ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

※この作品を読むにあたって必要な前提知識

サッフォーとブリトマルティスは投身自殺仲間
この作品におけるブリトマルティスは終始ニンフとして扱われる



【サッフォー】
ああ、ああ。退屈ですわ。海というものがここまで灰色で、単調だなんて思いもしませんでしたの。

ブリトマルティス様はこんな場所にいつまでもいて、気が滅入りませんの?

さほちんはもううんざりですの。


【ブリトマルティス】
あなたがまだ死すべき者であったとき、これを望んでいたのでしょう。

泡を立てる小さな波になること、それだけではあなたには物足りないということね。

だけど、あなたは死を求めている。

どうしてそんなものを求めるの?


【サッフォー】
こんなことになるなんて、思いもしませんでしたの。

最期の時、身を投げさえすればさほちんは全てから解放されると、そう思っていましたの。

欲望も、不安も、この胸を乱す心は全て消えてしまうものだと。

海がさほちんの全てを飲み込んでしまうのだと。

何もかも、無かった事にしてしまえると。

さほちんはそう思っていましたの。


【ブリトマルティス】
そうよ。

海に飲み込まれれば全てが死ぬ。

けど、生き返りもするの。

今更わかった?


【サッフォー】
ブリトマルティス様はなぜ、海を求めましたの?

あなたはニンフだったのでしょう。


【ブリトマルティス】
私が求めたのは海じゃない。

もともとは山にいたの。

月が照らす夜、私は逃げた。

誰だかも分からない、死すべき者に追われて。

サッフォー、あなたは私たちの森を知らないのよ。

海の上、とても高い場所にある森のことを。

私が飛んだのは、私を救うためだったのよ。


【サッフォー】
それがどうして、あなたを救うことになりますの?


【ブリトマルティス】
私が私であるためよ。

その男から逃れることが、私であることだったの。

だからそうしなければならなかった。


【サッフォー】
そうしなければならなかった――。

それほどまでに、その死すべき者が嫌いでしたの?


【ブリトマルティス】
わからないわよ。

見たことがないのだもの。

けど逃げなければいけないってこと、それだけははっきりしていたわ。


【サッフォー】
そんなことがありえますの?

愛した山も日常も捨てて、波の泡立ちの一つになるなんて。

そうしなければならないという義務感だけで、そんなことが出来ますの?

自分を愛する何かに、自分も僅かでも愛情を感じていたのではありませんかしら。

だって、ブリトマルティス様の心だって愛から産まれたものでしょう?


【ブリトマルティス】
あなたの言ってることは非論理的よ、サッフォー。

あなたの心は愛情だけでなく、不安からも生まれたはずよ。

なのに、私だけを逃げ出しただなんて咎めるのね。


【サッフォー】
ブリトマルティス様は死すべき存在ではなかったから、それで知っていましたのね。

何からも決して逃げられないことを。


【ブリトマルティス】
サッフォー、私は愛から逃げたのではないわ。

私が欲しいものは既に、私の手の中にある。

昔の私は山のニンフ。

今は海と一緒になった。

私たちはそうやって作られているのよ。

私たちの命は木の葉。

私たちの命は木の幹。

私たちの命は湧き水。

私たちの命は波の泡。

私たちは物事に軽く触れて遊ぶ。

逃げているわけじゃない。

姿を変えているのよ。

それが私たちの愛情で、運命。

私たちが恐れているのは、ただ一人の人間のものになってしまうこと。

そうして縛り付けられたら、もう私たちはお終いだから。

カリュプソの名前を聞いたことはある?


【サッフォー】
はい、はい。知っておりますの。


【ブリトマルティス】
カリュプソはオデュッセウスに縛り付けられてしまった。

オデュッセウス以外のものは、カリュプソにとってなんの価値も無くしてしまった。

彼女は自分の住む洞窟から姿を現さなくなったわ。

レウコテア、カリアネイラ、キュモドケ、オレイテュイア、アンピトリテがやってきて、ようやく彼女を救い出した。

それでもオデュッセウスがオギュギエを去るまで、何年もかかってしまった。


【サッフォー】
さほちんにはカリュプソ様の気持ちが分かりますの。

それは愛。

けれども不思議にも思いますの。

カリュプソ様とオデュッセウスは引き裂かれた。

何年もの間、ずっと愛し続けていたのに、どうして手放すことが出来たのでしょう?


