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nevadakagemiya 2022年12月30日(金) 20:04:26履歴
「夕刻の為なら死も厭わない。組織に属する者なら当然の事でしょう?」
夕刻に伝わる魔術特性は「流動」。地を流るる河 を治める治水であり、これを探査に利用したもの。
元々は龍脈の状態を調べるための魔術だったが、知朱はこれを「龍脈の周囲にあるものを感知する魔術」へと作り変えた。
龍脈を魔術回路と繋げることで疑似神経化し、龍脈が通る一帯の情報を感覚的に収集する。
中国拳法の秘技・圏境と同じく自然と己を合一化する術であり、自然に合わない異常を感知するため光学迷彩の類や気配遮断も貫通する。
また龍脈上にいる相手と念話を行う、龍脈を使った糸電話のようなことも可能。
函館に張り巡らされた蜘蛛の巣 にいる限り、敵は勿論、味方をもその一挙一動を彼に隠すことはできない。
……と言うのが表向きのこの魔術の説明だが、実はそこまで便利な物ではない。
味方の裏切りや敵の行動を牽制するためのハッタリであり、実際には欠点が幾つかある。
1つは龍脈の近くにいなければ使用できないという点。
もう1つは、感知範囲の調整が難しく、範囲拡大に比例して術者にかかる負担が非常に大きくなるという点。
術者から遠くなるほど感知の精度は低くなってしまい、精度を高めれば今度は拾わなくてもいい情報も拾ってしまい脳に負担がかかってしまう。
また、本来は全ての龍脈が集束する場所で使うのが最も効率がいいのだが、肝心のその場所 が不明なため手間が増えている。
元々は龍脈の状態を調べるための魔術だったが、知朱はこれを「龍脈の周囲にあるものを感知する魔術」へと作り変えた。
龍脈を魔術回路と繋げることで疑似神経化し、龍脈が通る一帯の情報を感覚的に収集する。
中国拳法の秘技・圏境と同じく自然と己を合一化する術であり、自然に合わない異常を感知するため光学迷彩の類や気配遮断も貫通する。
また龍脈上にいる相手と念話を行う、龍脈を使った糸電話のようなことも可能。
函館に張り巡らされた
……と言うのが表向きのこの魔術の説明だが、実はそこまで便利な物ではない。
味方の裏切りや敵の行動を牽制するためのハッタリであり、実際には欠点が幾つかある。
1つは龍脈の近くにいなければ使用できないという点。
もう1つは、感知範囲の調整が難しく、範囲拡大に比例して術者にかかる負担が非常に大きくなるという点。
術者から遠くなるほど感知の精度は低くなってしまい、精度を高めれば今度は拾わなくてもいい情報も拾ってしまい脳に負担がかかってしまう。
また、本来は全ての龍脈が集束する場所で使うのが最も効率がいいのだが、肝心の
同じく夕刻に伝わる魔術特性を活かした魔術であり、こちらは人体に応用したもの。
末端神経から脳への情報伝達や頭の回転を「河の流れ」に見立て、これを加速することで情報処理能力を高速化させる。
魔術や戦術の行使においては勿論、戦闘においても敵の行動予測による回避率と命中率の向上させるなど汎用性に富む。
また、神経の伝達速度上昇の副産物として瞬発力や反射神経の強化といった効果も発揮する。
末端神経から脳への情報伝達や頭の回転を「河の流れ」に見立て、これを加速することで情報処理能力を高速化させる。
魔術や戦術の行使においては勿論、戦闘においても敵の行動予測による回避率と命中率の向上させるなど汎用性に富む。
また、神経の伝達速度上昇の副産物として瞬発力や反射神経の強化といった効果も発揮する。
知朱が極秘に配合・生成した特殊な霊薬。
インスリン注射器で打つことで身体能力を一時的に大幅強化することができる。
原理は“紅椿”と同様だが、こちらは使用者の人体強度や薬効耐性などを度外視した、使用者を暴走させる粗悪品。
