ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。




「聖杯戦争……、ですか」


暗き部屋に声が木霊する。灯りは1本の蝋燭の灯火のみ。
その炎に照らされて、二人の男が円卓に向かい合う様に座る。

「そうだ。ようやく奴の"零猛度男"としての消息を明瞭に掴めた。
動くなら今しかない。──────最も、他導き手からの信用が
地に堕ちているこのタイミングで発覚したのは痛いがな」
「今だからこそ、尾を見せたのではないですかな?
まぁ……彼はそのような事をするほど思慮浅いとは思えませんが」

ククク……と低い笑い声が暗闇の中に響く。

「ともかく、奴さえ押さえ…そして聖杯を起動すれば、
虚数接続鍵023号の恒常的起動も、お前の持つ全ての物語の王も、
全てを"繋げる"事が出来る。俺たちの新世界は完成する。」
「仰る通り。しかし、聖杯を起動するには莫大な魔力源がいる…。」
「そうだ。故に、聖杯戦争を"発生させる"。」

失敗は許されない、と暗に語り掛けるような鋭い眼光が暗黒に煌く。
男は数週間前、在る手法を通じ次元の扉を無断で切り拓こうとして失敗した。
故に仲間からの信用は地に堕ちており、この聖杯戦争で挽回を狙っているのだ。

「フッフッフッフ……しかし、思い出しますなぁ。
聖杯戦争と言えば………。7年前のあの事件を………。」
「解体戦争か。全く…どいつもこいつも血眼になっていたな。
俺は当時は外野だったが、それでも事件の余波は大きかった。」
「それを私は目の前に体験した。あれほどの地獄は世にも珍しいだろう……。」

そう言うと男は瞼を閉じて、当時の光景を思い出す。
──────かつて戦争があった。魔術師たちが血で血を洗う凄惨な殺し合い。
冬木という極東の地にて、奇跡を顕現させる杯を巡った殺し合いがあった。
名を、聖杯戦争。

その中でも特に凄惨であったのが、男が目の前で体験した"第六次聖杯戦争"
通称"解体戦争"であろう。男は瞼の裏で、そのかつて見た光景を思い出していた。


◆  ◇  ◆


これが正しき脚本で無いと私は分かっている。
正しき脚本に、我らが姿など一文字も在り得ないからだ……。
だが、正しさが顧客満足度に繋がるか、と問われればそれは否だ。
面白き世を創るためには、時には過ちを犯さねば始まらない。

──────故に私は、未知の結末を望む──────

「聖堂教会より派遣されました。
第八秘蹟会所属のナイル・トトーティフと申します。」
「ロード・エルメロイ…2世だ。よろしく頼む。こっちが──────」
「遠坂凛です。よろしくお願いします。」

冬木教会にて、愛想の良い神父が二人の男女と挨拶を交わす。

「此度の聖杯解体、協力のほど感謝致します。」
「いえ、こちらも冬木の聖杯は目に余っていた所。
それを我らが第八秘蹟会の手で以てして解体できるなど……
こちらが礼を言いたいところでございます」

神父は気味が悪いほどに丁寧で柔らかい物腰を見せながら、
頭を深々と長髪の男性、エルメロイ2世に下げる。

「しかし…この聖杯はあのアインツベルンすら見放したもの。
我らの手に余りかねない代物。安全に解体できるのでしょうか?」
「御心配には及びません。こいつは口と性格と頭は悪いですが腕は確かです。」

長髪の男、エルメロイ2世と呼ばれた男は、
後ろに立つ赤い服の女性を乱暴に指さしながら嘆息する。

「ぜ、前半は余計でしょう先生!?」
「なるほど。人員は少数精鋭というわけですな。
良い事です。我らが善行、きっと神は見ておられる事でしょう」

ンッフッフッフッフ…と神父は笑顔で笑う。
それを見て、凛と呼ばれていた少女はかつて出会った神父を思い出し、
少しだけ苦い顔をしていた。

「では……始めましょうか。
冬木の聖杯に終止符を打つ、聖杯解体戦争を……。」





──────日本の地方都市、名を冬木という都市では、
計5度の魔術師同士の殺し合いがあった。

聖杯、万能の願望機をめぐっての殺し合い。
その中でも、第三魔法の実現を夢見たアインツベルンと呼ばれた家はしつこく、
あらゆる手を用いて聖杯に手を伸ばした──────が、悉くが裏目に出た。

