見る。
 そこには血が滲む歯型の跡。助けたはずの女性に噛みつかれたのだろう。
 
 錯乱しているのか、無理もない。
 
 全身に火傷の痛みを抱えては、平時のままではいられないだろう。
 そう考えたかは定かではないが、彼はそのまま女の頭を軽く持ち上げたまま声をかける。

「大丈夫か! 意識はあるか? もうすぐ救急車が来るはずだ。それまで頑張って――――――――――――――――」

 騒がしさに負けぬよう大きく張られた筈の声は、急に途絶える。
 不自然に絶えた声に周囲は訝しむ。
 ……まさか、脱出したはずの女性が死んでしまったのでは。彼はその事に気づき、ショックを受けているのでは。

 それを確認しようと 遅まきながら、別の、正義感に駆られた者たちがそこへ近づく。
 すると。
 女性は倒れていた体をゆっくり起こしていくではないか。
 どうやらまだ、生きていたらしい。
 どころか、自分で身を起こすだけの生命力が、その体に宿っている。
 そんな事実に、周囲に集まっていた人間たちは安堵の声を上げる。
 
 そんな中で。

「おい、大丈夫か」

 最初に女を助けた男性に手が延ばされる。
 彼はちょっとしたこの場の英雄だ、何時までも自失したままでは体裁も悪かろう。
 何故沈黙してしまったかはともかく、この通り女性はまだ生きている。
 いつまでも座り込んだままは可哀そうだ、そう誰かが思ったのだろう。
 最初の男性は肩を貸される形で立ち上がった。

 唐突な非日常に生まれた、助け合いという善の現れ。
 それを神もご覧になっていたのか。

 大丈夫だ、もう少しで救急車が来る。
 アンタは助かったんだ、もう大丈夫だ。

 そんな声がかけられる中、なんと、女性は身を起こすだけではなく、立ち上がったではないか。
 全身に大やけどを負い、足を引きずるように歩いていた怪我人が、まるで何事もないかのように。
 奇跡ともいうべき光景だ。

「ア、アンタ。大丈夫なのか!?」

 一人の壮年の男性が、顔を覗き込むように声をかける。
 女の長い髪が邪魔で表情が見えなかったのだ。反射的な行動だった。そこに深い意味はなかった。

 ――――それでも、その無意識な行動は、男性にとって不運だった。

 グシャリ。そんな音が響く。
 男性が感じたのは、鼻先が冷たいな、そんな感覚。
 そして、数秒して、気づく。鼻先にせりあがってくる、灼熱。
 痛みだ。

「ぐあああぁぁぁっ!」

 反射的に鼻を抑える。みるみる血が零れる。手のひらに感じる感覚は異質なもの。本来触れるべき箇所にある突起が手のひらに当たらない違和感。
 涙を浮かべつつも、そして、彼は見た。
 濁った白い眼。焼け落ちた顎から除く白い歯。まるで蝋のような、死人のような白い肌。
 そして、咀嚼する口元を濡らす、赤い血。
 この女は彼の鼻を、食べてしまったのだと。

 何かがおかしい。なのに何がおかしいのかわからない。
 わかるのは確かにこの鼻が痛いということだけ。

 ――――唐突。常識外。それによって齎された困惑は、更に加速していく。

「いてええええ! 俺の腕を喰うなああああ!!」

 最初に女性を助け起こそうとした好青年。
 それが、肩を貸してくれている男性の、腕を喰っていた。
 貪り喰らうように、吸い付くように。
 男性の抵抗も虚しく、骨の見えるほどに、グチャグチャと、ガリガリと、そんな喧しい音と共に、喰っていた。

 先ほど打ち消された筈の悲鳴は、再びここに蘇った。
 先ほどの数倍、数十倍のものになって。

「あれはゾンビだ! あいつらはゾンビになっちまったんだ!!」

 そんな叫びが恐怖を狂乱へと変える。

 ――――そして一刻の時が過ぎて。
 
 いま、この街は、とても静かだ。 


    ****


 男と女、二人が連れ合って夜の街を歩いていた。
 女は片手に銃――――先端に巨大なシースナイフの銃剣を取り付けたMP5という完全合法装備。
 男は片手にトランク――――いやそれよりも、黒尽くめな上に顔に包帯を巻いていることのほうが特徴的だろうか。
 そんな際立って目立つ二人が、夜の街――――このゾンビが闊歩するドイツ都市部の裏道を歩いていた。

 二人の横をゾンビが通り過ぎていく。
 まるでそこに誰もいないかのように目もくれず、うつろな瞳でゾンビが彷徨う。

 気づかれない事を知りつつ、それでも女は警戒しているのか、周囲に目配せをしつつ男へ問いかける。

「ブラザー、どうですか?」

 ブラザーと呼ばれた男は何やらをブツブツと呟いており、返答しない。
 女はそれを見て嘆息する。

(どうやらまだ探査中のようね。出来れば安全な場所を確保できたらいいのだけど、この辺りに良い所があるでしょうか)
(……結界さえ張れれば多少は違うのに)

 内心の焦りを押さえつけ、虚空を見やる。
 彼女にしか見えないナニカ。ゾンビとは異なる亡霊ともいうべき存在が電線に腰かけてケタケタと笑っている。
 女が睨みつけてやるとどこかへ消えてしまった。
 
 ――――まあでも。
(ブラザーが冷静で助かったわ。パニクられたらこの聖杯戦争による混乱の原因を探る、所ではないですから)
 
 聖杯戦争。
 このドイツの地方都市で行われた儀式は、聖杯――――『かの人』が最後の晩餐に用いた器――――を争う為に生み出された魔術儀式らしい。
 本物ではない、という話だが、それに類似したチカラを持つもの。つまり、人々に奇跡をもたらすもの。
 願いを叶える万能の杯。

 彼女――――セイバーのサーヴァントとして呼び出された英霊・ワルプルギスは、そんな愚かな争いを止めるために参戦した。
 聖杯はこのような血生臭い争いに巻き込んでいいものではないし、ましてや、魔術師が私利私欲のために使用していいものでもない。
 そうしてマスター…………サーヴァントの現世の楔であり自身を使役するものである魔術師に召喚され、それに応じたわけだが。

(既に、多くの被害者が出ている……ブラザー曰くB級映画の化け物。ゾンビ――――といいましたか)

 召喚されたのは運命なのだと、今はそう感じている。
 この街は既に何者かの手によって死と破壊の種が蒔かれた。
 ゾンビたちは街を闊歩し、生者を喰らいその奈落に引きずり込もうと鼻を利かせている。
 これ以上徒に被害者を出すことは、ワルプルギスにとって、到底許せるものではない。
 こういった危機のために腕を磨き、一門の存在となった。
 今人々の安寧を守護できねば、恐れ多くも守護聖人などと呼ばれている自身を決して許せない。

