ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

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「キ──────ギィ……ァ……!」
ズ──ズズ ジュッ


「ふぅー、なんとか倒せたね」
「反応消滅……なのか? 今のは」
「普通のエネミーと違う消え方だったようだけど……」
『皆おつかれ。急な戦闘だったけど、倒せてよかったよ』
「おいホームズ。なんで俺からあの鵺とかいう怪物を遠ざけた?」
「おや、気遣い無用だったかな? 疲れている君にインスピレーションを与えるのは、少し目の毒かなと思ってね』
「ああそうかい、ありがとうよ。休んだおかげで、頭も冷えたぜ」

すました顔で告げるホームズに、オブライエンはぶっきらぼうに礼を告げた。
周囲は鵺を討伐し疲労困憊だったが、毅然として立つサーヴァントに満ちている。
だがオブライエンはというと、1人不貞腐れたかのように地面に寝ころんでいた。

「どうしたん? バトルで疲れた?」
「馬鹿。俺だけ戦ってねぇだろ。疲れでもねぇよ。むしろ頭が冴え渡ってるわ」
「じゃあなんでそんな不機嫌顔なのさ?」
「頭が冷えてようやくわかったよ。
 今の俺は、間違いなくスランプだって気づかされたわ」
「スランプ? なんで?」
「色んな怪獣とコングをぶつけ合わせ続けたせいかな。
 コングがどんな奴か、分からなくなっちまってな!」
『あー、なんかわかるわー』

ぼやくように、オブライエンは寝ころびながらそう告げた。
その言葉にダヴィンチがうんうんと頷く。どうやら芸術家として通じるものがあったらしい。
だが一方のオブライエンは、先ほどのようなハイテンションではなく、どこか諦観しているような表情であった。

『どうしたんだい、らしくないじゃないか』
「いやな。世の中にはいろんな怪獣がいるな、って思ってな。
 そうなると、コングをどうキャラ立てしようかって気分になって、コングが分からなくなっちまった。
 ……情けねぇよな。コングを世に出したのは、他でもない俺だっていうのによ」
「………。」

その場にいる全員が、その言葉に何と返せばいいか分からなかった。
重苦しい沈黙が続く。そんな中、マスターがパンと掌を叩いて微笑んでいた。
まさしく名案を思い付いたとばかりの笑顔で、沈黙を破ってオブライエンに提案を投げかける。

「分からないっていうなら、見てみる?」
「見る、だと? 何を」
「何って……、キングコング」
「ああ? 俺のをか? 今更見たところで再発見なんざ……」
「違う違う! 昔のキングコングじゃないよ!」


「最新のキングコングを、だよ!
 分かんないなら、見直してみるのが一番、でしょ?」





「お、始まった」
「コングなんかでかくね?」
「なんでこんなに島の形が髑髏してるの?」
「映画にこういうステレオタイプな軍人だいたいいるよね」
「こんな島でも人が住んでいるのか……。逞しいな」
「擬態じゃなくて即死トラップでは? これ」

カルデアのブリーフィングルーム。42型4K画質の大画面に映像が映し出される。
タイトルは「キングコング 髑髏島の巨神」2017年に封切りされた、最新の特撮映画だ。
映し出される多彩なキャラクターと美麗な映像、そして多様な大怪獣を前に、せっかくだからと集まったサーヴァントたちが和気々と感想を投げあう。

「………………。」

一方オブライエンはというと、瞬き1つせず真剣にその映像を見続けていた。
その姿はまるで、獲物をじっくりと見定める鷹のごとき視線だった。顎を撫でながら、一言も発さずに映像を隅から隅まで見定める。
そして、ある怪獣が姿を現したとき、ぴくりと眉を動かして問いを投げかけた。

「このトカゲはなんだ?」
「ああこれ? スカルクローラー。なんでも、一番最初のキングコングでちょっと映ってた怪獣が元ネタらしいよ。
なんか画面の端っこに映ってた、二本足のトカゲだとかなんとか」
「あぁ〜〜……あいつかぁ。へぇ、そんな細かいところまで、ねぇ……」

カルデアのマスターが、マシュの集めた資料を見ながら答える。
その回答に対し、にやぁ……と、静かにオブライエンは頬を緩め口端を釣り上げる。
上機嫌そうなその反応に、マスターはホッと胸を撫で下ろした。