「アハト翁も哀れなことだ。もはや手段であった"第三魔法の実現"が、
最終目的へとすり替わっている。同じ魔術師として嘆かわしい。」

私はクククと喉を鳴らして笑った。
しかし、そのような妄執も5度も失敗に終われば夢から覚めるという物。
彼らは冬木の龍脈に接続した大聖杯を放り、別の方法を模索し始めた。
だが、餌を放られればそこにたかるのが生き物の"性"だ。

今宵2010年某日。魔術師たちが聖杯という甘露を求めて集う。
無論、我らも例外ではない。冬木の大聖杯、それは極上の魔力源だ。
存在するだけで奇跡と言っていいだろう。なんとしても手に入れたい。

その為に我々は、子飼いにしていた魔術師の内、
同じく聖杯を求める魔術師の一人を傀儡として呼び出した。
いや語弊があったか。傀儡ではない。共闘関係だ。

「約束しよう。我らが保有する24の火力・原子力発電所。
その所有権並びに発電力全てをお前に預けると約束する。」
「ありがとうございます。ジャック=ド・モレー殿」

私の目の前で商談が繰り広げられる。
ふむ……中々のしたたかさだ。数多くの人間を見てきた私には分かる。
この男、前条件とは名ばかりに、これだけで欲しい物を全て手に入れてしまったようだ。
聖杯など二の次、いや…先ほど述べた物を手に入れる為だけに聖杯を得るつもりだったのか?

「では…………、行ってくれるね?マリスビリー」
「了承しました。聖杯戦争、必ずや勝利して見せましょう」
「フッフッフ、しかし貴方も奇特な人だマリスビリー殿。
ロードの一角でありながら、何故我らの傀儡に成り下がるような真似を?」

私が彼にそう問うと、彼は些細に俯きながらこう答えた。

「………………私には時間がない。
冬木の聖杯に奇跡を託す手も、もはや尽きた。
アレに詰まっている泥では、私の願いを叶えることは出来ない」
「ほう、貴方は一体、聖杯に何を望むので?」
「"富み"だ」

男は断言した。
それは一見すると、魔術師が望むものとは最もかけ離れているように見えた。

「ほう、意外に俗物らしいのですなぁ貴方は」
「勘違いしないで欲しいメルクリウス。私は、私の独自の方法で根源へのアプローチをする。
その為に必要なものは、時間でも技術でも、ましてや奇跡でもない。莫大な富なのだ。」
「………………なるほどそれは失礼した。それを確かめるためならば、
我らが傀儡になる事も一向にかまわない……と?」
「そうだ。道が照らされれば、躊躇わずに歩む者こそが魔術師であると私は考える。」
「素晴らしい限りだ。感服しますよあなたには」

私は思わず拍手をしてしまった。
これほどに素晴らしい魔術師など他にはいないだろう。
嗚呼なんて美しく気高き魂をお持ちなのだ。貴方の戦い・結末をぜひ見たい。
私はそう、我らが長に進言した。長は言った。

「無論、私も向かう。大いなる聖杯に我らが願いを託すために。
お前も来るか?カール・クラフト」
「僭越ながら、御同行させていただきます我らが長よ。」

こうして、我々は日本の地方都市へと向かった。
全ては、大いなる聖杯をこの手に掴む為に……………。





バン!!バン!!!と右腕が勝手に動き、跳ねまわる。

右目が縦横無尽の方向を向き暴れまわる。

がりがりと、右腕が胸や脚を掻き、肉を抉る。

──────抑えきれない。俺ではこれを抑えられない。

迎え、迎えと脳内に声が響く。
指し示す方向は極東。インド?中国?いや違う。
更にその先。恐らく日本と呼ばれる島国であろう。

嫌だ、嫌だ、俺は拒絶する。
何が起きているのか、俺にはてんで理解はできない。
が、それでも行ったらろくなことが待っていないという事だけは分かった。

愛したい殺したい抱きしめたい慟哭したい苦しめたい味わいたい壊したい付き合いたい
犯したい突き刺したい泣きたい軽蔑したい憧れたい楽しみたい引き裂きたい信じたい
憎みたい苦しみたい悲しみたい呆れたい諦めたい恨みたい死にたい期待したい

突如としてワッと、この世のありとあらゆる感情が脳裏を埋め尽くす。
ダメだ、これを外に出してはいけない。俺は直感する。

これは俺が墓まで持っていき、そしてこの世から滅するべきだ。
俺はこの時、心に決めたのだ。マイルストーンの姓に賭けて。





「おや、これはこれは……。
随分と珍しい方と出会ったものだ。」

私は思わぬ再開に、思わず口端を上げてしまった。
冬木に辿り着き、我々を待っていたのは紋章院のある少女であった。

「あら、これはファウストさん。お久しぶりですね。
そして、フリーメイソン総長ジャック=ド・モレー。お初にお目にかかります。
グロース紋章院にて、紋章官を務めさせていただいています。クロニク=アンディライリーです。」

