ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

オデュッセウスはイタケの国王だ。
イタケの島は絶えず波が押し寄せ、岩は鋭くそそり立っている。
一見恐ろしげに見える国だけれど、実はとても明るくて、土地の豊かな場所だ。
ボクはその国を治めている。愛すべき土地、愛すべき民、そして愛すべき家族の待つ故郷。
────早く、帰りたい。
でも、ボクの祈りをあざ笑うかの様に、この旅路には多くの受難が待ち受けていた。


ボク達の船団は、激しい嵐に巻き込まれた。
人の力で対抗できるはずもない大いなる天災は、ボク達が取るべき航路を大きく外した。
──ここが、どこなのか分からない。見たことは勿論、聞いたこともない花が咲き乱れる国。
美しいけれど、でもここは、ボク達の居るべき場所じゃないね。
「オデュッセウス様、先遣隊からの報告がありました」
「ああ、言ってくれ」
「この先に、小さな村が一つあるようです。──どうにも村の住民の様子が、おかしいようですが」
「おかしい、と言われてもねえ。充分気を付けるように伝えておいてよ」
ボクは三人の信頼出来る部下に、島の偵察をさせていた。
村があるなら、儲け物だ。船旅は長い。食料はあるに越したことは無いからだ。
──もし、分けてくれないなら。その時は、またボクも嫌な仕事をしないといけないけど。


先遣隊からの連絡はそれきり途絶えた。
たかだか小さな村一つ相手に、イタケの兵が殺されることは無いと思うけど──。
最悪のケースを想像し、ボクは身震いした。
戦争で多くの部下を失ったというのに。もう、こんなのは慣れているはずなのに。
愛する部下を失う心の痛みは、いつまで経っても鈍ることを知らない。
「──失いたくないなら、動かないとねぇ」


ボクは先遣隊を探すために、数人の部下を連れて島に踏み込んだ。
島中に咲いている不思議な花を見ると、なんだか吸い込まれてしまいそうな感覚を覚える。
これ、一体なんなんだろう。お腹空いたし、食べることは出来ないのかなあ。
草木と花をかき分け進むと、そこには一つの集落があった。
人々は恍惚の表情を浮かべ、幸せそうにだらしなく頬をほころばせている。──確かに、おかしいなこれは。
目を凝らしてよく見てみると、村民の中にボクの部下が紛れている。
「おい、何をやってるんだよ。物資でも分けてもらって、さっさと帰るよ」
「──? あぁ、オデュッセウス様じゃないですか。見てくださいよ、この花の蜜」
「島のそこら中にあるあの花かい? それが、どうしたのさ」
「この島にはこの花しか食べるものが無いんですよ。──いや、他のものは全て必要無いってことです」
「そう、俺達も同じです。この蜜以外、なぁんにもいらない」
先遣隊の三人は、幸せそうに蜜をすすっている。
まるで、乳を吸うことしか知らない赤子の様にそれだけを繰り返している。
明らかに怪しいな、これ。
ボクは連れてきた部下に注意をかける。
「分かってるだろ? お前たちはこの花の蜜、飲むんじゃないぞ」
「──そうですね。こいつらがここまで腑抜けになったのは、この蜜のせいでしょうか」
「そういうこと。蜜ならもっと美味いものがあるだろうに、これだから童貞はねえ」
ボクは、先遣隊の連中を蹴りつけた。
「たとえ童貞でも、イタケには君たちを待つ母がいるだろう! 祖母はどうした! 祖父は! キミ達には姉と妹だって居ただろう! 愛する人の下に帰る。それがボク達のすべきことだろう!」
「そう固くならないで下さい、オデュッセウス様。あなたもこれを飲めば、考えが変わりますって」
「そうそう。この蜜を飲むだけで、俺達こんなに幸せなんすよ。他のものは必要ないって言いましたよね?」
「──ッ! この、バカ共!!」
ボクはもう一度、腹を蹴り飛ばした。
しかしこいつらは、その痛みすらどこ吹く風といった様子だ。
「船に戻って、鉄の鎖でも持って来い! もう、ふん縛って連れてくしかないよこいつら!!」


結局、ボク達は何の収穫も無いまま、この島を後にした。
先遣隊の三人は酷く暴れたが、鎖で雁字搦めにして無理やり船に乗せてやった。
まったく、無駄な労力を使わせる。
どこか、もっとマトモな食べ物を補給できる島は無いかな。


次にボク達が辿り着いたのは、大きな洞窟と豊穣な土地が見える豊かな島だった。
大勢の家畜が飼われているようで、草と潮風と動物の糞の入り混じった香りが漂う。
うん。悪くはないじゃないか。ちょっとばかし、ここで休憩していくとしよう。
──しかしなぁ、あの洞窟。どうにも大きすぎるんじゃないのか。
「や、や。怪しい島だけれど、とりあえず調べてみようじゃないか。ボクが様子を見てこよう。王様を守ろうって気概のある勇者がいれば、着いてくるといい」
そう言われては、部下も着いていかないわけにはいかない。
12人ほどの部下を連れて、美しい月桂樹の茂る岬へボク達は向かった。