それからというもの、しばらくオブライエンはご機嫌な様子で映画を見続けていた。
現実と見紛うCGには感嘆の声を上げ、人間が行うアクションには喝采で興奮を表現した。
中でもコングとスカルクローラーのぶつかり合いには、そんな興奮とは打って変わり、「ほう……」と息をのむ様子で静かに見ていた。
その様子はまるで、幼い子供が成長した姿に感嘆する父親のように見えた。あるいは、見知らぬおもちゃを前にした子供のようでもあった。

そして、映画も終わろうとスタッフロールが流れ始める。
喜んでもらえてよかった、とマスターが微笑んだ直後だった。


その事件は起こってしまった。


『王は、1人だけじゃない』
「……? あれ? このシルエットなんか見覚えが」
「3本首のドラゴン? これは、蝶? コング以外の怪獣?」
「あれ、これって……」

映画の終盤。やらかした、とマスターは顔を覆って後悔した。
怪獣映画に詳しくないがために、彼女はこのラストシーンを知らずにいたのだ。

最新のキングコングの映画は、俗に『モンスターバース』と呼称される映画シリーズの1作品として公開された映画である。
これはキングコングのリメイクというより、キングコングを含めた無数の怪獣たちが同じ世界に存在するという設定の下で製作された一連の作品であること意味する。
そして「キングコング 髑髏島の巨神」はというと、そのシリーズの2作目として次回作への伏線と言うべきシーンが最後に挟まるのだ。

つまり、コングとは別の怪獣の王(キング・オブ・モンスターズ)と、その宿敵や仲間たちの姿。
それらが資料映像や写真のような形式で映し出され、最後にはその王の咆哮で締めくくられる形でこの映画は幕を閉じる。


それはまさしく、オブライエンにとっては逆鱗ともいえる、日本の怪獣王のものであった。


「………………。」
「ご、ごめんオブライエン。そんなつもりじゃ、その、なかったんだ。
 ただね? 今でもキングコングは活躍してるよって、伝えかっただけで……。
 完全に、えっと、続編? のこと忘れてて……ごめん! その、な、何でもするからさ、許し──────」
 
沈黙が走る中で、マスターの泣きそうな声が響いた。
だが、当のオブライエンはというと、その表情は真剣であれど怒りのそれではなかった。
そしてマスターの言葉を受け止めると、1つの質問を投げかける。

「続編? こいつには、続きがあるのか?」
「え? う、うん。でもこの次は、その、ゴジラだけしか出ないって聞くし。
 その次はコングも出るけど、えっと……」
「見せろ」
「い、いいの? コング出ないし、出ても、その……」
「良い。ゴジラでもクジラでも何でもいい。見せてくれ」
「……う、うん」

心の底からの真摯な願いがそこにあった。
マスターの肩をしがみつくように掴み、続きを早く見せろと懇願する男がそこにはいた。
見るものが見ればそれは、次のおもちゃが欲しいと駄々をこねる子供のようにも映るかもしれない。
マスターはその強い要望に応え、次の「キング・オブ・モンスターズ」および「ゴジラvsコング」を再生した。

「この発明良いね。
 カルデアだと便利そう」
「地球は怪獣の? 何言ってんだこいつ?」
「こいつに聖杯渡したらひどいことになりそう」
「なんで首ちぎれて生えてくんの!?」
「すでに発射した、じゃないでしょ」
「ねぇ今カタカナ書いてなかった?」
「このおっさん何がしたいの……?」
「友よ、じゃないだろお前は何もんだよ」
「めちゃくちゃ迷惑そうな顔してるねゴジラ」
「……推定トカゲと蝶の恋愛関係???」
「この三つ首の右端かわいいね」
「手のひら返し早っ!」

最初は気まずさに沈黙していたほかのサーヴァントだったが、映画が進むにつれて段々と空気も緩み感想が飛び交うようになった。
そしてそのまま次作へと続き、気づけばブリーフィングルームは多数のサーヴァントたちでいっぱいになっていた。

「めちゃくちゃ無茶ぶりされるじゃんコング」
「口からビーム出せる奴に徒手空拳で戦えは無理だろ」
「なんか可哀そうになってきた」
「メカ……? ごじ……????」
「ロマンある兵器だな」
「めっちゃ笑顔じゃんこのパイロット」
「…指紋認証とかじゃないんだそれ」
「なんでビームで地表貫通するの?」
「あーこれでコング有利に……ゴジラめちゃくちゃキレてない?」
「やめろ! 希少な科学技術にそんな!あああああ!!」