限界を超えた能力を無理やり発揮させられ、効果が切れる頃には強烈な疲労感と身体機能低下などの症状が現れ、最悪は死に至る。
こちらも夕刻内では違法物であるため、知朱個人に従う私兵にのみ渡している。
インスリン注射器で打つことで身体能力を一時的に大幅強化することができる。
原理は“紅椿”と同様だが、こちらは使用者の人体強度や薬効耐性などを度外視した、使用者を暴走させる粗悪品。
限界を超えた能力を無理やり発揮させられ、効果が切れる頃には強烈な疲労感と身体機能低下などの症状が現れ、最悪は死に至る。
こちらも夕刻内では違法物であるため、知朱個人に従う私兵にのみ渡している。
常に柔和な笑みを浮かべる、物腰の低い温厚そうな糸目の男。
しかし鼻や目元に深々と刻まれた傷跡と飄々とした振る舞いが妖しげな雰囲気を醸し出している。
アッシュグレーの髪は伸ばしており、前髪は右目が隠れ、後ろ髪は高い位置で結んだ状態でなお背中の半ばまで届くほどに長い。
脚が長く、体型は一見すると細目だがしっかりと筋肉が付いている。頑丈ながらもしなやかな、引き締まった体付き。
基本的には黒のスーツ姿で、仕事で変装する必要があるか夕刻での大事な行事の時でもなければそれ以外の格好をすることは無い。
スーツは防弾・防刃加工が施されており、これを普段着にすることでいつ何時でも荒事にも対応できるように心がけている。
冷え込む季節には黒色のトレンチコートを着用するが、こちらにも同様の仕込みをされている。
しかし鼻や目元に深々と刻まれた傷跡と飄々とした振る舞いが妖しげな雰囲気を醸し出している。
アッシュグレーの髪は伸ばしており、前髪は右目が隠れ、後ろ髪は高い位置で結んだ状態でなお背中の半ばまで届くほどに長い。
脚が長く、体型は一見すると細目だがしっかりと筋肉が付いている。頑丈ながらもしなやかな、引き締まった体付き。
基本的には黒のスーツ姿で、仕事で変装する必要があるか夕刻での大事な行事の時でもなければそれ以外の格好をすることは無い。
スーツは防弾・防刃加工が施されており、これを普段着にすることでいつ何時でも荒事にも対応できるように心がけている。
冷え込む季節には黒色のトレンチコートを着用するが、こちらにも同様の仕込みをされている。
イメージカラー:白
特技:権謀術数、尾行、手品
好きなもの:夕刻
苦手なもの:宗教家
天敵:夕刻暁子
願い:全ては夕刻のために
【一人称】私 【二人称】貴方/貴女、君 【三人称】彼/彼女、あの人
加我地知朱の人生は、酷く呪われたものであった。
両親を知らず、出身地を知らず、自分の名前すらも知らず、物心つく頃には函館のどこかにある薄汚れた山小屋で醜い老婆と2人で暮らしていた。
自分の母を名乗るその老婆は、事あるごとに「お前は夕刻という組織の三代目当主の血を引く正統なる後継者であり、いずれ四代目当主となる」と言ってきた。
まだ幼く、人を疑うということを知らない少年でも、それが嘘であることは分かった。
……そして、その老婆が自分の吐いたその嘘を真実だと信じ込み、そしてそれを真実にするためにはあらゆる手段をも辞さない程に狂い壊れていることも。
そうして少年は、老婆に“教育”される日々を送った。
知識を学んだ。幾つもの言語を学んだ。戦う術を学んだ。毒の作り方を学んだ。凶器の使い方を学んだ。人の殺し方を学んだ。人の騙し方を学んだ。人の脅し方を学んだ。
老婆の思い描く、人の上に立つ存在として必要な全てを叩き込まれた。
家庭の暖かさを、親の愛を、友人との語らいを、娯楽を、生来の夢を、普通の生活を、普遍的な幸福というものを一切知ることなく、少年は老婆の妄執の器として育てられた。
自分は老婆の願いを叶えるためにその生涯を棒に振り、使い潰され、自由というものを得ることなく死ぬのだろうという予感を抱きながら、少年は生き続けてきた。
だが、そんな日々は突然に終わりを迎えた。
