ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。





あの日、俺は遠い彼方の景色という物を見た。


今も思う。あの日見た景色は……今見ても美しい物なのだろうか






「…………下関海峡の砲台は既に占拠されたか………」
薄暗い部屋にて、一人の男が苦々しい面持ちでつぶやく。
「藩主殿、もはや我らに打つ手はございません
列強諸国は我らを敵と定め、着々と追い詰めんと準備を進めています」
「では我らに何の手立てもないままあの南蛮賊共に迎合しろというのかぁ!!」
ダン!!と畳を力強くたたく音が部屋中に響く。
『………………………………。』
その迫力に、部屋にいる各々はただ押し黙るしか道はなかった。
だが、現在の状況が八方ふさがりであることも事実であった。
「…………………待って下さい、諦めるのはまだ早いです」
「────────────────何だと?」
沈黙を破ったのは、一人の男であった。
その男は、確固たる自信を表す強い眼光で藩主を見て言い放った。

「奴がおります。かの狂人吉田松陰生誕の地にて隠遁を行っている…………奴が……」





『おい!待てよー!!そんなに早く走っちゃ追いつけねぇだろー!』
『ははーっ!稔麿は足がおせぇなー!』
『うるせぇー!お前は暴れ丑だこのやろー!』
『こらこら、喧嘩をしないしない。みんな仲良くですよ』
『ああ、先生おはようございます!』
『おはよーごぜーまーす!!』
『はい、元気がよろしくて非常にいい
流石はうちの塾でもとびきりの優等生たちだ………』

『この分なら、きっと君たちは、良い■■■に─────────』

「──────────夢か………」
男は、微睡から目を覚ました。
長きに渡り寝ていたような、しかし全く時が経っていないような、心地いい目覚めだった。
「まさか、あの人の生誕の地であの人の夢を見るとはなぁ……クックック」
男は一人喉を鳴らしながら、顔を洗うために井戸への向かおうとした。
────────────────────その時であった。
門を開いたその向こうには、かつて男を追放した役人たちがいた。
「…………………ほう、朝早くご苦労だなァ役人ども」
「ふん、貴様のような奴の顔をもう一度見るなどごめんだったがな」
「オイオイ早速憎まれ口かぁ!?しかしどうした?俺は反省するために10年隠遁するといったはずだぜぇ!?」
「………………………チッ!」
役人は、苦虫を?み潰したような顔をして舌打ちをし、そして続ける。
「我ら長州藩の砲台がやられた………。現在列強諸国たちがこの長州藩を敵と定めている。
この日本国でも我らが敵として定められようとしている……………っ!」
「─────────ほう……………」
ニィ、と男は薄く口端を釣り上げて、笑う。
「頼む……。力を貸せ!貴様のような輩に力を借りるなどごめんだが…!!
もはや我々に遺された道はない!貴様のその行動力こそが我々には必要なのだ!!」
「良いだろう…………ッ!クククッ!!ヒャーッハハハハハハハハハァ!!」
男はうなずいて役人の言葉に了承をすると、我慢ならないと言った様子で笑い始めた。
「何がおかしい!!」
「おかしいに決まっているだろォ!?今この瞬間に歴史が動こうとしているんだぜぇ!?
閉塞されたこの国に諸外国の船が降り立ち!!そしてそれに真っ向から立ち向かうが長州藩!!
面白れぇ!面白れぇぞ!!今この場でまさに歴史が!!世界が変わろうとしている!!」
ダダダッ!と男は門から勢いよく駆け出し、そして天を仰ぎ見て声高々に叫んだ。
「そして俺はその中心に今立とうとしている!!良いぞ!こんなに素晴らしい事ぁネェ!!
さぁ世界よ!!歴史よ!!この俺様をォ!!満足させてみろォ!!ヒャーッハハハハハハハハハァ!!」
「………………………大丈夫なのか……!?あんな男を解き放って!!」
「分からない………………ただ、藩主の言葉には逆らえん!」