反応は多種多様であったが、大体のサーヴァントは盛り上がっている様子だった。
もちろん中にはくだらないと去ったものや、そもそも来ていないものもいたが、残っているものは残らず、映像に映る怪獣同士の大バトルに興奮を隠せずにいる観客たちだった。
だが1人だけ、オブライエンだけはその映し出される大迫力のぶつかり合いを、冷静な眼差しで、しかし熱を秘めた視線で、ただ見続けていた。

「終わった…。すごい迫力だった」
「コングは結局あれ負けたの?」
「負けたが、力量は認められたという感じではないか?」
「地下に追いやられているようですが……」
「でも広々としてて、島より幸せそうだよね」
「1つ、良いか?」


「なんで、キングコングはゴジラに負けた?」


オブライエンの問いかけに、その場にいる全員に緊張が走った。
少しでも下手なことを言えば、逆鱗に触れるどころか怒髪が天を衝きかねない。そんな不発弾のごとき気配が部屋中に満ち溢れた。
彼の表情は見えないため詳細は不明だが、そんな気配を、その場にいる全員が感じ取っていた。

「ど、どうなんです? マスター?」
「うぇ!? 私!!? え、え〜〜〜〜っとぉ……。
 か、監督が言うにはぁ、コングは人間の都合で連れてこられた被害者的側面が強いから、こ、今回みたいなことになった、そうで。
 初代からして、勝手に連れてこられて、それで振り回されて最後死んじゃうじゃん!?
 ほら! そういう部分を、こう、なんかくみ取って再現したとか……そんな」
 
「…………怒った?」

恐る恐る、蚊の鳴くような小声でマスターはつぶやいた。
その場にいる全員が息をのむ。緊張の中で、オブライエンは静かに顔を上げる。

その、表情は

「これが、怒っている顔に見えるかよ?」

その表情は、隠そうとしても隠し切れないほどの、満面の笑みだった。

「よ、よかったぁ〜〜〜〜」
「なんだ。てっきりコングが負けて激怒しているかと思ったが、違うのか」
「俺はそんな器の小さいガキじゃねぇ。むしろ、初代コングを汲んでこう仕上げたっつーんなら百点満点中1億点だ。
 ……ああ、そうだ。コングは被害者で犠牲者だ。勝ってチャンピオンになるなんざガラじゃねぇ。負ける相手がゴジラなのは、気に食わねぇがな」
「………ゴジラと戦うこと自体は、良いの?」
「あ?」
「だって、生前、勝手にゴジラと戦わされたって……」
「…………ああ。マスター、俺の生前を調べたのか」

フッと、オブライエンは笑うような、悲しむような、複雑な表情をした。
だが少なくとも、それは怒りではない。真意の読めないマスターに対し、オブライエンは胸中を語りだす。
それは彼が晩年に抱いていた怒りと後悔、そして、最新技術で再現されたコングを見て覚えた、喜びと満足だった。

「俺が生前に怒っていたのは、ゴジラそのものじゃねぇ。勝手に企画を捻じ曲げられたことに対して、だな。
 ああ、当時はそりゃ腸が煮えくり返ったさ。ベックの馬鹿野郎! ツブラヤの糞野郎!! けつの毛までむしるレベルで賠償させてやる!ってな。
 これはゴジラに対しての怒りじゃねぇ。俺の渾身のアイディアを、相談もなしに捻じ曲げられたことへの、怒りだったんだ。
 ……それを俺は、単純化してゴジラに対しぶつけていた。恥ずかしい話だな」
「オブライエン…………」
「だが今はどうだ。勝手に捻じ曲げるだなんて話とは真逆だ。
 云十年も前の映画が最新技術で丁寧にリメイクされている。名前も決めていなかった怪獣を取り上げるほどに、細かく見ている奴らがいる。
 そして何より、コングに込めたメッセージを読み取ったうえで、晴れ舞台に再び立たせてくれている。
 こんなに嬉しい、満足できることがあるかよ!!」

そう、嬉しそうにオブライエンは語った。
するとどこからか、拍手が鳴り響いた。1つ、2つ、3つ……。いくつも拍手は重なり合い、やがては大喝采になった。
鳴り響かせているのは、「髑髏島の巨神」から「ゴジラvsコング」までぶっ続けで見た観客たちであった。

『すごい怪獣をありがとう!』
『キングコング、面白かったよ!』
「よ、よせよぉ!て、照れるじゃあねぇか!!」
「ふふっ、めっちゃニヤけてるじゃん」

うれしさを隠しきれず、喝采に応えるように仰々しい仕草をするオブライエン。
そしてその上がりきったのままに、彼は声高に次の目標を叫んだ。

「よぉし! 次はゴジラを知りたくなってきたぜ!」
「良いねぇ! 次何見る!? 色々あるけど、やっぱ最新のシンとか? それとも初代?
 マイナスなんとかはまだライブラリにないみたいだけど」
「全部だ! 全部見せろ!」
「へ?」

予想だにしないオブライエンの返答に、マスターは真顔になった。
ボルテージが上がりきってメーターが振り切れた彼は、あろうことか70年続いたゴジラシリーズのすべてを見たいと言い出したのだ!