【ブリトマルティス】
サッフォー、あなたは死すべき波。

だから分からないのよ。

微笑むということの意味を。


【サッフォー】
さほちん、恋してる時はいつも微笑んでおりましたわ。

だからこそこうして、死を求めたのですけれど。


【ブリトマルティス】
微笑むってそういう意味じゃないわ。

運命を受け入れて、一片の木の葉や波のように生きること。

一つの形に死に、別の形に生まれ変わること。

自分自身を受け止めることを、微笑むというの。


【サッフォー】
ブリトマルティス様はそれを受け入れましたの?


【ブリトマルティス】
私は逃げた。私たちにとってその方が簡単だから。


【サッフォー】
それはさほちんも同じでしてよ。

さほちんもしばらくは逃げることが出来ましたの。

逃げるとは乱れた心を見つめることですの。

そこから歌や言葉を作り出しましたのよ。

でもそれは運命とは全く別のものですわ。


【ブリトマルティス】
なぜそんなことを言うのかしら。

運命は喜び。

あなたは歌っているとき、幸せだったでしょう。


【サッフォー】
いいえ、一度も幸せだと思ったことはありませんでしたの。

ブリトマルティス様、愛と歌は違いますの。

愛は壊れるものであり、燃え上がるものですの。

それは蛇にも風にも似ていますわ。


【ブリトマルティス】
まだ分からないのね。

愛と乱れた心の狭間で平穏に生きている死すべき女たちのことを。


【サッフォー】
さほちんの様な死すべき人間でなければあるいは、存じ上げているかもしれませんわ。

ブリトマルティス様がまだニンフだった頃、さほちんはまだ生を受けていなかったころのこと。

とある女性がこの海を渡っていきましたわ。

乱れる心の中にあって平穏であった女性が。

その女性は人々を殺し合わせ、街を焼かせ、光を感じられなくするような女性でしたの。

どんな時でも、彼女は同じ。

微笑む必要さえありませんでしたわ。

はい、彼女は美しく賢い人でしたの。

でもそんな彼女の周りでは全てが争い、死んでしまいましたわ。

ブリトマルティス様、彼らが戦い、死んでいったのは彼女の名前がほんの刹那の時でも自分と結ばれて欲しかったから。

全ての戦う者たちの生死に名前を与えてくれることを願ったから。

彼らはその女性に微笑みを浮かべましたの。

ご存知でしょう、ヘレネーという名を。

テュンダレオスとレダの娘の名を。


【ブリトマルティス】
その女は、幸せだったのかしら。


【サッフォー】
一つわかることは、彼女は決して逃げ出さなかったことですの。

自分が自分である、それだけで充分でしたのね。

運命とは何か、問うこともしなかったのでしょう。

ヘレネを愛し、その愛を勝ち取るだけの強さを持った一人の男が、彼女をさらいましたわね。

それから十年間、一人の男の跡を付いていく。

また別の男がヘレネを奪い、彼もまたヘレネを失いましたわ。

海を越えて大勢の男性が、ヘレネを求めて争いましたの。

二人目の男性が、ようやくヘレネを奪い返して、安らかに老いて、そして葬られましたわ。

ハデスに迎え入れられてからも、大勢の男性を知りました。

彼女は決して嘘を吐かず、微笑みもしませんでしたの。

きっと幸せだったはずですわ。


【ブリトマルティス】
あなたは、それが羨ましいの?


【サッフォー】
さほちんは、誰も羨ましいだなんて思いませんわ。

さほちんは死を迎え入れたかった。

さほちんがさほちんでない別の女になるなんて、さほちんは嫌ですの。


【ブリトマルティス】
なら、運命を受け入れるのね?