 ――――故に、マスターが危険に曝されないよう魔術によって守護しつつ、その禍根を叩こうと足掻いていた。

 とはいえ調査はマスター――――ブラザー任せだ。
 ワルプルギスにも似たようなことはできるはずなのだが、彼女の取り扱える神秘にはある致命的な欠陥があって、このゾンビ除けの魔術もある意味で偶然の賜物。
 そう、偶々上手くいっただけに過ぎない。
 だから。

(もう少し、協力的だと嬉しいんですが)

 先ほど消えてしまった影法師をワルプルギスは思う。
 彼女たちは気分屋だ。助けてくれることもあれば、窮地に陥らせてくることもある。
 今回はどうやら、ノンフィクションのゾンビムービーという体で状況を楽しむつもりのようで、これ以上の干渉をする気はないようだった。

(私とブラザーはさしずめ、バディの主人公といったところでしょうか)  

 たまに視界に映る霊子で編まれたポップコーンらしきモノもそういうことなのだろう。 如何にもアメリカ的な映画鑑賞スタイルを真似ることで、自分たちが第三者であることを明示している、そんなフレーバーなのだろう。
 別段、その態度にどうこう言う気はない。
 彼女たちは確かにわたしの宝具の一部ではあるが、それと同時にわたしの意志とは関係ない個人でもある。
 一緒に呼ばれしまうのは名前――――ワルプルギスの名を冠する、あまりに有名になってしまった祭典のせい。
 ある意味彼女たちは望まぬ現界に巻き込まれてしまったともいえるのだ。
 であれば、現世に干渉できぬ身でもある彼女らに厳しいことを言うつもりはない。
 ないが――――。

(――――きっと彼女たちは知っているでしょうね、このゾンビの発生原因が。教えろと言える立場ではないけれど、でも)
 
 そこでワルプルギスは頭を振った。
 今はブラザーがその力でもって一生懸命探してくれている、はずだ。
 それを信じるしかない。

「シスター」

 そう呼びかけられて、彼女は振り向く。
 お互いをマスターやクラス名ではなく、ブラザー・シスターと特異な形で呼ぶことになったのは、召喚当初のワルプルギス側の要請が原因だった。

『私のマスターとはただそれのみを指すもの。あなたをマスターと呼ぶことはできないんです、ごめんなさいっ!』
『そうか、なら俺のことはそうだな…………ブラザー。ブラザーとでも呼んでくれ。俺もお前のことはシスターと呼ぶ。お前の性能は、クラスを隠すには好都合だからな』

 それ以来、お互いをそう呼んでいた。
 シスター、と呼ばれることにワルプルギスは少し気恥しい気持ちもあったが、それ以上に自身の勝手な都合を汲んでくれたマスターには感謝している。
 彼をブラザーと呼ぶことには……少し複雑な思いがあるのだが。

「どうしましたブラザー。何か手掛かりが?」

「いや……何とも言えない。追跡されているようだ」

 その言葉を聞き、ワルプルギスは五感を研ぎ澄ます。
 その追跡が魔術的なものであれ、機械的なものであれ、見るということは見られるということ。
 その片鱗は必ずどこかに残るものだ。
 そうして瞬きのほどの間の後。

「犬……ですか」

「ゾンビ化した犬がついてきているようだ」

 街に溢れかえっているアンデッド共は無作為に生命体を探す性質があるらしい。
 現在、それを誤魔化す魔術を使用しているこの二人は、そのゾンビの嗅覚ともいうべきものに見つかることはない。
 にもかかわらず、複数のゾンビが付かず離れずにいるとブラザーは言った。

「このクソッタレゾンビパニックを仕掛けた奴の監視である可能性は高い。どうする」

「どこかに誘き寄せて潰しましょう。監視の眼が見えなくなれば、何らかのアクションを取ってくるはず」

「ならばその方向でいくか。――――丁度袋小路のようだ。此処で」

「ええ、罠を仕掛けましょう」
 
 剥がれ落ちたポスター。ラッカースプレーで落書きされた跡。
 人の寄付く余地もなさそうなこんな場所でも、誰かしら根城にしているのだろうか。
 レンガ造りの建物の狭間に暗く昏い路地裏。
 接近戦に適した、閉鎖的な空間。
 二人は頷き合い、速やかに行動を開始する。


 夜の空に、誰にも聞こえぬ魔女の哄笑が響く。
『ああ恐ろしい恐ろしい。そいつを呼び寄せてはいけないよ』
『狼の瞳の乙女がくるよ』
『怖い怖い剣気を纏う、死を祝うものがいるよ』
『『呼んではいけないよワルプルギス。アンタなんかあっさり斬られてスライスされて、鍋の具材にされちゃうよ。フフフ、アハハ』』
『『『戦の乙女がやってくるよ。アハハハハハハハハ!』』』


    ****


 同時刻。

「これは正直……困りましたわね」

 一人の乙女が、石造りの屋根の上で呟いた。
 乙女は、まるで彫刻のような芸術的な美しさだった。
 透き通る金の髪。
 長く切れ上がったその眼。
 いっそ作り物めいた綺麗な睫毛と、濡れたような目元。
 桃紅色の唇から、甘い吐息が漏れる。
 浮世離れした美の化身。
 それが、困った顔をしながら眼下を見つめている。

「マスターこれでは探索どころではありませんわ。街に歩く屍が沢山。聖杯戦争とは目立ってはならないものと聞いていましたのに、前提大崩壊です」

「うーむ、そうじゃな……。どうしたものか」

 その呟き――――サーヴァントの困惑に答えたのは、幼き声だった。
 乙女以外にもう一人。その傍らにも、街を見下ろす影がある。

「正直想定外じゃのこれ。まだ二日目だというにどこの馬鹿がやらかしたんじゃろう……いやまあ指針は定まったと見るべきか」

 幼い声の主はサーヴァントのすぐ傍に座っていた。
 姿勢正しく立ち上がって眼下を見下ろしているサーヴァントの、白くハリのある太ももを背もたれの代わりにし、少年が座り込んでいた。
 面倒に気疲れしていたか、それとも眠いのだろうか、瞼を両手で擦りつつ少年は言う。
「ワシらに選択肢は多くない、じゃろ? セイバー。――――取り合えずこの下手人、生かしておけぬ。早急に滅するべきじゃな」

「ええ。そう仰っていただけると思いこのオルトリンデ、既に目は放ってあります」

 千里眼、狼の眼。
 本来別の用途で用いられるスキルだが、こういった状況下においては索敵としても機能する。
 とはいえただ使用するだけでは気取られる可能性も高いため、ゾンビ犬の視界をジャックする形で街中を調べさせていた。

「仕事早いのう。関心関心、わはは」

 少年はその言葉を聞いて、この狂った夜に不釣り合いなほど朗らかに笑った後、よっこらせとセイバーのスカートをひっつかんで立ち上がる。
 少年というだけあり、セイバー・オルトリンデよりも大分小さい。
 立ち上がり肩を回して解していると、頭上から文句の声。

