最終更新:ID:KpYP37weUg 2020年02月15日(土) 21:44:39履歴
「人は理解できない物を神と呼んで恐れ忌むというじゃないか。
恐怖が神とも、誰かが言った。だったら、これ以上なく私が神だ」
「────私は、祈る神すら失った。神(ばけもの)には、祈る自由すら与えられんのか」
「私に生きている意味があるとしたら…あの子が生きている事、それだけだ。
あの子がいなくなった時、あの子が死んだとき、その時こそ…私が人として死ぬ時だ」
「まだ私を人間に戻せないのか? いや、私をまだ殺せないのかと言い換えたほうがいいか。
早く殺してくれよ、私を。お前たちから見れば殺したくてたまらないんだろう?」
『…ごめんな、まだお母さんそっちに帰れそうにないんだ。仕事が忙しくて……うん、うん。分かってる。
今年の誕生日には、きっと帰れればと、…思ってる。ごめんね。……大きくなったね、あの日に比べて』
恐怖が神とも、誰かが言った。だったら、これ以上なく私が神だ」
「────私は、祈る神すら失った。神(ばけもの)には、祈る自由すら与えられんのか」
【氏名】黒澄白亜
【性別】女性【年齢】48歳
【出身】樺太
【身長】165cm【体重】47kg
【スリーサイズ】86/51/79
【肌色】限りなく白に近い【髪色】灰【瞳色】白
【イメージカラー】漂白
【属性】秩序・中庸
【魔術属性】水
【起源】同化
【特技】菓子作り
【好きなもの】娘の笑顔、家族と過ごした時間
【苦手なもの】無機質な天井や壁、研究者、他人
【所属】アバシリ・プリズン・セクター・ゼロ捌號収容棟
【コードネーム】■■■■■■
【サーヴァントクラス】???
【サーヴァント真名】??の??
【性別】女性【年齢】48歳
【出身】樺太
【身長】165cm【体重】47kg
【スリーサイズ】86/51/79
【肌色】限りなく白に近い【髪色】灰【瞳色】白
【イメージカラー】漂白
【属性】秩序・中庸
【魔術属性】水
【起源】同化
【特技】菓子作り
【好きなもの】娘の笑顔、家族と過ごした時間
【苦手なもの】無機質な天井や壁、研究者、他人
【所属】アバシリ・プリズン・セクター・ゼロ捌號収容棟
【コードネーム】■■■■■■
【サーヴァントクラス】???
【サーヴァント真名】??の??
全てを諦観したかのような、あるいは全てに疲れ切っているかのような雰囲気の女性。
誰にも期待しておらず、同時に何者にも縋らない。独立不撓を体現したかのような表情が特徴。
だが、かと言って常に険しい表情かと言えばそうでもなく、唯一の家族である娘と会話する時に限り、
とても柔らかく、かつ優しい微笑みを見せる。根は非常に優しい人物。
誰にも期待しておらず、同時に何者にも縋らない。独立不撓を体現したかのような表情が特徴。
だが、かと言って常に険しい表情かと言えばそうでもなく、唯一の家族である娘と会話する時に限り、
とても柔らかく、かつ優しい微笑みを見せる。根は非常に優しい人物。
元々は、樺太に生まれたアイヌの魔術師の末裔であった。
起源『同化』の性質が強く出ており、その影響で様々な動物や物の声が頻繁に聞こえる特異体質を持っていた。
幼いながらも節度のある暮らしをしつつ、愛想も良かったため周囲からは非常に好かれて育っていった。
その後、魔術師として生きる道を選んだが、先祖が魔術師なので仕方なく…という意識であった。
渋々魔術刻印を継いで探求を続けていた所、とある魔術組織の樺太ロッジに勤める男性と出会い、意気投合し結婚した。
その魔術組織は目的の為なら手段を選ばない研究者の集まりとして有名であったため最初は彼女も警戒していたが、
彼女と出会った男性は魔術師らしからぬ優しさを持っていた為、次第に打ち解けていった。
そしてそれから2年後に1人の娘も設け、幸せな日々が続いていた。
そう、あの日までは
夫は、その所属する魔術組織の命題の1つである"完全なる不死"について研究をしていた。
死徒化や魂の継ぎ足し、不老、記憶の複写…様々な不死の手段はあるが、どれも完全に不死とは言えない。
その問題を解決し、永劫を生き続け根源を目指すというのが、彼女の夫が目指していた命題であった。
そんな研究をしていたロッジに出入りしていたある日の事、偶然から彼女の起源が他研究員に知られる。
起源『同化』、それはあらゆる魔術に対して親和性が非常に高いという事がその魔術結社の研究では分かっていた。
言うならばそれは、培養個体ともいえる汎用性を見せる。多くの魔術に拒絶反応が起きないその希少な起源は、
"不死"を作る方法を大量に試す良い実験台となると、研究員たちは考えたのだ。
当然、彼女の夫はそれに猛反対した。だが、地位の低い彼女の夫のいう事など誰も聞かなかった。
それどころか、彼女の夫は研究中の不幸な事故として"処分"された。反対する者が消えたそのロッジに於いて、
彼女を実験台にした悍ましき実験の幕が開いた。
逃げようと思えば、逃げることは出来た。だが彼女には逃げられない理由が2つあった。
1つは、最初は本当に夫が事故で亡くなったと思っていた事。「理想を為せなかった夫の無念を晴らすべきだ」
と言いくるめられ、心の弱っていた彼女は承諾した。そしてもう1つは、夫の唯一の忘れ形見となる娘の存在であった。
自分が断れば、あるいは娘を実験体にしようと企むかもしれない。魔術師というのは結局は、道を外れた者なのだ。
娘が同じ特性を遺伝しているとは限らないが、ダメで元々と手を出すということも十分に在り得ると彼女は考えた。
自分1人で逃げるならともかく、無力な娘を守りながら逃げるというのは、現実的な考えとは言えなかった。
それから数年間、彼女はありとあらゆる魔術を施された。
死徒化や魂の継ぎ足しなど当たり前、肉体改造、神経系疑似増幅、細胞の1つ1つからDNAの一片に至るまで、
その魔術結社が発見・開拓・提唱・改造し続けた、不死への探求の歴史の全てが彼女に対して注ぎ込まれていった。
────しかしどのような手を加えても効果が見られなかった。それはまるで、一切の手を加えていないかのように。
反応があるとすれば、術式を施す際の痛み程度。彼女は考えた。「この程度なら、耐えられる。日常に戻れる」と。
その魔術結社はというと、まるで「お前たちの試行錯誤は無意味だった」とでも言わんばかりの結果を見せつけられ、
苛立ちを覚え続け、廃棄処分すら考慮に入れていた。
その時であった。世界が再編された。
世界中の都市は様相を変え、世界中の人類が聖杯を得た。
