kagemiya@ふたば

不思議の国のアリス、本編第3章にて行われる「コーカス・レース」。
このレースは、競技を競技たらしめる厳格なルール、勝敗、優劣といった要素を取り外した反競技とも言えるレースである。
「コーカス」とは政治集会を意味しており、遅々として進まぬ会議の有様を皮肉ったと考えられている。

大量の例外と複雑怪奇な策略と陰謀により、競技要素が不明瞭な聖杯戦争をコーカスレースに見立て、
聖杯戦争の枠組みそのものに『議論の場』としての属性を与えることで、ごく小規模な運命操作を行う。
参加者には一般の聖杯戦争では貴重な『他の参加者及びサーヴァントとの話合いの機会』が与えられ、
「何故聖杯戦争に参加したのか？」「何を求めるのか？」「それは他者を犠牲にするに足る願いなのか？」など、
結論のない深奥かつ哲学的な議題について、その場にいる全員で、交戦前に強制的に論じ合う事になる。
最早呪いじみており、発声障害者や言語を解さない狂人や精神汚染者もが堂々巡りの舌戦を繰り広げ始め、
戦闘を諦めて退席するか、当事者全員が納得する一つの答えが出るまで、討論から解放されることはない。
最悪の場合、結論の糸口すら掴めないまま夜が白み始める。

一見すると、いたずらに開催期間を引き伸ばすしか能がない非生産的な宝具だが、
ルーラーというクラスで現界するドードーの役割上では、極めて重要な意味を持つ。
この宝具の真価は、事実上の交戦停止期間を令呪の消費なしで全参加者に遵守させる面にあり、
聖杯戦争中に発生したアクシデントの解消措置を実施する間、闇討ちや、ルーラーの殺害を防ぐ予防策となる。
『不思議の国のアリス』でのコーカス・レースは、競技という枠組みでは無意味だったが、
レースを催したこと自体は参加者全員に「濡れた体を乾かす」という恩恵を与えた。
時には、硬直や無駄などの愚行が益を産むことがある。その教訓を示した象徴的な宝具である。

もっとも、ドードーにとっての真価とは、鈍い頭に利口ぶった答えがまとまる時間を稼ぐことだろうが。

『生息続行』はドードー鳥の近親種が滅びた時期がはっきりしないのもあってオミット。
代わりに宝具の内部に生息続行分の生存能力を投げ込みました。
スキル文の謎掛けはクオリティ低いですが、ベストを尽くそうと努力したので私は謝りません。対魔力と神明裁決はもう少々頑張れた気がします。

武器欄の手は「不思議の国のアリス」の挿絵でドードーに生えてる人間の腕。
後付けされたナーサリーの霊基が、キャラクターのドードーを再現するために筆を走らせる書き手を模しているイメージ。
絶滅危惧種であり登場人物であるドードーと、彼/彼女に仮託されたルイス・キャロルのモチーフを分離しつつ生存率を高めようという試みです。

ドードー〔残骸〕