【サッフォー】
いいえ、受け入れはしませんわ。

さほちんはさほちんですの。

誰も運命なんて受け入れはしませんの。


【ブリトマルティス】
私たちの様に、微笑むことが何なのか知っていれば別だけれどね。


【サッフォー】
大したクソ度胸ですのね。

あなたたちはそういう運命の中にあるのでしょう。

けれどそれになんの意味があるのか、教えてくださいまし?


【ブリトマルティス】
自分を受け入れること。相手を受け入れること。


【サッフォー】
そればかりですわね。

例えばある者がブリトマルティス様をさらい、その身が愛情に変わることまでも受け入れることが出来まして?

相手が男の人でも、女の人でも。

一つの体を求めて震え、岩礁の間の泡のようにもがいていることを。

その体はいずれあなたを押し返し、砕いて、あなたはまた崩れ落ちてしまいますの。

もしかしたら、あなた自身がその岩礁になることもあるかもしれない。

その時、泡はブリトマルティス様の足元でもがき続けますの。

誰も平穏にはなれませんわ。

それでも受け入れられると言いますの?


【ブリトマルティス】
受け入れなければならないだけよ。

サッフォー、あなたは逃げようとした。

だから泡になったのよ。


【サッフォー】
けれど、ブリトマルティス様。

あなたはこの海の退屈と不安を感じていまして?

ここでは何もかもが水に浸かって、永遠に泡を立てていますの。

死者ですら、逃れられませんわ。


【ブリトマルティス】
あなたも海のことを知っているはずよ。

あの島からここに来たんだから。


【サッフォー】
さほちんは子供の頃から海が怖かったんですの。

だってあまりに色彩が無くて退屈で。

この感覚を表す言葉すら、ありませんわ。


【ブリトマルティス】
以前、私の島から死すべき者が出入りしていくのを見ていたわ。

恋する女たちのこと。

彼女たちは退屈しているようにも、悲しんでいるようにも見えなかったけど。


【サッフォー】
はい、はい。さほちんにもよーくわかりますの。

けれどブリトマルティス様は出入りしたのを見ただけで、どんな道を通ったかまでご覧になっておりませんでしょう?

こんな女性がいましたわ。見知らぬ土地に連れて行かれ、自分で首を吊って冥府に旅立った女性が。

翌朝、岩礁の上に捨てられて目を覚ました女性が。

あらゆる島から、あらゆる国から海へ身を投げた女性たちが。

それは奴隷で、それは子殺しで、それは陸を二度と踏むことなく。

海に住む獣になった女性たちが。


【ブリトマルティス】
ヘレネは無事だったって、あなたはそう言ったでしょ。


【サッフォー】
あらゆる地に火の手を上げ、あらゆる命を奪いながら、ですわ。

ヘレネは誰に対しても微笑んだりしませんでしたの。

誰に対しても嘘を吐かずに。

そう思えば彼女ほど、この海にふさわしい女性もおりませんわ。

誰がこの下で生まれてきたのか、思い出してみてくださいまし。


【ブリトマルティス】
いったい、誰のこと?


【サッフォー】
ブリトマルティス様が見たことのない島だってありましてよ。

夜が終わるとき、最初に陽の光を浴びる島ですの。

彼女は泡から生まれ出ましたわ。

不安に囚われ、一人で微笑みを浮かべる女性が。


【ブリトマルティス】
苦しんだりしないわ。

それは偉大な女神だから。


【サッフォー】
水に浸かってもがくものは全て、彼女そのもの。

彼女の欠片。

彼女の息吹。

見たことがありまして、ブリトマルティス様?


【ブリトマルティス】
その名を言ってはだめよ。

私には恐れ多いわ。


【サッフォー】
見たのでしょう?
答えてくださいまし。


【ブリトマルティス】
彼女の前では私たちの様な女は全て逃げ出してしまうの。

だから、その話をしたらだめなのよ、サッフォー。

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