個人用の聖杯とはいえ、それは高純度の願望機の一種と言える。
それは条理や脈絡を無視し結果を生み出す願望機の業であったのだろうか。
聖杯を得てしばらくすると、彼女に加えられた万にも及ぶ術式は、"全て残らず"活性化した。
全身の細胞が生まれ変わり、全身の神経系・魔術回路は異常発達し、彼女は別の生命体となった。
術式は術式と絡み合って、改造と改造は突然変異を引き起こし、万を超える施しは相互作用の連鎖反応を続け、
その総てが終わった時、彼女は完全に人ならざる最悪の存在となり果てていた。
彼女は確かに、この世界中において最も"完全なる不死"に近づいた。
だが、しかし、それは偽りなる不死であった。それは"周囲の魔力・生命力を根こそぎ奪い去り"、
己の生命力へと還元するという、存在するだけで周囲を死の荒野に換えるという能力であった。
検証をしようとした研究員が死んだ。拘束しようとした警備員が死んだ。
助けを呼ぼうとした事務員が死んだ。口を滑らせ真実を語った計画主任が、死んだ。
ただ生きているだけで周囲を皆殺しにする"死神"が、此処に生まれ落ちた。その特性は"エナジードレイン"と仮称され、
呼吸と同じように自分の意志で止めることは出来ず、このままでは全地上の生命を殺しつくすと判断された。
あまりにも危険すぎるその特性に、魔術結社の残党は彼女を人ではなく化け物として扱い、殺処分を決意。
その"答え"に、彼女は激昂した。私から夫を奪っておいて被害者面か。自分たちで手を加えておいて、失敗すれば化け物扱いか、と。
怒り、憎しみ、破壊衝動といった負の感情に身を任せ、彼女はそのロッジにいた研究員を皆殺しにし、激昂のままにロッジを破壊した。
人間の汚さを続けて見せつけられた彼女は、人間という存在に、そして魔術師という種族に絶望した。
そして心に決意した。私を化け物と呼ぶというなら、化け物としてお前たちを皆殺しにしてやろうと。
魔術師とは、全て子を人質にし、夫を殺し騙すようなゴミばかりだ。ならば自分はそれらを殺す。
そう誓った彼女は、タガが外れたように施設を破壊し続け、周囲一帯を壊滅させた。
だが心のどこかにしこりのような罪悪感があった。
唯一残った娘という存在、彼女を残して化け物として生きることができるのか、と。
大切であった彼女を捨て去ってまで生き続ける意味が、自分にはあるのか? と。
研究施設とその周囲一帯を破壊した彼女は、危険災害として扱われ討伐隊が編成される。
破壊し尽くし、そして一瞬だけ正気に戻った彼女は自分の置かれている現状を察した。これでは自分は、文字通りの怪物だと。
────このままでは、大切な娘(かぞく)を抱きしめる手すらも化け物のそれに変わってしまう、と。
その隙を突いて攻撃したが殺害はできず、討伐隊は結果として彼女の「鎮圧」に成功することとなる。
再発を防ぐためには殺傷すべきかとも思われたが、少なくとも現状の装備・設備では不可能であると判断された為、棚上げとなった。
むしろ彼女は死を望んでいた。この世界で彼女を殺したいのは、誰よりも彼女自身だった。望んだわけでもなく化け物にされ、
愛した夫は殺されて、彼女の心はもう既に、限界に達していた。だが、彼女には死すらも許されなかった。
拘束された彼女は言う。どれだけ足掻いても復讐を誓うと。
だがしかし、そこに捕縛した者は言う。「もし貴方がこれ以上人命を奪えば、娘は悲しむだろう」と。
ああ、そうだ。自分にはまだ1人だけ家族が残されている。愛すべき娘が残されていると、彼女は悟った。
そしてこう提言された。「私たちは、どれだけ時間がかかろうと貴方を人間に戻すと約束する」
「現在、札幌の都市計画の中枢として、大規模な収容施設を建造している」
「ここに入ってもらえれば、貴方はこれ以上何も破壊しないで済むようになるだろう」
「貴方にとっても、悪い話ではないはずだ」と
彼女はそれを承諾した。もとより死にたいと思っていた身。
誰も傷つけず、死んだも同然に在り続けられるのならばそれでいいと。
だが、彼女は1つだけ、自らを拘束した者たちに対して条件を突きつけた。
娘を不安にさせたくない。1日に2度、娘と通信機器越しでも良いから会話をさせろと。
かくして彼女は、今後の娘の生活の保障と、彼女の人権と生活の保障と引き換えに収容されることとなった。
その本当の目的は、彼女をかつての人間へと戻すため。この世界にある全ての技術・魔術の持てる全てを注力し、
彼女を人間に戻すと誓わせる事で、彼女は一旦復讐を取りやめた。
────だが、彼女を作り出した魔術結社の責任者、並びに研究資料は、
騒動の裏側で非常に巧妙に逃走、世界中の裏側に散っていると調査の中で判明した。
その全てを回収するのは至難の極みとなっており、現状はサーヴァントの持つ技術や智慧、
スキルや宝具までをも借りて、手探りで研究を進めているのが現状である。
だが、魔力や生命力を吸収する、という彼女の性質上、
サーヴァントを近づければ何が起きるかわからず、また、考案された手段が手の届く範囲にあっても、
それを実際に適用すればどのような変化を生じるか推測ができない為、彼女に対する施術の議論が今も続いている。
そんな昨今、彼女の肉体に変化が起きていると報告があり────…………。
起源『同化』の性質が強く出ており、その影響で様々な動物や物の声が頻繁に聞こえる特異体質を持っていた。
幼いながらも節度のある暮らしをしつつ、愛想も良かったため周囲からは非常に好かれて育っていった。
その後、魔術師として生きる道を選んだが、先祖が魔術師なので仕方なく…という意識であった。
渋々魔術刻印を継いで探求を続けていた所、とある魔術組織の樺太ロッジに勤める男性と出会い、意気投合し結婚した。
その魔術組織は目的の為なら手段を選ばない研究者の集まりとして有名であったため最初は彼女も警戒していたが、
彼女と出会った男性は魔術師らしからぬ優しさを持っていた為、次第に打ち解けていった。
そしてそれから2年後に1人の娘も設け、幸せな日々が続いていた。
そう、あの日までは
夫は、その所属する魔術組織の命題の1つである"完全なる不死"について研究をしていた。
死徒化や魂の継ぎ足し、不老、記憶の複写…様々な不死の手段はあるが、どれも完全に不死とは言えない。
その問題を解決し、永劫を生き続け根源を目指すというのが、彼女の夫が目指していた命題であった。
そんな研究をしていたロッジに出入りしていたある日の事、偶然から彼女の起源が他研究員に知られる。
起源『同化』、それはあらゆる魔術に対して親和性が非常に高いという事がその魔術結社の研究では分かっていた。