「あの、マスター。そこを掴まれると捲れてしまいますのであまり……」

「まぁ許せ。手近にあったから反射的に掴んでしまったんじゃよ許せ。チラリと見えぬものかとスケベ心が無かったとは言わんが」

「あったんですか……」

 はあ……と上気したような、困ったようなため息を乙女は吐く。
 召喚されて一週間。
 マスターは一事が万事にこんな調子で、オルトリンデは未だに掴みかねていた。

(度胸はある。決して頭も悪くない、寧ろこの年にしては驚くほど聡明。間違いなく英雄の器足りえる。足りえるんですが……)

 どう見ても齢一桁の所作ではない。
 聞いてみたところ、別に肉体を乗り換えたり不老の存在であったり等、非人間的な存在ではないらしい。
 見たまんまの歳じゃぞ! とドヤ顔で説明された。
 サーヴァントである以上、マスターがそう説明するのであればそういうものであると理解するしかない。
 まあスカートめくりに興味津々と言われれば年相応と捉えられなくもない、が。
 無論、納得はしてない。

「とにかく、いきなりスカート捲りなんてはしたない真似はお辞めください……いっそたくし上げる様に命令されたほうが幾らかマシですわ」

「ほう、いいことを聞いたのう。とはいえ羞恥こそがエロスの華。そのような無体な事はせぬとその肝に銘じておけ」

 セイバーそういうの慣れてそうだから言ったら意味ないじゃろ、と少年は自身の言葉に頷く。

(偉そうに言うことではありませんわ……)
 
 内心の気疲れを押し隠しつつ、セイバーは嘆息する。

(まあマスターのことはその内詳しく聞ける機会もあるでしょう――――っと)

「マスター」

 先ほどとは違う、硬質な一声。

「うむ、見つけたか」

 それに呼応するように、先ほどまでの桃色吐息の一種甘い雰囲気はその一言で失せる
 会話の最中に柔軟運動を終えた少年は、獰猛な笑みを浮かべつつ、手を伸ばす。

「さて、此度の下手人への仕置きはちときつくいくぞ。やれるな? セイバー」

 少年が伸ばした手を、オルトリンデは優しく包む。
 まだ小さい手だ。武器など持って殺し合いをするには小さすぎる手。
 そこに若干の震えがあることに、少しだけ得心する。
 決して嘘八百ということもなさそうだ、と。
 だとすればこれから先は戦場で、幼子に見せるには少々酷な光景だ。
 それでも彼は剣を振るうと決めたのだ。ならその意思を尊重しよう。

「この身は貴方様の剣。どうか存分にお振るいくださいませ」

 うむ、と頷く少年を抱き寄せ、オルトリンデは飛び上がる。
 ルーンによって強化された軽身の術は、夜の街を容易く駆け抜ける。
 落ちぬように胸元へ抱いた少年の吐息が、熱い。
 この子の願いを叶えよう。
 この熱を奪われぬように。
 この熱が、もっともっと熱くなるように。
 
 そうして一体となった一人と一騎は、夜の空を駆ける。
 

    ****


 一陣の魔性の如き風が吹いて。
 路地を一本曲がった袋小路。
 未だ蛍光管の電灯がカチッカチッと点滅するそんな暗がりの中で。

「聖杯戦争の参加者とお見受け致します。本来であれば英雄と呼ばれる方とは少しくらい会話を楽しみたいところなのですが……お覚悟を」

「その不作法、本来なら一言あるところですが……此方としても急ぎなものですから構いません。どうせ許すつもりもない」

 魔女と乙女。
 二騎のサーヴァントは対峙していた。
 お互いマスターを庇うように、魔女は壁側、乙女は通路側を背に。
 場には既に静寂と、魔力さえ怯える程の剣呑さが立ち込めている。
 双方共に、相手を打倒する為にこの場所にいる以上、激突は避けれない。

 否、避けるつもりなど、毛頭ない。

(残弾27、牽制には十分!)

 口火を切ったのはワルプルギス。魔女の手にある筒が火を噴く。
 
 手に持つは余りにも有名なサブマシンガン。ヘッケラー&コッホ社製短機関銃MP5。
 各国採用の信頼性。高い命中精度と、9ミリパラベラム弾を分辺り800発ばら撒く優秀なマンストッピングパワー。
 本来であればフルオート機構を持たないシロモノだが、ブラザーによるちょっとした改造を施されたこの短機関銃はそれを可能としていた。
 更に改造は深部に及び、この銃は全てシルバーバレット……純銀製弾頭の発射を可能とする。
 術式を込めやすいという点のみで採算度外視で採用されたこの仕様により、サーヴァントにさえ脅威となりうる現代兵器となった。
 ……無論、それはワルプルギスが扱い場合に限っての話であるが。

 そんな違法改造を施された銃の口から。
 秒間辺り400mの初速、そこから生み出される破壊のエネルギーが戦乙女を強襲する。
 人の眼には捉えられぬ速度、たった二秒で27発の牙が襲い来る連射量は只人を超越したもの――――魔術師にとっても驚異的なものだ。
 だが――――そう、同じサーヴァントでは。

「beginnt der Luftwaffe : Schwarm!」

 乙女の呟きが、短機関銃の発射音の最中に響く。
 爆音の中でも不思議と明瞭に聞き取れるその声に応じ、彼女の剣が解き放たれる。
 鞘ではなく、鎧を擦過しながら現れたのは四本の短剣。しかし、柄と呼ぶべきものがない、異形の刃。
 一体どういった仕組みなのか、四本の刃は宙に浮いていた。
 それらは定位置と思われる場所――――右手、左手、右膝、左膝の延長線上、およそ2メートルほどの位置に留まった。
 そして、刃を纏った戦乙女は、場に不似合いな、ワルツを踊る。
 優美な踊りだ。手足を舞わせ滑らせて。
 その動きに合わせ、宙浮く刃もまた踊る。手先と膝先に連動した刃が、虚空を滑る。
 一つの動作で滑るごとに、火花が散って、消えていく。
 キン、キン乾いた音が響く。一つ、二つ、三つ、四つ。
 5、6、7、8、9、10、11――――二秒という気を抜けば一瞬で終わる時間の隙間に、音は鳴り続ける。
 カチャリ、と虚しい音が鳴る。残弾の無い銃の、トリガーだけ空引きした音だ。
 金属音は丁度27。銃弾は全て、その剣――――先しかないのだから尖剣というべきか――――に阻まれそして。

「フッ」

 呼気と共に乙女の右手が虚空を穿つ。
 無論只の空抜き手などではない。
 先端に連動した尖剣がそれに合わせ爆発的に加速。オルトリンデの持つ莫大な魔力を推進剤にした弾丸となる。
 魔力放出スキルによって強化されたそれは、先のサブマシンガンが玩具にしか見えなくなるほどの破壊力と速度をもって魔女・ワルプルギスの眉間を狙い撃つ。

 突っ込んでくる尖剣を、魔女はMP5に取り付けられた銃剣で迎え撃つ。
 ゾーリンゲン鋼から削り出され、とにかく強度重視に作られたこの銃剣は、これもやはりごうほう完全違法な代物だが、その金に糸目をつけない頑強さであっても、神代の剣相手には分が悪かった。

(うわ、根元から取れた!?)