「ゴジラ全作マラソンだ! ツブラヤの技術、全部見させてもらうぜ!
 やっぱ時系列順だよなぁ? 昭和と平成? ああなるほど2シリーズに分けてるのか、面白れぇ!
 全部飲みほした後に、俺が今度は"ゴジラvsコング"を撮ってやるよ! おら付き合えマスター!」
「え! ちょ! ほ、他の皆さん方もご一緒にどうですか!?」
「いや、遠慮しておく」
「あれだけでもうおなか一杯だわ〜」
「ほらボサっとしてんじゃねぇ! 急ぐぞマスター!」
「そんなぁ〜! 何十時間かかると思ってるのよ〜!!」

ブリーフィングルームでは、マスターの悲痛の叫びが、ゴジラの咆哮と共に響き渡っていた。





警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告
警告   之ヨリ先、霊長種ノ閲覧ヲ禁ズ   警告
警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告警告


──────その頃、カルデアの管制室では


「ホームズ。これ、どう思う?」
「どうもこうもないよ。"分からない"。ただそう言うしかできないね」
「へぇ、君がそんなことを言うなんて珍しいじゃないか」

管制室では、ダヴィンチとホームズがシミュレーター内に突如出現した謎のエネミー……仮称:鵺について議論していた。
映像には白い靄のような獣しか映っていない。それを基に様々なデータを照らし合わせ、そしてトリス・メギストスを利用した分析なども行う。
だが、様々な特異点を潜り抜けたカルデアの全能力を以てしても、この突如出現した"正体不明"を分析することはできなかった。

「心外だなダヴィンチ。
 私が本当にこの正体不明に対して、匙を投げたと思っているのかい?」
「でも、さっき言ったばかりじゃないか。分からないと言うしかない、と」
「トリス・メギストスはこう解を出した。"この正体不明を、分析するべきではない"と。
 そしてアレはこう告げていた。"問おう、俺はなんだ?"と。まるで自分について、分析したいかと言うように。
 さぁ、ここから導き出されるあの正体不明の持つ権能とは何だろうか。補足すると、分析されなかったアレは驚くほど簡単に討伐されたね」
「……まさか、分析するほど、力をつける、とでも?」
「と言うより、分析を力とする、とでもいうべきかな。
 アレはおそらく、分析されればされるほど、その分析を現実にする。私の、いや、文明の天敵とでも言える性質だ。
 ……と、私は考察したよ。最も、この分析すらもあの正体不明の手の内かもしれないがね」
 
分析の例としてホームズは、鵺と言う言葉について説明をした。
鵺とはもともとはトラツグミという鳥を意味する言葉だった。だが今は鵺という正体不明を指す言葉となっている。
なぜか? それは元々、鵺という正体不明を「鵺である」と分析し、以降『鵺』と言う言葉がそのままあの正体不明に取り込まれたからだと言うのだ。

「つまり、分析をすればするほどアレは"情報を取り込む"とでも言えばいいか。
 虎と言えば虎になり、蛇と言えば蛇になる。サーヴァントと分析すれば? アークエネミーと想像すれば? ビーストと断定すれば?
 それこそ想像したくない事態になるだろうね。今回退ける事が出来たのは、分析を後回しにし、ただ倒す事だけを優先したからだ。
 加えて、史実で鵺を実際に倒したサーヴァントがいたからだろうな。……最も、それも"倒した"という認識で無理やりすりつぶした、とでもいうべきか」
「だから無理やり通信で彼らに"倒した"と思わせろって言ったんだね。しかし、あれが何なのかを分析することもできないというのは苦しいね。
 正体もクラスも、何も知らないまま過ごせと? それは生殺しと言うんじゃないかな」

そう言ってダヴィンチは画面を切り替えた。
その画面には、通常カルデアに召喚されたサーヴァントが得るセイントグラフと言うものが表示されていた。
仮称:鵺とされた正体不明のセイントグラフは、余りにも異様なものだった。全てが白い靄に包まれているような不気味な光景が映し出されていた。
その表示はまるで、のぞき込み続ければ精神の全てを呑み込まれてしまうかのような悍ましさを孕んでいた。