言うならばそれは、培養個体ともいえる汎用性を見せる。多くの魔術に拒絶反応が起きないその希少な起源は、
"不死"を作る方法を大量に試す良い実験台となると、研究員たちは考えたのだ。
当然、彼女の夫はそれに猛反対した。だが、地位の低い彼女の夫のいう事など誰も聞かなかった。
それどころか、彼女の夫は研究中の不幸な事故として"処分"された。反対する者が消えたそのロッジに於いて、
彼女を実験台にした悍ましき実験の幕が開いた。
逃げようと思えば、逃げることは出来た。だが彼女には逃げられない理由が2つあった。
1つは、最初は本当に夫が事故で亡くなったと思っていた事。「理想を為せなかった夫の無念を晴らすべきだ」
と言いくるめられ、心の弱っていた彼女は承諾した。そしてもう1つは、夫の唯一の忘れ形見となる娘の存在であった。
自分が断れば、あるいは娘を実験体にしようと企むかもしれない。魔術師というのは結局は、道を外れた者なのだ。
娘が同じ特性を遺伝しているとは限らないが、ダメで元々と手を出すということも十分に在り得ると彼女は考えた。
自分1人で逃げるならともかく、無力な娘を守りながら逃げるというのは、現実的な考えとは言えなかった。
それから数年間、彼女はありとあらゆる魔術を施された。
死徒化や魂の継ぎ足しなど当たり前、肉体改造、神経系疑似増幅、細胞の1つ1つからDNAの一片に至るまで、
その魔術結社が発見・開拓・提唱・改造し続けた、不死への探求の歴史の全てが彼女に対して注ぎ込まれていった。
────しかしどのような手を加えても効果が見られなかった。それはまるで、一切の手を加えていないかのように。
反応があるとすれば、術式を施す際の痛み程度。彼女は考えた。「この程度なら、耐えられる。日常に戻れる」と。
その魔術結社はというと、まるで「お前たちの試行錯誤は無意味だった」とでも言わんばかりの結果を見せつけられ、
苛立ちを覚え続け、廃棄処分すら考慮に入れていた。
その時であった。世界が再編された。
世界中の都市は様相を変え、世界中の人類が聖杯を得た。
個人用の聖杯とはいえ、それは高純度の願望機の一種と言える。
それは条理や脈絡を無視し結果を生み出す願望機の業であったのだろうか。
聖杯を得てしばらくすると、彼女に加えられた万にも及ぶ術式は、"全て残らず"活性化した。
全身の細胞が生まれ変わり、全身の神経系・魔術回路は異常発達し、彼女は別の生命体となった。
術式は術式と絡み合って、改造と改造は突然変異を引き起こし、万を超える施しは相互作用の連鎖反応を続け、
その総てが終わった時、彼女は完全に人ならざる最悪の存在となり果てていた。
彼女は確かに、この世界中において最も"完全なる不死"に近づいた。
だが、しかし、それは偽りなる不死であった。それは"周囲の魔力・生命力を根こそぎ奪い去り"、
己の生命力へと還元するという、存在するだけで周囲を死の荒野に換えるという能力であった。
検証をしようとした研究員が死んだ。拘束しようとした警備員が死んだ。
助けを呼ぼうとした事務員が死んだ。口を滑らせ真実を語った計画主任が、死んだ。
ただ生きているだけで周囲を皆殺しにする"死神"が、此処に生まれ落ちた。その特性は"エナジードレイン"と仮称され、
呼吸と同じように自分の意志で止めることは出来ず、このままでは全地上の生命を殺しつくすと判断された。
あまりにも危険すぎるその特性に、魔術結社の残党は彼女を人ではなく化け物として扱い、殺処分を決意。
その"答え"に、彼女は激昂した。私から夫を奪っておいて被害者面か。自分たちで手を加えておいて、失敗すれば化け物扱いか、と。
怒り、憎しみ、破壊衝動といった負の感情に身を任せ、彼女はそのロッジにいた研究員を皆殺しにし、激昂のままにロッジを破壊した。
人間の汚さを続けて見せつけられた彼女は、人間という存在に、そして魔術師という種族に絶望した。
そして心に決意した。私を化け物と呼ぶというなら、化け物としてお前たちを皆殺しにしてやろうと。
魔術師とは、全て子を人質にし、夫を殺し騙すようなゴミばかりだ。ならば自分はそれらを殺す。
そう誓った彼女は、タガが外れたように施設を破壊し続け、周囲一帯を壊滅させた。
だが心のどこかにしこりのような罪悪感があった。
唯一残った娘という存在、彼女を残して化け物として生きることができるのか、と。
大切であった彼女を捨て去ってまで生き続ける意味が、自分にはあるのか? と。
研究施設とその周囲一帯を破壊した彼女は、危険災害として扱われ討伐隊が編成される。
破壊し尽くし、そして一瞬だけ正気に戻った彼女は自分の置かれている現状を察した。これでは自分は、文字通りの怪物だと。
────このままでは、大切な娘(かぞく)を抱きしめる手すらも化け物のそれに変わってしまう、と。
その隙を突いて攻撃したが殺害はできず、討伐隊は結果として彼女の「鎮圧」に成功することとなる。
再発を防ぐためには殺傷すべきかとも思われたが、少なくとも現状の装備・設備では不可能であると判断された為、棚上げとなった。
むしろ彼女は死を望んでいた。この世界で彼女を殺したいのは、誰よりも彼女自身だった。望んだわけでもなく化け物にされ、
愛した夫は殺されて、彼女の心はもう既に、限界に達していた。だが、彼女には死すらも許されなかった。
拘束された彼女は言う。どれだけ足掻いても復讐を誓うと。
だがしかし、そこに捕縛した者は言う。「もし貴方がこれ以上人命を奪えば、娘は悲しむだろう」と。
ああ、そうだ。自分にはまだ1人だけ家族が残されている。愛すべき娘が残されていると、彼女は悟った。
そしてこう提言された。「私たちは、どれだけ時間がかかろうと貴方を人間に戻すと約束する」
「現在、札幌の都市計画の中枢として、大規模な収容施設を建造している」
「ここに入ってもらえれば、貴方はこれ以上何も破壊しないで済むようになるだろう」
「貴方にとっても、悪い話ではないはずだ」と
彼女はそれを承諾した。もとより死にたいと思っていた身。
誰も傷つけず、死んだも同然に在り続けられるのならばそれでいいと。
だが、彼女は1つだけ、自らを拘束した者たちに対して条件を突きつけた。
娘を不安にさせたくない。1日に2度、娘と通信機器越しでも良いから会話をさせろと。
かくして彼女は、今後の娘の生活の保障と、彼女の人権と生活の保障と引き換えに収容されることとなった。
その本当の目的は、彼女をかつての人間へと戻すため。この世界にある全ての技術・魔術の持てる全てを注力し、