 弾き返すことはできたものの、銃剣部分が衝撃に耐え切れず撃ち飛ばされる。
 明らかな失態だ。幾ら強化されているとはいえ所詮現代の兵器。生半な受け方で耐えられるものでは到底ない事を失念していた。
 だがそれによる精神の動揺は一瞬。武器が無くなること以上に、そのほうが命取り。
 武器が壊れたなら取り換えればいい、それだけのことだ。

 役に立たなくなった銃を目晦まし代わりに投げつければ、あっという間にそれも真っ二つ。

 しかしその間隙を縫ってワルプルギスが腕を振る。
 手元に現れたのは次の武器。
 袖口に隠されていた柄だけの剣。それは魔力を通すことで本来の姿へ変貌する。

「『剣を取る者は、剣により滅びるQuiacceperintgladiumgladioperibunt』」

 黒鍵と呼ばれる概念武装。
 聖堂協会の代行者が持つ装備の一種であり、悪魔を払うためのものだとされるソレをワルプルギスの持つスキル、『聖剣認定』が祝福する。
 本来黒鍵程度の装備でサーヴァントへ有効打を与えることは難しい。
 根本的な神秘のレベルが違い過ぎるためだ。
 最上位の神秘であるサーヴァント。それに比べてかなり低位の神秘である黒鍵では、相手が余程悪魔に近しいもので無ければ傷を負わせることさえ困難。
 しかしワルプルギスであればその話は異なってくる。
 彼女は、それが手に持つものであれば、あらゆるものをサーヴァントを殺傷せしめる聖剣として認定し、得物とすることができる。
 これがあればこそ、近代兵器ですらサーヴァントにとって危険だと思わせるだけのものとすることができたのだ。

 祝福された黒鍵を構える。堂に入った構えは言うなれば正眼に近いもの。
 微動だにしない刃先がその修練の後を思わせる、壁と形容できる頼もしい姿。
 そこに向けて飛来する音は二つ。
 一つで迎撃されたとみるやオルトリンデが同時射出を選択したのだろう。
 壁なんて力でこじ開けてしまえばいい。
 そう言わんばかりの、最初の一撃さえ上回る二射は、音速さえも二回り超えて、ソニックブームさえ巻き起こしながらワルプルギスを強襲する。

 しかし、壁は壁でもそれは城壁。城壁を水滴で穿つには、現実的でないほどの時間がいるものだ。

「『受け流しパリーレン――――』」

 ワルプルギスの剣先が残像と共に動く。
 精緻な軌道を持って剣先が、飛来する刃を弾く!
 
「――――『そしてウント』――――」
 
 黒鍵は先ほどの銃剣とは異なり、金属とは思えない音を立てて砕け散る。
 曲がる、折れるを超えて受けた衝撃はしかし、刀身を代償に確かに致死の一撃を完全に防ぎきる。
 ワルプルギスの動作はそこで止まらない。敵の浮遊刀身は四。今その内の二つを吹き飛ばし、四つの防備が半減したこの瞬間を攻撃の機会と変える。
 もう片手に保持していた黒鍵を更に展開。祝福済みのソレを、片手の力のみで投擲する。

「――――『斬る!シュナイデン』」

 受け流して斬る。
 言葉にすれば単純なこの動作は、しかし攻防という観点においては基本にして究極。
 攻撃を受け流すことで無力化し、攻撃しているが故に防御へと転換できないその局面は必ず相手の最大の隙となる。
 誰も、普通は受け流されると思って攻撃するものはいない。攻撃とは相手を倒すもの、そういう意思を乗せて振るうものだ。
 それが無力化された際の隙は動作の上においても、精神の上においても筆舌尽くし難く、どんな難敵であっても切り伏せるに足るものとなる。
 
 言うは易く、行うは難し。そういった攻防上の観念ともいうべきものだ。
 狙えるのであれば狙うものだが、普通は極端な技量差でもなければ不可能な、そんな戦術とも呼べぬもの。
 戦いという定量化の難しい混沌の事象から、天運という助力があって偶然拾い得る、不屈の剣士へのご褒美のようなもの。
 
 だがしかし。
 ただ、それだけを鍛え上げ続けた剣の魔女は、定型化されたその動作自体を宝具とするに至った。
 
 『受け流して斬る!パリーレン・ウント・シュナイデン!』とは、そういった修練の集大成である。
 大技はいらない。ただ基本動作を突き詰めるだけで、邪を滅ぼす強力な力と成り得ることを信じ続け、磨き上げ続けられた驚異の技術。
 あらゆる攻撃を流すことを可能とした、驚異の技量の発露である。
 
「くっ! その程度!」

 投擲は異常なほどの回転を帯びて剣の乙女へと逆襲する。
 速度においてオルトリンデのものに匹敵するほどではなく、どころかMP5の初速にすら及ぶものではないが、その強固な質量は確かに必殺。
 対処せずにいられるものではない。
 次弾として準備されていた尖剣二振りがこれを迎撃に向かう。
 
 黒鍵は投擲用に重心が先端に寄っているという特徴を持つ礼装である。
 だが空力的に安定とは言い難いその形状により、少しバランスを崩されると真っ直ぐ飛ぶ事ができないという構造欠陥を抱えている。投擲武器としてみれば不完全な代物だ。
 オルトリンデは一瞥して把握し、それを狙う。
 尖剣が向かうは刃の中央。ほんの少し押し込むだけで容易に軌道を変えてしまうであろうというポイントに、狼のように尖剣が群がる。
 バチリ、とそんな音がした。
 黒鍵は僅か3ミリほど乙女に届かず、軌道を逸れていく。
 そしてそれ以上に。
 尖剣二振りはオルトリンデの予想と異なりあり得ないほどの勢いでもって両際のレンガ壁に向かって吹き散らされた。

「嘘―――」

「どっせーーーーーーーーいっ!!」

 乙女を守護する尖剣は全て周囲に叩きつけられた。
 その完全なる隙を、見逃す魔女ではない。
 更に投擲する黒鍵の数は6。全てが必殺――――といいたいが『聖剣認定』が行えるのは常に一つのみ。
 よって5本をダミーとし、残る本命の1本を紛れ込ませた抜け目ないトドメへの布石。
 
 ワルプルギスは考える。
 恐らく、この敵対者は情報を与えすぎることを警戒して手を隠しているはずだ。
 自身より古い時代の英霊であることは、その武器が余りに特異で、魔術というものがありふれていた時代特有のものということから推察できる。
 だとすれば出し惜しみなしで全力を出されたときにどこまで抗せるかははっきりいって博打に近い。
 先手必勝。この有利を手放さぬまま戦えば、勝利は手堅いものとなる――――。

 着弾するその寸前。

「『全力を以て防ぎきれ、セイバー!』」
 
 響き渡るは第三の声。
 オルトリンデのマスターである少年は右手を掲げ、宣言する。その手の甲に刻まれた一画が輝きを失う。
 その命に従い、乙女は吠える。

「Scramble beginnt!!」

 咆哮に応じる様に、打ち揚げられていた浮遊剣がその活力を取り戻す。
 光の尾を引きながら黒鍵の軌道線上に割りこむように突撃する。
 更に。
 オルトリンデが仕舞い込んでいたケッテ――――更なる三剣が出現。
 計七つ。その全てが過剰なほどの魔力を注ぎ込まれ、光と化した尖剣達は黒鍵へと群がっていく。
 暴走する嵐とも表現すべき程の飛行編隊は、黒鍵に内包された衝撃力をものともせず、その全てが撃ち落される。
 

 ――――令呪を切るか、それなら!