仮面を被った少女は頭を下げる。
知っている人物だが、始めて対峙する姿であった。
大方、また姿が変わったのだろう。まぁなにせ、以前会ったのは大戦時なのだから、
変わっていても当然と言えるか。

「………………………。」

それに対し、我らが長は言葉を発さない。
ただその周囲には、威圧感が漂うのみである。

「えーっと、そちらの方は……」
「時計塔天体科ロード、マリスビリー・アニムスフィアと申します。」

マリスビリーは少女に頭を下げる。
少女はそれにこたえるよう、軽く会釈をした。

「何故、貴方がたも冬木の街に?
紋章院と言えば己が手で生み出すことを良しとする組織。
そんなあなた達が、聖杯を欲するとは思えませんが………。」
「ええ、少し調査に参りました。冬木の大聖杯は、汚染されたとはいえ特級の奇跡。
我らが紋章院の命題解決に向け、何らかのヒントが得られればと考え、此度は参りました。」
「ほう、では聖杯には興味は無い………と?」
「はい」

少女は断言した。
なるほど、人と言う存在も存外見捨てた物ではない。
己が願いは己が手で叶える。それが真に正しき人の姿なのだから。

「しかし、出来れば持ち帰りたいとは考えています。
腐っても聖杯ですし、中身も有効活用できないか模索できますしね。」
「なるほど。ですが聖杯は我々が得る。こればかりは譲れませんよ?」

互いに軽い表情で談笑を続ける。
だが、その彼女の背後から感じる敵意はひしひしと感じていた。
どうも彼女には、聖杯を持ち帰りたいという強い意志があるようだ。
命題解決のヒント?面白い建前だ。その感情、人一人殺したいと言っているようにも見えますがね

「……………………。」

ガタリ、と我らが長が立ちあがり、少女へと近づく。
ギシ、ギシリと、一歩歩むごとに強い魔力により床がきしむ。

「いつまで娘の背後に隠れている気だ、紋章の使徒よ。
表に出て来い。貴様とは一度、直接話がしたかった。」
「………ほう。」

こう動くか、と私は考えた。
私としては、もっと紋章院との全面抗争(みちなるけつまつ)となっても良かったのだが、
まぁそうなれば我らとて無事では済まない。こう動いてくれたことを感謝するべきか?

「……………………。」

少女は少し、怒っているのような悩んでいるような表情で固まっていたが、
しばらく絶つと、コホンと短く咳払いをした。

「お父様がお話になられます。皆さま、傾聴しなさい」

そういうと、少女を纏う魔力の質が、量が、雰囲気が、
全てが変わった。このオーラ、まるで初めて我らが長を見た時が如く………。
いや、近いが似て非なる物であった。

「"この姿となってから"会うのは初めてだな。フリーメイソンの創設者よ」
「互いに、随分と変わったものだな。グロース=アンディライリーよ」

二人の間は、互いの強すぎる魔力で陽炎の如く景色が歪んで見えた。
それほどまでにオーラのある二人の対談。私はその未知に打ち震えた。

「ふむ……こうして直接対面し直感した。
以前から"そうではないか"と考えていたが、なるほど……。」

少女は、いやグロースは、何やら納得したような数度頷いた。

「何故貴様は"降りてきた"?」
「我が渇望を満たす為」

「何故人の世に潜む?」
「我が恩讐を晴らす為」

「何を求める?」
「我が本能の行く末を」

「何処へ求める?」
「知れたこと。この世界の時の最果てまで」

二人は短き言葉で問答を繰り返す。
もはや"それ"は常人たる我らには届かぬ領域である。
その短き問答の繰り返しで、二人が何を知り、そして何に納得したのかも
分からないまま、彼らの対話は続く。

「今度はこちらの番だグロースよ。
単純な問いだ。──────貴様は"何だ"?」

どうやら次は我らの長の番となったようだ。
しかし我らが長は、何やら真意が分からない質問を投げかけた。

「名前や職業などを聞いているのではない。
貴様はどういう存在だ?何処から生まれ、何処へ向かう?」
「私は、私の辿り着く先へ向かうだけだ。後退は無い。止まる事もない。
ただ歩み続け、そして辿り着く先へと向かう。」
「故にその"枝葉"を手繰る術を見出したのか。しかし、それは無意味だ。
お前には辿り着けない。肝心要たるものがない。常人にすら在るものが、お前にはないのだから。」

我らが長は、まるで遠回しにグロースを否定するような言葉を放つ。
枝葉か………、はてさて何を表すのか。分かるようで分からない比喩だ。
しかし、分かったのか?彼がどういった存在なのかを、この短きやり取りの中で!