そして舞台は移り、先ほどの薄暗い部屋へと戻る。
先ほどまでのメンバーに一人、かつて狂人と呼ばれた男の思想を受け継ぐ男が顔を連なせる。
男たちが囲むようにわら半紙に書かれた今の状況を覗き込み目を通す。
「─────────この今の状況を、お前はどう見る高杉。」
「………………………。」
男はしばし黙って顎を撫でながらそのわら半紙を穴が空くほど見つめていたが、
やがてニヤリとほほ笑んでこう一言言った。
「最悪だな」
『なっ…………!?』
「聞こえなかったのか?現状は最悪だと言ったんだ
この状態で長州藩が残っている状態なんざ奇跡にも等しいぜ?」
「な!ならばなぜ笑う!!貴様この状況に打開策でも見出したというのか!!」
「当然だ。わかってるじゃねぇか藩主サマよぉ」
ククク……ッ、とのどを鳴らしながら男は言う。
「まずは兎にも角にも人だ!人が集まらなきゃあ話になりやしねぇ!!」
「だが!そんな人員などもはやこの長州藩には残っていないだろうが!
戦死!疲労!重傷者!!下関戦争の犠牲はもはや数に表しきれないほどだ!!」
「残っていない………だァ?てめぇの目は節穴か?人員なんざそこら中に転がっているじゃあねぇか!」
その言葉に、その場にいた誰もが目を見開いて驚いた。
「……………貴様まさか、武士でない者まで戦いに駆り出そうというのか!?」
「当然だろぉ!?ここまで追い詰められたら連中にも戦ってもらうほかねぇ!
志があればあるほどに良い!いや違う!志があるやつならば身分なんざ関係なしに集う!
集いし志士たちが武器を手に取り戦う!!これぞ正しい戦争ってやつじゃねぇか!!ちげぇかァ!?」
男は立ち上がり、両腕を振るいながら己の考えを周囲にいる男たちに訴えかける
「藩主!!やはりこいつは狂人です!このような常識外れな言葉などに耳を傾けては────!!」
「……………………………………………………いいだろう」
「藩主!?」
「ほう、話が分かる藩主様じゃあねぇか……ククッ!気に入ったぜぇ」
「ただし、その総督は貴様に一任する。失敗したときに何が待っているか………
覚悟してこの任に臨むことだ」
「良いだろう!!有志が集いて一隊の元に力を示す!!
名付けて奇兵隊だ!!この閉ざされた世界に風穴を開けてやると誓おうじゃねぇか!!
ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハァッッ!!」





だがしかし、男の勢いはそう長くは続かなかった。
阿弥陀寺を拠点とし彼らは活動を行うも、その身分に関係なく集うという在り方は問題を起こした。
次第に軋轢は大きくなり、最後には奇兵隊と撰鋒隊の衝突という事態を引き起こす。
彼はこの責任を問われ、総監を罷免された。

そして時は過ぎ8月、英吉利、仏蘭西、亜米利加、阿蘭陀の四ヶ国連合艦隊が下関を砲撃。
もはや打つ手なしと思われたその時であったが、和議交渉の場に立った男こそ他でもない、高杉晋作であった。
彼はそのたぐいまれなる交渉術(という名の話術錯乱)により提示条件の一部取り下げに成功した。
後にその様は、「負けたくせに傲然と怒り狂い、まるで魔王のようだった」と語られる。

────────────こうして、諸外国との戦いは幕を閉じた。
しかし、次に彼らの前に立ちはだかったのは、幕府軍であった。
もはや奇兵隊も失い、恭順派が握る藩兵は二千人を下回っていた。
対する幕府軍の数は延べ十五万人………。絶望的な数値であった。
この数を前にして男は、高杉晋作は……国にまで喧嘩を売ることはないだろうと誰もが考えていた。


だが──────────、奴は弾けた。


「志があるやつぁ!!この俺様についてきやがれぇぇぇぇえええええええええええええ!!!」
『ッ!?高杉晋作……!?脱藩したはずじゃあ……!!』
「死の淵から舞い戻ってきたぜぇ………テメェらのあまりの不甲斐なさにぁ
死んでも死にきれねぇからなぁ!!ヒャーッハハハハハハハハハァ!!」
高台に一人上り、男は声高々に叫ぶ。そして己についてくる覚悟のあるものがいるかを問う。
………………………しかし、連中の反応は冷たい物であった。
『ふん、何が志だ』
『池田屋事件とその抗議で同胞を失わせやがって』
『それで脱藩で逃げ出してまた志だと?長州藩の面汚しがぁ!』
「────────────とにかく、俺は功山寺で待つ。
我こそはという奴がいたならば………そこまで来やがれ」
そう言い残し、男は一人功山寺へと向かった。