彼女を人間に戻すと誓わせる事で、彼女は一旦復讐を取りやめた。
────だが、彼女を作り出した魔術結社の責任者、並びに研究資料は、
騒動の裏側で非常に巧妙に逃走、世界中の裏側に散っていると調査の中で判明した。
その全てを回収するのは至難の極みとなっており、現状はサーヴァントの持つ技術や智慧、
スキルや宝具までをも借りて、手探りで研究を進めているのが現状である。
だが、魔力や生命力を吸収する、という彼女の性質上、
サーヴァントを近づければ何が起きるかわからず、また、考案された手段が手の届く範囲にあっても、
それを実際に適用すればどのような変化を生じるか推測ができない為、彼女に対する施術の議論が今も続いている。
そんな昨今、彼女の肉体に変化が起きていると報告があり────…………。
彼女の持つ魔術……いや、持ってしまった特性とも言うべき、究極の祝福にして最悪の呪い。
エナジードレイン、あるいはエネルギードレインとも仮称される特性を持つ解除不可能の特性。
周囲に存在する生物から魔力、電力、生命力(魔術世界ではオドとも呼ばれている、生命活動の源)
などといった、エネルギーとされるものの全てを自分のものとして吸収することができる。
彼女を中心とし、半径10mから500m以内に存在するすべてのエネルギーを呼吸するように取り込める。
この吸収は呼吸と同じように、自分の意志で止めることは出来ない。だが吸収できる範囲はある程度調整が可能であり、
主に彼女自身の感情やメンタルに左右される形で変化する。だが半径10mより狭くなることは無い。
吸収射程内に生命が存在する場合、如何なる障壁や防具を以てしてもこの吸収を防ぐことは出来ない。
吸収のメカニズムは、彼女の周囲全ての空間が彼女の一部になっているようなものといえばわかりやすい。
彼女の吸収範囲に立つ=彼女の肉体の一部となっている状態に等しく、その中にいる物は遍くを彼女に捧げる定めを背負う。
魔術師と使い魔の間に繋がれる因果線(ライン)が彼女の周囲を包み込んでいるようなもので、踏み入った者は強制的に経路を繋がれ、
そのままエネルギーを全て吸収される。魔力でも物質でもない因果を利用した接続ゆえに、壁などの防御を貫通できる。
通常こういったパスの接続は双方の合意がなければ一方的に繋ぐことは出来ないが、彼女の起源『同化』の影響により、
臓器移植に例えるならば拒絶反応に近いものを無視して、一方的にエネルギーを吸収できる。
吸収するエネルギーの優先度はエネルギー準位が高い(流動や活動が活発な)ものの順に吸収される。
即ち、魔術師ならば魔力が優先され、通常の生物や人間ならば生命力が優先される。また動いている生物から優先的に吸収される。
吸収範囲に入った生物は、身体のほんの一部が入っただけでも、常に全力疾走後に等しいほどの体力を奪われ続ける。
そのため彼女から逃げることはほぼ不可能であり、同時に彼女自身も吸収を止めることは不可能となっている。
結果、彼女は自分の周囲の命を全て吸い付くし、ただ立つだけで死をばら撒き続ける災厄としてあり続ける。
この際に吸い上げた魔力や生命力が彼女を生かし続けるため、彼女は死のうとしても死ぬことができない。
加えて、彼女の身体が"死"に瀕していると、彼女の意志と関係なく彼女の肉体が生き足掻こうとするため、
自動的に吸収の範囲が際限なく広がり、どれだけ殺そうとしても殺す事が出来ない。狙撃で殺そうとすれば傷口は埋まり、
爆撃で殺そうとすれば爆風の熱量を生命エネルギーに変換し傷を再生させる。まさしくこの世界で最も不死に近い命。
それと同時に己の周囲にただ生き続けるだけで死をばら撒き続けるという、不滅の災害と言っていい能力である。
通常生物は魔力を吸い過ぎると肉体が耐えきれずに破壊されるが、彼女の場合はそれすらも克服しており、
肉体が耐えきれない過剰な魔力を吸収した場合は、肉体が自壊と再生を繰り返すことで余剰魔力を放出、
魔力の過剰投与にする自爆すらも乗り越え、完全な不死に近い命として立ち続ける。
唯一の対抗策は、彼女の体細胞を混ぜた特殊な素材を織り交ぜた布や鉱物。
これにより全身を覆う事で、彼女のエネルギー吸収を遅らせることが可能になる。
だがこれは、あくまで止めるわけではなく、かろうじて活動が可能なレベルまで遅らせるだけである。
彼女の肉体(の一部状態になっている彼女の周囲)と一体化することで、エネルギーの吸収を遅らせるのだ。
これは、最初から自分自身である存在に因果線を繋げることが難しいからであり、彼女の吸収を唯一遅らせる盾となる。
この方法により拘束され、現在の彼女の独房にも同じような処理が施されている。
エナジードレイン、あるいはエネルギードレインとも仮称される特性を持つ解除不可能の特性。
周囲に存在する生物から魔力、電力、生命力(魔術世界ではオドとも呼ばれている、生命活動の源)
などといった、エネルギーとされるものの全てを自分のものとして吸収することができる。
彼女を中心とし、半径10mから500m以内に存在するすべてのエネルギーを呼吸するように取り込める。
この吸収は呼吸と同じように、自分の意志で止めることは出来ない。だが吸収できる範囲はある程度調整が可能であり、
主に彼女自身の感情やメンタルに左右される形で変化する。だが半径10mより狭くなることは無い。
吸収射程内に生命が存在する場合、如何なる障壁や防具を以てしてもこの吸収を防ぐことは出来ない。
吸収のメカニズムは、彼女の周囲全ての空間が彼女の一部になっているようなものといえばわかりやすい。
彼女の吸収範囲に立つ=彼女の肉体の一部となっている状態に等しく、その中にいる物は遍くを彼女に捧げる定めを背負う。
魔術師と使い魔の間に繋がれる因果線(ライン)が彼女の周囲を包み込んでいるようなもので、踏み入った者は強制的に経路を繋がれ、
そのままエネルギーを全て吸収される。魔力でも物質でもない因果を利用した接続ゆえに、壁などの防御を貫通できる。
通常こういったパスの接続は双方の合意がなければ一方的に繋ぐことは出来ないが、彼女の起源『同化』の影響により、
臓器移植に例えるならば拒絶反応に近いものを無視して、一方的にエネルギーを吸収できる。
吸収するエネルギーの優先度はエネルギー準位が高い(流動や活動が活発な)ものの順に吸収される。
即ち、魔術師ならば魔力が優先され、通常の生物や人間ならば生命力が優先される。また動いている生物から優先的に吸収される。