「──────ああ、そうだ。分かっている。
私は常人にすら足りない。ただ在るだけの存在だ。」

グロースは、我らが長の言葉に対し、
まるでそれを認めるように少し笑い、短く息を吐く。

「故に…………私は"人"を創り出した。
私の持つ全てをかけ……そして作り上げたのだ。
それが私の見つけた一つの答え。雁来紅アマランサスだ。
彼の、ボルチェイブの正当なる後継となるべき、唯一の成功作だ。」

グロースは言う。……はて、ボルチェイブ………
何処かで聞いた、もしくは"出会った"ような、奇妙な感覚があるが……。
…と、私が考えていると、我らが長はクククと喉を鳴らしていた。

「────────面白い。面白いぞ"出来損ない"よ。
いや、出来損ないであるが故に、人類の枠より外れた者よ。
我はお前を祝福しよう。三千世界の果てにまで手を伸ばす貴様の在り方を祝福しよう。
その在り方を、この我も模倣しよう。今宵貴様に出会えた事を、我は誇りに思う。」

そう言うと、我らが長は踵を返してグロースより離れていった。
気のせいか…私には、その時の長の表情は"笑って"見えた。

「?どうなされましたか?ジャック=ド・モレー殿」
「聖杯に興味はなくなった。」

それは、確かに私にとって理解しがたい言葉であった。
まさに……文字通りの"未知"であった。思わず、口端を歪め上げるほどに、"恍惚とした"………。

「聖杯に求めるべきであった解は、今見出した。
もはやあれは内に災厄を詰め込んだガラクタだ。今の我は気分が良い。
マリスビリー、契約通り貴様には発電所を複数授けよう。
お前たちは、残りたくば残ればいい。好きにしろ」

そう言うと、我らが長は去っていった。
その様は、明らかに私にとって道であった。
決して在り得るはずの無い、『答えを知った堕天使』の姿であった。

────────────嗚呼、この日、この時こそが、
この世界にとっての黙示録の日ディエス・イレであったのかもしれない。
であれば私は、私としての"本来の"在り方であれば、此処で彼を止めるべきであったのだ。

だが私は知っている。未知なる既知と言う快楽を。
花が空へ伸び往くように、蜂が求愛の踊りを生まれつき知るように、
起源より根源に在る"衝動"。それこそが、私が求めていた物であった。

この数分にも満たぬやり取りが、この世界を袋小路に変えた。
だが私はそれを悲しまない。後悔しない。むしろ誇りにすら思う。
当然、私本来の使命も忘れてはいない。それはまた、"別のアプローチ"で解決するとしよう。

「嗚呼、足掻け足掻け、我らが愛しき自滅因子よ」

私は思わず声を出して喜んでいた。
この解体戦争、この十数分にも満たぬ会話劇にこそ、意味があったのだ。





では、その後に何があったのかをお話ししよう。
なんてことはない。凄惨なりし殺し合いがあっただけの話だ。

───────いや、それだけで済ますには惜しい。
ああそうだ。彼らの対談で薄れゆくところであった。
もう一人、私は魅力的な未知に出会っていた。

「やぁやぁジェフティ、久しぶりだねぇ。何時ぶりだい?」
「これはこれは空蝉殿。相変わらずお美しく、再開できたことが喜ばしい」
「こらこら、相変わらず見え透いたお世辞を言うんじゃない」

彼女の名は空蝉瞳。日本に生きる弦糸五十四家の一員。
此度の聖杯戦争で会えるか否かと言ったところであったが、まさか本当に会えるとは。
非常に魅力的な女性であって、会えた悦びもこれまた一塩だ。

「それで空蝉殿。どうしてまたこのような地方都市へ?」
「決まっているだろう?聖杯さ。知っていて聞くのは趣味が悪いぞ?」
「ハハハ、これは申し訳ない」

彼女は明るい。会う度にそう感じる。
原始女性は太陽であったと語られるが、彼女の明るさはまさに"それ"だ。

「まぁ、別に聖杯は手に入っても入らなくても良いんだけどねぇ〜。
ほら、手に入ってもメンテナンスなりなんなり、面倒だろう?」
「ふふ、貴方聖杯を家電製品かなにかと勘違いしておられるので?」
「それは大変だ!分解してメンテナンスが必要じゃないか!」