 それをただ指を咥えて見ているワルプルギスではない。
 距離はこちらより向こうの味方。飛び道具はまだまだ用意してあるものの、あれほどに強力なもの、恐らく宝具であろう代物に対抗できるだけの武器は手持ちの札には殆どない。

 となればやることは一つ。

 無手となった彼女は本来の武器――――生前より愛用していた剣、そして対になる盾を出現させるや否や、足元のアスファルトを踏み砕き突撃。
 乙女の身を切り裂こうと渾身の加速で迫る。

「せいッ!」

 振りは下段振り上げ。加速力を十分に乗せた一太刀は、オルトリンデの纏う神代の鎧を切り裂いてなお余る鋭さ。
 令呪の助力を得てギリギリを凌いだ乙女に、これを防御するための刃はない――――!
 
 肉を切る音は、聞こえては来なかった。
 それよりも先に。
 カラン、と。
 浮遊していたはずの尖剣の全てが地に落ちた。

 そして、金属同士のぶつかる硬質な音がそれに続く。

「なん――――ですと――――――――!」

 確実に決まるはずだったはずの魔女の一太刀が防がれる。
 無手のはずのオルトリンデを守ったもの。
 それは、まさにその無手。
 ルーンによって最大まで強化された乙女の掌打、それが横合いから魔女の剣を打ち据え、軌道を逸らす。

 先ほどの言の通り、攻撃を受け流されたときとは最大の隙が生まれる瞬間でもある。
 意趣返しと言えるものを返されたワルプルギスに迫るのはオルトリンデの裏回し蹴り。
 北欧に伝わりし古の神秘であるルーン魔術、そして魔力放出がそこに与えた力は家一つを倒壊させるに十分なもの。

 受け流された段階で続く反撃を覚悟した魔女は盾でこれを辛うじて防ぐも、吹き飛ばされ、地を転がされつつ立ち上がる。

 瞬間の攻防で詰めた距離は、こうしてゼロへと戻った。

 尖剣が再び浮遊を開始する。
 花冠のように美しい円形を象りつつ、乙女の周囲を巡る。
 そして殺意の篭る花びらを纏った戦乙女は、前へ一歩、足を踏み出す。

「貴女は、油断も接近も、許してはいけない方のようですね」

「……お褒めの言葉と受け取っておくわ」
 
 二歩、三歩。そして四歩目を踏み出さぬまま立ち止まる。

「此処からは加減も出来ません……マスター、申し訳ありませんが」

「良いぞ、許す。お前がそう判断したのなら、気にせずやってしまえ」

「有難うございます」

 場違いな微笑み。
 ワルプルギスはそれを見て心に焦りが生まれるのを感じる。
 微笑む乙女のその殺気。
 それが、ブラザーへと向いている
 先ほどまでは自身にのみ注視されていたそれが背後へと注がれていることが分かる。

 此処は袋小路。
 キャスター相手であればと敢えて三方を封じたのが此処に来て徒となった。
 正面に立つ敵は魔術以上にあの浮遊する剣での攻撃に特化しており対魔力による防御は意味を為さない。
 この封鎖された空間の中で、ブラザーを守り切り、そして敵を切り伏せる以外に、ワルプルギスの活路はない。

 そして、無慈悲で、一方的な攻撃が始まる。
 
「Sättigungsangriff」

 七つの花びらは、それぞれが独自の軌道を描きながら敵へと肉薄する。
 
「ブラザー! わたしの後ろから離れないで!」

 魔女は叫びつつ後ろを振り返ることなく尖剣を打ち返す。
 流石に数々の神秘を打ち払ってきただけのことはあり、剣も盾もブラザーが現代で用意したものより頑健であり、そうそう破壊されることはない。
 だが、このままずっと耐久出来るかといえば……答えは否。
 
 最小の労力による最大の効果を狙い続ける超攻性宝具。前動作が実質存在しない剣戟の雨を浴びせられる最中、ワルプルギスは観察する。

(最初の四本の時点では本体の動作がトリガーになっていた)
(それが七本になってから、足も手も止まっている。つまりあの剣……剣? の操作には集中が必要ということ)
(演算で操作しているとしたら大したものだわ。けれどその代わり、本体は実質あの場所から動けない)
(つまり一斉に撃ち落しつつ接近も出来れば一撃で――――わたしにアレができるかしら)
 
 凌ぎつつも観察を続け、打ち返した回数は二十を超える。その全てをコントロールが失われるほどの威力で叩き返し続けているが、その猛攻は止む気配がない。
 払いに時間差をつけることでなんとか七つ同時による攻撃を二つの段階に分けるところまでは来たが、その後が続かない。
 オルトリンデ側もそれは承知のようで、そういうものと割り切って攻撃を続けている。
 四の尖剣シュトルムがワルプルギスを、三の尖剣ケッテがブラザーを。
 それぞれが致死量の威力でもって、物理的な法則を無視して振るわれ、目標を襲い続ける。
 ランダムな軌道が混じっているのか、壁も床も削りとる荒々しい攻撃。
 それでも狙いは正確無比。
 ジグザグ軌道はパワーを持て余しているかのようでいて、それでいてしっかりと撹乱として、錯視さえ感じさせる軌道で急所を狙ってくる。
 そんな攻撃が切れ間なく。
 三つを弾き飛ばす間に次の四つ、四つを弾き飛ばす間に三つが状態を立て直し、一方的に攻め立て続けて反撃を許さない。
 だとすれば。

(…………しょうがない。やりますか!)