生まれてから17年が経ち、少年が青年になった頃。
苛烈さを増した“教育”に疲れて倒れていると、突如山小屋に厳つい男たちが押し入り、慌てて逃げようとする老婆を捕えた。
何故だとか、わしが何をしただとか、この恥知らずどもだとか、老婆は喚いていたのだろうが、青年の耳にはよく聞こえなかった。
助かったとも、ようやくかという安堵も無く。目覚めればまた“教育”があるのだろうなと霞む脳裏で考えながら、青年はいつものように意識を手放した。
しかし、目覚めるとそこはいつもとは違う病室で、ベッドの横には見知らぬ隻腕の少女が佇んでいた。
その少女、夕刻暁子は、青年に経緯を教えた。
自分たちは、あの老婆が何度も口にしていた「夕刻」なる組織であること。
先日、組織の改革が行われることとなり、事業や人員を見直していたところ、老婆の存在と今までの所業が発覚したこと。
その老婆の下に身元不明の青年が監禁されていて、“教育”と称して拷問や虐待行為を受けていたため、急遽老婆を捕縛し青年を救出したこと。
……そして自分が、組織の改革に踏み切り、老婆の捕縛を命じた、夕刻の四代目当主であるということを。
青年は唖然とした。
老婆の妄執が始まりからして頓挫していたこと。老婆によって消費させられた自分の時間が、全て無意味で無価値であったことに。
そんな絶望に打ちひしがれる青年の心境を知ってか知らずか、暁子は青年に手を差し伸べる。
夕刻が関わっていた以上、お前の人生が台無しにされた責任は自分たちにもあると。
だから、青年が幸せな人生をやり直せるように、自分たちが青年のこれからを援助すると。
それを聞いて、青年は空虚になった思っていた自分の心に、ある強い感情が灯ったのを感じた。
「 」と。
青年はその感情を、見出した人生の目標を胸に秘め、暁子の手を取り、新たなる人生を踏み出した。
斯くしてその日から、青年は「加我地知朱」の名を得て、夕刻で活動するようになった。
改革によって暗く後ろめたい事情と引き換えに力の衰えた夕刻を盛り上げ、函館の平穏を保つために、知朱はあらゆること を率先してやった。
そして知朱は、今や夕刻の若頭という地位に就いた。
しかしまだ、その生涯を懸けて成すと誓った目的を果たせてはいない。
胸に秘めた感情は、未だ消えず燃えたまま。
夕刻の蛇と呼ばれるようになった青年は、願いを成就させるその日を密かに待ち続けている。
両親を知らず、出身地を知らず、自分の名前すらも知らず、物心つく頃には函館のどこかにある薄汚れた山小屋で醜い老婆と2人で暮らしていた。
自分の母を名乗るその老婆は、事あるごとに「お前は夕刻という組織の三代目当主の血を引く正統なる後継者であり、いずれ四代目当主となる」と言ってきた。
まだ幼く、人を疑うということを知らない少年でも、それが嘘であることは分かった。
……そして、その老婆が自分の吐いたその嘘を真実だと信じ込み、そしてそれを真実にするためにはあらゆる手段をも辞さない程に狂い壊れていることも。
そうして少年は、老婆に“教育”される日々を送った。
知識を学んだ。幾つもの言語を学んだ。戦う術を学んだ。毒の作り方を学んだ。凶器の使い方を学んだ。人の殺し方を学んだ。人の騙し方を学んだ。人の脅し方を学んだ。
老婆の思い描く、人の上に立つ存在として必要な全てを叩き込まれた。
家庭の暖かさを、親の愛を、友人との語らいを、娯楽を、生来の夢を、普通の生活を、普遍的な幸福というものを一切知ることなく、少年は老婆の妄執の器として育てられた。
自分は老婆の願いを叶えるためにその生涯を棒に振り、使い潰され、自由というものを得ることなく死ぬのだろうという予感を抱きながら、少年は生き続けてきた。
だが、そんな日々は突然に終わりを迎えた。
生まれてから17年が経ち、少年が青年になった頃。