彼女は無邪気に振る舞い、冗談か本気か分からないことをよく言う。
ああ、実に愛おしい。付き合っていて"飽きない"人間は数少ない。
その内の一人が、彼女だ。

「分解できるものなら、全世界にばら撒きたいくらいだよ。
桐壺(れんちゅう)に渡るくらいならね、カール・クラフト」
「──────────────やはり貴方は、面白い人だ。」

彼女は先ほどまでと表情を変えずに、
"まるでそれがさも出来るかのように"その願望を口にする。
───────嗚呼、やはり飽きないなこの人は。
近づく物を全て焼き去る、太陽が如き魅力を持つ。

「やはり此度の聖杯戦争、桐壺も空蝉も動いているので?」
「まぁね、恥ずかしい話だが、どちらも大人げが無いんだ。」
「聖杯の残骸を、いかがなさるつもりで?」
「なぁに、君たちの悪いようにはしないつもりだよ?
うっかり聖堂教会に渡って、世界中にばらまかれるだけの話さ。」
「────なるほど……。大体あなた方が行おうとしていることは分かりました。
しかし随分とまた思い切った事を。貴方おひとりが考えたので?」
「私だけじゃない。あの神父が提案してきたんだ」
「ほう、監督役が」

意外な名前が挙がった。なるほど彼か………。
一目見た時から只者ではないと思っていたが、彼とも交友を深めるべきか

「ああ何という悲劇だ!聖杯を並列稼働させ楽園へと至るサーヴァントを探す計画が!
よもや教会の手に渡り世界中で聖杯戦争が勃発する引き金となるなんて!
でも、これで桐壺の手に渡るのは阻止できるけど私は悪くない。」
「なるほど。世界中で行われるようになる聖杯戦争で、求める英霊を探すおつもりかな?
しかしリスクは高い。最悪、獣を呼び寄せる可能性もある。聖杯とは正と負の可能性の塊なn」
「構いやしないさ」

彼女は、それがさも当然の事であるかのように言った。
なるほど。例え己が住む世界であろうとも見捨てる胆力。
それこそが、未知にとって必要なのかもしれない。

「この世界の未来は閉ざされていると宣告された。
ならば剪定し、そして生まれ変わらせる方がよほど有意義だと思わないかい?」
「なるほど正論だ。その自分がいる世界すらも捨て駒と計算できるその頭脳。
貴女こそが空蝉派の頂点に立つに相応しい。」
「下手な世辞だ。辞めてくれよ。」

フフ、と彼女は短く笑った。
その笑みは、暗に「それだけが目的でない」と語っているようであった。
───────面白い。終焉の果て、再誕の叫び、暗黙の黙示録すらも己が手の上で
踊り狂わせようと画策するのか、この女は───────

「そろそろ行くよ。ああそうだ。
オリジンストーンの連中が見当たらないんだが何か知っているかい?
こんなビッグイベントだって言うのに、何故来ないんだろうね」
「さぁ。我々は一切の関与はありません、とだけ言っておきましょう。」
「ふぅん、そうかい」

そう言うと、彼女は背を向けて私の前から背を消した。
───────ああ、実に愉快だ。彼女の背を見るだけで笑みが零れる。


貴女の行動が、弦糸の見た破滅の引き金であるというのに………。





───────あの男、Dr.ノンボーンが去った後、
私は独り、漆黒の部屋にて唱える。

「絶望も、希望も、全ては人を傷つける」

そのまま聖杯の解体は滞りなく終了した………。
しかし、行方が分からなくなったものが2つある。

「逆境の先に希望を見るだろう、絶望の先に意義を試すだろう」

それは"希望"と"絶望"。
聖杯の欠片と、聖杯の泥(なかみ)。

「然してそれらは、大いなる星の前では全て無意味にすぎない」

だが、それがどうだというのだ。
例えその程度の些事、これから人類が突き当たる壁に比べれば些細なことだ。

「星は軽薄である 運命は対価を求める 大地は非情なる利子を求める」

未来に待つのは、渦巻く惨禍、
殉う大地、そして深紅に染まる空………。

「だが人は、自身が盲目である故に、対価も利子も顧みず欲を満たす」

そこまで堕ちても人は気づかないのだ。
己が愚かであったと、人理を肯定するなど、間違いであったと………。

「己が愚かさを悔いろ人よ、その為にはすべてを失うのが好ましい」

故に私はここにいる。神々の使者として。
抑止力の新たなる使者として

「食べろ、飲め、遊べ、そして殺せ。
閉ざされた未来(このさき)に、もはや快楽などありはしないのだから」

そう、私は私の役割を果たそう。
例えどれだけ己の心がねじ曲がろうとも、目的だけは果たして見せよう
故に私は─────────────────────


未知の結末を見るActaestFabula

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