「お、オデュッセウス様。やっぱりこの島、おっかねえんじゃないですかい?」
「ボク、着いてきていいのは勇者だって言ったよね。素面で無理なら持ってきた酒でも飲んで誤魔化せばいい。顔を赤くすれば、多少は勇ましくなるだろう?」
ボク達は、洞窟の中に忍び込んでいた。
中は高い丸天井になっていて、どうにも家畜小屋として使われているらしい。
家具はどれも人の何倍もあろうかという大きさだ。
隅に置かれた巨大な簀子の中には、戦車の車輪ほどもある巨大なチーズが熟成されている。
その隣では、風呂と見紛う桶の中に、固まりかけのミルクが詰まっていた。
「──分けてもらえないかな、これ」
これだけの食料があれば、しばらく飢えの心配は無い。
ちょっと味見をしてみたところ、抜群の塩味で酒の肴に嬉しい。保存性も高いだろう。
だが、これほど巨大な家具や食べ物を普通の人間が必要とするはずもない。
──ひょっとすると、これは。
「──出入り口、ちゃんと見張っててね」
「も、もう遅いです王様ぁ! きょ、巨人が外に!!」
気付くのが、遅かった。
洞窟の入り口は、巨大な岩で塞がれてしまった。


真っ暗になった洞窟の中を、一つ目の巨人はのしのしと歩いている。
あいつは──キュクロプスだ。
巨人は燻っていた熾火を一息で燃え上がらせ、いく抱えもの枝を火にくべた。
光が一気に広がり、隅で固まっていたボク達の姿を照らした。
「ん!! 何、ぁああああああ!!!!!」
キュクロプスの咆哮がぐわんぐわんと洞窟に木霊する。
部下の数人が、それだけで気を失ってしまった。
これはマズイ。非常にマズイ。
ボクは、キュクロプスの前に進んで立った。
「や、や、やぁ。ボク達はギリシャ人さ」
恐怖による震えを抑えきれないまま、ボクは巨人に話しかける。
「色々あって、この島に打ち上げられてしまったんだけど……。これって、全能の神ゼウスの導きだとは思わないかい? ね? これは素晴らしい縁だよ。ボク達を少し休ませてくれるわけにはいかないかな?」
キュクロプスはまた吠えた。
──ダメだ。こいつ、絶対人の話を聞かないタイプだ。
キュクロプスは気絶していたボクの部下を2人その手に掴み、岩に叩きつけた。
獲物が死んだことを確認すると、そいつは嬉しそうに2人の手足をもぎ、口の中に放り込んだ。
くちゃくちゃと人が咀嚼される音が響き渡る。
キュクロプスは満腹するとすっかりボクのことを忘れたようで、その場に倒れて大いびきをかき眠り始めた。


翌朝。キュクロプスは目を覚ますなり、地に響くような大きな欠伸をして立ち上がった。
「ヒィ!」
部下が悲鳴を上げる。
キュクロプスはその声に気付き、声の主を2人、またその手に掴んだ。
そして、ゴキゲンな朝食だと言わんかの様に、大口を開けてむしゃむしゃと2人を食べ始めた。
「王様ぁ……」
泣きそうな目で、隣に座った部下がこちらを見ている。
次に喰われるのは誰か、想像して怯えているのだろう。
ボクは王だ。いつだって冷静に、部下を導いていかないといけない。
恐怖に打ち克て。奴に復讐しろ。ボクはトロイアを征服した、策士オデュッセウスだぞ。
「目には目を。歯には歯を。とびきりの痛みを、奴にくれてやろうじゃないか」
兵を鼓舞する為に、ボクはそう呟いた。
敵は確かに強大だけれど、倒す方法ならある。
なにせ、あんなに愚鈍なんだ。ボクが負けるはず、無いじゃないか。
キュクロプスは朝食を終えると、羊の世話をしに洞窟を出た。
ご丁寧に、ボク達が逃げられないように、入り口を岩で塞いでから。
──今の内だ。奴に一泡吹かせる武器を、用意しようじゃないか