苛烈さを増した“教育”に疲れて倒れていると、突如山小屋に厳つい男たちが押し入り、慌てて逃げようとする老婆を捕えた。
何故だとか、わしが何をしただとか、この恥知らずどもだとか、老婆は喚いていたのだろうが、青年の耳にはよく聞こえなかった。
助かったとも、ようやくかという安堵も無く。目覚めればまた“教育”があるのだろうなと霞む脳裏で考えながら、青年はいつものように意識を手放した。
しかし、目覚めるとそこはいつもとは違う病室で、ベッドの横には見知らぬ隻腕の少女が佇んでいた。
その少女、夕刻暁子は、青年に経緯を教えた。
自分たちは、あの老婆が何度も口にしていた「夕刻」なる組織であること。
先日、組織の改革が行われることとなり、事業や人員を見直していたところ、老婆の存在と今までの所業が発覚したこと。
その老婆の下に身元不明の青年が監禁されていて、“教育”と称して拷問や虐待行為を受けていたため、急遽老婆を捕縛し青年を救出したこと。
……そして自分が、組織の改革に踏み切り、老婆の捕縛を命じた、夕刻の四代目当主であるということを。
青年は唖然とした。
老婆の妄執が始まりからして頓挫していたこと。老婆によって消費させられた自分の時間が、全て無意味で無価値であったことに。
そんな絶望に打ちひしがれる青年の心境を知ってか知らずか、暁子は青年に手を差し伸べる。
夕刻が関わっていた以上、お前の人生が台無しにされた責任は自分たちにもあると。
だから、青年が幸せな人生をやり直せるように、自分たちが青年のこれからを援助すると。
それを聞いて、青年は空虚になった思っていた自分の心に、ある強い感情が灯ったのを感じた。
「 」と。
青年はその感情を、見出した人生の目標を胸に秘め、暁子の手を取り、新たなる人生を踏み出した。
斯くしてその日から、青年は「加我地知朱」の名を得て、夕刻で活動するようになった。
改革によって暗く後ろめたい事情と引き換えに力の衰えた夕刻を盛り上げ、函館の平穏を保つために、知朱は
そして知朱は、今や夕刻の若頭という地位に就いた。
しかしまだ、その生涯を懸けて成すと誓った目的を果たせてはいない。
胸に秘めた感情は、未だ消えず燃えたまま。
夕刻の蛇と呼ばれるようになった青年は、願いを成就させるその日を密かに待ち続けている。
組長である夕刻暁子とは正反対の、物腰の柔らかい青年。
部下の失敗を笑って許し、時には身を挺してカバーするなど面倒見が良く、規律を重んじる極道社会的空気の強い組織において良心的存在に見える 。
誰に対しても丁寧な言葉遣いを崩さないが、決して弱腰ではなく、言うべきと思ったことは例え自分より地位や実力で勝る相手にもはっきりと申す性格。
優しげに振る舞いながらも、時に過ちを犯した部下には慈悲なく罰を下すなど、組織のNo.2として締めるべきところはキッチリと締めている。
しかしやはり本質的には温厚で、部下が裏切らない・失敗しないようできる限りの手を尽くす。
軽薄そうにも感じられる穏やかな態度は無駄に気負わせないためであり、人の隠れた努力や苦悩を見逃さず、頑張った相手には飲みに誘って奢ったりと非常に親身。
暁子が人の上に立ち、その芯の通った在り様で人を魅了し牽引するならば、知朱は人の隣や後ろに立ち、肩を組み背を押して彼女に付いて行かせる存在と言える。
夕刻という組織を滞りなく動かすための潤滑油、それが知朱のポジションである。
……というのが、彼をあまり知らない・彼との付き合いが浅い人間から見た加我地知朱のイメージである。
全てが間違いという訳ではない。しかし知朱が本格的に働く姿を知っている者は、彼がこんなにも善意溢れる人間とは少しも思わないだろう。
知朱は懐に入るのが上手く、人の頑張りや悩みにすぐ気づくが、逆に人に努力するところや苦しむ姿を見せることは全く無い。
これは隠れた努力家などという優しいものではなく、人の弱みを探り握りながらも自分の弱みは決して掴ませないという、非常に厭らしいものである。