吸収範囲に入った生物は、身体のほんの一部が入っただけでも、常に全力疾走後に等しいほどの体力を奪われ続ける。
そのため彼女から逃げることはほぼ不可能であり、同時に彼女自身も吸収を止めることは不可能となっている。
結果、彼女は自分の周囲の命を全て吸い付くし、ただ立つだけで死をばら撒き続ける災厄としてあり続ける。
この際に吸い上げた魔力や生命力が彼女を生かし続けるため、彼女は死のうとしても死ぬことができない。
加えて、彼女の身体が"死"に瀕していると、彼女の意志と関係なく彼女の肉体が生き足掻こうとするため、
自動的に吸収の範囲が際限なく広がり、どれだけ殺そうとしても殺す事が出来ない。狙撃で殺そうとすれば傷口は埋まり、
爆撃で殺そうとすれば爆風の熱量を生命エネルギーに変換し傷を再生させる。まさしくこの世界で最も不死に近い命。
それと同時に己の周囲にただ生き続けるだけで死をばら撒き続けるという、不滅の災害と言っていい能力である。
通常生物は魔力を吸い過ぎると肉体が耐えきれずに破壊されるが、彼女の場合はそれすらも克服しており、
肉体が耐えきれない過剰な魔力を吸収した場合は、肉体が自壊と再生を繰り返すことで余剰魔力を放出、
魔力の過剰投与にする自爆すらも乗り越え、完全な不死に近い命として立ち続ける。
唯一の対抗策は、彼女の体細胞を混ぜた特殊な素材を織り交ぜた布や鉱物。
これにより全身を覆う事で、彼女のエネルギー吸収を遅らせることが可能になる。
だがこれは、あくまで止めるわけではなく、かろうじて活動が可能なレベルまで遅らせるだけである。
彼女の肉体(の一部状態になっている彼女の周囲)と一体化することで、エネルギーの吸収を遅らせるのだ。
これは、最初から自分自身である存在に因果線を繋げることが難しいからであり、彼女の吸収を唯一遅らせる盾となる。
この方法により拘束され、現在の彼女の独房にも同じような処理が施されている。
全てを諦観の眼差しで見ており、そして同時に全てをどうでもいいと思っている。
自分以外の全てに興味はないし、意味はない。全てが無価値であると思っており、期待もしていない。
ただ1つだけの血の繋がりである彼女の娘だけが、彼女を人たらしめている。
同時に、魔術師や研究員といった存在をひどく憎んでおり、基本的に侮蔑している。
自分の愛する夫を殺されたことが余程強く傷になっているのか、人を信用することなど、娘を除けば絶無であると言って良い。
現状も、娘の事を案じて復讐や大量殺人に走らないでいるだけであり、非常に危険な状態。
特性の危険性に加えて、そういった不安定な危険性も考慮した上で彼女はセクター・ゼロの最下層へ収容されたのだろう。
娘への対応としては、普通の母親以上に母性に溢れている。
心配症を超えてややモンペ気味。こういった側面からも、根はやさしい女性であると分かる。
ただあまりにも理不尽を受けすぎたために、心が完全に擦れたままになっているのが現状だ。
彼女の心を癒せる存在はもう既にこの世には存在しない、夫の掌の温もりだけである。
自分以外の全てに興味はないし、意味はない。全てが無価値であると思っており、期待もしていない。
ただ1つだけの血の繋がりである彼女の娘だけが、彼女を人たらしめている。
同時に、魔術師や研究員といった存在をひどく憎んでおり、基本的に侮蔑している。
自分の愛する夫を殺されたことが余程強く傷になっているのか、人を信用することなど、娘を除けば絶無であると言って良い。
現状も、娘の事を案じて復讐や大量殺人に走らないでいるだけであり、非常に危険な状態。
特性の危険性に加えて、そういった不安定な危険性も考慮した上で彼女はセクター・ゼロの最下層へ収容されたのだろう。
娘への対応としては、普通の母親以上に母性に溢れている。
心配症を超えてややモンペ気味。こういった側面からも、根はやさしい女性であると分かる。
ただあまりにも理不尽を受けすぎたために、心が完全に擦れたままになっているのが現状だ。
彼女の心を癒せる存在はもう既にこの世には存在しない、夫の掌の温もりだけである。
死にたい。お願いだから死なせてくれ。
化け物になってまで生きたくない。早く夫と同じ場所に逝きたい。
ただそれに加えて、この化け物になった自分が願ってもいいというのならば
もう一度娘を抱きしめさせてから、殺してほしい。
化け物になってまで生きたくない。早く夫と同じ場所に逝きたい。
ただそれに加えて、この化け物になった自分が願ってもいいというのならば
もう一度娘を抱きしめさせてから、殺してほしい。
「私に生きている意味があるとしたら…あの子が生きている事、それだけだ。
あの子がいなくなった時、あの子が死んだとき、その時こそ…私が人として死ぬ時だ」
「まだ私を人間に戻せないのか? いや、私をまだ殺せないのかと言い換えたほうがいいか。
早く殺してくれよ、私を。お前たちから見れば殺したくてたまらないんだろう?」
『…ごめんな、まだお母さんそっちに帰れそうにないんだ。仕事が忙しくて……うん、うん。分かってる。
今年の誕生日には、きっと帰れればと、…思ってる。ごめんね。……大きくなったね、あの日に比べて』
少し豪速球過ぎた気がしないでもない
2023年■月21日
収容施設定期検査の結果、捌號収容壁の特性魔力コーティングコンクリートが脆くなっていると報告有。
想定をはるかに上回る速度での劣化。至急原因を特定されたし。材料調達に時間がかかったため、劣化箇所を鉄で応急的に補強。
2023年■月30日
コンクリート劣化原因、特定できず。
収容者捌號の身体測定の結果、体表面に異常な皮膚の結節性硬化複数あり。詳細を調査する。
2023年■月3日
収容者捌號の体表面に発生した異常な皮膚の結節性硬化の調査完了。
捌號収容壁に使用している特性魔力コーティングコンクリートと99.8%組成が一致。
因果関係があるとみて調査を継続する。
2024年■月13日
捌號収容壁の補強箇所(2024年■月21日補強)に僅かながらの劣化あり。13.7mgの軽量化。
至急、収容者捌號の全身をスキャン。結果、収容者捌號の身体の内部に鉄の組成分が発生していると判明。
質量13.67mgと判断結果有り。劣化し失われた鉄部分の質量と一致。
2025年■月29日
補強部分、完全劣化。鉄組成部分完全消失。劣化速度が徐々に早まった記録あり。
失われた部分を特性魔力コーティングコンクリートにて補強。
■月12日追記:こちらの補強部分は劣化は早まる事無く、現状安全に運用されている。
『在り得ない……。考えたくないことだ……。