 この膠着はあまり長くは続かないだろうと思われた。
 サーヴァントだけとはいえ、薄皮一枚だけとはいえ、徐々に被弾が目立ちつつある。
 薄っすらと、ワルプルギスの衣服に紅が滲んでいた。

 なればこそ。
 隙とは作るもの。
 でなければ、見せるものだ。

 次に迫るは三つの刃。オルトリンデがケッテと呼ぶ尖剣三本で構成された小隊による、下方・前方・直上からの時間差攻撃。
 上下を剣、手首を回転させることで刃でもって打ち払う。
 前方は盾、身を捻るように、裏拳の要領でもって相手正面へと弾き返す。
 
 弾かれたものは与えられた運動エネルギーの慣性に従い吹き飛ばされるが、その後一瞬戸惑うように空中に静止する。
 当然だ。今までは鉄甲作用を乗せた刃で払っていたが、それを乗せていない以上、立て直しが早いのは当たり前の事。
 
 心なしか、オルトリンデ自身も怪訝そうな表情を見せた。

 だが攻め手が止むことはない。
 はじき返された分も含め、今度は七つ全てが、今度こそその牙で以て喰らい付こうと魔女の身に迫る。

 それを目で見て確認し、読み通りであることを確信したワルプルギスは、盾での打ち払いから流れる様に、跳んだ。
 前方向へ、ではない。
 ブラザーの壁になることをやめ、後方のコンクリート壁、その中腹へ吸い付くように跳んだのだ。
 
(さあ、初めてですので祈りましょう!)

 壁への設置音。トン、という軽い音と共にワルプルギスは壁へと降り立つ。
 そして瞬間、音もなくその姿は消え失せる。

「え――――――――ッく!?」

 立て続けに響くは七つの音。
 これまでにも鳴り続けていた、尖剣が打ち払われる音そのもの。
 
 オルトリンデの手から、全機のコントロールが失われる。
 その間際、千里眼に到る目に映ったのは七つの軌跡、七つの閃光。

「やはり修練してない技術では完璧とはいきませんか。とはいえ手が届くところには来れました」

 声のする方を見やれば正面、着地姿勢とでもいうかのように剣を肩に乗せ、片膝を着く魔女の姿。
 オルトリンデの瞳を見据えて、微笑みの片鱗さえ浮かべている。

 セブンスヘブン。
 ワルプルギス以後の聖堂教会によって確立された、魔力運用によって瞬間的な高速移動と攻撃を両立した戦闘機動。
 埋葬機関第七位が得意とするこの技術は、加減速を意図的に調節することにより、相手の正面にいながら、視界から消え失せる程の速度でもって肉薄する。
 知らぬものが見れば手品としか思えない、技。
 しかし本来であれば21の斬撃が荒れ狂うはずのものであるはずが、打ち込めたのは尖剣と同数、7ばかり。
 用いたことのない身体運用理論を初見で完全再現とはいかなかった。
 再現できていれば、その瞬間で勝負は決していただろう。

 しかしそれでも、十分。
 窮地を脱し、目前に到ることができたのだから。
 ワルプルギスがぼろぼろの片手剣と、ボロボロの体で、それでも大上段で切りかかる。
 決着の一撃を入れるのだ。


    ****


 ここだ、とオルトリンデは考える。
 
 攻めあぐねていたのは乙女も同じ。
 有利なのは確かだが、戦闘の長時間化は幼いマスターの魔力にどれだけの負担となるかは未知数。
 時間制限さえなければ確実に討ち取れる自信があったが、マスターの事を思えば早いに越したことはない。
 
 となれば、この一瞬は私にとっても好機――――!

「――――『WütendsteuerthieherderSturm怒れる嵐を呼び寄せましょう 天より来る全てを焼く白』」

 謳う。
 その身に刃が向かうのを視界にも入れず、ただ術式を読み上げる。

 先ほどまで尖剣が描いていた、一見無意味な壁と床の傷跡。
 あちらこちらに、運動量のオーバーランに偽装して刻まれた模様が魔力を帯びる。

 フェイントにしたって無駄が多いようなと、ワルプルギスがそう感じていた動きは全て――――

「――――『Flieh',werihnfürchtet!さあ怯え惑いて逃げなさい 来たる嵐が 全てを喰らうわ!』」

 先ほどまでワルプルギスが立っていた場所。今はブラザーだけが立っているその場所に巧妙に仕掛けられた罠。
 ――――そのルーン・・・は。

「『隻眼の雷鳴』よ、燃やし尽くしなさい」

 稲妻、稲魂、白き炎。
 神の怒りと呼ばれし気象、雷によって中心を燃やし尽くす焼却の術式。

「チッ! 『守れ、シスター!』」

 反射的にブラザーが令呪を翳すがもう遅い。
 令呪の輝きはすぐさま、炎に塗れ見えなくなった。
 赤を超えた雪色の熱量が、ブラザーの身を骨さえ残さず嘗め尽くす。
 白熱と光が、通路中に満ちる。
 スパークが空気の爆ぜる音とイオン分離した独特の香りを運んでくる。

「ちょっと火力を高めすぎましたね……」
 
 ブスブスと、床に焦げ跡が付く。
 マスターに被害が及ばぬよう張り巡らせた結界。
 それに覆われていてもなお漏れ出る高熱は、その高い破壊力の表れ。
 サーヴァントを呼び寄せようと関係ない、いっそ諸共に。
 術式が終了するころには、骨の一つさえ残らない――――――――――――――――はずだった。

 そのはずなのに。

「『銃は、銃によって贖われるQuiacceperintgladiumgladioperibunt』」

 詠うように、声が聞こえる。
 炎の地獄より聞こえたるそれは祝詞。剣を祝福するための言葉合わせ。
 そして。

「くっ!?」

 パン、と乾いた音が響いた。

 ――――結界から。
 
 音と共に結界から何かが飛び出し、その何かは『消えかけの電灯』『打ち付けられた板からはみ出た釘』『はがれかけのアスファルト』の三か所を反射して、戦乙女を強襲。

 オルトリンデは辛うじてその何か――――鉛の弾丸だ――――を小手で弾くようにして防御する。
 だが質量に対してあまりに大きすぎる反動、予想外過ぎる衝撃の強さに、大きく態勢を崩してしまった。
 そして、父の力を魔術によって再現した結界魔術『隻眼の雷鳴』はその効果時間を無視して、霧散する。
 神代の力で紡がれた筈の術式が、無効にされたのだ。

 対魔力A+は、あらゆる魔術を無効にする。それは自身のみならず、守りたいものにさえ作用する。

 現れたのは無傷のワルプルギス、そしてブラザーと呼ばれている彼女のマスター。
 転送は間に合っていたし、転送することだけが、このペアにとって魔術に対する最大の防御だった。
 全ての時の歩みが遅くなる、緊張ともいうべき一瞬。

「『鉄甲――――作用アイゼンプラッテ    ヴィルコン』」

 戦乙女と魔女。双方の視線がかち合う。
 令呪によって呼び戻された故か、ワルプルギスは中空。
 腕を十字に構え――――恐らく左腕を安定装置代わりにしている――――銃口をオルトリンデに向けている。
 