日が落ちた頃、キュクロプスは洞窟に戻ってきた。
奴はまた2人の部下たちを掴むと、殺しもせずに齧りついた。
──畜生、今に見ていろ。復讐の手筈は、もう整っているんだ。
部下達が持ってきていたとびきりのぶどう酒を器に注ぎ、ボクはキュクロプスの前に歩み出た。
「や、や、や。巨人君、これ、お酒っていうんだ。とっても美味しい飲み物だよ。特に食後に飲むのはそりゃあもう、最高さ」
キュクロプスは一つ目でギョロリとこちらを見た。
ひとまず、美味しい飲み物という言葉だけは理解したようだ。
器を乱暴に掴み、キュクロプスは一気にぶどう酒を飲み干した。
「お、おぉう……。こ、こいつ、うめぇなあ……」
「そうだろ? ボク、まだまだ持ってるんだけど、どうかな」
「うぉぉおおう……! 寄越せ、全部、寄越せえ!!!!!」
巨人はぶどう酒の味わいにすっかり虜になり、次々と器を空にする。
酒が入ったおかげで巨人の身体はふらふらと揺れ、平衡感覚を失くしているようだ。
「お、お前ぇ。何て、名前だぁ……?」
「ボク? それを知って、どうするのさ」
「この、酒。すげぇ、うめぇからなあ……。何か、礼を、してやらねえとなあ……」
ボクは少し間を空けてから、告げた。
「ボクは──ウーティス」
「ウーティス、かぁ……。よぅし、お前、には、礼をしてやるぅ……」
キュクロプスはニタリと笑った。
「おめぇを食うのは、最後、に、してやる。ど、どうだぁ? 嬉しい、だろう……?」
「……やれやれ、聞いたこともない、素敵なお礼だよ」
キュクロプスは大笑いし、酒の酔いでそのまま倒れた。
──さぁ、復讐の時間だ。


この洞窟には、引き抜かれたままの大きなオリーブの木が乱暴に捨てられていた。
キュクロプスが留守にしている間、ボク達は剣で木の先端を削り、巨大な槍に仕立てあげていた。
ボクと生き残りの部下はこの槍を担ぎ上げ、焚き火に先を差し込んだ。
パチパチと木の焼ける音が立ち、槍は燃え上がった。
「さ、さ。いくよ。せぇ────のっ!!!!」
炎を纏った槍を、キュクロプスに突き立てる。
槍は一つ目のまぶたを貫き、じゅうじゅうと湯気を立てる。
眼球の水分が沸騰し、煮えたぎる痛みがキュクロプスを襲う。
「ぐわあああああああああああっっ!!!!!」
キュクロプスの悲鳴にも増す唸り声が、洞穴に轟く。
その声は、断崖に響き、森を抜け、山にまで木霊する。
悲鳴を聞きつけた他のキュクロプス達が、ぶつぶつと文句をつぶやきながら、洞窟にやってきた。
「ポリュペモス、どうした? 何故そのような悲鳴を上げている……。誰かが、お前を傷つけたというのか」
ポリュペモス──それがこいつの名前か。
それにしても他のキュクロプス達は、ポリュペモスより随分理性的じゃないか。
「お、おぉう……! うぉぉぉおお……! ウ、ウーティス……ウーティス……」
「ウーティス(誰でもない)? ……人騒がせな奴だ」
キュクロプスは呆れた様子で、洞窟から出ていった。
「ち、違うぅぅ……! ウーティスが……ウーティス、がぁぁ……!!」
ポリュペモスは叫んだが、もはや誰も耳を貸そうとしていない。
さぁて、ざまあみろってところだ。
こいつの大事な大事な一つ目は、焼き潰してやった。
もう怖くなんかあるもんか。どうやって船に戻ろうかな。


ボクはポリュペモスに飼われていた羊を運び出し、停泊してあった船に積み込んだ。
あれだけ部下を殺されたんだ。せめてもの代償って奴をいただかないと、腹の虫が収まらない。
船いっぱいに羊を乗せ、ボク達は出港した。
「やいやい、バカのポリュペモス! もうその目じゃあ夜明けの光だって見ることは出来ないねえ。ざまあみろ! ボクはウーティスなんかじゃない。イタケの国王、オデュッセウスだ!! そんなノロマな頭でボクを食おうとしたのがバカだったのさ! よくもボクの部下を殺してくれたね。これはその残忍さへの罰だよ、コラァ!!」
思いつくだけの恨み言を、思いっきり洞窟に向かって投げかける。
どんなに叫んだって、言い足りない。仲間を殺されたこの痛みは、どれだけあいつを傷つけたって胸から失せるものか。
「おォォォう! オデュッセウスゥゥゥゥゥ!!!」
ポリュペモスは怒り狂い、岩を投げた。
しかし目の見えないあいつが、それを当てれるわけがない。
岩は明後日の方向に向かって飛び、飛沫を上げた。
「我が、父よ……ポセイドンよ……!!! オデュッセウス、に、どうか、裁きをぉぉぉぉっ!!!」
ポリュペモスの呪いが聞こえる。あの野郎、まだ諦めないつもりか。
しかし、ボク達の船はどんどん水平線に走っていく。
──ったく、こんな羊の群れが報酬じゃあ割に合わない。
次はもう少し、平和に進めるといいけどなあ。

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