嘘だ……こんな生命が……在り得ていいはずがない……』
『彼女の特性は……エナジードレインなんかじゃない……。
彼女が吸収していたのは……エネルギーじゃなかった…!』
『いや……吸収ですらない!』
『これは…カット&ペーストだ……これは…"捕食"だ……!!』
『彼女を一刻も早く人間へ戻さなくては……! 僅かずつでも…どんどん力が強まっている…!』
『このままでは…………』
『この地球という星総てが、彼女に"捕食"される』
【コードネーム】"偽・究極の一(ロンリネス・モンスター)"
2023年■月21日
収容施設定期検査の結果、捌號収容壁の特性魔力コーティングコンクリートが脆くなっていると報告有。
想定をはるかに上回る速度での劣化。至急原因を特定されたし。材料調達に時間がかかったため、劣化箇所を鉄で応急的に補強。
2023年■月30日
コンクリート劣化原因、特定できず。
収容者捌號の身体測定の結果、体表面に異常な皮膚の結節性硬化複数あり。詳細を調査する。
2023年■月3日
収容者捌號の体表面に発生した異常な皮膚の結節性硬化の調査完了。
捌號収容壁に使用している特性魔力コーティングコンクリートと99.8%組成が一致。
因果関係があるとみて調査を継続する。
2024年■月13日
捌號収容壁の補強箇所(2024年■月21日補強)に僅かながらの劣化あり。13.7mgの軽量化。
至急、収容者捌號の全身をスキャン。結果、収容者捌號の身体の内部に鉄の組成分が発生していると判明。
質量13.67mgと判断結果有り。劣化し失われた鉄部分の質量と一致。
2025年■月29日
補強部分、完全劣化。鉄組成部分完全消失。劣化速度が徐々に早まった記録あり。
失われた部分を特性魔力コーティングコンクリートにて補強。
■月12日追記:こちらの補強部分は劣化は早まる事無く、現状安全に運用されている。
『在り得ない……。考えたくないことだ……。
嘘だ……こんな生命が……在り得ていいはずがない……』
『彼女の特性は……エナジードレインなんかじゃない……。
彼女が吸収していたのは……エネルギーじゃなかった…!』
『いや……吸収ですらない!』
『これは…カット&ペーストだ……これは…"捕食"だ……!!』
『彼女を一刻も早く人間へ戻さなくては……! 僅かずつでも…どんどん力が強まっている…!』
『このままでは…………』
『この地球という星総てが、彼女に"捕食"される』
【コードネーム】"偽・究極の一(ロンリネス・モンスター)"
『永劫に至る曙光 』と名付けられた、彼女の特異体質。それが行き着く果てにあると考えられている「完成形」。
現在確認されているエネルギー吸収現象は、この特性の不完全な発露に過ぎなかったと推測される。
エネルギー吸収は、全ての質料因(材質やエネルギー)との同化という本質の、部分的な側面が見えていたに過ぎない。
そしてその同化現象の本質も、4つの因で説明される総体能力のうち1つに過ぎなかった。
四原因説に基づき不死生命の実現へ極限まで迫るアプローチ。それが一つの形として完成したもの。それが『天蓋貪食 』である。
全ての質料因を取り込み、
その総体を統一された形相因で一個体として再定義し、
ことあらゆる生命・物質に共通する生存本能・存在維持の性質から抽出した、「在る」「生きる」意思という目的因のもとに自身の全てを最適化する。
その継続は、やがてそれを生じせしめた作用因を逆に辿ることにもなる。子から親へ、生物から環境へ、環境から星へ。
「完全なる不死」の実現を目指した追求の最終形は、この星に存在する最も長命なるもの、星への成り代わりに帰結した。
現在確認されているエネルギー吸収現象は、この特性の不完全な発露に過ぎなかったと推測される。
エネルギー吸収は、全ての質料因(材質やエネルギー)との同化という本質の、部分的な側面が見えていたに過ぎない。
そしてその同化現象の本質も、4つの因で説明される総体能力のうち1つに過ぎなかった。
四原因説に基づき不死生命の実現へ極限まで迫るアプローチ。それが一つの形として完成したもの。それが『
全ての質料因を取り込み、
その総体を統一された形相因で一個体として再定義し、
ことあらゆる生命・物質に共通する生存本能・存在維持の性質から抽出した、「在る」「生きる」意思という目的因のもとに自身の全てを最適化する。
その継続は、やがてそれを生じせしめた作用因を逆に辿ることにもなる。子から親へ、生物から環境へ、環境から星へ。
「完全なる不死」の実現を目指した追求の最終形は、この星に存在する最も長命なるもの、星への成り代わりに帰結した。
この研究に携わった魔術師たちは、科学との併用を積極的に推し進めた合理主義的、実利主義的、そして物質主義的な思想の持ち主と思われる。
様々な術式・研究成果を無作為、無分別に1人の人間に押し込めたらしいが、
あまりにも多量に群れ集まったものは、個体の個性は薄まり総体の群れとして認識されるのが常である。
つまりはそのようなことが起こったのであろう。
本人たちは無自覚であったかもしれないが、あまりにも多量の術式を詰め込んだ結果として、その根底に流れるひとつの思想に基づく能力が発現したのである。
この能力の原理はアリストテレスの四原因説に基づくため、より理解するにはその前提知識が助けになるだろう。
以下に四原因説の解説を述べる。
多くの哲学者はこの世の根源 について様々に語った。
アリストテレスの四原因説はそれら、以前に語られた様々な始原 を分類して当てはめ、総論として整理したものと言える。
また、師プラトンが物質界の外であるイデア界に根源を求めたのに対して、アリストテレスはあくまで物質界のものにその本質を求めたという対比的な図式から、
より物質的、科学的見解だと分析されることもある。下記にそれぞれの解説を記す。
以上が四原因説の概説である。
様々な術式・研究成果を無作為、無分別に1人の人間に押し込めたらしいが、
あまりにも多量に群れ集まったものは、個体の個性は薄まり総体の群れとして認識されるのが常である。
つまりはそのようなことが起こったのであろう。
本人たちは無自覚であったかもしれないが、あまりにも多量の術式を詰め込んだ結果として、その根底に流れるひとつの思想に基づく能力が発現したのである。
この能力の原理はアリストテレスの四原因説に基づくため、より理解するにはその前提知識が助けになるだろう。
以下に四原因説の解説を述べる。
多くの哲学者はこの世の
アリストテレスの四原因説はそれら、以前に語られた様々な