 火を噴く竜火。発射された弾丸は三発。
 奇襲気味の一撃に耐性を崩した乙女は、それでもなんとか、右手に強化を纏わせこれを迎撃。

 ただ受けただけでは更に吹き飛ばされる。
 
 手刀。神代の魔術はただ肉のものでさえ鋼の剣に等しいものへと変貌させる。
 迫りくる銃弾を切り捨てることで衝撃を緩和しつつ無力化、そして迎撃の為に宝具のコントロールを復帰しようとし――――。

 ワルプルギスが蹴りだしたものが視界に映る。

 DM51。
 西ドイツで開発された歩兵用の、破片手榴弾。
 既に祝福されたそれは、サーヴァントにさえ致命的な威力をもたらす劇毒に等しい。

 爆音が袋小路に響き渡る。
 充満する煙は、これも改造によって火力量を引き上げていたことの証左か。

 辛うじて呼び戻した尖剣を媒介に防御結界を張ったことで致傷を免れたものの、爆音とこの多量の煙はオルトリンデの感覚を奪うには十分だった。
 この瞬間に攻撃を受ければ、防御もままならず倒されてしまう。
 倒されるわけにはいかない。
 けれど。
 けれど。
 
 運が悪かったわけではない。
 マスターが悪かったわけでもない。
 
 ただ、技量が及ばなかったのだ。
 戦いへの経験が違い過ぎたのだ。
 
 この身は確かに戦乙女なれど、その記憶はあやふやなもの。
 確固たる経験と研鑽を重ねた、歴史の重みをもつものに、至らなかったもの。
 
 封じられた視界の中でオルトリンデは思う。
 
 それを後悔というのかは、彼女にはわからなかった。
 ただ、一つだけ。
 まだあきらめるには早すぎる。
 幸運にもその最後の一刺しがこの身を貫いたわけではない。
 ならばまだ、やることがある。
 反省なんてあとでいくらでも。
 
 今は、マスターの保護を――――。

 煙が、徐々に晴れつつあった。
 一秒、二秒、三秒、四秒。
 それだけの刻限があっても、攻撃はやってこなかった。

 煙が完全に晴れる。

 最初に映ったのはマスターの姿だった。
 
 そして次に映ったのは。
 マスターのそばに立つ、敵の姿だった。 

 そして三つ目に映ったのは――――。


    **** 

 
『敵マスターを確保しろ』

 自身の失点によって呼び戻されたワルプルギスに、ブラザーは開口一番そう述べた。
 理由も聞かずに頷いた魔女はこれを敢行し、爆炎に紛れることで戦乙女をすり抜け、その背後にいた敵マスターへ肉薄。

(一応刃物を突き付けておけばいいんでしょうか)

 恐らく害すな、ということなんだろう。
 何故なのかは直接刃を交えた身としてはなんとなくわかるのだが。
 敢えてそこまでしなくとも、素手で十分な凶器になるのがサーヴァントだ。
 そう考え直し、首辺りに腕を添えておくだけでいいでしょうと、ワルプルギスは軽く、相手が息苦しくならない程度に拘束する。 
 そこへ。

「のう、お主」
 
 頭だけで振り返り、少年が問いかけてくる。
 慄くこともなく、恐れさえ知らぬという眼で自身を捕えている敵サーヴァントに向かって話しかけてきた。

「…………なんでしょう」

 慄きそうなのはワルプルギスのほうだった。
 言葉遣いが古風なだけかと思っていた少年は、どうやら相当の傑物らしい。
 もしくは、見た目通りの年齢ではないのか。

「いやさ、そうじゃなあ……もうちょっと乳が当たるように抱いてくれんか」

「は!?」

「乳じゃよ乳。ワシのセイバーはそりゃ御大層なもんが付いてるんじゃが、鎧越しでは硬くて堪能もできんでなぁ……」

「…………説法がお好き?」

「いや冗談じゃ。八割方は本音じゃが。セイバーにしろお前さんにしろ、どうにも少年の幼気な心を分かっておらん……まぁ良いわ。ところで――――お前さんらも巻き込まれたクチか?」

 逡巡は一瞬。
 それでも、そうです、とだけ短く答えた。

「やっぱりのう……。お前さんら聖堂教会所縁ものじゃもん。黒鍵見た段で止めるべきじゃったわ」

 ――――足音が聞こえる。

「随分、お詳しいんですね」

「知識だけは歳不相応なのが自慢なんじゃよワシ。しかしだとすると厄介じゃのう」

 少年は頭を掻いた。
 本当に困った風な言葉に、ワルプルギスは思わず尋ねる。

「と、いうと?」

「つーことは、じゃ。本当の下手人はこの喜劇、絶対どこかで見てるじゃろ」

 ――――足音が聞こえる。

 まともな歩行音とは異なり、足を引きずるような、独特の、覇気のない、どころか生命力が感じられない歩き方。
 それが一つではない。
 聞き分けきれないほどの数の足音が、通路に面した方角から、嫌になるほど大量に、聞こえる。

「ほれみた後ろじゃ!」

 背後から伸びた手。
 声共に反射的に、その手を切り捨てる。
 次々と、闇から手が伸びてくる。
 今更ながらに気づいてみれば、街から明かりは消え失せ、文明のない夜の帳に特有の、漆黒が覆っていた。
 不自然なほどに、星明りさえもない。
 それらから少年を庇うように、ワルプルギスは刃を振る。
 切り裂き切り付け切り捨てて、しかし次から次へと新しい手が伸びてくる。
 
 あまりに、多い。

 空からゾンビ化したカラスさえも襲い掛かってきて、頭から尾羽までを両断する。 
 
 どこにこんなに潜んでいたのか。
 戦闘中に何故襲ってこなかったのか。

 疑問はそのまま、刃一本で対処するにはあまりに数多いゾンビに、それでも少年に傷をつけさせまいと剣を振るう。
 技術介在の余地のない相手というのは、こういう時不利に響く。
 一人でこれを切れというのであれば、その程度は楽勝よと普段なら答えるだろうが、この状況下では。

 魔術師であれば多少なりともゾンビ化に耐性があるものだろうか。
 多少の無茶ができるものであろうか。
 そんな考えにベッドしようとは、思えなかった。
 しかしこの数、完全に四方を囲まれてしまえば少年を無傷で守ることは到底不可能に思えた。

 どうするのが正解かと、心ばかりが焦る。
 
 そこへ。

「二人とも、しゃがんでください」

 反射的に身を屈めれば、頭上を飛ぶは七つの軌跡。

 屍者の群れに剣閃が走る。
 それらは空を裂き、壁を崩し、そして、この場の生者を取り巻く全てのゾンビの群れに、再度の死を与える一撃。
 風切り音は最早無く、屍者が散らす血風と、その体であったモノとが地面に降り積もる。

