ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。


──────語り部はかく語りき



その世界を一言で表すのならば、"泥濘"の二文字以外にないのだろう。





ああ、失敬。いきなりこんな事を言われては戸惑ってしまうか。
これはな、いま我(わたし)がいるこの世界について評した言葉だ。

我は様々な世界を廻ってきた過去がある。だが、これほどまで特異な世界は数えるほどしか経験がない。
それ故に、今の今までどう纏めるか迷っていたが、今さっき決まった次第だ。この世界は"泥濘"だ。
様々な色が混ざり合い、もはや直視できぬ色となりながらも蠢き足掻く……泥濘と呼ぶが相応しかろう?


え? そもそも貴様は誰か、だって?


さて……どう名乗ろうか。あいにく名乗る名前は持ち合わせていないものでな。
何しろ様々な名で呼ばれすぎた。その全ては偽りであり、その全てを真実として来たがゆえに、"こう名乗れ"と安易に定められないのだよ。
名とは在り方を、本質を、そして魂の形を定めるものだ。故に名を得るということは、世界に存在を許されることを言う。
貴様らが今こうしてこの場に存在できるのも、名があり、本質があり、そして存在が確立されているからなのだ。

……話が逸れたな。
名前はそうだな。簡素に"神子"とでも呼ぶがいい。どうしても決まった名で呼びたいと言うのなら、な。
我という存在に一番近いもの。それは神に他ならない。だから神子だ。安直だが、分かりやすくて良かろう?
先ほど名は本質を表すと言ったが、我にとって本質はどうでもいいのだ。何故ならもう、確立し終わっているのだからな。

で、だ。ここで会ったのも何かの縁だろう。
貴様には1つ、我の遣いに付き合ってもらいたい。
何、そう難しい話じゃない。先ほど話していた泥濘の世界にも関係がある話だ。
ふはっ、そう呆けるな。確かにこの神が如き美しさの少女と同伴するなど、畏まるのも当然と言えような。

冗談はさておき、遣いの内容を伝える。
ここに招待状がある。内容は言えぬ。というか我自身も詳細は知らん。まだ知る段階ではないからな。
これを、先ほど言った泥濘の世界──────即ち、我が今いるこの世界の人間すべてに手渡し、招待を行き届けねばならないのだ。
……さて、"世界全て"と聞いて貴様は今どのような想像をした? 地球一周旅行か? 違うな。我の告げる世界とは、そういう物理的な意味での世界ではないのだよ。

我らが巡るは、遍く可能性の世界。お前たちが俗に言う、平行世界なども含めた意味での"世界全て"だ。
これより貴様には、我と共にあらゆる可能性世界を旅してもらう。先ほど泥濘と我が呼んだ、この混沌とした世界の可能性、その1つ1つをだ。
何故そうするかと言われると、それこそが"泥濘"たる所以と言わざるを得ない。先ほど言ったであろう? あらゆる色が混ざり合い直視できぬほどだ、と。
この世界は可能性に満ちている。聖杯戦争、という願いが叶う手段が身近にある故であろうな。様々な可能性が分岐し、絡み合い、1つの彩模様となっているのだよ。
それを我は今から1つ1つ丁寧に解いて咀嚼していく。聖杯戦争とよばれし儀式を中心に、1人1人に招待を行っていくのだ。

そもそも聖杯戦争とは何か、なぜ聖杯が可能性に繋がるのか。そういう顔をしているな。
我自身も分からん。分からんが断言はできる。この世界は聖杯という存在を中心に回っていると、な。
お前は一個人だから理解は出来ぬだろうが、我はあらゆる可能性を見てきたがゆえに分かる。それらの可能性の中心にはいつも聖杯があった。
聖杯を求めた魔術師たちがいた。聖杯に願った英霊たちがいた。聖杯を宿した未来があった。聖杯によって生き永らえた破片があった──────。
どれもこれも、聖杯と言う超常存在無くしては語れない可能性たち。故に我はその聖杯に関わる者たち全てに、この招待状を渡す必要があるのだよ。

理解できたか? 理解できぬとも連れていく。なぜならこれは既に決定事項だ。
貴様に反論の余地はなく、断る自由もない。なぜなら貴様は既に我と共に世界を廻ると決定したのだから。
そうら、周囲の風景が薄らいできたろう? 次に景色が色づくころにはもう世界が移動し終わった頃合いだ。


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さぁ、眼を開けろ。ここが最初の目的地だ。
時代は2010年代後半。場所はヨーロッパ北西部、国名はオランダ。
ここでは1つの聖杯戦争が行われていた。我が様々な世界を見て回った結果、この世界が泥濘と化した最初の起点はここにあると見る。
さぁ共に往こう。この聖杯戦争の参加者たちに──────否、この世界に生きとし生ける全ての人間たちに、招待状を届けるために。


新世界へと導く、その為に。



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