中でもひと際目立つ異様さは、そのクラス部分だった。
本来のセイントグラフならば、クラスが表示されている部分は何らかのクラスを表すアイコンが表示される…筈である。
だが表示されているセイントグラフのクラス表示は"何もなかった"。文字通りの深黒。まるでその部分だけが世界から切り落とされたかのような漆黒だった。

「クラス:アンノウンとでも呼ぼうか?
 クラスすらないサーヴァントだなんて聞いたことがない。
 一体どういうことかと分析しようとしても、それすらダメと来たらどうすれば良いんだい?」
「なるほど。クラスがないサーヴァントは聞いたことがない、か。
 では"サーヴァントを模倣しているナニカ"だとしたら」
「…………ッ」 

ホームズの言葉に、ダヴィンチはうすら寒い感覚を背筋に感じた。
サーヴァントを模倣する、ナニカ。言葉で言い表すのは簡単だが、それをサーヴァントでない存在が行うということは不可能に近い。
仮にそれが真実ならば、あの仮称:鵺は、英霊の座の疑似構築から召喚・顕現・縁と楔の固定までを単体でやってのけた、と言うことを意味する。

「そんなことが、可能なのか?」
「私もこんな推論は立てたくない。だが、そうとしか考えられないんだよ。
 あれは単体で英霊と言う存在を模倣しているか。あるいは単純に英霊の座と言うものに登録されてはいるが、アレの特性でこのような事になっているか、だ。
 後者であると、私は信じたいがね」
「もし前者だとしたら、あれに死は存在しないということになるけれど?」
「そうだね。座の機能を模倣しているならば、情報が残る限りは消える事がない。
 焔を消したところで焔という概念そのものが消えないのと同じだ。にも拘らず、向こうからは一方的にこちらを攻撃できると来た。
 まるで、絵画の業火に焼かれるような気分だよ。偽りを現実とする詭弁の類だ」
「ずいぶんと上手い例えじゃないか。……待てよ? 偽りを、現実に?」
「繋がったようだね。そうだ。私の直感はこう告げていたよ。
 "ウィリス・オブライエンとアレを接触させるな"とね」
「…………ッ」

シミュレータのログによると、あの正体不明は、まるで絵の具を重ね塗りするかのように、どんどんと存在の濃度を跳ね上げて顕現したらしい。
そしてその濃度の上がる頻度が、ウィリス・オブライエンがシミュレーターで宝具を使用するタイミングとぴったり一致しているというのだ。

「あまり考えたくはないが、彼の宝具とあれは何らかの関係がある。
 オブライエンは近代の英霊にしては、その持ち得る能力が"強すぎる"。
 何故? を推理した時に出来る空白。その空白にぴたりと当てはまる形を、あの白き正体不明は持っていた。
 だから直感で判断した。あれとオブライエンを接触させてはいけない、とね」
「分析をしちゃいけない、と自分で言っておきながら随分と調べを進めるじゃないか」

ダヴィンチの言葉を聞き、ホームズはハッと目を見開いた。

「……失敬。その通りだな。
 証拠が揃えば繋げてしまう。名探偵の悪い癖だよ」
「これを機に禁煙ならぬ禁推理でもしたらどうだい? 相手が文明の天敵と言うならなおさらだ」
「遠慮しておく。そうなっては、私の存在意義がなくなってしまうからね。
 まぁ、言葉にする頻度は、以前より少なくするよう努力するよ」
「いつも言わないくせに」
「…………。」

ダヴィンチの皮肉を交わしながら、ホームズは管制室を後にした。
その脳内では、"口にしてはならない推理"が渦を巻く。

「(オブライエンの力と、正体不明の仮称:鵺。
 これらは必ずと言って良い。繋がっている。
 ……問題は、もう1つ、か)」

ホームズの脳裏に浮かぶのは、カルデアが初めてオブライエンという英霊と出会った特異点の記憶だった。
彼は特異点の最後に、ある英霊とぶつかり合って結果敗れ去った。その時ぶつかり合った英霊と彼の力は、同種のものにホームズの目には映っていた。

「(分析されるごとに力とする……。高位次元における住人の代行者……)」

「早急に対策をしなくてはならないな」

そう呟くと、ホームズは早足でどこかへと歩いて行った。
──────その光景を、隠れるように見やる影が、1つだけある事に、気づかないまま。


「一手、気づくのが遅かったな」

「もう目の前だぞ? 我らの羽化は」


to be continued... →

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