知朱の本性は極めて狡猾、そして冷酷なる狩人である。
部下を手厚く助け育てるのは、夕刻の戦力を増やすため。部下を容赦なく処罰するのは、その人物が夕刻に恩恵よりも多く損害を与えるため。
加我地知朱は夕刻という組織を滞りなく動かすための潤滑油。組織の存続と強化を第一とし、その役割を果たすためならば如何なる苦労も厭わず屈辱も拒まない。
しかし前述した経歴故に、部下や幹部からはそういった振る舞いもまた嘘ではないかと怪しまれている。
幾ら組織のためとはいえ、暁子に表向きは忠誠を誓いながらも野心を抱く者、函館で法の目を掻い潜り活動する裏の人間らを私兵として密かに率いるその所業は、今の夕刻の組織を否定する行為に違いない。
「加我地知朱は、夕刻暁子を裏切って当主の座と組織そのものを自らの物としようとしている」のだとして、畏れられてもいる。
……だが、その本心を知る者はいない。知朱は誰にも、自らの本性を曝け出すことはしない。
果たして、知朱の目的とは何なのか。
その思惑は、はてさて。
部下の失敗を笑って許し、時には身を挺してカバーするなど面倒見が良く、規律を重んじる極道社会的空気の強い組織において良心的存在
誰に対しても丁寧な言葉遣いを崩さないが、決して弱腰ではなく、言うべきと思ったことは例え自分より地位や実力で勝る相手にもはっきりと申す性格。
優しげに振る舞いながらも、時に過ちを犯した部下には慈悲なく罰を下すなど、組織のNo.2として締めるべきところはキッチリと締めている。
しかしやはり本質的には温厚で、部下が裏切らない・失敗しないようできる限りの手を尽くす。
軽薄そうにも感じられる穏やかな態度は無駄に気負わせないためであり、人の隠れた努力や苦悩を見逃さず、頑張った相手には飲みに誘って奢ったりと非常に親身。
暁子が人の上に立ち、その芯の通った在り様で人を魅了し牽引するならば、知朱は人の隣や後ろに立ち、肩を組み背を押して彼女に付いて行かせる存在と言える。
夕刻という組織を滞りなく動かすための潤滑油、それが知朱のポジションである。
……というのが、彼をあまり知らない・彼との付き合いが浅い人間から見た加我地知朱のイメージである。
全てが間違いという訳ではない。しかし知朱が本格的に働く姿を知っている者は、彼がこんなにも善意溢れる人間とは少しも思わないだろう。
知朱は懐に入るのが上手く、人の頑張りや悩みにすぐ気づくが、逆に人に努力するところや苦しむ姿を見せることは全く無い。
これは隠れた努力家などという優しいものではなく、人の弱みを探り握りながらも自分の弱みは決して掴ませないという、非常に厭らしいものである。
知朱の本性は極めて狡猾、そして冷酷なる狩人である。
部下を手厚く助け育てるのは、夕刻の戦力を増やすため。部下を容赦なく処罰するのは、その人物が夕刻に恩恵よりも多く損害を与えるため。
加我地知朱は夕刻という組織を滞りなく動かすための潤滑油。組織の存続と強化を第一とし、その役割を果たすためならば如何なる苦労も厭わず屈辱も拒まない。
しかし前述した経歴故に、部下や幹部からはそういった振る舞いもまた嘘ではないかと怪しまれている。
幾ら組織のためとはいえ、暁子に表向きは忠誠を誓いながらも野心を抱く者、函館で法の目を掻い潜り活動する裏の人間らを私兵として密かに率いるその所業は、今の夕刻の組織を否定する行為に違いない。
「加我地知朱は、夕刻暁子を裏切って当主の座と組織そのものを自らの物としようとしている」のだとして、畏れられてもいる。
……だが、その本心を知る者はいない。知朱は誰にも、自らの本性を曝け出すことはしない。
果たして、知朱の目的とは何なのか。
その思惑は、はてさて。
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