また、師プラトンが物質界の外であるイデア界に根源を求めたのに対して、アリストテレスはあくまで物質界のものにその本質を求めたという対比的な図式から、
より物質的、科学的見解だと分析されることもある。下記にそれぞれの解説を記す。
以上が四原因説の概説である。
以上の四源因説にあてはめる形で、彼女の特性は以下のように説明できる。
天蓋貪食 』のサイクル1。
自身の周囲全てを、自身の一部として吸収する。それこそが、彼女のエネルギー吸収の本来の姿である。
周囲に存在するものならば生物、非生物問わず己の肉体へと吸収して行くその様は、捕食と言い換えてもいい。
範囲内に存在する、因果線を接続した物質を、己の肉体に転移させるようにして同化してゆく。
当初、エネルギー吸収現象 とみなされていた能力は、厳密には、エネルギーを持った物質を対象から吸収していたものだと考えられる。
例えば魔力については、対象の細胞中、魔術回路の付近などに存在する魔力の集まっている細胞や、魔力の溶け込んだ体液などを吸収する、という塩梅。
魔力とは本来、それ単体で取り出すことが難しいものであるため、魔力を帯びた物質ごと魔力を吸収していたものと推測される。
他エネルギーに関しても同様の過程を経ていると思われ、物質が帯びる様々なエネルギーを宿した微細な粒子を吸収する、という事を無意識に行っていた。
初期段階では、流動性の高いエネルギーのみが吸収可能であり、また、エネルギー準位が高く吸収しやすいものから取り込んでいた。
しかし、万が一『天蓋貪食 』の段階が一定以上進化した場合、少しでも効率的に進化する為、対象の物体を構成する最も主要な物質を優先的に吸収していくものと思われる。
通常、他の生物との強引な同化は、免疫機能によって拒まれることが大半であり、ミネラル分などを除く鉱物などを肉体に吸収する際には、当然身体にリスクが生じる。
だが彼女の場合、起源を強く引き出され改造された影響によって"同化"の性質が増したが故に、やがてはありとあらゆる存在と一体化しかねない状態にある。
天蓋貪食 』のサイクル2。
万物との同化/全ての質料因の吸収による寄せ集めを、群集や堆積ではなく一個体、単体として定義する機能。
生物ならその身体の設計図としてのDNA、魔術にとっては術式にあたる「自己の設計図」を生成し、随時更新する。
本来、過度の融合・集合は自己の本質を見失い、ただの混沌と化す危険性を孕んでいる。
例えば「ある人間」が「無数の獣」と融合し続けたのならどうなるか。
無数の獣を取り込んで総体としては巨大化するが、その内訳としては「ある人間」の要素はしだいに薄くなっていく。
ならば獣にとって代わられるかというと、この場合はそれぞれの獣も一個体であり、「獣」が「ある人間」を凌駕して乗っ取るということもない。
その果ては多数の要素の混合スープ、自我無き混沌の海である。
サイクル2はそういった混沌化や拡散の防止機能と言える。
もちろん弱点だが、「自己の設計図」の在処はDNAを模倣して全身の体組織に分散しているため、通常の攻撃での破壊は困難。
この弱点を突くには、人間で言う癌細胞やコンピュータウイルスのような術式を彼女専用に組み上げる必要があるだろう。
天蓋貪食 』のサイクル3。
総体の統一と再定義/形相因の統一により随時更新される「自己の設計図」に、適切な方向性を与え続ける機能である。
目的を見失った進化は、やがて自己崩壊、自己矛盾を引き起こす。
通常の生物の進化は場当たり的である。
その場その場にアドリブで対応していく進化の果てが、ガラパゴス化。
特定の環境以外で生存できない、極端に先鋭的で脆弱な生命体への最適化となる。
単なる条件適応(「〇〇に当てはまったら△△する」というような単純プログラム)ではなく、「知性」「理性」を持った判断機能がサイクル3において働く。
これは人間や生物の思考を模したAIではなく、本来は机上の空論でしかない「神の見えざる手」や「社会ダーウィニズム」など超越的な選択の選び手としてのAIが具現化したものである。
「彼女」の意思とは完全に独立した思考であり、その超越的な思考形態から意思疎通も不可能。
この独自思考術式が常に現状のリソース管理・状態把握・未来予測を行い、合理的な結論を下して無段階的な進化に目的・指向性を与える。
「自己の設計図」の書き換えによる進化は、生物学的変化のみでなく霊的な昇格(再臨)も伴う。
しかるべき量のリソースさえ取り込めていれば、それを利用した再臨により許容魔力量などは拡大する。
天蓋貪食 』のサイクル4。
無段階的な進化再臨/目的因への最適化により存在の格を昇格していくと、やがては格上の存在との同化/質料因の吸収が可能となる。
系統樹の遡上。
子が親を取り込み、
親の属する種を育んだ環境を取り込み、
環境を形成した星をやがて取り込む。
サイクル4は、サイクル1万物との同化/全ての質料因の吸収の誘導機能であると共に、安全装置でもある。
現在の自身の存在の格が、階梯や系統樹の中でどの段階であるかを測定し、
現在の質量・強靭性・霊格で吸収可能なもの、なおかつより効率的に進化・昇格を行える存在へ優先的に因果線が繋がれる。
例えば、現在の生態では取り込んでも自壊に繋がるもの・負担の大きいものに対しては同化を後回しとする。
そのために、進化が進む前に霊格の高すぎる存在を取り込んで自滅したり、生物としての拡張性が高くなる前に無機物を取り込みすぎて活動できなくなる……ということが起こらないようになっている。
現在吸収済みの材料の持つ因果も、より縁深い存在へは因果線が繋がりやすく、また同化にも有利になるという形で関わってくる。
「ある人間」を取り込んだなら、その親類縁者へはより因果線が繋がりやすく、同化もより容易になっていくのである。
もちろん、親子は最上の縁となる。
すなわち、彼女が暴走し自我を失った時に最初に向かうであろう存在は……
こうしてサイクル1、2、3、4を繰り返し循環させることにより、『天蓋貪食 』の無限進化は実現する。
- 万物との同化/全ての質料因の吸収
自身の周囲全てを、自身の一部として吸収する。それこそが、彼女のエネルギー吸収の本来の姿である。
周囲に存在するものならば生物、非生物問わず己の肉体へと吸収して行くその様は、捕食と言い換えてもいい。
範囲内に存在する、因果線を接続した物質を、己の肉体に転移させるようにして同化してゆく。
当初、