 周囲の亡者、その全てが、血しぶきだけ残して等しく破断された。
 その刃の名は――――


「――――――――『唯、刃だけが貴方を裂く』――――――――」


 ――――ザトゥリン・オルトリンデ。
 
 七つの閃光。七つの刃。
 
 北欧の地に生まれ出でた戦いの伝承。
 
 尖剣の乙女。
 剣の切っ先とは常に敵だけを指し示すもの。
 彼女は尖剣そのものであり、尖剣は彼女そのもの。
 敵を見定め、戦の始まりを告げる、敵を貫くもの。
 その切っ先を向けたものに容赦などしない。
 遍く全てを切り棄てる。

 戦乙女の刃は、ワルプルギスに一切の傷を負わすことなく。
 ただ、彼女がこの場で敵と見定めたものだけを断ち尽くし。
 ……そうして、辺りには再び、静寂が戻った。

 浮遊する剣はヒュルヒュルと音を立てながらオルトリンデの鎧にしまい込まれる。
 
 最早ワルプルギスを攻撃しよう、という気はないようだった。

「有難うございます、助かったわ」

「いえ……」
 
 そう言葉を濁した戦乙女は、モジモジしながらも続きを問いかける。

「あなた方は……やはりこの屍人の使役者ではないのですか……?」

「どういう勘違いか気になるけど答えはヤー(はい)です、セイバー。そもそも神の僕であるわたしがこのような事をするはずがない、理由もない。でしょう?」

 その言葉を聞きいてか、今更ながらに何かに気づいたように立ち尽くす。
 そして急速に真っ赤になっていく頬を抑えながら、戦乙女は小さくつぶやく。

「私ったらなんて恥ずかしい勘違いを……貴女のマスターが死霊術師だと思っててっきり……」

 その言葉の意味するところを正確に理解して、ワルプルギスは頭を押さえた。

 後ろから、セイバーは実はうっかりさんだったんじゃのう。まあ間違っても可笑しくないがの、という少年の声が聞こえる。
 
(…………そうね、そうだわ。嗚呼、普通第三者が見たら誰だって怪しいと思いますよね…………)

 肌を晒さずどころか顔にまで包帯を巻いた、明らかに怪しい風体の男。
 しかもその男はサーヴァントを連れていて、なにやら怪しい呪文まで唱えている。
 他人が見れば「私犯人ですTシャツ」を着て歩いているようにしか見えないだろう。
 疑わしいもの全てを罰するのはワルプルギスのやり方に反する。
 しかしながら、だ。
 あんまり露骨すぎれば確かに声の一つもかけたくなるだろう。
 況やそれが戦う気満々の相手となれば……。
 まさに少年の言う通り、間違ってもおかしくない。

「あー……ごめんなさい、それに関しては謝罪を。ブラザー、ちょっと」

「なんだシスター」

 どうやら戦闘は終わったとみなしていたらしく、暢気にも煙草に火をつけているブラザーが二人の傍に近づいてくる。

「その…………やはりその恰好は目立ちすぎだし、怪しすぎるわ。もう少しなんとかできない?」

「今更だ、シスター。最初に言ったと思うが、俺が今後再び僧衣を纏う気なぞ」

「いえそういうことではなく」

「服と言われても他に――――――――待て」

 一瞬緩んだ空気が、再び緊張する。
 ブラザーの言葉を遮ったのは、魔力。
 それもまともなものではない。その場に急に溢れたソレは、忌々しいほどの呪いを乗せた、邪悪なもの。
 それと同時に、響く。
 
『チミたちかね? 散々コマ切れにしてくれたのは』

 聞こえてくる声。場所は通路側、唯一の出口。
 そこに転がっていたはずの、先ほど切り刻んだはずのゾンビの一体が立ち上がり、この場に居る者たちを見つめていた。

『困るんだよナァ。これでもワタクシの可愛い手足なんだ。あまり減らされてしまっては後々の祭りに支障が出るんだ。死という幸福を祝う祭りの、サ』

 ゾンビはドロリ、と黒い水に溶けた。
 そして水から現れたのは、漆黒の燕尾服を纏った、老人。
 その気配は…………間違いなくサーヴァントのもの。

「やはり害悪だネ他のサーヴァントなんて。こんなにポンポン倒されてしまうとそう考えざるをえない」

 悲しげな口調で、老人はそう宣った。
 顕示欲と悪徳が透けている。
 そんなものが、声音には含まれている。

 ――――腐った魂が良く喋るものだと、ワルプルギスは思った。

 ――――喋る内容などどうでもいいと、オルトリンデは考えた。

 このサーヴァントは腐っている。
 体でも精神でもなく、あり方。魂の根っこのほうから、生者と相容れぬ腐臭がする。
 邪悪。
 間違いないという確信。
 この街を襲ったゾンビパニックの起点はコイツだ。

「お主がこの惨状の主か。いや答えはいらん。お前からは人でなしの匂いがするからのう」

 少年が、怒気の含まれた声で投げかける。
 それに呼応するように、二騎は立ち上がったモノを睨みつける。

「美しいお嬢さんたちにそんなに熱く見つめられては照れてしまうなァ。とはいえそれが目立つ障害とあらばデレデレしてるわけにはいかないんだがサ」

 その一言。腕の一振り。
 それだけの動作で、先ほど戦乙女が切り捨てたはずの者たちが立ち上がる。
 亡者の群れ。
 ゾンビ。
 完全な浄化をしなかったとはいえ、無効化したはずのそれらは、何事もなかったかのように再び動き出す。
 
「ここまでのものだと本物のブードゥーの祭司か。シスター、灰に返さねばアレは止まらん」

 いっそあきれたといわんばかりにブラザーは呟く。

 ゾンビのダメージは修復されていない。
 首を落とされたものは首のないまま。
 上半身を落とされたものは下肢だけのまま。
 下半身を失ったものは、内臓を手足の代わりに。
 
 それでも、死を知らぬ者たちは、その目に宿る捕食本能のままにうめき声をあげ、蘇り続ける。

「この……! あなたは何度死者を辱めれば気が済むのですか!!」

 シスターが怒声を張り上げる。
 その目は殺意を滲ませ、目の前にいる冒涜者を何としても滅ぼすという決意があった。

「シスター、此処は共闘致しましょう? 私、この方にはちょっと物申したいことがありますので」

 静かながら、優しさの一かけらも感じさせない極寒の囁き。
 戦乙女にとっても、この存在は目に余る。
 死者は死者の行くべき場所がある。その運行を一部分とはいえ司る身としては、このサーヴァントを現世に一秒とて存在させるわけにはいかない。

「願ったりですセイバー。アレはこの世にあってはならない我らが敵。この一戦、わたしの背中を預けます」

「ええ、ええ。分かりますシスターさん。私もこれ以上、アレに地上で呼吸させる気はありません。速やかに殲滅します」

 七つ剣先をオルトリンデは纏う。

 使い慣れた剣をワルプルギスは構える。

 同時に、駆ける。敵へ。一直線で。
 死さえ温き煉獄へ、そのサーヴァントを叩き込むために。

 ――――そうして、戦いは次のステージへと進む。

 ――――聖杯戦争の夜明けは、まだ遠い。





to be continued...?


 

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