『………………まぁったく、あいつはいつも一人で考えて動くなぁ、仕方のない奴だ』





──────────────その日の夜、功山寺
当然といえば当然の結果であるが、そこには高杉晋作意外誰一人としてこなかった。
「………………チッ!!腰抜け共がァ!!」
激昂しながら高杉は一人刀を握り、山を下って戦おうとする。
「俺は一人でもやってやる……!!幕府軍を皆殺しにしてやる!!
何があろうと……!!この満たされない世界で満足する生き様を遂げてやる!!!」
そう言いながら一人、漆黒の闇に染まる夜景を見渡して、ふと思った。
「…………………そう言やぁ……、前にもこんなでっけぇ風景を一望したっけかなぁ」

「ほう、君が感慨に耽るとは…………珍しいじゃぁないか」

声がした。
高杉がその方向を振り向いた時、そこにはかつての顔なじみが立っていた。
「なっ……………!!俊輔ぇ!?お前……どうしてここにぃ!?」
「どうしてもこうしても………君が言ったじゃないか、『我こそはという奴は功山寺に来い』と」
「…………えっ?じゃあ、お前がぁ!?」
「僕だけじゃあないさ。僕が連れてきた力士隊たちもいる」
『ウォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!』
闇と静寂が支配していた功山寺に、男たちの雄たけびが木霊する。
「まぁこのように能はない連中だけど力だけはあるから頼りにしてほしい」
『そりゃあねぇぜ伊藤サァン!!』
ハッハッハッハァ!!と高笑いが響き、高杉もそれにつられて笑みがこぼれる。
「他にも?何人かちらほら君の意見に賛同する人がいたから連れてきたよ」
そう言って伊藤と呼ばれたその男は片目をつぶる。
「ありがてぇ……やっぱ最高だぜお前ら!!我らが長州藩!!最っ高だぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
高杉晋作は天高く拳を握り突き上げる。そして馬にまたがって言い放つ。
「さぁさぁテメェらぁ!!これよりその九州男児の腕前!!
この目に焼き付けさせてもらうぜぇぇぇぇぇ!!」
『ウォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!』
そう男たちが雄たけびを再度上げると、次々と山を下り敵である俗論派が待つ場所へと向かった。

「しかし、我ら集ったとてたったの80人少し。
勝ち目はあるのかい晋作よ」
「勝ち目だと?ハッ!!んなもん後からつくりゃあ良いんだよォ!!」
そう言って高杉は天に響かんというほどの大声で笑った。
「………………まったく、君を見ているとちょっと知り合った外国の知り合いを思い出す」
「へェ、お前そんな親交あったのかよ意外だな」
「ああそうだ。君、常識破りだから聞くけど過去を超える事に興味はないかい?
興味あるようなら、この戦争が終わったら僕んところに来てほしいんだけどー……」
「過去を、超える……だぁ?興味ねぇなァ!!確かに俺は常識を打ち破って満足を追い求めちゃいるがァ、
先人には先人への敬意ってもんを払わなきゃアならねぇからな。俺はそこまで破天荒じゃあねぇよ」
「────────────────そうかい。」
「さぁ見えてきたぜぇ野郎ども!!アレが第一に我らが打ち倒すべき存在!!
愚かなる俗論派共の根城だぁ!!さぁ暴れ暴れて満足しやがれぇぇぇぇえええええええええ!!!
ヒャーッハハハハハハハハハァ!!」

────────こうして男たちは、やがては俗論派の首魁・椋梨藤太らを排斥。
長州藩の実権を握り、倒幕へと思考を統一。幕府軍との全面闘争……後の四境戦争にてその勢いのままに勝利。
長く続いた徳川の権威を地にまで墜とし………………、日本の夜明けへと急速に近づけたのだった。