例えば魔力については、対象の細胞中、魔術回路の付近などに存在する魔力の集まっている細胞や、魔力の溶け込んだ体液などを吸収する、という塩梅。
魔力とは本来、それ単体で取り出すことが難しいものであるため、魔力を帯びた物質ごと魔力を吸収していたものと推測される。
他エネルギーに関しても同様の過程を経ていると思われ、物質が帯びる様々なエネルギーを宿した微細な粒子を吸収する、という事を無意識に行っていた。
初期段階では、流動性の高いエネルギーのみが吸収可能であり、また、エネルギー準位が高く吸収しやすいものから取り込んでいた。
しかし、万が一『
通常、他の生物との強引な同化は、免疫機能によって拒まれることが大半であり、ミネラル分などを除く鉱物などを肉体に吸収する際には、当然身体にリスクが生じる。
だが彼女の場合、起源を強く引き出され改造された影響によって"同化"の性質が増したが故に、やがてはありとあらゆる存在と一体化しかねない状態にある。
- 総体の統一と再定義/形相因の統一
万物との同化/全ての質料因の吸収による寄せ集めを、群集や堆積ではなく一個体、単体として定義する機能。
生物ならその身体の設計図としてのDNA、魔術にとっては術式にあたる「自己の設計図」を生成し、随時更新する。
本来、過度の融合・集合は自己の本質を見失い、ただの混沌と化す危険性を孕んでいる。
例えば「ある人間」が「無数の獣」と融合し続けたのならどうなるか。
無数の獣を取り込んで総体としては巨大化するが、その内訳としては「ある人間」の要素はしだいに薄くなっていく。
ならば獣にとって代わられるかというと、この場合はそれぞれの獣も一個体であり、「獣」が「ある人間」を凌駕して乗っ取るということもない。
その果ては多数の要素の混合スープ、自我無き混沌の海である。
サイクル2はそういった混沌化や拡散の防止機能と言える。
もちろん弱点だが、「自己の設計図」の在処はDNAを模倣して全身の体組織に分散しているため、通常の攻撃での破壊は困難。
この弱点を突くには、人間で言う癌細胞やコンピュータウイルスのような術式を彼女専用に組み上げる必要があるだろう。
- 無段階的な進化再臨/目的因への最適化
総体の統一と再定義/形相因の統一により随時更新される「自己の設計図」に、適切な方向性を与え続ける機能である。
目的を見失った進化は、やがて自己崩壊、自己矛盾を引き起こす。
通常の生物の進化は場当たり的である。
その場その場にアドリブで対応していく進化の果てが、ガラパゴス化。
特定の環境以外で生存できない、極端に先鋭的で脆弱な生命体への最適化となる。
単なる条件適応(「〇〇に当てはまったら△△する」というような単純プログラム)ではなく、「知性」「理性」を持った判断機能がサイクル3において働く。
これは人間や生物の思考を模したAIではなく、本来は机上の空論でしかない「神の見えざる手」や「社会ダーウィニズム」など超越的な選択の選び手としてのAIが具現化したものである。
「彼女」の意思とは完全に独立した思考であり、その超越的な思考形態から意思疎通も不可能。
この独自思考術式が常に現状のリソース管理・状態把握・未来予測を行い、合理的な結論を下して無段階的な進化に目的・指向性を与える。
「自己の設計図」の書き換えによる進化は、生物学的変化のみでなく霊的な昇格(再臨)も伴う。
しかるべき量のリソースさえ取り込めていれば、それを利用した再臨により許容魔力量などは拡大する。
- 始原への回帰溯源/作用因への遡及
無段階的な進化再臨/目的因への最適化により存在の格を昇格していくと、やがては格上の存在との同化/質料因の吸収が可能となる。
系統樹の遡上。
子が親を取り込み、
親の属する種を育んだ環境を取り込み、
環境を形成した星をやがて取り込む。
サイクル4は、サイクル1万物との同化/全ての質料因の吸収の誘導機能であると共に、安全装置でもある。
現在の自身の存在の格が、階梯や系統樹の中でどの段階であるかを測定し、
現在の質量・強靭性・霊格で吸収可能なもの、なおかつより効率的に進化・昇格を行える存在へ優先的に因果線が繋がれる。
例えば、現在の生態では取り込んでも自壊に繋がるもの・負担の大きいものに対しては同化を後回しとする。
そのために、進化が進む前に霊格の高すぎる存在を取り込んで自滅したり、生物としての拡張性が高くなる前に無機物を取り込みすぎて活動できなくなる……ということが起こらないようになっている。
現在吸収済みの材料の持つ因果も、より縁深い存在へは因果線が繋がりやすく、また同化にも有利になるという形で関わってくる。
「ある人間」を取り込んだなら、その親類縁者へはより因果線が繋がりやすく、同化もより容易になっていくのである。
もちろん、親子は最上の縁となる。
すなわち、彼女が暴走し自我を失った時に最初に向かうであろう存在は……
こうしてサイクル1、2、3、4を繰り返し循環させることにより、『
現状、彼女の特性は、非常に緩やかな速度ではあるが確実に進化していることが、最近のメディカルチェックで判明した。
事実、コンクリート壁などといった周囲の非生命由来物質を、徐々に体内に取り込み始めている。
このまま進化を続ければ、周囲に存在するモノを、生物・非生物の別なくその身に喰らい、吸収した存在の身体能力や寿命をそのまま得ることが可能な領域にまで達するだろう。
そうなれば、彼女の内部に宿るエネルギー総量も比例して大きくなると想定され、それに追随する形で、能力は加速度的に成長すると考えられる。
そうなれば待っているのは、最悪のシナリオに他ならない。
地球には彼女しか生命は存在しなくなり、そして地球そのものが彼女になる。
それこそ即ち、疑似的なる究極の一。孤独なる怪物の生誕である。
事実、コンクリート壁などといった周囲の非生命由来物質を、徐々に体内に取り込み始めている。
このまま進化を続ければ、周囲に存在するモノを、生物・非生物の別なくその身に喰らい、吸収した存在の身体能力や寿命をそのまま得ることが可能な領域にまで達するだろう。
そうなれば、彼女の内部に宿るエネルギー総量も比例して大きくなると想定され、それに追随する形で、能力は加速度的に成長すると考えられる。
そうなれば待っているのは、最悪のシナリオに他ならない。
地球には彼女しか生命は存在しなくなり、そして地球そのものが彼女になる。
それこそ即ち、疑似的なる究極の一。孤独なる怪物の生誕である。
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