────────────翌年、桜山にて…………
「………………そうかぁ……………、幕府は……どんどん勢力を失っているか」
「ああ、まぁ…完全なる崩壊も時間の問題だ」
「おう分かった。ありがとよ田中」
ふっ…、と高杉は病床に伏せながら笑った。
男は、重い肺結核に侵されていた。既にそれが分からない事は承知の上であった。
「ああ…ったく!まさかこんなつまらねぇことで終わることになるとはなぁ………
どうせなら戦場で華々しく………、満足して散りたかったって言うのによォ」
「そんな事言わないで。こうやって静かに看取られるというのも、良いじゃないですか」
そう言って、一人の女性か部屋に入って来る。
「……ちっ、調子が狂う尼だぜ」
入ってきた女性は、一人の尼であった。
彼女は、高杉晋作が病に倒れてここ桜山の病床に伏してから常に看病を続けていた一人の女性だ。
「にしてもよぉ、お前はなんで俺の看病を続けて居やがる?
こんな野郎の看病をしたところで、金銭の一欠片もでやしねぇぜ?」
「おいおい山縣………まぁ、確かに金なんざ一銭もねぇがな」
弱弱しく高杉は笑う。それに対して女性は、にっこりとほほ笑んで答えた。

「あら、面白いから………ではいけません?」

一同は、その答えに面食らったように少し黙って、
そしてその後に高杉だけが腹を抱えて大笑いを始めた。
「ククッ!ハハハハハッ!!ヒャーッハハハハハハハハハァ!!
なるほどこりゃあ傑作だ!そう!その通りだぜ尼ァ!確かに人間は面白れぇから動く!!
面白さを優先してこそ人間という奴だ!クククッ!!あぁ傑作だ…!」
男は笑いを必死に収めて、そして天井を見ながら言う。
「……………、なぁ……田中、山縣、……野村。」
「ん?」
「なんだ?」
「なんでしょう?」
「───────俺の行った道は………間違っちゃいなかったか?
………………………面白かったか?」
高杉には珍しく、弱弱しい言葉を発して問う。
その問いに対しての答えは、三人とも決まっていた。
「当然だ!」
「当たり前ですよ」
「お前がいなけりゃ、長州藩は潰されていた!
感謝してもしきれないとはこのことだぜ!」
「──────────────そうか…………。」
高杉はそう言って、安らかな笑みをしながら瞳を閉じる。
「………………………おもしろき こともなき世を おもしろく────。
俺はかつて…………、そう願っていた………。だが、すまねぇな。
どうも俺はお前たちの創る新しい日本…見れそうもない………。」
「何を言うかぁ!!!」
ドン!と軍服の男が力強く床をたたく。
「謝る必要はねぇ!!お前はよくやってくれたんだぁ!!
安心しろ!お前が見ても満足の行く新しい日本をォ!!作ってやるからなぁ!!!」
「………………………ありがてぇな…………。」
ふっ、と高杉は力なく笑う。
「俺は満足できる世界を目指して戦ったが……最後はこのざまだ……」
グッ……、と男は掌に力を込め、握りこぶしを作る。
「…………………………………無念だ………ッッッ!!!」
「でも………あなたは精一杯頑張って下さいましたじゃないですか」
スッ、と尼の女性がその握りこぶしを両の手で包み込む。
「────────だが俺は……まだ満足しちゃいねぇ……。
こんなんじゃ…………………満足できねぇぜ……………」
「満足できるか出来ないかは………その人の心持ち次第だと私は考えます」
「──────────────────────────。」

「すみなすものは心なりけり、です…………。」

「……………ククッ、そうか………。
満足は────人の心の在り方で決まるってか………」
そうつぶやくと、男はニィッと目を細めて爽やかに笑った。

「だったら………………もうとっくのとうに俺の願いは………
叶ってんじゃねぇか────────────。」

そういうと、男は静かに目を閉じて………そのまま二度と、目を開ける事はなかった。
高杉晋作27歳────────早すぎる死であった。





あの日、俺は遠い彼方の景色という物を見た。


俺はこの景色のように、雄大な世界を見たいと思っていた……。


閉塞された世界で満足せず………常に飢えた狼であるべきだと。


だが俺は………言ってしまえば………あの日見た景色で……俺は美しいと思えていたんだ。


俺は────────────────とうに満足出来ていたんだ



英霊異聞伝承-高杉晋作-『あの日から追い求めていた景色』

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